連続ドラマ小説「ニホンちゃん」34クール目

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203黄 色 い リ ボ ン  ◆JBaU1YC3sE
   「 家ごとトコロテン 」

 あら、あそこにいるのはゲルマッハだわ。
 珍しくぼうっとして、何見てるのかしら?
 あらポーラの家を見てるのね。
 懐かしそうな目をして、ひょっとして昔のことかしら。
 ポーラの家の一部は昔ゲルマッハの物だったんですものね。
 あら、こんな時にポーラ本人が来ちゃったわ。
「何見てるのよゲルマッハ」
「いや、懐かしいなって、つい」
 執り成してあげようと思って近づいたけど、言葉につまったわ。
 あの喧嘩を口実に、私やユーロ班はずっとゲルマッハを押さえてきたんですもの。
 その点ポーラは容赦無しだわ。
「元はあんたの家だったといいたいの?」
「他意はないけど、それは事実だろ。
 その引き換えに、君の家の一部もロシアノビッチに取り上げられたじゃないか。
 ロシアノビッチが君の家を僕のほうに押し出すことで縄張りを広げたんだ。
 奴こそ僕たちにとって略奪者じゃないか」
「だったらあの時喧嘩を始めなければよかったでしょ!
 昔のことでどれだけ嫌われてるかわからないの?」
「そんなこと、僕が一番分かってるよ!今までずっとそういわれてきたんだから!」
 その場は静まり返ったわ。
 気が付くと、あのゲルマッハ君の目に光るものが。
 確かに傷つけすぎたかもしれないわね、ゲルマッハのこと。
 ゲルマッハが私に気づくと、彼はいつになく感情的に続けたわ。
「そうやって僕の家のことを罵ってるけど、今の有り様は何だよ。
 結局はユーロ班全体が仲良く地盤沈下して、
 新参者に地球町を仕切られてるんじゃないか」
 さすがゲルマッハね。辛い時でも鋭いことを言うわ。