後世に語り継ぐべき半島人

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(つづき)
詳細は四年前に書いた「韓國の民主主義」を讀んで戴きたいが、朴大統領が「私は人
にどう言はれても、あらゆる努力をして、(あの金大中のやうな人達には)大統領の席
を讓りたくありません」と言つた時、握り締めた兩の拳を机の上に置き、その間に稍前
のめりに顏を伏せ氣味にして、半ば自分に言ひ聽かせるやうに力強く言ひ放つた眞率、
沈痛な表情、その部厚い兩肩が、未だに私の眼底に殘つてゐる。それは私の生きてゐる
限り一生消えないであらう。如何に私が民間の一文筆業者であれ、いや、だからこそ何
でも書ける立場にある男である、それに向つて自分が「獨裁者」呼ばはりされてゐるこ
とを百も承知の上で、一國の元首がこれほど眞率の言を吐くといふのは稀有のことであ
らう。私は令孃朴槿惠さんの言葉を想ひ出す、「父を日夜、見るごとに、その肩にどれ
ほどの重荷を背負つて苦しんでゐるか、それを想ふとたまらなくなります。」大統領は
私にかうも言つた、「萬一、北が攻めて來たら、私はソウルを一歩も退かない、先頭に
立つて死にます」と。勿論、それは覺悟の問題で、朴大統領が戰死したら全軍の士氣に
關る。そんな幼稚な反問をする暇もなく、大統領は續けてかう言つた、「私が死んだ方
が、國民の戰意はかへつて強固なものになるかも知れませんよ。」私はその微笑のうち
にこの人の孤獨を看て取つた。
(つづく)