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週刊現代2002年9月21日号記事 1:
週刊現代 2002年9月21日号
マブチモーター殺人事件 捜査当局が事情を聴いた女 (P54〜P55)
世界のマイクロモーターのシェア5割を誇る「マブチモーター」(本社・千葉県松戸市)。馬渕隆一社長(69歳)
の自宅で、妻の悦子さん(66歳)と長女・由香さん(40歳)が殺害され、遺体に火を放たれた事件から1ヵ月以上が経
過した。捜査当局が犯人像を絞った形跡はないかに見えた。しかし警察は、いくつかの重要な「点」を掴み、それ
らを「線」に結びつける作業を静かに進めていた──。
千葉県警松戸東署に設置された捜査本部は、8月5日に事件が発生してから現在まで、200人態勢を敷き、毎
週月曜日午後2時から捜査会議を開いている。しかし、複数の捜査員が、捜査の状況について「停滞」と表現する。
「カネではなく貴金属を盗んでいる点で、日本人らしからぬ犯行形態です。外国人の犯行ではないかとみて、松戸周
辺の外国人居住地区について調べてはいますが、理由はその貴金属を盗っているというだけ。動機が分からないので
すから、犯人像が明確になるわけがない」(捜査関係者)
現場に残されていた遺留物も、放火に使われたガソリン缶だけ。捜査は困難を極めているが、殺害後に遺体に火を
放つという残虐な手口から、捜査本部は犯行の動機に「怨恨」が潜んでいるという確信を深めている。
現在、捜査本部が関心を寄せている「怨恨」につながる情報は二つある。一つは、隆一社長の実兄であり、マブチ
モーターの創業者で名誉会長の馬渕健一氏(79歳)の女性関係をめぐるトラブルだ。
「会長は女性との語らいがことのほかお好きですね。自宅の敷地内にはホールがあり、そこに客を招待してパーティ
を開くのですが、その際にコンパニオン役を務めるのが健一氏の資金管理会社『ケンマブチ』の女性社員なのです。
会長自らが厳選した綺麗どころがそろっています」(マブチモーター幹部社員)
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週刊現代2002年9月21日号記事 2:02/09/09 04:07 ID:oGhp0H6d
健一社長を1年間追い回した「女」
健一氏は'99年、女性週刊誌で自らの花嫁を公募したことがある。以来、100人以上の女性と見合いをし、女性が
帰る際には必ず10万円の「お車代」を相手に渡していたという。
捜査本部は、この度重なる見合いの中で、男女間の感情の行き違いから生じたトラブルがあると”筋読み”を開始
した。本誌は、その捜査線上に見合いを仲介したキーパーソンとなる女性がいることを掴んだ。
それは、千葉県内で結婚紹介業とコンパニオン派遣業を営むA子さん(42歳)である。彼女は、マブチモーターと20
年の取引があり、海外の取引先の接待や業界団体の会合にコンパニオンを派遣しているという。A子さんは、馬淵家
に関する女性絡みのトラブルについて、警察の事情聴取を受けており、その詳細を本誌に初めて話した。
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週刊現代2002年9月21日号記事 3:02/09/09 04:07 ID:oGhp0H6d
──警察に事情を聴かれたそうですが。
「ええ。9月3、4日の2日間にわたって刑事の方が会社に来ました。馬渕(健一)会長との取引全般について、2
時間くらいですね。やはり会長が見合いをした相手のことを聴かれました」
──見合いをした女性の中に事件と結びつくような相手がいたのでしょうか。
「警察はある40代の女性の名前を挙げました。私どもに見合いの依頼をしてきた方ですが、会長の熱心なファンでス
トーカーまがいの行為をして、だいぶ迷惑をかけたようです。見合いを断られると逆恨みする方が、まれにいます」
──ストーカー行為の内容は、どのようなものですか。
「昨年、スタッフがその方と面談をした際に、言動がおかしかったものですから、会長に紹介することはできないと
