(その1)
現場からの証言
元北朝鮮工作員による証言
講 演:安 明進(アン・ミョンジン)氏
同時通訳:西岡 力(にしおか つとむ)氏
時:平成10年8月2日 所:柏崎市民会館、新潟県
本日はお暑いなか、たくさんの方においでいただき、感謝いたします。また私を招いてく
ださり、北朝鮮の実態、日本人拉致の実情について講演機会を与えてくれた、救出する会の
方々にも、お礼申し上げます。
先ほど紹介がありましたが、私は工作員として金正日政治軍事大学で7年間 教育を受け、
93年8月30日に工作部署に派遣されて、9月4日の最初の作戦で大韓民国に亡命した、
安明進(アン・ミョンジン)といいます。まさにごく最近、北朝鮮が韓国に対して潜水艇を
使い、工作員を浸透(入)させようとしたことからもわかるとおり、北朝鮮は武力で朝鮮半島
を統一するため、日常的に工作員の浸透作戦を展開しています。先ほどの先生(注、桜井新代
議士)もおっしゃったように、北朝鮮は常識では理解できない国です。韓国は対応(?)政策
ということで北朝鮮を助けていますが、北朝鮮は韓国から牛をもらったりいろんなものをも
らったりしていながら、一方で韓国に工作員を浸透させています。そしてその韓国を共産化
するために、日本がたいへん多く利用されているのです。
実は北朝鮮は、さまざまな理由から、日本がなければやっていけない国です。まず、韓国
に工作員を浸透させるのに、日本を通じて行っています。また、日本から政治的経済的物質
的なものをたくさん持ってくるために、日本に工作員を浸透させています。それに、日本と
韓国の関係を遠ざけるためにも、日本に工作員を入れているのです。北朝鮮が日本を必要と
しているもうひとつの理由は、金正日が日本をとても好きだということです。日本という国
や日本国民が好きだというより、日本製品が大好きなんです。日本がなくなってしまえば、
一番悲しがるのは金正日じゃないでしょうか。
(その2)
私は今日、北朝鮮による日本人拉致の真相、その張本人、そして全世界で行われている拉
致以外の犯罪行為について、みなさんにお話ししたいと思います。
先ほどもいいましたように、私は工作員教育を、金正日政治軍事大学で7年間受けまし
た。北朝鮮国内でも99.9%の人がその存在を知らない、秘密大学です。そこでは1年に
80〜100人が入学、6年間におよぶ非人間的な教育を受けて卒業していきます。日本人
を拉致する理由は、その秘密大学で日本に派遣する工作員を養成するのに、日本人が必要だ
からです。拉致される日本人は特別な人が選ばれるかというと、そんなことはありません。
日本語ができて、日本人の生活習慣がわかって、周囲の何人かの名前を知っていれば、子ど
もでもかまいません。ですから、日本が北朝鮮という国や拉致問題についてこのまま関心を
持たないのであれば、ここにいるみなさんの家族のだれかが、明日にも拉致されるかもしれ
ないのです。
北朝鮮が日本人をいつから、なぜ拉致していったのか話しましょう。北朝鮮は1940年
代から50年代にかけて、韓国に対して工作員をたくさん派遣してきましたが、1970年
代なかば、その工作員活動が大きな変動を迎えたのです。それは、金正日が実質的な後継え
たのです。それは、金正日が実質的な後継者としての地位についたからです。その金正日が
一番最初に手に入れたがったのが、対南工作担当部署でした。北朝鮮では3号庁舎と呼ば
れ、あらゆることをどうにでもできる最大級の権限を与えられた組織であるため、金正日は
これをまず最初に手に入れたがったのです。
(その3)
この組織を手に入れた金正日は、実際に3号庁舎におもむき、いままでの工作活動を総点
検する検閲事業を行いました。その過程で金正日は、「いままでの工作活動はまったくだめ
であり、工作員教育も成果ゼロだ。現地人化教育を徹底してやれ」との方針を打ち出したの
です。以来、「日本人、韓国人、アラブ人など、工作員が化ける必要がある地域の現地人を
