☆TGVより新幹線 Part69☆

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選択2月号に京釜高速鉄道の「黒い軌道」の題でKTXについての記事がでてまつ。


喰い物にされた国家プロジェクト
ソウルー釜山を結ぶ京釜高速鉄道(KTX)が四月一日、運行を始める。フランスの
TGV方式による高速鉄道で、後期は五年遅れ、総事業費は当初計画五兆八千四百六十二億
ウォンの3.2倍(十八兆四千三百五十八億ウォン)にまで増えた。しかも大邱―釜山の110キロ
は新しい線路が間に合わず在来線の線路上を走る。このため時速00キロ、一時間半と
していた運行時間は一時間五十六分に延びた。大邱―釜山間新線路は2010年完成の予定
で着工以来十八年で全線が開通する。
中途半端な開通は四月十五日の総選挙を睨んでいるからだ。韓国は日本、フランス、ドイツ、
スペインに次ぎ世界五番目の高速鉄道保有国になったと喧伝するためだ。だが高速による車
両の揺れなど安全性に対する不安を抱えたまま見切り発車する。工期遅延による建設費増加
で今後赤字の垂れ流しは不可避だ。
建国以来最大の国策プロジェクト・京釜高速鉄道は政治家と利権屋の食い物にされた典型
である。高速鉄道建設は1980年代初めに構想された。手本は日本の新幹線だ。高速性、定
時性、安定性を誇る高速大容量輸送機関建設で新幹線のシステム導入が有力視された。8
9年、盧泰愚政権は事業費5兆8千億ウォン。98年竣工の京釜高速鉄道計画を発表、90年に
早々とルートを確定、92年6月着工した。着工を急いだ裏には同年12月の大統領選挙を前に
した政府与党の政治的思惑があった。
181 :04/02/05 22:23 ID:+jCH1rQK
大統領夫人が露骨に金を要求
高速鉄道の段取りはまず走行車両の使用を決め、それを支える軌道構造、基礎設計の
順で進める。韓国ではこれがあべこべになった。焦点の車両システムは94年の国際入札
で21億ドルを提示したフランスTGV方式に決まった。日本とドイツICEが受注合戦に加わっ
たが、苦杯を喫した。
勝負を決めたのは技術や価格の優劣ではない。政・官界を抱き込んだフランスのロビイ工
作だ。フランスは元ミス・コリアで、パリでレストランを営んでいた女性実業家をロビイストに
起用、盧泰愚政権に接近した。彼女は大統領夫人と女学校の同級生。そのツテで政権中枢
に食い込んだ。後日このロビイストは大統領夫人から露骨にカネを要求されたと手記でバク
ロした。
フランス政府も側面援護した。フランスは19世紀、江華島を砲撃、略奪した李朝王家の古文
書、奎章閣図書の返還を約束した。マスコミはフランスに同調して日本よりもヨーロッパの技
術を導入すべきだと主張した。韓国政府は日本勢に全技術のライセンスの無償供与、それに
より製造した車両輸出の自由、輸出で問題が発生した場合の補償、建設費の超低金利融資
など難題を吹っかけた。
日本勢は結局手を引いた。以後ごたごた続きの成り行きを見れば、日本勢が落札しなかった
のは幸いだったとの意見もある。日本勢が落札しても、韓国側事情による工事遅延、事業費
高騰は免れなかった。その場合すべての責任を日本勢に押し付けた公算もなくはない。一方
、フランス政府は古文書返還の約束をのらりくらり引き延ばして、いまだに履行していない。
182 :04/02/05 22:24 ID:+jCH1rQK
京釜高速鉄道建設はスタートからつまずいた。相次ぐ設計ミス、ルートの見直し、
不良施工続発で着工後の4年間では工程の10%しか進まなかった。動力集中型
TGVの機関車重量は17トン、動力分散型の新幹線(11トン)より重い。路盤設計の
修正は不可避だ。ルート選定の際の実測を怠り大ざっぱに決めたため、路線の70%
