【ノーベル賞への】韓国ミステリ等【どこでもドア】

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318スピノザ ◆ehSfEQPchg
 おはようございます。今日もネタを投下いたします。

 あらすじ7(出遭い)

 窓から落ちた羅起龍は、一命を取り留めた。
「や、やつが病院へ来たら、どうすりゃあいいんですか?」
 と怯える羅起龍。
「心配するな」
 となだめる禹刑事。
 羅起龍の目は青く腫れ上がり、頭皮は裂け、顔は誰だか判別できないほど
醜くゆがんでいた。(?)
 電話で、警察を装って羅起龍を呼び出すという、太五の巧妙な(!)
手口に、禹刑事は呆れるのを通り越して、身の毛もよだつ(!)思いをする。
 禹刑事は、太五の服装を羅起龍から聞き出す。
 羅起龍は強がるが、ズボンは小便で濡れていたのだ。
 とうとう、太五の首に、一千万ウォンという破格の懸賞金がかかった。
 太五はラジオでニュースを聞きながら、衣料品店に入っていった。
 新しい服に着替える太五。
 路地に入ると、両側に女が並んでいる。
 女たちは、太五の袖を引き、口々に「いかせてあげる」などという。
 太五は、子供っぽく見える小柄な娼婦を選ぶ。
 女は、ぴょんぴょん跳びはねながら、宿に入る。
319スピノザ ◆ehSfEQPchg :2012/08/17(金) 12:28:15.38 ID:H+KF+HMW
 太五が、私娼街に来たのは、他の宿泊施設より安全だと思ったからである。
 また、彼は追われれば追われるほど、女の体に溺れたくなるのだった。
 そんな欲求が生じたのは、あの(自分が殺した)鬘屋の女と、劇的な関係
を結んでからである。
 二人は、服を脱ぐ。
 太五のものを見て、女は「馬みたい!」と驚く。
「なんて名だ」
「和子(ファジャ)」
「いくつになる?」
「十八歳」
 女を抱きながら、太五は、
「生きていたい! 死ぬのはまっぴら。生きていたいんだ、おれは!」
 と思う。
「なぜ眠らないの?」
 和子が聞いてくる。
「故郷(くに)はどこなんだい?」
 と話をそらす太五。
「全羅道よ。お母さんと、兄二人、姉二人。末っ子よ。厄介者なの」
320スピノザ ◆ehSfEQPchg :2012/08/17(金) 12:28:56.84 ID:H+KF+HMW
「ちゃんと結婚しなきゃ」
 と、にわかに説教をする太五。
「笑わせないで。あたいの上には、二百三十七人の男が乗ったのよ」
 和子は、声を殺して泣いていた。
「体なんて問題じゃない。大事なのは心だ」
 などと、説教する太五。
「奥さんはいるの? 子供は?」
「妻は死んだ。子供はいない」
 太五は目を閉じて眠ろうとするが、眠れるわけがなかった。
 ここも安全ではない。
 普通の宿泊施設を調べ終わったら、いずれここにも捜査の手が及ぶだろう。
「こんな仕事、やめないのか?」
「五十万ウォン以上の借金があるから、無理よ」
「どこか静かなところで、二人で暮らさんか」
 太五の提案に吃驚する和子。
 音を立てないように、こっそりと抜け出そうと試みる二人。
321スピノザ ◆ehSfEQPchg :2012/08/17(金) 12:37:49.69 ID:H+KF+HMW
「こら、淫売、どこへ行きやがる!」
 険悪な人相をした五十がらみの男。
 太五は、その男の腹にナイフを突き立てる。
 怯える和子を、引き立てる太五。
 逃げているうちに、太五に取りすがる和子。
 朝食を食べて、新聞を読む。
 羅起龍が殺されかけたこと。
 太五の顔写真が載っている。
「ずっと遠くに行こうよ。海辺がいい」
 和子が言う。
「よし、決まった。おれだって冬の海が見たいからな」
 カンヌン行きの高速バスに乗り込む二人。
「胸がどきどきする」
「どれ見てやろう」
 太五は、コートの合間から手を入れ、乳房をいじる。
「あの人、死んだかしら?」
「多分な。深く刺したからな」
322スピノザ ◆ehSfEQPchg :2012/08/17(金) 12:38:24.12 ID:H+KF+HMW
 バスのラジオから、流行歌の哀切な歌声が流れる。
 生きていたいんだ!
 声を殺して絶叫する太五。
「あ、雪!」
 少女じみた娼婦は、このときばかりはすべてを忘れているだろう。
 臨時ニュースが流れ、太五の所行が読み上げられる。
 思わず、立ち上がりかける和子。
「おとなしくしろ」
「知らなかった。そんな人だなんて。たすけてちょうだい」
「殺すつもりで連れてきたんじゃない」
 サービスエリアに着く。
「トイレに行きたい」
「だめだ! がまんしろ」
 しかし、自分も尿意を催し、コーラの空瓶に座ったまま小便をする。
 ふと虚脱感に襲われ、和子を束縛していた手を離す太五。
 太五は目を瞑る。
 目を開けると、和子は逃げずに側にいた。
「あたいたち……海へ行って一緒に死のうよ」