160 :
:
003/032] 33 - 参 - 本会議 - 18号
昭和34年12月23日
○松浦清一君 私は、社会クラブを代表いたしまして、韓国抑留漁船船員の早期帰還に
つきまして、岸総理、藤山外相並びに福田農相に対し、その所管事項について質問をい
たしたいと存じます。
昭和二十七年一月十八日に、韓国政府が海洋主権宣言を行ない、いわゆる李承晩ライ
ンを設定いたしまして以来、その李ライン付近の海上において、日本の漁船が時には銃
撃や追走を受けまして韓国艦艇に拿捕されるという、漁船の拿捕事件は、今日に至りま
するまでなお続いていることは御承知の通りであります。そうした漁船拿捕があるたび
ごとに、それら漁船の乗組員は、釜山の収容所に入れられ、長い間、困苦窮乏の抑留生
活を強制されていることも、これまた御承知のところであります。こうして今日までの
八年間に、すでに拿捕された漁船は百五十七隻に及び、抑留された乗組員の総数は三千
二百七十三名という多数に上っているのであります。そのためにこうむった業者の損害、
また船員の苦痛と、その家族の不安と困窮は、まことに見るに忍びないものがあるので
あります。毎年暮迫るころともなりますれば、この年の瀬をどうして乗りこえるか、氷
雪寒苦の抑留生活を余儀なくされておりまする夫や父を案じまして、借金をしてまで旅
費の工面をして上京して陳情をいたしております。この悲惨な現実を救い得る道がない
とすれば、これはわが国政治の貧困と申しましょうか、まことに残念な話であります。
161 :
:04/06/15 03:58 ID:RE2RuTLJ
現在、釜山の収容所にはまだ二百一名の船員が抑留されているのであります。最も長
い者は四年二カ月、すでに三年に近い者さえ非常に多数に上っているのであります。そ
の人たちの家族は、ことしもまた昨年と同じように苦しみ、同じ悩みを繰り返しており
ます。まことに同情にたえません。もとよりこの問題の解決につきましては、政府がい
いかげんな折衝をしているなどと決して思ってはおりません。しかし、これまで行なわ
れた政治折衝を見ておりますと、いつも韓国側にリードされ、ほんろうされているよう
にさえ見えるのであります。これは抑留船員の早期送還という、こちらには若干の弱み
かあり、韓国側はそこにつけ込んで無理難題をふっかけている。いわば韓国が抑留船員
を人質にいたしまして交渉を有利に解決しようとする非道な措置とも考えられるのであ
ります。このことの責任が全部政府の負うべきものではないといたしましても、このま
までは永久に漁船の拿捕や船員の抑留はなくなることはないのであります。たとえば、
韓国の法律に触れまして漁船が拿捕される。その法によって乗組員が裁判にかけられ、
罪を受ける。ここまではあるいは仕方がないと言えるかもしれません。しかしながら、
刑に値しなかった者、刑の終わった者は、直ちに送還するというのが国際法上の常識で
あることは申し上げるまでもないのであります。その常識をわきまえない韓国と交渉す
るのでありますから、外交当局の苦心も想像にかたくはありません。これまでの経過を
振り返って見ますと、これは尋常一様の手段では根本的な解決は得られないと思うので
あります。
162 :
:04/06/15 03:59 ID:RE2RuTLJ
最近の交渉経過を見ましても、日韓会談の無条件再開、釜山に抑留中の日本人漁船員
と大村収容所の不法入国韓国人の相互の送還、これを韓国側から申し入れて参ったのは
七月の末ごろであったのであります。そのころ問題になっていたことは、北鮮送還には
関係なしとの了解であり、相互送還は人道問題であるから、他の問題と切り離して早急
に実現したいという話し合いが行なわれた由であります。しかし、送還はいまだに実現
されていない。その後、正式な会談も行なわれてはおりません。韓国のこの申し入れば、
実は北鮮送還を阻止するための策謀であったとしか思われないのであります。十二月十
四日には日韓共同声明を出すとか、十二月二十四日には相互釈放をするとか、主として
韓国側のアドバルーンによって希望を持たせられてきたにすぎないのであります。今に
して考えてみますれば、韓国のいう相互釈放とは、実はまっかなうそで、その真のねら
いは単に北鮮の送還を食いとめようとする一種の策謀であり、国際信義を無視し、人道
を無視したインチキ外交といわなければなりません。その証拠には、いよいよ北鮮送還
が具体化すると、その態度は次第に強硬になり、会談の無条件再開を申し入れた柳泰夏
大使の同じその口から、「韓国駐日代表部は、一方的に在日朝鮮人を追放しようとする
日本政府の行動に対し、最も強硬な抗議をする」と申し、また李承晩大統領も、「日本
は韓国民の一致した怒りと抵抗に直面するであろう」と語っているのであります。私の
貧弱な調査の中では、日本はいまだかつて外国からかくのごとき激烈な言葉を聞いたこ
とはありません。
163 :
:04/06/15 04:00 ID:RE2RuTLJ
岸総理や藤山外相は、中ソがきらいでアメリカがお好きということで頭が一ぱいにな
って、その他のことは無感覚になっているのではないかとさえ思われるのであります。
(拍手)私は、このような李承晩大統領や柳大使の言動に対する怒りの言葉を、総理及
び外相の口から聞きたいのであります。そうして、それを抑留漁船員の留守家族に聞か