無条件で拉致してこい」という金正日の指令にもとづき、拉致活動が本格的に始まったので
した。もちろん、1960年代にも日本人拉致はありました。時間がないので詳しくは申し
あげられませんが、海上で抵抗する一人の漁民を撃ち殺し、残りの人たちを連れ帰った、と
いうケースも聞いています。しかし、先ほど挙げたような理由で、拉致は70年代から本格
化したのです。
私が金正日政治軍事大学にいた当時、多くの日本人教官を目撃しました。横田めぐみさ
ん、鹿児島の市川さん、それ以外の方も見かけました。ただ、率直にいいますが、当時の私
は男性教官には関心がなかったのです。私たちの受けていた教育の思考方式では、統一のた
めに日本人を拉致するのは当たり前のことなのだ、と教えられ、なんの疑問も抱いていな
かったからです。そんなわけで、男性教官にはほとんど関心を持たなかったのですが、横田
さんは若いし美人だったので、独身男性の私たちからすれば、日本の女性はあのように美人
なのだ、というような意味あいで、関心を持ったわけです。私が日本国民の気持ち、ご両親
の気持ちをもっと早くわかっていれば、日本人の男性教官にもしっかりと目を向けていたは
ずですが、当時はそういう状況ではなかったことを、いまこの場を借りて、心から謝罪しま
す。
(その4)
私は、拉致された日本人からは、直接は教育されませんでした。専門が対韓国だったから
です。拉致された日本人たちは、ある場所に集中して住まわされ、ほかの人に話しかけるこ
ともできず、まったく行動の自由のない、人間以下の生活を強いられていました。食べるこ
とと着ることは充分保証されていましたが、彼らにできることは、工作員を教育することだ
けでした。
みなさんのなかには、拉致された人々はいまごろなにを考えているだろう、という疑問に
思う人もいるでしょう。実は、日本人化教育の日本人教官たちというのは、現在でも日本の
テレビ、日本の新聞を、自由に見ることができるのです。そうして日本の現況を知ってこ
そ、工作員教育も可能となるわけですが、おそらく拉致された人々は、そういうメディアを
見ながら、なぜ日本では自分たちを助けようという声がこんなにも小さいのか、なぜ日本政
府がもっと積極的になってくれないのか、と思っているにちがいありません。
日本人拉致を主として行っているのは、3号庁舎のなかの、対外情報調査部と作戦部で
す。工作員はそれぞれ各地方都市の連絡所に派遣されるのですが、対日工作員が派遣される
場所は、チョンジン(清進?)で、平時には300人あまりの工作員がいます。ここにいる
みなさんは少し恥ずかしいと思わなければならないかもしれませんが、工作員仲間では、日
本に浸透するのが一番たやすい、ご飯食べてトイレに行くくらい簡単だ、といわれていま
す。工作員のなかでも一番成績の悪かった者たちが対日工作員となって、このチョンジンに
派遣されるほどなのです。なぜかというと、たとえば韓国の領海に侵入した場合、見つかる
と停まれといわれ、実際に停まらないと、銃や大砲で撃ってこられます。しかし日本の場合
は、停まらなくても撃ってきません。だからそのまま逃げてしまえばいいんです。日本とい
う国はそんなふうに主権を侵され、日本人の人権が侵されているのに、怒りもしません。こ
れは率直にいって、私には不思議でなりません。
(その5)
日本といえば世界最大の経済大国、北朝鮮も羨むほどの国です。かたや北朝鮮は、人口
2000万ほどの小国にすぎず、その指導者たちも、その程度の数の国民すら満足に食べさ
せることができず、むしろ状況を悪化させているだけです。そんな国に、日本はなぜいつま
でも引きずり回されているのでしょう。なぜ堂々としたことがいえないのでしょうか。もし
もこれがアメリカなら、たった一人の兵士が拉致されたとしても、最大限の動員をかけて救
出しようとするでしょうし、実際いまも、第二次世界大戦当時の遺骨を掘り出して取り戻そ
