>>291 日本刀歌
北宋・歐陽脩
昆夷道遠不復通,
世傳切玉誰能窮。
寶刀近出日本國,
越賈得之滄海東。
魚皮裝貼香木鞘,
黄白間雜鍮與銅。
百金傳入好事手,
佩服可以禳妖凶。
日本刀歌
昆夷 道 遠ければ 復た通ぜず,
世に傳ふ 切玉 誰か能く 窮めんや。
寶刀 近く 日本國に 出で,
越賈 之(これ)を 得(う) 滄海の東に。
魚皮 裝ひ貼る 香木の鞘,
黄白 間に雜(まず)る 鍮 と 銅。
百金にて 傳へ入る 好事の手に,
佩服せば 以って 妖凶を 禳(はら)ふ 可(べ)し。
意訳
はるか西方に、名刀を産出する国があると聞くが、
その道のりはあまりに遠く、一度行けば戻ってはこられまい。
その刀は、宝玉すら斬ると聞くが、誰がそれを手に入れられるだろう。
幸いなことに、近頃、宝剣が、日本という国より見つかり、
福建省の商人が、青い海の東方にある日本から、その名刀を手に入れた。
その鞘は、よい香りのする香木に鮫の皮が張られたもので、
その拵えは、金銀に、真鍮や銅がちりばめられ、まことに華麗なものだった。
好事家は、大金を積み上げてその刀を手に入れた。
その刀を身に帯びたのならば、たちまち、さまざまな凶事を打ち払うという。