CIA長官補佐がワシントンで自殺を図った。死因は「働きすぎ」だと診断されたが、それによって恐ろ
しい悲劇がおおい隠されたのだった。この職員は神経がまいってから三カ月間仕事をしていなかった。
彼は、ユダヤの宗教儀式で殺される大勢の非ユダヤ人の子どもたちに対して、偶然とはいえ責任が
あったことに気づき、いささか良心の仮借に駆られていたのである。
非ユダヤ人である彼は、ユダヤ人が60%を占めるという機関CIAで「特殊能力」の持ち主として
有名だった。
その特殊能力とは、男色(ホモセクシャル)の相手として外国の官吏の慰みに供する少年たちを狩り
集めるという才能であった。すくなくとも彼は、そのように聞かされていたし、そうでないと疑う理由も
見当たらなかった。
というのも、国際的な諜報活動で少年を利用することは古くからある話だった。それに、ほとんどの
政府は、他団政府の高官を脅迫するために、少年たちをいろいろなおりに雇った前歴がある。
夕方の早い時間、このCIAの職員は下町をぶらぶらと歩いて美少年を見つけるのが仕事だった。
彼は少年に話しかけ、ほかに用事がないといえば、少年に、20ドルていどのおカネになる一寸した
しごとがあるからとホテルの部屋へ連れていって、そこで待っているもう一人の工作員に引きわたして
立ち去る。