【ノーベル賞への】韓国ミステリ等【どこでもドア】

このエントリーをはてなブックマークに追加
608スピノザ ◆ehSfEQPchg
 さて、いささか涼しくなったと思ったのも束の間、やはり猛暑に襲われ、
瀕死のスピノザです。
 それでは、今日の分のネタのうpに入ります。

 あらすじ4

 ジュンギは、和食店で(!)オ記者と会った。
 オは、ジュンギを天才と呼び、高評価していた。
「先輩はどう思いますか? パク館長の自殺ことですが」
「そうだなあ。もう捜査が始まったそうだ。チ画伯の交通事故とユン画伯の
失踪事件まで一緒に暴き出すということさ」
「美術界が騒然となるでしょうね」
「美術界ってとこは、勉強した知識がなければ理解が難しい抽象画とまったく
同じようなところなんだ。秘密の多いところだ」
「先輩が手伝ってやってください」
「実は今年の初めから贋作絵画の記事を準備している。今回のパク館長の
自殺は、その贋作と関係しているんだ」
 信じがたいことだった。パク館長が、贋作?
「今闇市場ではチョンノ美術館の専属画家たちの贋作が出回っているんだ」
「それは、昨日今日のことじゃないでしょう。チョンノ美術館は最高のブランド
だから」
「レベルが違うんだ」
「韓国でもファン・メーヘレンやポール・ガシェ医師が現れたというんですか?」
「今度のは、完全なプロ集団だ」
609スピノザ ◆ehSfEQPchg :2012/08/31(金) 14:46:36.97 ID:XviZURmP
 オ記者は続ける。
「チョンノ美術館のものは、主に海外で流通させてから密かに国内へ持ち込んでいる。
(贋作を作るのは)正式に美術教育を受けていて、中には有名な公募展で
特選以上を受賞したものもいる」
「目利きだけは最高だったメディチ家のアンリ四世の王妃も、偽物のホルバインの
絵に騙されてるし、メトロポリタン美術館もドゥッチョの〈聖母子像〉に騙されて
います」
「すごいやつらだ。メトロポリタン美術館を騙すなんて」
「僕には(贋作の)完璧な流通機構が整っているというのが、もっとすごいように
思います」
「その通りだ。骨董品の場合は、鑑定が大変だったが、贋作絵画はネットワークを
探るのがもっと大変」
「先輩は、パク館長が贋作のために自殺したと思ってるんですね」
 オは、黙ってジュンギの顔を見つめ、そして低いため息をついた。
「ところで『美術館の鼠』の原稿の話は聞いたか?」
 ジュンギは首を横に振った。
「完全に消えたそうだ」
「え?」
「オッカムの剃刀を考えてみな」
「単純に考えろって言うんですか?」
「この話はもう止めよう」
610スピノザ ◆ehSfEQPchg :2012/08/31(金) 14:47:09.40 ID:XviZURmP
 イム・ヨンスクは、たった今現代日報のインタビューを終えたところだった。
 イムの研究室には、他にビョン室長、現代日報のチェ部長がいた。
 チェが言った。
「闇市場でチョンノ美術館の専属作家の贋作が多く出回っているそうです。
そこにはもちろんイム先生の作品も含まれています。聞いたことはありますか?」
「ええ」
 イムが迷わず答えた。
「贋作が出回っているという話は、三十年前からありました。いちいち気に
していては創作ができません」
「オ・ジンファン記者によると、偽造団は組織的で知能的、勝つ大胆で、相当な
部分が表の世界と繋がっているというのです」(具体性!)
 ビョン室長が軽く笑いながら答えた。
「チョンノ美術館の画家は世界的なレベル(!)ですから、当然偽造団の標的に
なるでしょう。また贋作を流通させるためには表の世界と何らかの形で繋がって
いなくてはならないでしょう」
「そんな話ではなくて……オ記者から特別な雰囲気を感じたのです。大変深刻な
何かがあると言うことでしょう」
 イムが心配そうな顔をした。
「ところでビョン室長、警察の捜査が始まったそうですね」
 チェ部長が聞いた。
「ええ、以前から関心を持っていたキム・ジョンス刑事が捜査を担当しています」
「本当につらいですね。ああ……」
 イムがため息をついた。