北朝鮮の長距離弾道ミサイル「テポドン2号」の発射が今日以降に繰り延べされた。全世界が注視する発射だから、金正日将軍は
誰よりも緊張に震えているのだろう。もし、日本のミサイル破壊命令でテポドン2号が迎撃されでもすれば、北の情勢は劇的に変わる
可能性を秘めている。
9日は最高人民会議が開かれ、15日は先代の金日成の誕生日だから、発射に成功すれば国威発揚の機会だが、撃墜されれば
メンツ丸つぶれだ。撃てども逆襲を食らっては、その優劣は明らかだ。発射情報のミスに臆(おく)することはない。
迎撃されれば、北の“首領”としての地位が揺らぎ、伝えられる後継者指名の思惑だって分からなくなる。核も弾道ミサイル開発も、
将軍様の求心力の源泉であり、威信をかけたプロジェクトである。人々の飢えなど微塵(みじん)も考えず、核とミサイルにカネを
つぎ込んできた。
だからこそ、日本による迎撃のそぶりには、さすがの将軍様も大あわてだった。朝鮮通信がわざわざ重大報道と銘打ち、「断固たる
報復攻撃を加える」だの「火の雷を浴びせる」だのと最大限の脅しを繰り返した。あれはむしろ、迎撃回避の懇願に違いない。
2006年のように発射から40秒で燃え尽きてしまえば技術改良の失敗であり、これも将軍様の権威にかかわる。まして、米国の
オバマ新政権を挑発して対価を稼ごうとした思惑がはずれる。実験に立ち会っているというイランへのミサイル技術供与も危うい。
北朝鮮は93年に短距離のノドンを、98年にはテポドン1号を発射して飛距離を伸ばしてきた。北はそれ以来、一貫して米国本土に
達するミサイルの研究開発と、核弾頭の搭載を目指してきた。
過去に、北が日本列島上空にミサイルを通過させても、日本海に7発連射しても、日米の報復を受けなかったから今回も遠慮なく
やろうとした。北にとっての発射実験は、実入りよりリスクの方が大きくなければやめない。だが、麻生太郎首相が意外や「破壊命令」を
出したから将軍様は仰天した。
(続く)