市販鯨肉に高濃度水銀
市販されているクジラやイルカの肉が、高濃度の水銀やPCB、ダイオ
キシン類に高い割合で汚染されている実態が、第一薬科大(福岡市)が
米ハーバード大、英グリニッチ大と共同で行った研究で明らかになった。調査結果は、 21日から名古屋市で始まる環境トキシコロジーシンポジウムで発表される。
研究グループは、健康への影響も懸念されるとして、厚生省や水産庁
などに対策を求める意見書を提出する予定だ。野生の海産ほ乳類の化学
物質汚染は研究されているが、食品として販売されている鯨肉の実態調
査は初めて。
第一薬科大薬学部の原口浩一助教授(物理分析学)らは、東京や大阪
など6都府県で、魚市場やスーパーで売られている鯨肉食品を無作為に
調査。赤身やベーコン、皮付き脂身などDNA鑑定で種類や生息地域の判
明した61点について、重金属やPCBなどの有機塩素系化合物の汚染実態
を調べた。
その結果、日本近海の小型鯨類(クジラ、イルカ)の肉20点のうち、
85%の17点から食品衛生法で定められた暫定基準値(総水銀1グラム辺
り0.4マイクログラムかつメチル水銀同0.3マイクログラム=マイクロは
100万分の1)を超す水銀が検出された。中には総水銀で基準値の500倍
を超すイルカの肝臓の煮物もあった。
PCBも近海の小型鯨類から、最高で暫定基準値(1グラム当たり0.5マ
イクログラム)の約18倍に当たる8.9マイクログラムが検出された。小
型鯨類、北半球のミンククジラとも半数に基準値を超えるPCBが含まれ、
汚染は広範囲に広がっていた。
また毒性が強くダイオキシン類に分類されるコプラナーPCBは、小型
鯨類のダイオキシン毒性換算では最高1グラム当たり209ピコグラム(ピ
コは1兆分の1)も検出され、通常の魚介類の100倍以上の濃度だった。
野生クジラ類など海産ほ乳類は化学物質の分解酵素が弱く、水銀などが
体内に残留しやすいといわれる。
今回の調査結果について、水産庁遠洋課では「鯨肉は日本人1人当た
り、年間30グラム程度と消費量は少なく、即座に影響は考えられない」
としている。ただ、伝統的に食生活に根付いている地域もあり、データ
を見た上で考える必要があるとしている。