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だけど、ポーラはひるむ事無く答えたわ。
「今まで沢山の家から裏切られてきたわ。私がどんなに頑張ってもね。
その点アメリー家がロシアノビッチを破産させてくれたことは間違いの無い事実よ」
まあこの子ったら。ここは一つ思い出させてあげないとね。
大喧嘩で家を喪った時、この子の家族の面倒見てあげたのはウチですもの。
「ポーラ、貴女は他にも大事な人を忘れてるんじゃなくて?」
あら、ポーラったら急に冷たい目になったわ。
「忘れるわけ無いわ。
安全なところで苦労せずに済んでる貴女を、どれだけ羨ましく思ったか」
「まあ!失礼じゃなくて?我が家もゲルマッハ相手に戦ったのよ」
「それはゲルマッハの家がロシアノビッチ家との喧嘩でボロボロになった後じゃないの!
それ以前の貴女の家の弱腰が、あのときのゲルマッハ家をつけ上がらせたのよ!」
嫌なこと言うわね。こんな話は聞いてられないわ!
私は一人その場を離れながら考えた。
確かにポーラは気の毒ね。家の立地が悪いと夜も落ち着いて寝られやしない。
ピアノの上手いお嬢さんでも両隣がいつ襲ってくるか分からないんですもの。
いくら家柄が良くて教養があっても、隣人に襲われ続けるんじゃ意味が無いわよ。
その点、私こそ勝ち組のお嬢様と言われるにふさわしいわ!
嫌われたって妬まれたって、絶対代わりたくないわ。
ゲルマッハも含め、襲われやすい家に生まれるなんて、負け組みの条件だわ。
だからこそいい土地は取れるときに取っておくものなのよ。
勝ち組でさえいれば、負け組みの財産を盗るチャンスは必ず巡ってくるし、
安全なところで高い服着てたら、そのうち淑女や紳士の家って評判だって付いてくるわ。
ましてや同情や理想なんて小銭の価値もない。
「そうよ、ウィナーテイクオール!慈悲も友情も無いわ!
取られ損の負け組みなんか、言わせておけばいいのよ!」
知らないうちに大きな声で独り言を言ってしまったエリザベスちゃんが
一人帰っていきました。