核を捨てれば「4兆円基金」を創設という李明博「アメとムチ戦略」は奏功するか=黒田勝弘
2008年4月17日 SAPIO
韓国の李明博・新政権が当初、解体・廃止を決定していた対北朝鮮政策担当官庁の統一省が、
結局は復活した。統一省廃止は新政権の新しさの"目玉政策"とみられていた。
それが頓挫してしまったのだ。対北支援一辺倒で親北・宥和政策を主導してきた統一省が、
廃止されずに復活したのはなぜか。
これは李明博政権の対北政策の今後を占う意味で象徴的だ。その話からはじめたい。
統一省はこの10年、金大中・盧武鉉政権下で対北宥和策の窓口となり、ひたすら北朝鮮に支援を
続けてきた。その結果、北朝鮮の民衆の人権や自由、民主主義はそっちのけで、
金正日独裁政権のご機嫌うかがいばかりやっていると保守派などから批判されていた。
とくに盧武鉉政権の最後の統一相だった李在禎氏など、親北市民運動の出身で「北朝鮮を刺激しない」
ことにだけ気を遣ってきた。北朝鮮の独裁状況は一切、無視したまま「北を温かい目で見る」のが
統一省の役目になっていた。北朝鮮に何をされ何を言われても、黙って「ハイハイ」と言ってきた。
「統一省ではなく" 対北友好省"ではないか」と皮肉られてきた。
しかしその10年の結果はどうだったか。残ったのは北朝鮮の核兵器開発であり、経済疲弊の持続と
独裁強化である。あれだけ支援、協力しても南北離散家族の相互訪問や手紙交換はいまだ実現せず、
拉致韓国人や戦争捕虜の送還も実現しなかった。
そのあげく平壌で開催予定のワールドカップ・サッカー(2010年南ア)アジア地区予選の
南北対決試合で、北朝鮮は韓国の国旗・国歌使用を拒否した。
これは明らかに国際サッカー連盟(FIFA)の規定違反だ。
韓国が「太陽政策」であれだけ温かく配慮し続けてきても、北朝鮮は韓国には一切、配慮しないのだ。
これは韓国にとっては「国の品格」を傷つけられたに等しい。
この一件だけでも統一省は廃止に値するだろう。