【ノーベル賞への】韓国ミステリ等【どこでもドア】

このエントリーをはてなブックマークに追加
541スピノザ ◆ehSfEQPchg
 毎度のことながら、お暑うございます。
 いやはや、近年こんなにクーラーのお世話になった年はございません。
 あれもこれも、みんな民主党が悪いニダ!!!
 フンダラララ!
 と発狂できたら、いっそ楽かと思える次第です。
 では、ネタの投下に参ります。

 あらすじ2

 パク館長に関するニュースが続いている。
 故人に対する礼儀が、微塵も感じられないニュースばかりだった。
 ジュンギができることは、何もなかった。
 そのとき、ノックの音が響いた。
 やってきたのは、キム・ジョンス刑事だった。
「俺がここに来た理由は分かってると思うけど、あんたがパク館長に最後に
会った人だからだ」
 なんともぞんざいな言い方だった。
「私の個展の話をし、アートフィールドへの原稿を頼まれました」
「そのアートフィールドへの原稿、内容を知っているか?」
「『美術館の鼠』というタイトルだけです。ところで、自殺でも捜査が必要
なんですか? もしかして、自殺ではないと?」
「自殺なのは、確かだ」
 キム刑事は、短く答えた。何かがあるようだった。
542スピノザ ◆ehSfEQPchg :2012/08/29(水) 13:19:59.73 ID:AeT5L7ZP
「きみ、チ・マンギ画伯を知っているか?」
「去年、交通事故で亡くなりました」
「じゃ、ユン・フ画伯は?」
「一年前に失踪しました」
「チ画伯と、ユン画伯はチョンノ美術館の代表的な画家だ。そこに、今度は
パク館長だ。共通項はチョンノ美術館だ」
 そう言うと、キム刑事は立ち去った。
543スピノザ ◆ehSfEQPchg :2012/08/29(水) 13:20:31.48 ID:AeT5L7ZP
 その後、ユン画伯の夫人であるイム・ヨンスクとキム刑事は対面していた。
 自宅でのイム画伯は著名な画家というより、近所のおばさんのようだった。
 キム刑事は、ユン画伯の失踪の件で、十回ばかりイム画伯を訪ねたことがあった。
 しかし、本格的な捜査を始めようとすると、パク館長ばかりではなく、
夫人のイムも反対した。
 韓国美術界全体のイメージが損なわれることを恐れたのだ。
 捜索依頼が出ない限り、キム刑事もどうしようもなかった。(キムの階級?)
「今度こそ、これで済ませるわけにはいかないでしょう」
「もう、キム刑事の意見を支持するしかないでしょう」
「正直、思い当たることがあります」
「何のことでしょう」
「ナ・ヨンホ主任に関する噂がありました」
「何の話でしょうか?」
「ナ主任が、チョンノ美術館の専属画家のために、海外でロビー活動を行って
いたという情報でした」
「それはデマです」
「入手した情報は具体的なものです」
「チョンノ美術館のサラリーマンが、そんなことをする必要があるんですか?」
「パク館長が介入していたとすれば、話は変わります」
「キム刑事。パク館長は七十五歳です。ご長男が三年前に心臓病で亡くなった
後、鬱病の治療まで受けていたのです。そんな方が、何を望んでそんなことを
すると言うのです」
544スピノザ ◆ehSfEQPchg :2012/08/29(水) 13:32:22.84 ID:AeT5L7ZP
「私の考えでは、それは充分にあり得ることなのです」
「だったら、疑惑の交通事故と失踪事件、そして自殺と、どんな関係があると
言うんですか?」
 イムが多少興奮したように問い詰めた。
「これから見つけ出します」
「そうですか。でも、度の過ぎる憶測はおやめください。亡くなった方に
失礼ですから」
「失礼があったら、お詫びします。しかし、問題が外部ではなく、内部に
あることは確かです」
 対話は、それで終わった。
 イムは、リビングに掛けられている自分の絵を眺めた。
 心が重苦しかった。
 チョンノ美術館が激しい嵐に揺さぶられるのが目の前に浮かんだ。
 イムは、それから視線をそらすように、静かに目を閉じた。