うと、北朝鮮と執拗に交渉を続けているのです。アメリカは日本よりも大きいからだという
のであれば、レバノンの例をあげましょう。ご存じのとおりレバノンは、日本はおろか北朝
鮮と比べても小さく、国力の弱い国です。しかし、拉致された人を返せと強硬に要求して、
みごと取り戻しました。ところが日本は、レバノンの半分の半分の半分の対応もしていな
い。救出しようという声さえ聞こえてきません。
ある人たちは、最初にとにかく米をやって、国交正常化交渉をして、それから拉致された
人々を返してもらおうという考えでいるようですが、それではまったく北朝鮮のことをわ
かっていません。北朝鮮側は日本に、国交正常化実現を口実に、莫大な資金を要求してくる
でしょう。そしてかりに日本が米や資金をたくさん北朝鮮に援助し、国交が正常化したとし
ます。しかし、その後で拉致された人たちを返してくれといっても、彼らにしてみれば、も
らうものはもらったわけだし、そんなにうるさくいうんだったら国交なんかやめてしまえ、
ということになるのです。日本のみなさんは、まさかそこまでと思うかもしれませんが、北
朝鮮という国は、そんなふうに常識のまったく通用しない国なのです。
(その6)
また私も、かつてこんな経験をしたことがありました。金正日政治軍事大学では、実弾を
使った射撃訓練を頻繁に行うのですが、まちがって同僚に弾が当たったのです。慌てて死に
かかった同僚を助けにいこうとすると、「死にかかった人間など放っておけ。おまえたちは
訓練を続けるんだ」と命令されました。北朝鮮というのがいかに非人道的な国であり、常識
の通用しない国なのか、こんなことからもわかってもらえると思います。
ですが、北朝鮮はいま、日本からお米や資金をもらいたい、といってきています。これは
日本のみなさんからすれば、有利な取引条件となるのではないでしょうか。私は工作員学校
で7年間暮らしていましたから実体がわかりますが、北朝鮮という国は、低姿勢で頭を下げ
てくる人たちには頑として譲歩せず、逆に力強く要求してくる人間に対しては、あわてふた
めくのです。かりに日本が米の支援をしたとしても、飢え苦しんでいる肝心の人民には、決
して渡りません。まず、日本や韓国に浸透しようとする工作員に食べさせ、余った米はロシ
アや東南アジアに売りさばき、それで得た金は、金正日の個人資金になってしまうのです。
そういう国なのです。日本の国会でも、北朝鮮に米を送れという声があがっていますが、も
しそれが本当に人民に渡るのであれば、私も反対などしません。
(その7)
北朝鮮はドルが足りず、ドル欲しさに偽札も造り、麻薬も売りさばいています。たとえ
ば、これまで北朝鮮という国に関心を持ってこられた方々は記憶にあるかと思いますが、北
朝鮮から日本に入ってきた船のなかに、麻薬が発見されたという事件がありました。ほかに
は、わざわざ外国製に偽造して造ったピストルなどの武器も、北朝鮮は売りさばいていま
す。偽札まで流通させようとしていることからもわかるとおり、流通させようとしているこ
とからもわかるとおり、北朝鮮は、拉致以外の犯罪でも日本社会に浸透し、日本社会を侵そ
うとしているのです。
また、北朝鮮はノドン1号2号、テポドン1号というミサイルを造っているのですが、そ
のようなミサイル開発に対して、日本政府は、韓国政府やアメリカ政府のようには強く抗議
していません。北朝鮮のミサイルで一番大きな被害をこうむるのは、日本であるにもかかわ
らずです。北朝鮮が核ミサイルを開発する目的は、直接韓国に対して使うというよりも、日
本に対して外交圧力をかけ、日本を脅して資金を引き出したり、日本にある米軍基地を破壊
したりすることなのです。要するに北朝鮮は、日本を攻撃するためにミサイルを開発するの
です。ここにいるみなさんの頭上に核ミサイルを落とそうと北朝鮮が躍起になっているの
に、ここにいるみなさんはなにもせず、ここにいない韓国やアメリカがけしからんといって
いるのは、私には理解できません。
