2004/07/03 産経朝刊から
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◆【外信コラム】ソウルからヨボセヨ 派遣前のイスラム入信
ソウルの中心部に金色をした丸い屋根の異国風建物がある。イスラム寺院だが、ソウルにイスラム教の
寺院ができたのは、一九七〇年代に盛んだった韓国建設業界の中東進出でアラブ諸国との関係が深まっ
たからだ。
一時は十万人もの韓国人出稼ぎ労働者がイラクやサウジなど各国に展開していた。中にはイスラム教に
入信した者もいて、彼らのためにもイスラム寺院は必要だった。近年は逆にパキスタンなどアラブ圏からの
韓国への出稼ぎ労働者が多く、彼らの礼拝場所にもなっている。
ソウルのイスラム寺院は韓国とイスラム諸国との交流の歴史を物語る記念碑的な存在だ。ソウルの新市
街地である江南(カンナム)にある「テヘラン路」もそうだ。今や「テヘラン・バレー」などといわれ韓国が誇る先
端IT産業のベンチャー企業が集まっているが、七〇年代にイランとの交流記念として命名された。
韓国は今、イラクへの戦闘部隊を含めた大規模な追加派兵を準備中だ。その部隊で派遣を前にイスラム
教に入信した兵士が何人かいて先ごろ入信の儀式があった。日本の派遣部隊員たちが一斉に口ヒゲをたく
わえたようにイラク適応化のためだが、イスラム入信とはすごい。ところが逆に韓国人はヒゲが薄いため
“口ヒゲ作り”には苦労しているから面白い。(黒田勝弘)