1 始めに
3日に「慰安婦問題の深刻化」と題してコラム#1679(未公開)を上梓した後、私の掲示板(
http://sol.la.coocan.jp/wforum/wforum.cgi )上である読者から公開を勧められました。
熟慮の上、まず、このコラム#1679を上記掲示板上でのやりとり付きで公開した上、今回のこのコラムもただちに公開することにしました。
これは、事柄の緊急性、重大性に鑑みた例外中の例外措置であり、有料読者の皆さんにぜひご容赦いただきたいと思います。
2 この件で孤立無援の日本
(1)アルメニア人虐殺問責決議案
ことの発端は、米下院における慰安婦問責決議案の上程だったわけですが、実はトルコに対するアルメニア人虐殺問責決議案も上程されています。
第一次世界大戦でオスマントルコ帝国が解体された時(1915〜16年)にアルメニア人が何十万人(数について争いあり)も死亡した事件(コラム#1451)については、
欧米の学者はすべてトルコ当局による虐殺であったとしているのに対し、トルコだけが、オスマントルコに住んでいた人々は多かれ少なかれこの混乱期多大の犠牲を被ったとして、
組織的計画的な虐殺などなかったと主張しています。
トルコでは、現在でもアルメニア人が虐殺されたと主張すると刑罰を科されます。
上記問責決議案の上程に、トルコは外相を米国に送り込んで決議阻止のロビイスト活動を行っています。
トルコの軍部も、こんな決議が通ったら、米軍のイラクやアフガニスタンでの作戦に重要な役割を果たしている、トルコのインシルリク(Incirlik)空軍基地を米軍には使わせないことをほのめかしています。
しかも、ワシントンポストは、この決議案上程の背後には、推進議員や下院議長の選挙区にアルメニア系の人が多いことを指摘しつつ、元駐トルコ米大使も決議案の採択に反対していることに触れ、
更に、大部分の米下院議員の外国の知識のお粗末さ・・スンニ派とシーア派の違いが分かっている者は少ない・・を挙げ、
1世紀近くも前に起こった事件について下院議員達がまともな判断ができるわけがない、とまで揶揄した論考(
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/03/04/AR2007030401047_pf.html 。3月6日アクセス)を掲載しています。