501 :
スピノザ ◆ehSfEQPchg :
さて、それでは、今日の分のうpを始めます。
天の定めた縁
黄世鳶(ファン・セヨン)
あらすじ
チヨン(女)は氷で冷やした酒を飲みながら、
気にかかってしょうがない夫のパソコンを開く。
割ったパスワードを入力して、夫の小説を読む。
(作中作)
ヘスクは、夫のご飯の支度は忘れても、愛犬の
メリーの世話は忘れなかった。彼女は、人生の価値は、
ネックレス、イヤリング、高い服と、くだらない
連続テレビドラマ以外にはないと思っていた。
夫のヨンミンは、コーヒーカップを探すのにも、ガラクタ
の山をほじくり返さなければならなかった。
502 :
スピノザ ◆ehSfEQPchg :2012/07/28(土) 10:16:57.89 ID:BXsL5QWf
(夫の)ヨンミンが帰ってくると、花壇の上に尖った
針のたくさん付いた鉄の塊がおいてあった。また、
妻のヘスクが、芸術作品だとだまされて買い込んだのだ。
ヨンミンは、こういう妻の浪費癖も許せなかったが、
何と言ってもたった五歳の一人っ子のサンヨンを、
買い物に出させて交通事故で死なせたことが許せ
なかった。
いやなことがあると、ヨンミンは隣の未亡人、カン
夫人を思って心を慰めた。本当に、ヘスクとカン夫人は、
何から何まで正反対だった。
なのに、人々は、ヨンミンとヘスク夫婦を、天の定
めた縁で結ばれたお似合いの夫婦だというのだった。
ヘスクが「音もなく消えて」くれたら、一億ウォンの
保険金も手に入る。「故郷に帰り、釣りでもしながら
(中略)自然に隣のカン夫人に会うこともできるだろう」
###ヨンミンが、妻を優雅に殺す方法を考えること。
(作中作の)小説はここで終わっている。
503 :
スピノザ ◆ehSfEQPchg :2012/07/28(土) 10:30:57.90 ID:BXsL5QWf
チヨンは、夫の書斎をすべて元通りにして、またテレ
ビを見ようとしたが、内容が頭に入ってこない。
夫の帰ってくる音がした。夫は、隣のパク夫人と、
長々と立ち話をしている。
夫は、いきなりテチョンに旅行に行くと言い出す。
作家の夫は、今までも取材として気ままにふらつく
ことがあったのだ。
チヨンは、それまでゴミ屋敷のように散らかっていた
家の中を掃除し、さらにガスレンジが爆発するように
仕掛けられてはいないか、等々のことを点検する。
次の夫が出かける。電車で行くつもりにさせた。
実は、チヨンは作中作のヘスクのように、一人息子の
ヨンソクを使いに出して交通事故死させていた。
以来、夫婦関係はぎくしゃくしていた。
チヨンは、テレビをザッピングしては、ベランダに
行って受信状態を良くするためにアンテナの向きを
変えて一日を過ごしたものだ。
504 :
スピノザ ◆ehSfEQPchg :2012/07/28(土) 10:31:29.55 ID:BXsL5QWf
夫がいない間がチャンスだ。
チヨンは、車庫に行き、車の下に潜り込んで、
ブレーキを急作動させると破裂するように細工した。
しばらくして、夫が交通事故を起こし、即死した
という連絡を受ける。ブレーキが壊れていたのだ。
今は、保険金で楽な暮らしをし、テレビも最新型に
買い換えよう、などという思いに耽る。
テレビを見ていると、画面が乱れてドラマの決定的な
場面を見逃してしまう。
二階に行き、アンテナをベランダにうつぶせて点検する。
「お宅の御主人も、アンテナを修理していましたよ」
隣のおじさんが言う。
ハッとしたときには、もう遅かった。
夫が細工した木の手すりは、壊れて、チヨンはハリ
ネズミのような鉄の塊に落ち、全身を刺されて死んで
いくのだった。