せてやりたいのであります。これが質問の第一であります。
第二にお伺いいたしたいことは、今日までの韓国の態度を集約して考えてみますると、
抑留漁船員を帰さないということは、第一に懸案の日韓交渉を有利にするため、第二に
は北鮮送還を妨害すること、そのことのために抑留漁船員を人質として帰さないのでは
ないかと思うのであります。今やそう断定する時期に達しているのではないかと思うの
であります。岸総理や藤山外相はいかにこの事態を判断しておられますか、率直にその
お考えをお答え願いたいと思います。
第三に、この断定の上に立つとすれば、もはやこの問題は、単に日韓相互間の談合だ
けでは解決できるとは考えられないのであります。今日までの日韓会談に対する韓国側
の態度から見て、もはや国際的な機関に訴え、国際的な世論の支持を得て、これを解決
するの足がかりとするほかに道はないと考えるのであります。本年の六月、ILOの総
会が開かれた際、日本の労働代表はこの問題を提起いたしまして、この総会に参加いた
した八十カ国の労働代表は、これはゆゆしい人道院の大問題なりとして、全員一致の同
意をもちまして、李承晩大統領にあて、「抑留漁船員を即時釈放すべし」との要請電報
を打ったのであります。この種の問題について外交権を持たない労働組合の諸君さえ、
時に触れ、折に触れてこのために努力をいたしておるのであります。国際赤十字、国連
等に提訴し、あるいはアメリカにあっせんを依頼するという方法もあるように思えるの
でありまするが、外相は、今後は直接日韓相互の会談などには応ずることをやめて、今
申し述べました方法に切りかえるべきだと思いますが、その御所見を承りたいと思います。
164 :
:04/06/15 04:02 ID:RE2RuTLJ
第四にお伺いいたしたいことは、大村収容所の収容者を即時送還する考えはないかと
いうことであります。釜山の抑留者も、大村の収容者も、北鮮送還と同様、ひとしく人
道問題と考えて、相互釈放などということでなく、一方的な送還でもよろしい、まず日
本が率先して人道的な措置をとり、これを世界の世論に訴え、それによって韓国側を反
省せしめる機縁とすべきだと思うのであります。もしできない理由があるならば、その
点を明らかにして世論に訴えれば、それはそれで日本の立場を理解せしめることができ
ると思うのであります。もしそのようなことが絶対にできないとすれば、その理由は何
かをお伺いいたしたいのであります。
最後に、韓国代表部を退去させるための強硬な措置をとる考えはないかということで
あります。韓国は日本代表の韓国駐在を認めていない。韓国代表部が東京――京城間を
往復して交渉に当たっております。その動きの中には、日韓交渉を円満にまとめようと
する善意は認められず、李承晩大統領の私兵として日本に派遣され、日本の外務官僚を
愚弄して快哉を叫んでいるにすぎない存在であります。従って、韓国代表部の存在はわ
が国にとって何の益するものもありません。わが同胞を人質にとり、その番をするのな
ら、あえて東京にいなくても、釜山におってもたくさんであります。とにかく強腰でや
ってもらいたいと思います。岸さんの山口県からは六十五人以上の漁船員が連れていか
れて抑留されております。今や朝鮮の釜山にも氷雪寒苦の年の瀬が迫りつつあります。
日本政府はこの際、乾坤一擲の手段を講じて、この人たちを妻や子供のもとに帰れるよ
うにすべきことを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕
165 :
:04/06/15 04:02 ID:RE2RuTLJ
166 :
:04/06/15 04:36 ID:4NbBtOS+
射殺等によって死亡した者が二十六名
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
[019/026] 23 - 衆 - 海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会- 3号
昭和30年12月12日
○高橋参考人 私は、本委員会におきましてお聞き取り願いたいと思いますことは、主
として抑留されている船員の取扱いはどのようになっているか、そしてまたこの留守家
族はどのような逼迫した状態に置かれているかということを申し述べたいと思います。
前文が長いため省略
それから、この抑留されたことによりまして、あるいはまた抑留のせつなにおきまし
て射殺等によって死亡した者が二十六名ございますが、それらの家族は一体どのような
待遇に置かれているかということを申し上げておきたいと思います。これは給与保険で
なく、船員保険法によって保障がされております。しかし、この船員保険法による遺族
年金というものは、とうてい一家を支えるような金額ではございません。平均におきま
して年間四万五千円程度の年金を受けている。こういうのが実情でございまして、それ
が生活の支えになってやっていけるというような状態にはなく、しかも船員の家族は就
職の機会等におきましても非常に不利な条件を持っておりまして、簡単に職を得られる
というようなことにはとうていなりませんので、つい非常に条件の悪い夜間飲食店に働
くとかダンサーになる、こういうふうに身を落すような状態に置かれているのであります。