16 :
スピノザ ◆ehSfEQPchg :
おはようございます。今日も、マターリと韓国推理小説を挙げます。アンソロジー第二作。この辺りで、一つヒットが欲しいところですが、さてどうなりますことやら。
「訪問者」 金楠(キム ナム)
あらすじ
秀珍(スジン)は、タンノイのスピーカーで、イ・ムジチの演奏するヴィヴァルディの四季を聞いている。〈夏〉だ。
そこにインターフォンが鳴る。家政婦の美淑(ミスク)が、インターフォンに出る。何を聞いても、相手は「僕だ」としか言わない。
仕方なくスジンが出てみると、相手は余裕綽々という声で笑う。
スジンは、ミスクに犬を放すように言う。
17 :
スピノザ ◆ehSfEQPchg :2012/07/11(水) 11:43:32.04 ID:/zfo5rSF
曲は、〈秋〉になった。
それでも男は去らない。またインターフォンが鳴る。
出てみると、その男はスジンの夫だと名乗る。しかし、スジンに心当たりはない。
スジンが庭に出てみると、放った犬は尻尾を振っている。
スジンは、警察に通報する。
しかし、謎の男は、警官の姿を見ても動揺しない。
警官から、夫は今どこにいるのかと問われ、スジンは二十日前に出て行ったきりそのままだと答える。
実は、スジンの夫は在米同胞なのだ。朝鮮戦争で孤児になり、アメリカに渡ったのだった。
スジンと夫は、アメリカから帰ってくる飛行機の中で偶然知り合い、意気投合して、電撃結婚したのだ。
18 :
スピノザ ◆ehSfEQPchg :2012/07/11(水) 11:44:29.59 ID:/zfo5rSF
結婚式の写真もなく、住民登録からも、何も情報がなかった。
男の名前は、ノ・サンウクというのだ。
謎の男は、ミスクに寝室から自分の旅券を持ってくるように言う。
警官が、旅券を確かめると、確かにその男はスジンの夫で間違いなさそうだ。
しかし、スジンは、余りにも性急に結婚したため、性格の不一致にすぐ気がつき、夫は出て行ったのだと主張する。この男は、夫とは別人だと。
スジンは、本物の夫が、アコーディオンが得意で、水泳の選手で、自転車に乗れて、囲碁が三級の腕前であると告げる。
男は、その全ての試験にパスする。
警官は、帰って行く。
19 :
スピノザ ◆ehSfEQPchg :2012/07/11(水) 12:37:07.29 ID:/zfo5rSF
次の日、男はいきなりチョンセの半分、五千万ウォンを寄こせば出ていくという。やはり、男は本物の夫ではなかったのだ。
男が、オーディオセットを見ていると、スジンの悲鳴が聞こえる。地下室からだ。
男が下りてみると、スジンは「足を挫いた」と言って倒れている。
男が近寄ってみると、たいしたことはなさそうだ。
男は、その辺に積み重ねてあるセメントの袋を見ながら、「で、ノ・サンウクとか言う在米同胞はどこにやった」と尋ねる。
そして、男は、「あっ」と叫び声を上げる。
「黒猫だな」と男は言う。
スジンは、セメントで、夫の死体を壁に塗り込めたのだ。
男は、驚愕に目を開く。スジンが猟銃を構えているのだ。
轟音が、地下室に鳴り響く。
しかし、男は平気な顔をして立っている。
猟銃の弾丸を、男は事前に空砲にすり替えておいたのだ。
男は、ゆっくりと手錠を取り出し、スジンの手首にかける。