黒田勝弘総合スレ

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【緯度経度】「日本脅威論」で現実逃避 /ソウル 黒田勝弘( 6/29)

 盧武鉉(ノムヒョン)大統領の訪日に同行してソウルに戻った直後、韓国のマスコミから
いくつかインタビューを受けた。訪日の成果をどう評価するかという内容だった。その中で、
訪日と時期が重なった日本での有事法の国会通過についてしきりに質問された。

 当然、批判調の質問だったが、答えでは有事法制の中身や背景について説明したつい
でに「韓国が北朝鮮の脅威をしっかり防いでくれれば日本がこんなことを準備しなくてもい
いのですがねえ」と言っておいた。韓国では不思議(?)なことに「核保有発言」までしてい
る北朝鮮の軍事的脅威にはほとんど無関心で逆に「日本の脅威」ばかり言い立てている
ように見える。

 これには当然、理由がある。一般的には「昔、軍事力をバックにした日本に支配された
歴史的経験から、日本の軍事的な動きにはいつも警戒せざるを得ない」ということになろ
うか。端的にいえば日本に対する歴史的イメージから「また日本が軍事的に攻めてくる」
というわけだ。

 支配された民族の感情として、こうした説明は分からないでもない。しかし現在の国際
環境や韓国の国力、国際的な位置、それに日本のあるがままの現状などを冷静かつ客
観的に考えれば、「日本の朝鮮半島への軍事再侵略」などまず想像できる話ではない。

 そこで考えるのだが、おそらく韓国人もそれは承知に違いない。しかし、にもかかわらず
韓国マスコミや識者などが日本の軍事的脅威をしきりにいうのは、そう思えば安心(?)だ
からかもしれない。昔のイメージで「日本の脅威」を言っておれば、日本について新しいこ
とを考えなくてもすむからだ。それが心理的に最も楽なのだ。
322 :03/06/29 16:41 ID:ZcEMQOFV
>>321

 それにもう一つ、「日本の脅威」にばかり注目し日本を批判しておれば、面倒しごくの北朝
鮮のことは考えなくてすむ。

 たとえば自由も民主主義もない北朝鮮のひどい人権状況や独裁体制について、韓国社
会が無関心で冷淡に見えるのは、実態を知らなかったり関心がなかったりするのではない。
むしろよく知っているため、嫌で面倒なことだから考えたくないのだ。その代わり日本を批判
していれば楽だし、それなりに民族のことを心配し考えた気分になれるのだから。

 ところで盧大統領訪日の後、韓国のある時事週刊誌が「再び立ち上がる日本」と題する特
集を掲載していた(『週刊朝鮮』六月二十六日号)。

 特集は「米軍の跡を狙う日本」「日本の国防力−米国以外ならどこにでも挑戦」そして「仮
想小説・独島」の三本で、添えられた写真はほとんどが自衛隊や旭日昇天旗になっている。
過去イメージによる典型的かつ固定的な「日本脅威論」だが、三番目の「仮想小説・独島」
が面白い。

 筆者は『ムクゲノ花ガ咲キマシタ』『皇太子妃拉致事件』など反日ベストセラー小説で人気
の若手作家・金辰明氏。二〇一〇年十二月、軍事大国化した日本が北朝鮮船舶に対する
「武力臨検」でコトを起こし、さらに米韓関係悪化のスキをついて「独島(日本名・竹島)」を武
力で奪い返しにくるという話だ。
323 :03/06/29 16:41 ID:ZcEMQOFV
>>322

 「独島への武力侵攻」論は韓国における反日大衆小説の定番だが、今回のお話ではさら
に「日本は二〇〇三年に制定された有事立法に従い、韓国内の自国公館や居留民保護の
名目で自衛隊三個大隊を直ちに緊急空輸し、ソウルなど七大都市に分散配置させた」という。

 とほほほ…という感じだが、有事立法など韓国ではこのように意図的に誤解されているのだ。

 ただお話では、日本が経済力を背景に北朝鮮を自らに引き付け結局、韓国が孤立して焦る
というのが最後で、結論としては「そうなってはダメだよ」という風になっている。

 今回のお話では『ムクゲノ花ガ咲キマシタ』のように、韓国と北朝鮮が手を握って共同開発
した核ミサイルで日本の武力侵攻に対抗するといった「南北ナショナリズム(民族主義)」はあ
まり出ていない。日本の脅威に対し「反米」が禍根になって米国の支援が得られない韓国外
交の未熟さに警告している。

 この特集記事もそうだが、韓国では最近の朝鮮半島情勢を十九世紀末になぞらえる議論
がはやっている。米中日露を含めた五者だの六者だのといった多者協議構想が話題になっ
ているせいでもある。

 しかし朝鮮半島にとって十九世紀の教訓とは、外部勢力をどう利用するかといったこともさ
ることながら、民族内部の問題を見すえ自らどう解決するかということではないのか。その意
味で軍事独裁体制の「北」をどうするのか、韓国にとってはのんき(?)に日本批判を楽しんで
いるときではないはずだが。