産経朝刊(2005/01/13)
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◆韓国民「?」 統一省「脱北者→セトミンに」
【ソウル=黒田勝弘】韓国政府の統一省が北朝鮮からの亡命者など
「脱北者」を新しく「セトミン」と言い換えることにしたと発表し、話題に
なっている。「脱北者」には政治的で差別的な感じがあるとする声を
受けたものだが、「セトミン」と聞いただけでは何のことかまったく分か
らない官製・新造語に多くの国民は首をかしげている。
「セトミン」とは、「新しい(セ)場所(ト)で希望を持って生きようとする人
(ミン=民)」という意味で、統一省が国立・国語研究院の協力を得て
定めた。言い換え案には「イヒャンミン(離郷民)」というのもあったが、
漢字語ではない純粋な韓国語をという声もあり、世論調査も踏まえて
「セトミン」になったという。
「脱北者」という言葉が政治的だというのは、北朝鮮に対する否定的な
見方が込められているという意味だが、「そこまで気を使わなくても」と
保守派などは政府の対北低姿勢をあらためて批判している。
また、「漢字語を排して純粋な韓国語を使おう」というのは近年、韓国
社会で目立つ一種の“言語ナショナリズム”で、ソウル地下鉄の駅名
などでも最近は漢字で書けない名前を意識的につける傾向がある。
しかし、これについても「ミン(民)は漢字語ではないか」と皮肉る向きがある。
一九五〇年代の朝鮮戦争前後など過去に北の体制を逃れて韓国に
やってきた人たちは「失郷民」とか「越南者」と呼ばれてきた。しかし、
最近の脱出者は「脱北者」といわれ、生活難民として急増していることも
あって「やっかい者」的に見られ、一部に「差別的」とする声もあった。