爺さんの体験談代筆スレッド 巻の二

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226マンセー名無しさん
 
大叔父は若いときに招集されて、中国大陸で戦闘に明け暮れた。
敗戦後、復員し、思い出したように当時のことを話した。

そのひとつ:
 
功を焦って、無謀な作戦を企てる上官がいると、全滅を恐れる部下が密かに始末した。
そこはよくしたもので、たいていどこの部隊本部にもベテランの事務担当がいて、
てなれたやりかたで、「名誉の戦死」 にしたてて、内地へ報告した。
 
「どこそこの部隊で上官が戦死」 といううわさは、展開する各地の部隊にただちに伝わり、
「さては、やられたな」 と兵士同士でささやきあうものだった。
 
軍隊の裏のしきたりをよく知った上官は、無謀な戦闘は極力避けた。
強い敵には、遭遇せぬよう迂回し、
もっぱら、弱い敵だけを襲わせ、後方に戦果を誇大報告した。
 
日中戦争の戦史で 「一部隊全滅(玉砕)」 という事例が少ないのはこういう事情による。
227高山兵長の 「名誉の戦死」:2008/08/02(土) 20:10:33 ID:LEQ2d0yb
 
1945年 (昭和20年) 8月9日
 
壕に近づくと、突然、一人の兵士に銃を突きつけられ、「止まれ」 と言われたが、僕は焦っていたので
「伝令! 高山兵長殿」 と叫び通り過ぎようとすると、その兵士は血相を変え 「待て、撃つぞ」 と言いながら、銃を構えたので、
僕はびっくりして馬を止めた。
 
僕に銃を向けた兵士が、しきりに後ろを気にするので、その方向を窺うと,十メートルほど前方に、五、六人の兵士に囲まれ、
顔面を蒼白にした高山兵長の顔がちらっと見えた。
間もなく 「うっ」 という、呻きとも悲鳴ともつかぬ声が聞こえ、一発の銃声が聞こえたかと思うと 「高山班長戦死」 と叫ぶ声が聞こえた。
  
僕に銃を突きつけていた兵士は 「やったか」 と叫びながら、その場に駆け寄って行ったので、僕も一緒に行ってみると、
高山兵長の胸からおびただしい血が流れていた。
腹からも赤黒いペンキを流したような血糊がぬらぬらと流れ出ており、兵長は息果てていた。
僕も彼にはずいぶんしごかれていたが、あまりのことに動転して伝令の任務を忘れてしまい、
伝令用鞄を高山兵長のかたわらに投げ捨て、その場を去った。
 
あの兵士たちは兵長の日頃の酷い制裁やしごきに復讐したのだろうか。
それとも彼の無理な命令を聞いて、むざむざ死にたくはないと話し合って、先手を打ったのだろうか。
一人の兵士が高山兵長の屍に向かって 「やい、弾はな、前から飛んでくるとはかぎらねえぞっ」 と罵声を浴びせていたが、
この言葉が妙に僕の脳裡に刻み込まれ、味方に殺されても 「名誉の戦死か」 と思いながら馬を飛ばして帰った。
 
 山口盈文著 「僕は八路軍の少年兵だった、第一章 満蒙開拓少年義勇軍」 光文社NF文庫 (2006) より 
228マンセー名無しさん:2008/08/03(日) 02:06:07 ID:3uZ4v9RC
 
おらの田舎では、集落の寄り合いの後、酒が出ると、日中戦争で出征した爺さまたちがこもごも戦(いくさ)の手柄を語り、
酔いがまわると、「戦地では村人からいかにしてブタやニワトリを略奪したか、いかにして支那女を強姦したか」、
身振り手振りで、自慢そうに若い衆に語って聞かせるものだった。