(その8)
私は、拉致された日本人を返してほしいという声が日本のなかで高まることを願っていま
す。そして個人的には、この柏崎市がその中心的役割を果たすことを願っています。新潟県
は北朝鮮に一番仕えながら、一番被害をこうむっている県です。在日朝鮮人はここから北朝
鮮のチョンジンに渡っていながら、チョンジンからは工作員が入ってくるのです。新潟の港
から出ていった在日朝鮮人が、日本の親戚に送金してくれといってくれるおかげで、北朝鮮
は大きな外貨が獲得できているのです。こんなふうに、新潟は北朝鮮にいいことをいっぱい
やっているのに、北朝鮮のほうは逆にそこにつけこみ、みなさんに被害を与え、いわばみな
さんをバカ扱いしているのです。私の瞼に、日本人教官たちの顔がいまも浮かびます。おそ
らくいまも、あの金正日政治軍事大学で、いいたいこともいえず、自由を束縛されているこ
とでしょう。ここにいるみなさんが、拉致された被害者たちを自分の子どもや兄弟同然に考
えて、早く助けようと声をあげてくれれば、日本の主権も守られるし、被害者たちも一日も
早く帰ってこられる、私はそう思います。
いま北朝鮮には、いわゆる日本人妻と呼ばれる人たちがいますが、北朝鮮は彼女たちを、
人質として利用することしか考えていないのです。彼女たちがどんな苦労を強いられて生活
しているか、みなさんはご存じないと思います。ところが日本に一時帰国した日本人妻たち
は、北朝鮮は地上の楽園だ、金正日万歳としかいいません。そう言わなければならない彼女
たちの心の叫びが、私には聞こえるようです。心の叫びを伝えたい、けれども伝えられな
い、それが現実なのです。なぜなら北朝鮮には自分の子どもたちがおり、その子どもたちの
身の安全を考えると、口が裂けても真実はいえないからです。ここにいるみなさんには、彼
女たちにはそういう心の叫びがあるのだということを、理解してもらいたいと思います。
(その9)
先ほどのミサイルの話に戻りますが、北朝鮮は日本全域が射程内にすっぽり入るミサイル
の開発を終えました。すでに基地に配備してあります。撃てという命令さえ出れば、ここに
いるみなさんのだれかが傷つく、そういう体勢ができあがっているのです。みなさんが声を
出し、日本政府も強く対応しなければなりません。韓国のことわざで、「狂った犬は叩くし
かない」という言葉がありますが、まさにそのことわざどおり、強く出るしかないのです。
私は北朝鮮の二千万の民衆を心から愛しています。その民衆達が一日も早く助けられるため
にも、金正日体勢は早く崩壊しなければなりません。私は二千万の民衆を愛する立場から、
こうして金正日の悪をあばく証言をしているわけです。北朝鮮は私に対して、おまえのこと
は黙っておかない、殺してやる、と公然と脅しをかけてきています。実際に2年前の2月に
は、ソウル近郊で、イハンヨンという金正日前夫人の甥に当たる人が、亡命して本を書いた
のですが、その人が暗殺されました。私もいつそのようなテロ行為の犠牲となるか知れず、
もしかすると2、3年後には、こうしてみなさんの前に立つこともできないかもしれませ
ん。それでも私は、祖国2000万の民衆のため、正義のため、そして拉致されたみなさん
の息子さんや娘さんのため、そしてみなさん自身のためにも、こうして命がけで立ち上がっ
ているのです。なのに日本国民の声が弱くて、日本政府が声をあげないのだったら、私のこ
の証言は、いったいなんの意味があるでしょうか。
実は韓国には、金正日政治軍事大学の私の先輩にあたる亡命工作員が何人もいるのです。
その人たちのなかには拉致について証言ができる人々がいるのですが、いまは日本政府の声
が弱く、世論も盛り上がっていないため、みずからの身の安全のほうを優先しているので
す。もしもみなさんが声をあげ、日本政府が拉致された人々の返還を北朝鮮に強硬に要求し
て、日本の国会議員とともにこの私を派遣したい、そして一緒に拉致された人々を捜しても
