【ネタバレ】コリアン・ミステリ【上等】

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579スピノザ ◆ehSfEQPchg
>>173ニム、お待たせしました。
いよいよ、ニムが気になると仰った、「精神病を引き起こす脱毛剤」
の出番です。

精神病を引き起こす脱毛剤   白恷(ベク・ヒュ)

 私は、淫乱で浮気性な妻(またこの設定!)を殺そうと
思っている。
 私は、友人のアントウカクと会う。アントウカクは、
新薬を開発していて、まさにそのせいで会社を馘首に
なったのだ。
 その新薬とは、女性のいやがるむだ毛を除去する脱毛
クリームHRー2だった。
 この脱毛クリームは、動物実験では抜群の効果を上げた
ので、人間による実験が行われた。
 最初は、その実験もうまくいったように見えた。
580スピノザ ◆ehSfEQPchg :2012/07/30(月) 09:56:03.57 ID:dfDgQmxf
 ところが、この薬にはとんでもない副作用があることが
分かった。
 被験者となった女性たちが、三ヶ月を境に、急にみんなが
鬱症状を見せるようになったのだ。
 一切ものを言わなくなり、すべてに投げやりで無責任に
なった。
 さらに女性たちは、ひどい健忘症となり、意識が断絶
するようになる。
 不思議なのは、自分の体毛ばかりでなく、抜くことの
できるものは何でも抜いてしまうという異常症状を見せる
ようになった。
 さらに、明るいところをいやがり、暗いところを好む
向暗症状群を現すようになった。
 最悪なことに、光恐怖症のために、三人もの被験者が
自殺してしまったのである。
 こうして、アントウカクは製薬会社を追われてしまった。
 私は、その薬を五百万ウォンで買った。
 もちろん、アントウカクに口止めすることも、忘れな
かった。
581スピノザ ◆ehSfEQPchg :2012/07/30(月) 10:11:38.70 ID:dfDgQmxf
家に帰った私は、妻が寝入ると、妻の化粧台に向かった。
 そこには、浮気女らしく、たくさんの化粧品が並んでいた。
 色々開けてみると、HRー2同様に、赤い色をした
クリームがあった。私は、それにHRー2を混ぜて、元通りに
ならしておいた。
 私としては、妻が最終段階である自殺まで行かなくとも、
重度の鬱病になって精神病院に閉じ込められることになれば
十分だと思っていた。
 それから三ヶ月。
 ついに、妻に症状が現れた。
 朝、出勤前の朝食を妻が用意していない。寝室に行くと、
妻はベッドの側にうずくまってぼんやりしている。
 仕事に行き、家に帰ると、娘のテイランが、
「お母さんの様子がおかしい」
と訴える。
 こうして妻の症状は悪化の一途をたどる。
582スピノザ ◆ehSfEQPchg :2012/07/30(月) 10:12:17.16 ID:dfDgQmxf
 ある日、帰宅すると、庭が酷い有様になっていた。
 私が趣味として没頭している盆栽や、敷き詰めた芝などが、
みんな抜かれているのだ。
 テイランは、机の下に潜り込んで寝てしまっていた。
 寝室に入ると、妻は素っ裸になっていた。そして、体毛
という体毛を抜いていたのだ。
 症状はさらに悪化し、妻はたんすに閉じこもったまま出て
こなくなった。
 ついに、妻は精神病院に入院させられた。
 私は、目的は半ば達成したので、HRー2をたき火で
燃やした。
 そして、妻はとうとう病院内で自殺した。
583スピノザ ◆ehSfEQPchg :2012/07/30(月) 10:24:34.87 ID:dfDgQmxf
 気落ちした娘のテイランに、私は子猫をプレゼントした。
 それにしても、計画がうまくいったにも関わらず、私は、
なんだか鬱々として気が晴れなかった。鬱病になって
しまったのだ
 アントウカクから電話が来た。
 私を強請るつもりだと思い、その電話は無視した。
 と、真夜中、騒がしい音で目が覚めた。
 子猫が鳴いている声だった。
 娘の部屋に行ってみると、テイランは子猫の毛を抜いて
いるのだった。子猫は死にかけていた。
 と、またもやアントウカクから電話が来た。
 それに出てみると、アントウカクはいうのだった。
「あの薬から、正体不明のウィルスが発見された。
鬱病は、そのウィルスのせいで伝染するんだ」と。
 私は、その電話を聞きながら、むずむずするかゆみに
耐えかねて、脛の毛を休みなくむしっているのだった。