連続ドラマ小説「ニホンちゃん」 4クール目

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137夏の日・放課後1
体育館裏でう○こ座りをして時をすごすロシアノビッチ君とチューゴ君。
「んぐんぐんぐ・・・ぷは〜〜〜」
「やれやれ、いつもながら、良い呑みっぷりアル・・・」
口ではそういうものの、チューゴ君は呆れ顔です。
「チューゴ、お前も呑め。」
「じゃ、ちょっとだけアルよ(ったく)」
チューゴ君はウオツカのようなきつい蒸留酒は好きではないのですが、
泣く子と酔っ払いには勝てません。しかたなくビンを傾け、中の液体を
少しだけ口に含みます。
「酒が好きな家系だというのは知ってるけど、ほんとにスゴイ度数アルね、
何パーセントアルか?これ」
「ふん」
ロシアノビッチ君は不機嫌そうに鼻を鳴らします。
チューゴ君もそれ以上は聞きこうとしません。
時々、涼しげな風が体育館裏を吹き抜けます。
校庭の方では、ニホンちゃん達がバレーボールをして遊んでいるのでしょう。
楽しげな声が聞こえてきます。
「昔はよかったよな」
ロシアノビッチ君がぽつりと言いました。
138夏の日・放課後2:2001/08/01(水) 17:48 ID:0UvBDuF.
「たくさん子分どもを従えて、家の中にはたくさんの兄弟がいてさ・・・」
その目にはわずかに光るものがありました。
「カザフも、ウクライナも、ウズベキも・・・バルト三つ子も・・・みんな
うちから出て行っちまった・・・チェチェンとまで大喧嘩だ。もう俺んち、
ダメなんだよ。」
ロシアノビッチ君は頭を抱えています。
彼の気持ちもわからないでもないです、でも、弟や妹たちがどんなに辛い
思いで家にいたのか、いなければならなかったのか、彼には最後まで理解でき
なかったのです。
「ワタシに言われてもわからんアルね」
チューゴ君がウオツカのビンをロシアノビッチ君に手渡しながら言います。
もともとチューゴ君は自分のこと以外にはあまり興味を示しません。
「でもこれだけは言えるね、ワタシはロシアノビッチの二の舞いは絶対にしない
アル。たとえば、ある女の子がワタシを完全に拒むなら、そのときはアメリーが
なんと言おうと土下座するまで徹底的にイジメつくす覚悟アル」
チューゴ君がものすごい顔をして笑いました。彼は笑った顔がとても怖いのです。
「じゃ、ワタシは行くアルね、こう見えても運動会の準備やらで忙しいアル、
後ろ向きの相手はしていられないアル」
チューゴ君が去り、ロシアノビッチ君はひとり残されてしまいました。
139夏の日・放課後3:2001/08/01(水) 17:48 ID:0UvBDuF.
どんなに陽射しが強くとも、どんなに酒を呑もうとも、心の中はシベリアの
ツンドラ地帯のごとく凍っていました。
バシッ!!
突然、バレーボールが飛んできて、ロシアノビッチ君の頭に当たりました。
「痛ぇな! なにしやがる」
「酔っ払い、目がさめたか?」
目の前に立っていたのはアーリアちゃんでした。
ロシアノビッチ君はふてくされてボールを蹴り返します。アーリアちゃんはそれを
器用に片手で受けると言いました。
「兄と私が離れて暮らすことになったのは、お前のせいだ」
「!?・・・」
「でも、兄と私が今、一緒にいられるのは、お前のおかげかもしれない」
それだけ言うと、アーリアちゃんはわずかに笑みを見せ、再びみんなのもとへ
駆け出して行きました。
その後姿を見て、ロシアノビッチ君はつぶやきました。
(・・・聴いてやがったな・・・)
彼はウオツカのビンを持って立ち上がりました。
なんとなく、元気が出たような気もします。
(おわり)

たまには青春ドラマ風にということで。