判断しました。でも勝手に住所を調べて、会長のところに押し掛け、面談を強要したようです。それが1年間も続い
たそうです」
──一部週刊誌で、健一会長が見合い相手にセクハラ行為をしたと報じられています。
「あの報道は間違いです。会長の見合いには私が必ず同席しているので、そんなことはあり得ません。その方は警察
が関心を持った方とは別の方で、『会長のために綺麗になる』と、化粧品や服を一度に大量に購入したようです。会
長と見合いをした後、洋服代として数十万円請求してきました。払う必要もないのですが、請求額より少なく支払っ
たら、会長がセクハラしたという報道が出ました」
──今回の放火殺人事件について感想はありますか。
「ひどいショックを受けました。私が落ち込んでいたら、会長が慰めてくれたのです。あの方は、強い方です」
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週刊現代2002年9月21日号記事 4:02/09/09 04:07 ID:oGhp0H6d
20億円の土地を購入していた
もう一つ、捜査当局が重大な関心を示しているのが、馬淵家と松戸市が絡み合う土地取引をめぐるトラブルだ。こ
こに一通の土地売買契約書がある。'01年9月20日の日付が入っており、売り主は財団法人松戸市都市整備公社、買い
主は馬渕隆一社長本人となっている。物件は、松戸市紙敷にある土地区画整理事業地区内の約1万4200u(約4
295坪)で、価格は20億5845万3181円。
奇妙なのは、この契約が成立する前に交わされた「土地買受申込書」の中身である。隆一氏は、「土地の相当部分
を公共用施設用地(公園・緑地)として松戸市へ寄付」し、「未来永劫にわたって維持管理する体制を構築することを
希望する」と公社に対して誓約しているのだ。
地元の不動産業者は、問題の土地を、「便利ではない地区の土地をまとめて買っているのだから、3分の2程度の
額に値引きするのが相当」と評価している。前松戸市議の沢間俊太郎氏が、説明する。
「この土地は'99年に、紙敷土地区画整理組合から都市整備公社が19億円で買ったものです。川井(敏久)市長が組合
に泣きつかれて買ったのでしょう。組合が買い戻しができる上、売買益は組合に還元されるという、組合にとって一
方的に有利な契約です。市議が、契約内容について指摘し始めると、突然、馬渕社長に土地が売れてしまいました」
しかし、この土地取引に、殺人事件にまで発展するような背景があるのだろうか。ある松戸市議会関係者は、次の
ように証言する。
「大物国会議員から川井市長を通じて『マブチの工場を韓国に進出させたい』という打診があったと聞いています。
隆一社長は大の『政治嫌い』ですから、川井市長の頼みを断ったのですが、そこは松戸市政と繋がりの深いマブチで
す。韓国進出を断る代わりに、問題の土地を買わされたのでしょう」
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週刊現代2002年9月21日号記事 5:02/09/09 04:08 ID:oGhp0H6d
しかし、黙って土地の相当部分を市に取られたうえ、一方的に不利な条件を呑まされるのは、隆一氏としても納得
いかなかったのだろう。
「問題の土地の契約内容をめぐり、川井市長と隆一社長の間で衝突があったようです。土地整備に関与した業者や人
を巻き込んで、結果的に隆一社長が恨みを買う状況が生まれたことは、十分考えられる」(前出・松戸市議会関係者)
当事者たちは、この取引をどう考えるのか。松戸市都市整備公社は、
「あくまで馬渕社長側から、『自宅を建てるために買いたい』と打診してきたものです」
と説明した。また川井市長に取材を申し入れると、
「韓国進出を頼んだことも、土地を買うように頼んだことも一切ない」
と文書で回答してきた。
妻と娘を失った隆一氏は、馬淵家にまつわる数々のトラブルを、どう考えているのだろう。隆一氏が身を寄せてい
る健一氏の自宅を訪問したが、インターホンに出た女性が、
「取材はお受けしません」
と答えた。松戸市という行政までが絡み合った”黒い霧”は簡単に晴れそうにない。