【産経】日韓新考【連載】

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日韓新考(36) 第3部 隣国のよしみ(6)
【日本人の急増】 不安イメージが後退 ( 5/26)

 韓国のNHKにあたるKBS(韓国放送公社)のテレビ番組に「全国歌自慢」というのが
ある。NHKの「のど自慢」をモデルにしたもので、こちらも毎週日曜日の昼食時にやっ
ている。相当の長寿番組である。

 この番組はNHKと同じく全国各地を巡回する。番組はほとんど野外の舞台で制作さ
れるため、風景はもちろん、出演者は「お国言葉」丸だしで地元の物産紹介などもあり
、地方の風情がよく分かって実に楽しい。外国人記者には韓国事情を知る貴重な「情
報」になっている。

 日曜ということもあって韓国における筆者のお好み番組の一つだが、この「全国歌自
慢」に近年、地方在住の日本女性がよく登場する。

 時にはチマ・チョゴリの韓服スタイルもあり、何人か一緒に出演することもある。みん
なそれなりに韓国語ができて、韓国の歌をうたって拍手喝采(かっさい)されている。

 「韓国のあんな田舎に日本女性がなぜ?」と不思議に思っていたら、そのうち事情が
分かった。例の宗教団体のいわゆる集団結婚式などで韓国に「嫁入り」した日本女性た
ちだった。
541 :02/05/26 05:05 ID:iEwHlrHs
 「全国歌自慢」での目撃は一度や二度ではない。これまで何回も見た。地方で全国ネ
ットのテレビ番組に出演するわけだから、それなりに地元に定着し、周囲からも認めら
れた存在ということになるだろう。テレビで見た限りではいい意味での「日本女性らしさ」
があり印象は悪くない。

 彼女らは南部の島嶼(とうしょ)から山奥にまで住んでいる。たまたま地方にいて彼女ら
と接触したことのある人類学研究の日本人研究者の話によると、田舎では「日本の嫁」
が人気で、日本女性を嫁にしようとその宗教に入った男性もいるという。

 ところで韓国に日本人は何人くらい住んでいるのだろう。旅行者を除く居住者だが、ソ
ウルの日本大使館によると現在、韓国全体で約一万七千人となっている。

 ところが一九九〇年はわずか五千八百人だった。十年そこそこで三倍に増えたことに
なる。この急増の原因が彼女ら宗教団体の日本人女性というのだ(日本大使館筋)。

 年によっては千人、二千人単位で日本女性が韓国の地方に住みつき現在にいたるとい
う。

 そういえばソウル近郊であったことだが昨年、教科書問題で韓国に反日感情が高まっ
ていたとき、「日本女性の集まり」だとして韓国民に謝罪する風景が韓国マスコミで紹介さ
れた。この時も不思議に思ったのだが、やはり宗教団体系の日本女性たちだった。

 つまり韓国には現在、そうした日本人妻たちが大量に住んでいるのだ。正確な数は明
らかでない。彼女らの韓国体験の実情がどういうものかはなかなかうかがい知れないが
、彼女たちは韓国社会で今後、どんな役割を果たすことになるのだろう。これは気にな
る話である。
542 :02/05/26 05:06 ID:iEwHlrHs
 韓国で近年、日本女性の進出が目立つ(?)ため、ソウルも香港やシンガポール、台北
さらにはニューヨーク、パリ、ロンドンなどとともに日本女性にとって新しい「人生のチャン
ス」になりつつある−といういい話を紹介しようと思った。しかし在韓日本女性の存在に関
し見落とせない出来事ということで、まず「集団結婚のその後」に触れたしだいである。

 以下が本来の話になる。まず日本企業のソウル駐在員として女性の派遣は、たしか一
九九〇年代中ごろの三井物産が最初だったように記憶する。その後、大手商社などで総
合職の女性の派遣がぽつぽつ行われ、ソウル勤務は女性でも可能との「実績」ができつ
つある。

 同じように九〇年代後半に東京都がソウル市との提携、交流で女性職員をソウルに長
期派遣し話題になっている。日韓の自治体交流では今や韓国各地に十人近い日本女性
が派遣され、道庁や市庁などで韓国人職員と一緒に仕事をしている。

 日本自治体国際化協会ソウル事務所(旧自治省)には各県から十人以上が派遣されて
いるが、現在、沖縄県からの派遣職員は女性である。

 いろんな意味で「韓国は危ない」という、日本サイドの韓国に対するこれまでの不安イメ
ージが後退しつつあることは間違いない。

(ソウル 黒田勝弘)