>>173ニム、お待たせしました。
いよいよ、ニムが気になると仰った、「精神病を引き起こす脱毛剤」
の出番です。
精神病を引き起こす脱毛剤 白恷(ベク・ヒュ)
私は、淫乱で浮気性な妻(またこの設定!)を殺そうと
思っている。
私は、友人のアントウカクと会う。アントウカクは、
新薬を開発していて、まさにそのせいで会社を馘首に
なったのだ。
その新薬とは、女性のいやがるむだ毛を除去する脱毛
クリームHRー2だった。
この脱毛クリームは、動物実験では抜群の効果を上げた
ので、人間による実験が行われた。
最初は、その実験もうまくいったように見えた。
ところが、この薬にはとんでもない副作用があることが
分かった。
被験者となった女性たちが、三ヶ月を境に、急にみんなが
鬱症状を見せるようになったのだ。
一切ものを言わなくなり、すべてに投げやりで無責任に
なった。
さらに女性たちは、ひどい健忘症となり、意識が断絶
するようになる。
不思議なのは、自分の体毛ばかりでなく、抜くことの
できるものは何でも抜いてしまうという異常症状を見せる
ようになった。
さらに、明るいところをいやがり、暗いところを好む
向暗症状群を現すようになった。
最悪なことに、光恐怖症のために、三人もの被験者が
自殺してしまったのである。
こうして、アントウカクは製薬会社を追われてしまった。
私は、その薬を五百万ウォンで買った。
もちろん、アントウカクに口止めすることも、忘れな
かった。
家に帰った私は、妻が寝入ると、妻の化粧台に向かった。
そこには、浮気女らしく、たくさんの化粧品が並んでいた。
色々開けてみると、HRー2同様に、赤い色をした
クリームがあった。私は、それにHRー2を混ぜて、元通りに
ならしておいた。
私としては、妻が最終段階である自殺まで行かなくとも、
重度の鬱病になって精神病院に閉じ込められることになれば
十分だと思っていた。
それから三ヶ月。
ついに、妻に症状が現れた。
朝、出勤前の朝食を妻が用意していない。寝室に行くと、
妻はベッドの側にうずくまってぼんやりしている。
仕事に行き、家に帰ると、娘のテイランが、
「お母さんの様子がおかしい」
と訴える。
こうして妻の症状は悪化の一途をたどる。
ある日、帰宅すると、庭が酷い有様になっていた。
私が趣味として没頭している盆栽や、敷き詰めた芝などが、
みんな抜かれているのだ。
テイランは、机の下に潜り込んで寝てしまっていた。
寝室に入ると、妻は素っ裸になっていた。そして、体毛
という体毛を抜いていたのだ。
症状はさらに悪化し、妻はたんすに閉じこもったまま出て
こなくなった。
ついに、妻は精神病院に入院させられた。
私は、目的は半ば達成したので、HRー2をたき火で
燃やした。
そして、妻はとうとう病院内で自殺した。
気落ちした娘のテイランに、私は子猫をプレゼントした。
それにしても、計画がうまくいったにも関わらず、私は、
なんだか鬱々として気が晴れなかった。鬱病になって
しまったのだ
アントウカクから電話が来た。
私を強請るつもりだと思い、その電話は無視した。
と、真夜中、騒がしい音で目が覚めた。
子猫が鳴いている声だった。
娘の部屋に行ってみると、テイランは子猫の毛を抜いて
いるのだった。子猫は死にかけていた。
と、またもやアントウカクから電話が来た。
それに出てみると、アントウカクはいうのだった。
「あの薬から、正体不明のウィルスが発見された。
鬱病は、そのウィルスのせいで伝染するんだ」と。
私は、その電話を聞きながら、むずむずするかゆみに
耐えかねて、脛の毛を休みなくむしっているのだった。