743 :
周平:
話を戻してすいませんが、
>>589から
>>667 商倭さんと気管支炎さんははじめまして。でここら辺りの混乱は明らかに「在日問題」における
混乱に特有なものだと思いますので一言。
要するに途中で言われているようにnationとethnicityの混同ということが一番の問題だと思いま
す。で前者をあえて「国民」後者を「民族」と称しても、実はnationを民族ということも多いし、
というよりもそもそも「民族」という言葉自体がnationの訳語として作られたという歴史的事情
がありますからこの混同もやむを得ないと。
でこれも誰かが書いているように、国籍の保持、国家(nation-state)と結びついたものとして
nation、文化、習慣そして同族という意識を持つ集団としてethnicityという区別をつけるべきで
しょう。すると当然これも誰かが書いているように、「朝鮮」というethnicityを保持しながら、
「日本国籍保持者」という意味での「日本人」というnationに属するということは本来可能という
か、世界的に見ればそれが普通のはずです(アメリカの黒人、中国やドイツの「多民族」は全て
これです)。
で端的に言ってethnicityによる「差別」は認められないけれども、nationによる「区別」は当然、
「日本人」というnationに伴う権利(参政権、公務員)を欲しければ、日本という国家のnationa-
lityを取れ−「帰化しろ」という話でしょう。逆にethnicityについてはこれを保持する権利がある。
「『民族性』を保持するための『民族』教育の保証」というのが正当であるのはethnicityに関し
てのみです(従って朝鮮学校を弾圧してもそれは日本国として正当な国権の行使です)。
744 :
周平:04/10/26 05:15:57 ID:bkUlb2zW
>>743 ところがここが東アジアの特殊性(ただしそれゆえ逆に東アジアの現在の相対的安定をもたらした
と私は思いますが)としてnationとethnicityがほぼ同一であるという事情があります。それゆえ
ethnic identity の一部としてnationalityがあるというのはこれは在日だけではなく「日本」そ
れ自体にもあります。要するに「日本人」という名称の曖昧さで、ある場合は「日本国籍保持者」
という意味で使い、ある場合は「ヤマトンチュー」というethnicityを表す場合もある。これが在日
の場合は「帰化しろ」というのが「朝鮮」というethnicityを捨てろと聞こえてそれゆえ「差別だ」
ということになるのだと思います。
ただそこははっきりと区別するべきだし、少なくとも制度上日本国籍保持が「ヤマトンチュー」と
いうethnicityへの「同化」を意味するのでない以上、「韓国(朝鮮)系日本人」をになるべきだ
というのは差別でも何でもない当然のことでしょう。
745 :
周平:04/10/26 05:16:43 ID:bkUlb2zW
>>744 で問題はethnicityですね。nationに関しては血統などの何か客観的な本質があるのでなくむしろ
「−人」という意識の上での問題だということは大体認められると思いますが、文化、習慣それに
血統も実際関係しているらしいethnicityについては、存外意識などによる主観主義ではなく、ある
種の客観主義があてはまるように思えるかもしれません。
しかし結論から言えばethnicityもまた意識による、即ち自分が何者か、どのような集団に属してい
るかという意識−アイデンティティの問題であると言ってよいと思います。というのもethnicity
それ自体が昔からあったものではなくnationとの対抗関係から「創られた」ものであると私は思う
からです。例えばアイヌや琉球といったethnicityは日本というnation-stateがのしかかってこなけ
れば意識されなかったでしょうし、移住民も移住国とのマジョリティ−nationとの差異の意識ゆえ
に結束して「同族」−ethnicityという意識が生じた。そしてその意識に「客観的な」根拠を与える
ために血統だとか歴史についての解釈だとかが生じた。
746 :
周平:04/10/26 05:17:40 ID:bkUlb2zW
>>745 実際「在日」とは戦後日本における大日本帝国の敗戦と半島における国民国家の創成という状況に
呼応した形で「創られた」ものであるというのは明らかでしょう。例えば半島の本土人と済州島人
とは原住地においては「同族」という意識が無かったのに戦後の日本では同じ「在日」であるとい
う意識が生じた。あるいは「強制連行」という「歴史」の共有もまたそれでしょう。そしてそれが
創られた状況から半島のナショナリズムとシンクロせざるをえなかったというのもある意味で必然
だったのかもしれません。
しかしそれは他方で半島のnationとの「想像上の紐帯」、遠隔地ナショナリズムが「在日」の本質
部分をなすことを意味するのであり、それゆえ論理的帰結としては「帰国」せねばならない一方で、
日本にいるから「在日」であるという根本的矛盾がつきまとうことになったわけです。まあそれを
一挙に解決しようとしたのが「想像上の祖国」、「民族自決を果たした真の祖国」北朝鮮への帰国
運動ですが、その結果があのざま。しかもそれをきちんと総括することができなかったし、今もし
ていないものだからますます何が何やら分からなくなっているというのが今の現状でしょう。
747 :
周平:04/10/26 05:30:07 ID:bkUlb2zW
>>746 でこの間から私が主張している「『在日』のアイデンティティの消滅」というのはこのethnicity
に関連した部分です。これについて外国からの「自発的」−という客観的事実を「意識」において
消そうとしたのが「強制連行の神話」ですが−移住民としての一般論に関しては532に述べた通り。
ただ話をややこしくするのが、「在日」の本質にある−だからこそ「『在』日」という名称を取っ
た−半島との紐帯、遠隔地ナショナリズムなのですね。で半島のアイデンティティが「反日」に
よっている以上、これ自体は本来どのようなnation-stateにおいてもそれがnation-stateである
限り永住を主張する集団に対して認められるものではない。それが一応存続したのは、一つは敗戦
によって「日本」がそもそもまともな「国家」でなかったこと、そして半島のナショナリズムが
「南北統一」を悲願とする限りにおいて、「反日性」が現れなかったこと(つまり南北の争いが
主たるものであり、日本は視野に入っていなかった)という状況ゆえにだったと思います。しかし
冷戦時代のアメリカの庇護下にあってこそ「国家」でなくても存続できた「日本」も普通の「国家」
にならざるをえなくなった。しかも半島も南北統一が無理となってオナニー的に反日が表層に浮か
び上がってきたという状況においては最早「『在』日」というモラトリアム状態を維持できなくなっ
たということは明らかでしょう。
748 :
周平:04/10/26 05:32:43 ID:bkUlb2zW
>>747 本来マジョリティとの差異を維持させる「差別」等が消えた状態、80年代初頭においてまさに日本
社会自体がマルチカルチュラリズム等「寛容」であった時に、半島との関係を整理して日本という
nationに属するethnicityとして自らのアイデンティティを再編成すべきであった。その場合は帰国
運動の総括、強制連行の神話の脱構築(を今になってようやく鄭大均氏がしましたが遅すぎました)
等により「韓国(朝鮮)系日本人」として国籍を取り、他方(朝鮮学校におけるようなnationalな
ものでない)ethnicな教育等によるethnicityの維持という方策を取れば、あるいは532で述べた一般
的状況を逃れてethnic identityを維持できたかもしれない。しかしそうしなかったし、今となって
結婚等を通しての「日本人」というethnicityへの「同化」がますますすすんでいる。今となってはもう
遅すぎます。まあ自業自得というしかないでしょう。