466 :
スピノザ ◆ehSfEQPchg :
お暑うございます。
夕方になり、ようやく涼しくなりまして、のそのそ巣から出てまいりました
スピノザ猫でございます。
>>461 >>463 >>464ニム
たちを初め、お優しい言葉をかけて頂きましたみなさま、ありがとうございました。
(ぺこり)
お陰様で、スピノザも元気を回復いたしました。
では、再びうpさせて頂きます。
あらすじ12(殺人)
禹刑事は、喫茶店で待つ韓成洙のもとに出かけた。
「あの日泊まられた部屋のことなんですが」
禹刑事は切り出した。
「あの部屋に入ったのは午前零時に近い頃だとおっしゃってましたよね?」
「その通りですけど」
「だとしたら、午前零時の少し前に部屋を借りたってことですかね。
でなければ前もって予約しておいたわけですかな?」
「先に予約してあったようですね」
「ようですと、そりゃあどういう意味なんです?」
「わたしが借りたわけじゃなくて、あの女が準備しておいたのですよ」
467 :
スピノザ ◆ehSfEQPchg :2012/08/26(日) 18:09:34.31 ID:p67R+cDQ
韓の言葉によれば、ナイトクラブで踊っているとき、ホテルに行って
やすみたいと言ったのだそうだ。
そのとき、女は千鳥足だった。
二人は、クラブを出てそのままホテルの十五階に行ったのだ。
「その女について思い出せることがあれば話して欲しいんだ」
「とくにないんですがね」
「そう言わずにじっくりと思い出してくれないかね」
禹刑事は、猛獣が獲物を狙うかのように相手を見据えた。
「あの女が、犯人とでも?」
「まだ何とも言えんがな」
禹刑事は、ビールを勧めるが、韓は勤務中だからと断る。
沈黙と緊張のときがしばし流れていった。
ふと、韓の目の中で何かがきらめいた。
「あ、一つ思い出しました」
「な、何をだね」
「踊っているとき、別の女があの女にねえさんって読んでいましたね。その
女は、あのクラブのダンサーみたいでしたが」
「何だって?」
禹刑事の鼻息が荒くなる。
468 :
スピノザ ◆ehSfEQPchg :2012/08/26(日) 18:10:05.86 ID:p67R+cDQ
「おたくは、さっきあの女が三十三号室を借りておいたと言ってたが、
どうして宿泊カードにおたくの名前が書いてあったのかね?」
「女が、自分の名前じゃ不安だというもので、係員にチップをやって
書きかえたんです」
禹刑事は、品定めするかのようにじっくりと見つめた。
「して、そのダンサーなんだが……今でも会えば見分けがつくんだろうか?」
「さあ、踊っているときちらりと見ただけですからね」
それでも、禹刑事は韓に思い出すように執拗に迫る。
韓は、クラブで見た、目が大きいすらりとした色白の美人(!)であった
と思い出す。
禹刑事は、強引に、韓の退勤後にクラブに同道するように言う。
婚約者とのデートの予定があった韓は、泣く泣く同意する。
ナイトクラブに行くと、韓に気がついたボーイや女たちが親しげに迎えた。
韓は、一年以上前からクラブにいる、年増の女を呼ぶようにボーイに言う。
韓の態度は、見違えるように横柄である。
「名前は知らねえが……すらっとしててさ、べっぴんの女がいたじゃねえか?」
「まあ、誰のことかしら?」
韓は、自分がかねてその女に惚れていたのだと言う。
女たちの目が、好奇心で輝く。
「もしかして、一緒に撮った写真はないのかい?」
「一枚あるじゃない。去年の春、ハイキングに行って写したのが」
ボーイを呼んで、その写真を持ってこさせた。
三十人ほどの集合写真である。
469 :
スピノザ ◆ehSfEQPchg :2012/08/26(日) 18:20:08.21 ID:p67R+cDQ
韓は、その写真を見つめ、とうとう一人の人物を指さした。
「この女だ!」
「あら、ミス崔(チェ)じゃない?」
女たちは、ひとしきりミス崔の陰口をたたく。
「どこにいる?」
韓が聞くと、女たちは「知らない」と答える。
「しらばっくれてないで言ってくれ。さあ、一万ウォン……」
韓は、一万ウォン札を机の上に出す。
こうしてつり上げていって、五万ウォンになったとき、ボーイが言った。
「わたしが教えてあげましょうか」
五万ウォンを浮けとったボーイは、言った。
「赤線にいるんです」
禹刑事が、身元を明かし、ボーイに案内するように言う。
タクシーに乗ると、ボーイが言った。
「実は、さっきも、ある女がミス崔を訪ねてきましてね」
ボーイによると、六時頃に、黒いコートを着た女が訪ねてきて案内したと
いうのだ。
三十分後、私娼街に飛び込むと、殺人事件が起こっていた。
ミス崔が、殺されていたのだ。黒いコートの女が犯人だった。
青酸カリによる、毒殺だった。