【ノーベル賞への】韓国ミステリ等【どこでもドア】

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438スピノザ ◆ehSfEQPchg
 お暑うございます。
 今日も今日とて、ネタを投下いたしますスピノザです。

 あらすじ11(進展)

 太五は、持ち金を数えた。全部で、一万ウォンもない。
 旅館に閉じこもり、とくと考える。
 どう考えても、まともな手段では、金は稼げそうにない。
 まあ、妻を殺した真犯人を見つけて復讐したら、後は死んでしまうつもりだが。
 羅起龍が真犯人だというのは、思い違いだったに違いない。
 羅起龍は、見てくれの良い、上品な遊び人(?)に過ぎない。
 日が暮れるのを待って外に出た。
 時間つぶしのために、映画館に入った。
 つまらない映画で、途中で席を立つと、入場券売り場から札束を手にした
女子職員が事務室に向かうのが見えた。
 後を尾け、太五は事務室に押し入った。
 ナイフを取りだし、女事務員二人を脅す。
 そして、金庫などから、鞄の中に札束をいっぱいに詰め込む。
 と、そこに「開けろ!」という男の声が聞こえてくる。
 太五は、扉を開け、男の顔面を殴り、逃走する。
 しかし、ホールは映画館から出ようとする客でいっぱいだった。
「強盗!」
 叫び声が上がる。
 太五は、締め切られたガラス戸を突き破って逃げる。
――生きていたいんだ、おれは生きていたい!――(?)
439スピノザ ◆ehSfEQPchg :2012/08/23(木) 13:36:46.28 ID:47NuJc3M
 走りに走って、気がつくと追ってくる声が聞こえなくなった。
 タクシーを拾い、ソウル駅まで行く。
 トイレで数えると、現金は数百万ウォンあった。
 太五は、釜山行きの列車に乗り込んだ。
 一方、禹刑事はR製薬会社の韓成洙(ハン・ソンス)を訪ねていた。
 韓は、一年前の殺人事件の時に、事件の起こったSホテルの十五階、
三十三号室に泊まっていたのだ。
 韓は、酒でつい遅くなり、Sホテルに宿泊したと証言する。
 実は、ナイトクラブで知り合った女と、ダブルベッドの部屋に泊まった
と証言する。
「いくつぐらいの女だったんです?」
「三十は過ぎていました。赤いコートを着てましたが」
「赤いコートですと……?」
「それに、蜻蛉眼鏡をかけていました。色のついたやつです」 
 こんな証言を得て、禹刑事は溜息をつきながら立ち上がった。
440スピノザ ◆ehSfEQPchg :2012/08/23(木) 13:37:17.81 ID:47NuJc3M
 墨染めの衣を着た僧侶が、改札口を通り抜けた。
 ソウル駅前の広場には、銃を手にした警官が大勢いた。
 しかし、僧侶は一度も検問を受けなかった。
 僧侶は、H日報に行き、その図書室にこもって昨年四月の新聞を読み始めた。
 四月十五日。太五の妻が殺された日の新聞である。
 丹念に読み、必要な部分はメモを取った。
 一方、禹刑事は、三十四枚の宿泊カードを取り出していた。
 うち五枚は、外国人なので省き、二十九枚のカードを調べる。
 四人が女だったが、住所も名前もでたらめで会えなかった。
 男も、六人が記載がでたらめで会えなかった。
「お、こりゃ! こんな馬鹿な?」
 禹刑事の細い眼がにわかに輝きを増した。
 四枚の女のカードが、筆跡が全く同じだったのだ。
 つまり、一人の女が、偽名を駆使して、18、21、35、36号室を借り
事件現場の1520号室を囲むようにしていたのだ。
 閃いた禹刑事は、韓に電話をかけ、アポイントメントを取ったのだった。