【ノーベル賞への】韓国ミステリ等【どこでもドア】

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247スピノザ ◆ehSfEQPchg
 おはようございます。では今日の分のうpを開始します。

 あらすじ5(殺人鬼)

 太五は、十分以上、身じろぎもせずにクリスマスで賑わう繁華街に
立っていた。(?)
 すでに、脱獄から一時間以上経過している。
 太五は、そそくさと路地裏に飛び込んだ。
 ほどなく、カービン銃を持った警官が通った。
 路地裏に入った太五は、吐いている酔っ払いを見つけた。
 介抱するふりをしながら、二人で旅館に行く。
 部屋に入ると鍵をかけ、その男を身ぐるみ剥いで、それに着替えた。
 男の財布には、一万ウォン札と小切手が、束になって入っていた。
 太五は、玄関に出て代金を先払いし、表に出た。
 太五は、目に入った鬘(!)屋に入る。
 赤いブラウスを着た、肉感的な女が、店番をしていた。
 長髪の鬘を買い、ついでに女に声をかけてみる。
 クリスマスイブなのに、デート相手のいない女は、簡単に乗ってきた。
 今夜は、通禁(午前零時から午後四時までの外出禁止令)がないので、
女にも時間がある。
248スピノザ ◆ehSfEQPchg :2012/08/11(土) 11:07:00.42 ID:a8pG4do1
 二人は、食事の後に、路地裏に入る。
 そこで、太五は女のブラウスの下に手を差し入れる。
 不思議なことに、不能になっていたはずの太五のものがちゃんと立った。
 二人は、そのままホテルに入っていく。
 女の裸身は、見事なものだった。
「好きにして」
 女は言う。
 太五のたくましさに、女はうっとりとする。
 女をベッドに押し倒すと、太五は、そのまま割って入った。(!)
「淫売! 牝犬!」
 太五は罵りながら、勢いよく股間のものを突き上げた。
 わずか二、三時間前に会ったばかり。
 ろくすっぽ相手のことを知りもしない男女がエロスの極致に向かっている。
 事が終わると、太五は浴室に入り、シャワーを浴びた。
 皮肉なものだ。
 妻が死んだ後に、男の機能が回復するとは。
 そのとき、部屋からニュースの声が聞こえてきた。
 太五が、そのニュースの意味を覚るのに、十分近くかかった。
「警察は、非常線を張り、脱獄囚を捜索中です」
 そのニュースによると、木槌で殴ったあのキリスト教徒の執事は、
なくなったとのことだった。
 女は、テレビ画面に映った太五の顔を、食い入るように見つめている。
 太五は、女の首に腕を巻いた。
249スピノザ ◆ehSfEQPchg :2012/08/11(土) 11:29:18.89 ID:a8pG4do1
 市警殺人課の禹東一(ウ・ドンイル)刑事は、事件ファイルを見ていた。
 酒に酔った男の服を盗んだ事件が気にかかった。
 一時間ほどの後に、その事件の所轄に禹刑事は立ち寄った。
 そして、太五が脱ぎ捨てていった赤いパーカーなどから、その事件の
犯人も太五だと断定した。
 被害者の話によると、ボーナスの百万ウォンをすっかり盗られたとのことである。
 ただ、酔っ払いなので、人相などは分からない。
 太五が盗んだ服は、黒いコートに、栗色の背広、白いワイシャツなどである。
 禹刑事は、四十代である。
 肉が付きすぎて、まるまると肥えている。
 そのため、鈍く見られがちだが、殺人課のベテラン刑事である。
 人は、彼を冷血漢と呼ぶ。
 旅館のフロントは、その衣服を盗んでいったのが太五だと証言する。
 と、禹刑事の携帯無線機が鳴る。
 また、殺人事件が発生したのだ。
 現場に急行し、被害者の女の肉感的な魅力にあふれた体を惜しむように
茫然と見つめる。(!)
「死因は?」
「首の骨が折れてますね。窒息死ですよ」
250スピノザ ◆ehSfEQPchg :2012/08/11(土) 11:29:54.58 ID:a8pG4do1
 フロントに行くと、宿泊カードがなかった。
 しかし、支配人に、囚人になる前、まだ髪が長かった頃の太五の
写真を見せると、
「こいつですよ」
 と言うのだった。
 太五は、稀代の殺人鬼だ!
 禹刑事の電話により、警官達は黒いコートに栗色の背広の男を捜し
始めた。
 さて、太五にとっては、百万ウォンの現金は、ありがたかった。
 トランジスタラジオを買い、ニュースを聞くと、すでに警察は太五の
新しい服装を公開していた。
 今度逮捕されたら、文句なしに死刑だろう。
 太五は、自殺も考えた。
 しかし、何としても生きていたかった。
 太五は、今は旅館に潜んでいる。
 と、隣室の扉が開く音がした。
 見ると、中年の男が、寝間着姿で、手にちり紙を持ってトイレに行くところだった。
 太五は、隣室に忍び入り、背広、ネクタイなどを替えた。
 そして、百貨店に行き、さらに灰色の上下を買って着替えた。
 それから、髪油を買い、髪をオールバックにした。
 それから、太五は街に紛れ込んでいった。