らいたいというのであれば、生命の安全が保障されるかぎり、私には同行する準備がありま
す(会場拍手)。
(その10)
他民族の私がこうして声をあげているのですから、なんとか政府にこの声が届くようにと
願ってやみません。北朝鮮は、私の発言はすべて嘘だといっています。当初は「安」という
男など存在しないともいっていました。金正日政治軍事大学の25期生として卒業したの
に、それを存在しないというのはどういうことでしょうか。しかし、少しずつ日本で声があ
がってきたおかげで、北朝鮮もひるみはじめ、私の存在を認めるようになりました。ただ
し、破廉恥な犯罪を犯した罪人としてですが。私にはそんな破廉恥な行為をした記憶はない
のですが、北朝鮮が私の存在だけでも認めるようになったことを、少しうれしく思っていま
す。
北朝鮮はいま食料がなくて苦しいのです。でも日本には援助できる米があります。ですか
ら左手に米を持ち、右手には棍棒を持って、「棍棒で殴られたいのか、あるいは食料がほし
いのか、食料がほしければ、拉致された人々を返せ」というふうに北朝鮮を追いこんでいけ
る格好の状況になっているのです。当初は私の存在を否定していたにもかかわらず、最近
は、犯罪者だけれども存在していると認め始めているのがいい例です。ですからもっと追い
詰めれば、みなさんの息子さんや娘さんの帰還も実現するかもしれません。それができたと
き、みなさんはふたたび世界のなかで、政治大国、経済大国としての名誉を回復することが
できるのではないでしょうか。
話したいことはまだまだたくさんありますが、時間の関係でここまでにさせていただきま
す。あとは本に書きましたので、そちらを読んでいただければ幸いです。ご静聴ありがとう
ございました。
(その11)
【会場の質問】
スパイ映画の話しを聞いているようでにわかには信じがたい内容でした。拉致の方法を具
体的に話してもらえれば、みなさんの認識も身近なものとなるのではないでしょうか。
【答え】
工作船は30トンから50トン級で、外見が日本の船とまったく同じ造りになっていま
す。船の名前も日本式につけてあり、船員たちが食べるものも着る服も腕時計もすべて日本
製で、完全に偽装して日本に入り込んでくるのです。船内には技術的にも優れたものがふん
だんに装備されているのですが、実はそれも日本が助けていることになっています。搭載し
ている2機のレーダーは、日本のフルノ(古野?)製です。受信機も日本製で、受信してい
る電波も日本の灯台から出ているもので、それを利用して航海してくるのです。
まずその工作船で、近海2、3マイルまで来ます。工作船の内部には、外から見えない別
の小さな船が積んであります。母船も速いのですが、その小さな工作船も速い。世界でも一
番速いといわれるドイツ製のOMCエンジンを4機搭載しており、ふだんは一つしか使わな
いのですが、逃げるときは4機とも稼働させて、海の上を飛ぶように逃げていくわけです。
母船で近海まで来て、海岸には小型船で来るのですが、ボートで来ることもあります。暗い
なかでも海岸にたどり着くことはできますが、海岸にあらかじめ別の工作員が待ち受けてい
て、懐中電灯で誘導する場合もあります。上陸して適当な拉致対象が見つかると、尾行し、
チャンスをうかがって拉致するわけです。私自身も、訓練の過程で教官を拉致するという経
験をしたことがありますが、拉致自体は、「冷めたお粥を食べる」くらい簡単、という韓国
のことわざどおり、実に簡単です。2、30分気絶させて運ぶわけですが、最近はおしぼり
のようなものに麻酔薬を染み込ませたものを使います。それでまず意識をなくさせる。あと
は鞄に入れるのですが、スポーツ製品を運んでいるように見える鞄です。工作員は力があり
ますから、その鞄を軽々と運んでしまう。まさかと信じられない人もいるかもしれません
が、麻酔を嗅がせて縛り上げると、人間一人が豚一頭くらいの大きさになってしまうんで
す。