後世に語り継ぐべき半島人

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申相楚先生、韓國滯在中は一方ならぬお世話になり、まことに忝く、ここに改めて
あつく御禮申し上げます。けれども、まづ何よりも、かうしてサンケイ新聞の週刊誌
評のコラムに、先生あての私信といふ形で書く事にした理由について申し述べねばな
りますまい。
第一の理由は、この文章が歸國後に書く最初の文章で、私は机上に積んだ週刊誌を
讀まうとしたのですが、今囘ばかりはどうしても本氣で讀む氣になれません。それで
も週刊新潮と週刊文春四月二十四日號の、濱田幸一代議士追及の記事、モスクワ五輪
ボイコット及びイラン制裁問題をめぐる「大平ハムレット」批判などを讀み、それぞ
れ感ずるところはあつたのですが、それをどうしても文章にする氣になれない。全斗
煥將軍のすばらしい人柄、鄭鎬溶特戰司令官と崔連植師團長の眞劍な表情、及び先生
と鮮干W氏との樂しい旅行の思ひ出などが邪魔をして、濱田幸一氏の事なんぞ論ずる
氣になれない、それが第一の理由であります。全斗煥將軍や先生の如き、何とも見事
な人間の思ひ出に壓倒されて、私の「韓國惚け」は容易に癒えず、家族や友人や學生
に韓國について語つて倦む事を知らぬていたらくなのです。
(つづく)
139 :04/02/06 20:46 ID:NIDmkial
(つづき)
第二の理由は、歸國した私を待つてゐたのが、私の書いた文章に對する一種の嫌が
らせであつたため、目下のところ私は、その卑劣極まる人物もしくは組織と戰ふとい
ふ、頗る非生産的な作業に忙殺されてゐるといふ事であります。今囘の韓國滯在中、
私はお國の缺點もかなり知つた積りですが、それでもこちらが本氣になると必ず先方
も本氣で應ずる韓國人の見事を、今囘も私は、何よりも貴重に、かつ羨ましく思ひま
した。正々堂々と反論せずに、搦め手からの嫌がらせしかやれず、またさういふ嫌が
らせに頗る弱い日本の言論界の風潮を、私は日本人として甚だ情けなく思ひ、眞劍勝
負の國から歸國したばかりだけに、腹立ちを抑へかねてをります。
けれどもいづれ私は、このぐうたら天國特有の處世術に對する勘を取り戻すでせう。
週刊現代五月一日號は「日本人はいまや世界一セックス好きになつた!」と題する記
事を卷頭に載せてゐる。セックスが嫌ひな民族などこの地上に存在する筈がない。そ
んな當り前な事を取上げて卷頭記事になる、さういふだれ切つた日本國を、しかしな
がら、私は世界中で一番愛さねばなりません。また、週刊讀賣四月二十日號は、何と、
本年四月私の母校早稻田大學に入學した學生三千六百名の氏名、及び申先生の母校東
京大學の教授、、助教授百六十八名の氏名を載せてをります。これまた沙汰の限りで
す。が、それでも日本は私の國、私が最も愛する國なのです。いささかとりとめもな
い事を書いてしまひました。末筆ながら、鮮干W氏はじめ皆々樣にくれぐれもよろし
くお傳へ下さい。

*『暖簾に腕押し』(地球社) 昭和五十八年發行より 原文略字正假名
サンケイ新聞に昭和五十四年六月から同五十七年十月まで掲載されたコラムの一