がトンネルと橋梁になった。
大田、大邱は地下駅を建設したが、住民の反対で設計は二転三転した。古都慶州を
通過するルートは文化財保護論者の横槍で難航、釜山近郊のトンネルは仏教寺院の
抗議で工事が中断するなど、いたるところでトラブルが起きた。施工業者の3割はトンネ
ル、橋梁の施工経験がない。韓国高速鉄道建設公団が施工実績より請負高基準で業者
を選定したせいだ。技術未熟と経験不足で施工欠陥が70%にも達した。
後期の遅れで工費はかさむばかりだった。工事監理は4億ドルの契約で米ベクテル、仏
SYSTR、独DECの3社に任せた。監理三社の意見は常に対立、サインを拒否する例も頻
発した。施工欠陥を見越して責任を負う考えがない旨を間接的に表明したものだ。政府は
TGVシステムを決めた後、工期を3年繰り延べ、01年竣工、事業費も10兆7千億ウォンと計
画を修正した。
183 :04/02/05 22:25 ID:+jCH1rQK
97年経済危機が韓国を強打した。金大中政権は98年、高速鉄道建設計画を
再修正した。内容は全線同時開通に代わって段階的開通に変更、第一期工
事(ソウル−大邱)は03年、第二期工事(大邱−釜山)は10年完成、二期工事完
成まで大邱−釜山間は在来線路利用というものだ。さらに事業費は18兆4358億
ウォンに引き上げられた。00年にはTGVメーカー・仏アルストム社のエージェント
の脱税摘発がきっかけとなって、高速鉄道をめぐるスキャンダルが明るみに出た。
捜査によってTGVシステム決定にからんだ政界へのバラマキが次々と浮上した。
だが同じ穴のムジナ、政・官・建設業界はぐるになってもみ消した。とどのつまり事
件はうやむやにされ、尻切れトンボで終わった。
しかもTGV型車両に欠陥が見つかった。走行テストでトンネルに侵入するさい空圧に
よるショックで車両の一部に亀裂が生じ、大きく振動する。TGVは平野が多い欧州向
けに開発された。トンネル続きで台風多発の韓国に合わない。韓国はフランスと改善
交渉したがラチがあかない。頭を抱えた政府は地理的条件が似た日本に新幹線の安
全技術の供与と協力を要請した。日本側は「TGVと新幹線では基本的な考え方が異な
る。日本の安全技術を韓国に持ち込んでも効果は疑問」と消極的だ。国際入札で日
本をはねながら支援を要請するのは虫がよすぎるとの思いだ。
184 :04/02/05 22:26 ID:+jCH1rQK
30年たっても黒字は望めず
京釜高速鉄道は安全性に問題を抱えたまま開業する。しかも経営面でも懸念
が大きい。総事業費の40%は高速鉄道公団が民間金融機関から借り入れた。
事業費が3倍にもかさんだ現状では高速鉄道の黒字化は前途遼遠だ。鉄道労
組は高速鉄道債務を政府が公団に転嫁するのに反対して昨年ストを決行した。
これが開業後時限爆弾になる。東海道新幹線は64年の開業後3年で黒字にな
り民営化後もJR各社の有力な収益源だ。京釜高速鉄道は30年たっても黒字は
見込めない。
台湾高速鉄道も来年10月開業を目指し工事が進行中だ。総事業費4千6百億元
(約1兆6千億円)、工期五年で台北―高尾(345キロ)を結ぶこのプロジェクトは
日本の新幹線システムを採用した。97年の国際入札でドイツICEがいったん優先
交渉権を獲得したが、99年に日本勢が逆転落札した。
それには李登輝総統の意向も作用した。日本勢は車両、信号、運行システム、
軌道動など5320億円分を受注した。03年末時点、土木関係はほぼ出来上がっ
た。トンネルも48本のうち46本が貫通した。日本製車両はこの3月に搬入される。
民間出資中心の事業で工程管理もきびしい。国家プロジェクトのような浪費はない。
双方は同時期、ほぼ同じ規模で計画を立ち上げた。建設をめぐり政治が介入したの
も同じだ。だが両者の明暗はあまりに対照的だ。
(以上)