【ノーベル賞への】韓国ミステリ等【どこでもドア】

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723スピノザ ◆ehSfEQPchg
 さて、昨晩は●の買い方が分からず、悪戦苦闘の上、結局子供に買ってもらった
情けないスピノザです。
 おまけに、ちゃんと●が反映されているかどうかも定かでありません。
 規制に引っかからずに書き込めるか、ドキドキです。
 では、今日の分のネタの投下と参ります。

 あらすじ7

 ヤン・ヌリとカン・ヘスはオークションを終えて昼食を食べていた。
「シンディ・シャーマンの写真の値段があんなに吊り上がるとは想像できなかったです」
 ヌリが言った。さらにヌリは続ける。
「先月何回もマスコミに紹介されたおかげでしょう?」
「でも、今ではインターネットやテレビを味方につける方がもっと重要なのよ」
 カンが言った。
 ヌリがため息をついた。
 今月のオークションには、シンディの他にロバート・メイプルソープや
ダイアン・アーバスなど現代作家の写真が出品された。
 シンディの競りが始まると、パク館長が所有していた、という言葉に会場が
ざわめいた。
 三点一セット、七億ウォンから競りが始まった。
(以下、延々と競りの値段が、一千万ウォン単位で十一行続きます)。
 結局、十一億二千万ウォンで競り落とされる。
(一ページ、まるっと値段の話です)。
724スピノザ ◆ehSfEQPchg :2012/09/06(木) 16:10:57.41 ID:6pKJRXvA
「カンさんはどう思われるか分かりませんが、私はちょっと気が重いんです。
三百万ウォンで買った写真を十一億二千万ウォンで売るのが果たしていいことか
どうか」
 カンが軽く頷いた。
「芸術界に身を置いた人であれ、単に芸術が好きな人であれ、最後まで守るべき
プライドというものがあると思うのです。芸術なんです。芸術そのものです」
 ヌリの言葉に、カンが返した。
「私も、学生時代にはそんな風に純粋だったわ。でも今は芸術の中心にはお金が
絡んでいると思うようになったわ」
「働きながら考えが変わったんですか?」
「次第に認めるようになったと言った方がいいかな」
「私はデュラン=リュエルやアンブロワーズ・ヴォラールのような人になりたかった
んです」
「でも、彼らの時代にすでにかの有名な〈晩鐘〉の流転が始まってるんだもの」
(ミレーの「晩鐘」が千フランから転売の過程で八十万フランになったこと)。
「で、捜査の方はどうなってるんですか?」
 ヌリが聞いた。
「私やビョン室長ナ主任の聴取は終わったわ」
「美術館と刑事とは、あまりにも似合わないです」
「仕方ないわね。それが今の現実だもの」
725スピノザ ◆ehSfEQPchg :2012/09/06(木) 16:12:19.42 ID:6pKJRXvA
 ジュンギは、ジョルジョーネの〈テンペスタ〉の確認をしに倉庫に来た。
 中では、ヌリが働いていた。ヌリが言った。
「ジュンギ、まずは〈テンペスタ〉の絵を見てみよう」(なぜ男言葉!)
 倉庫の隅に、〈テンペスタ〉があった。
「これか。うん……思ったより小さいな」
 ジュンギはややがっかりしたように言った。(!)
「彩度だけ見ると、正直言って、図版で見た方がいいかも。図版の方が、より鮮明で
綺麗だからな」(!!!)
 こういうジュンギに、ヌリが答えた。
「名作とはいえ、年月の痕跡は隠せないでしょう」
(以下、ジョルジョーネに関するつまらない蘊蓄)。
〈テンペスタ〉は文字通り嵐の日である。なのに平然としている男と、やはり平然と
子供に父を含んでいる女。
 それは、ミステリー的な要素を持つ絵である。
「この絵のミステリーはまだ解けていないのか?」
 ジュンギが後ろに立っているヌリを振り向いて言った。
「ほぼ解けたみたいよ。このドラゴンの絵が鍵だったの」
「どこにドラゴンがいる?」
「よく見て。一見点が打ってあるように見えるけど」
726スピノザ ◆ehSfEQPchg :2012/09/06(木) 16:21:58.81 ID:6pKJRXvA
 ジュンギが近づいてみると、点を打ったように見える小さな絵が描かれていた。
「これがドラゴンだったの?」
 その瞬間、ジュンギの頭の中で何かが光った。
 パク館長は、イム・ヨンスクの絵が理解できないと言ったら、〈テンペスタ〉
の話を持ち出したのだ。
 そして、ある場面がありありと浮かび上がった。
 ジュンギが、館長室を出ようとしたときに、
――よろしく頼む。――
 パク館長は書類封筒を指さしながら言ったのだった。
「ヌリ」
 ジュンギはヌリを見つめながら言った。
「もしかしたらパク館長は、何らかのメッセージを僕に伝えようとしたんじゃ
ないかな」
「あなたに何のメッセージを伝えようと……」
「それは分からない。でも美術館の人たちに知られたらまずいことじゃないかな」
 それは深く考えた言葉ではなかった。
「ヌリ、セミナーで発表された〈テンペスタ〉二関する論文を読んでみたい」
「美術館のホームページからダウンロードできるわ」