「ミステリマガジン」2012年2月号、掲載の、「計算機」です。
AHMM(アルフレッド・ヒッチコックミステリマガジン)
2011年5月号に掲載され、それから転載されたものです。
計算機 ミトラン・ソマスンドゥルム
「僕は計算機なんだ」
アンソニーは、アティヤに告げた。アティヤは、タイの古典的な
美人だ。
アンソニーは、六桁の立方根などを、たちどころに計算して見せる。
しかし、アンソニーには、アティヤに対する下心はなかった。
アンソニーは、失業中だが、バンコクで開かれる国際暗算競技大会
に出場するため、タイに来ている。
アンソニーは
「とても痩せていて、肌が真っ白で、途方にくれている」
人間である。(キャラの設定!)。
アティヤは、翌日もアンソニーと会う約束をしたのに、アンソニーは
現れなかった。
独特の勘で、アンソニーに不吉なことが起こったと感じたアティヤは、
私立探偵である、私に捜索を依頼する。
わたしは、暗算競技大会の会場に足を運び、ステージ上で行われる
競技を見物する。
ステージの片隅に、主催者のテーブルがあったので、競技が一段落
した後、そこに行ってテーブルに着いている女性にアンソニーに
ついて尋ねる。
その後、競技の出場者に、アンソニーについて尋ねる。
その男の話によると、暗算競技出場者は、ほとんどみんな顔見知り
らしい。その話によると、アンソニーは、仕事中でも暗算を始めてしまい、
仕事が長続きしないのだそうだ。
その男は、今対戦したばかりの勝者、ハインリッヒの方が、脈がある
と教えてくれる。
ハインリッヒは、
「凄い天才と言うわけじゃないが、競うコツを知っている」
男だという話だ。(一筆の人間描写。キャラが立つ)。
そして、ハインリッヒは、その競うコツを教える、モチベーション・
スピーカーとして、講演などを行って生計を立てている。
ハインリッヒは、アンソニーの飛行機代や参加費を援助している。
わたしは、大会主催者の一人、マリニーから、アンソニーの宿泊先を
聞き出す。宿泊先には、国王の写真が飾ってある。
宿泊先の安宿に行ってみると、既に二日前に引き払った後だった。
三月≠フ燃えるような太陽が、私のオフィスを照らしていた。
(ここで、やっと主人公のわたしが、ヴィジャイという名前である
ことが分かります)。
そこに馴染みの警察から電話があり、このアンソニーの件にあまり
釘を突っ込むな、と警告される。
「忘れるなよ。ここはタイだ。実力者と悶着を起こすのはまずい」
翌朝、もう一度会場に足を運び、マリニーに、
「外国人が厄介な目に遭っている」
という切り札を使うことにした。
そこで、わたしは、アンソニーのスポンサーもやっていた
ハインリッヒの滞在先を聞き出す。
ハインリッヒは高級ホテルに泊まっていた。
ハインリッヒは、
「あの男(アンソニー)は、偉大な計算者になれる。ナカムラのような」
と言う。
>>534 アメリカは英国ドラマをベースにしきりにリメイクするのがここ数年の流行りですが、
どうもハリウッド人種は英国のセンスを田舎もの扱いして「俺たちが作り直してやる」といじくり倒して
換骨奪胎な「違う」ものを作り出してしまう傾向が…
ウリにはどうしても、素材に対する敬意の有無が成功と失敗を分けてるように思われてなりません。
ただのオマンマのネタとしてイケるか否かで作り替えた時、捨ててはいけない部分や触ってはいけない部分に平気で
手を出せるような。
その辺は隣国にも通じるというか、わかってない上に作り替えの力もないんだから、
こっちみんな触るな近づくなと。
541 :
スピノザ ◆ehSfEQPchg :2012/07/29(日) 11:35:15.15 ID:wQzY33zw
その後、わたしはまた会場に行き、ハインリッヒの後を尾け車の
ナンバーをてのひらに控える。(ディテール)。
知り合いの警官に調べてもらうと、その車の持ち主は、九九九番
という住所を持っていた。
タイでは、九が重なった数字は縁起が良く、高額で取引される。
この番地は、相手が大物である印だ。
その九九九番に行ってみた。凄い豪邸であり、庭には屋根付きの
駐車場があるのに、高級車が五台路駐していた。
そこで、わたしは傍らにいたオートバイタクシーの運転手に
情報を聞き出しながら推理する。
庭に屋根付きの駐車場があるのに、路駐車が多いのは、多分ここが
カジノなのだろうと推理する。カジノは、違法だが、そういう法の目を
すり抜けたカジノはいっぱいあるのだ。
542 :
スピノザ ◆ehSfEQPchg :2012/07/29(日) 11:43:44.94 ID:wQzY33zw
カジノのゲームでも、ブラックジャックは、ある程度記憶力と、
確率の計算力があれば勝てる、ヴィジャイは思う。
そして、突然、アンソニーがいる場所が閃いた。
アンソニーは、おそらくカジノでブラックジャックのカードの
確率をカウントしているのだと思った。
結局、アンソニーは、ハインリッヒによって利用され、ハインリッヒが
カジノで一稼ぎする道具として使われたのだ。
アンソニーは、競技会場に隣接するショッピングモールにいるはずだ。
人海戦術でアンソニーを捜す。
結局、アティヤが見つけ出し、カジノで勝ち過ぎたアンソニーが
狙われている、というのも考え過ぎだったことが分かって、わたしは
マリニーの電話番号を入手して、大団円となる。