65 :
弁論内容1:
「ぼくは留学生」ユン・ヒジュン(27才島根県浜田市の大学に通う韓国人留学生)第43回外国人による日本語弁論大会
日本には今、約8万人の留学生がいるそうです。今日は僕のような留学生もいるのだ
ということを皆さんに知ってもらいたいと思ってここに来ました。
ナレーション(ユンさんは今、学生寮で暮しています。生活は6人で1組。個室はありますが台所やリビングは共用です。
ユンさんのルームメートは皆、年下の日本人学生。
1年前、日本での新しい生活がスタートしたとたんユンさんは部屋で孤立してしまいました。)
大学に入学して寮に入った時、僕は日本人の学生との生活がとっても苦しかったんです。
それは何故かと言うと日本人のルームメート同士が全然喧嘩をしないからです。
僕は意見を戦わす喧嘩は良い事だと思っていました。韓国では男は御飯より自尊心を食べて生きるという感じなので
自分と意見が違ったり気に触ることがあったら、とにかく戦いを始めます。トラブルがあった時、日本人学生がすぐに
「あっごめん」と言ってお詫びをするのを見て僕は「ちょっと腹が立ったんなら汚い言葉言って戦えよ。」と言ったりしました。
日本人学生の食事の仕方も僕には嫌な感じがしました。韓国では仲の良い友達はお互いの皿に箸を伸ばしておかずを分け合います。
僕はルームメートに食べ物を分け合うよう強要しました。皆が個室に鍵をかけるのも面白くないと思っていました。
僕は年上だったし共同生活の経験者だったので皆が僕の習慣に合わせて生活するべきだと思っていました。
そんな僕の態度のせいで当然ルームメートとの関係は上手くいかなくなっていきました。
それで僕はイライラして大声を出したり、物に当たってグループのゴミ箱を壊したりしました。
そして、とうとう僕にはヤクザというあだ名がついてしまいました。自分でも流石にヤバイなあと思いました。
66 :
弁論内容2:02/07/20 15:48 ID:r8iAkWVZ
それで素直に相談してみました。そうしたら「ユンさん、そんなに人と戦ったらイタくない?」と聞かれました。
「ずっと同じ大学に一生いるのに後で困るでしょう」と言われました。
僕は初めてトラブルを起こさないように相手を尊重する暮らし方に心を傾けました。
僕が相手のことを知ろうとしないで、ただ自分を正しいと信じて行動していたことに気付きました。
話してくれてありがとう。もっと早く話したかったなあと思いました。
思い返してみると僕の共同生活の強烈な経験は軍隊でした。こんなことがありました。
訓練の始めに個人の持ち物として1本のスプーンと2枚白いパンツが支給されます。これは何よりも大切な物です。
何故かと言うとスプーンがなくなったらご飯が食べられなくなります。またパンツは時々
綺麗なパンツを履いてるかどうか検査されます。
そのためには洗濯しなければなりません。洗濯するためには脱がなければならないわけですから。
2枚のうち1枚なくすとどうなるかお分かりですねぇ。それがある日、僕の大切なパンツが無くなってしまったんです。
どうしようと悩んでいる間も僕の履いてるパンツは徐々に汚れていきます。「ああ困った。」と、その時
「ユンさん僕のパンツ一緒に履こう」と言ってくれた奴がいました。「えぇ?いいんですか」それで残り訓練期間は
3枚のパンツを2人で履きました。多分このように掛け替えの無い友達を得ることが出来たのは
特殊な環境の中での熱く濃密な共同生活を通して感情を共有してきたからだと思います。
67 :
弁論内容3:02/07/20 15:49 ID:r8iAkWVZ
それなのに僕は大学寮で初めて会った日本人学生にいきなり濃密な付き合いを求めました。
親元でプライバシーの守られた生活をしてきた日本の学生はきっと戸惑ったと思います。
僕流の共同生活に対する考え方は韓国の文化に加えて僕の経験から出来上がっているのです。
たぶん、これからも僕は僕のやり方で失敗したり周りに迷惑をかけながら友達を作っていくと思います。
でもこれからは少しは相手のことに配慮してやっていけるのではと思っています。最近嬉しいことがありました。
ルームメイトが韓国の文化に興味を持ってくれて、韓国語の勉強を始めたのです。僕と良い関係が出来てきました。
文化の違いを越えて作る友人関係は本当に素晴らしく、留学の価値はそこにあると僕は確信しています。
そして、それはきっと留学生の友達になる人にとっても価値あることのはずです。
留学生をどうぞよろしくお願いします。最後まで聞いてくださって、どうもありがとうございました。