★「源氏物語」★光源氏最愛の女性は結局誰?

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952名無氏物語:2009/03/08(日) 14:16:47 ID:JlYtFtgl
しかしこのような歴史的経緯や写本を外形的な特徴に基づいて分類する
ことが本文そのものの内容の分類として正しい、妥当なものであるのかど
うか、そもそも「青表紙本」や「河内本」が成立したのは事実であるとしても
本文の系統としてそのような区分を立てることが妥当なのかどうかについ
ての検討をすることも無かった点には注意を払う必要がある。

このように、その後の研究によってこの3分類法はいろいろと問題点も指摘
されるようになってはいるが、現時点でも一応は有効なものとされている。

これらの3分類を見直すべきだとする見解としては、阿部秋生による、「奥
書に基づいて写本を青表紙本、河内本などと分類することが妥当なのか
どうかは、本文そのものを比較しそういう本文群が存在することが明らか
になった後で初めて言えることであって、その手続きを経ることなく奥書に
基づいて写本を分類することは本文そのものを比較するための作業の前
段階の仮の作業以上の意味を持ち得ない。」あるいは、「もし青表紙本が
それ以前に存在したどれか一つの本文を忠実に伝えたのであれば、河内
本が新しく作られた混成本文であるのに対し青表紙本とは別本の中の一
つであり、源氏物語の本文系統は青表紙本・河内本・別本の3分類で考え
るべきではなく別本と河内本の2分類で考えるべきである。」といったものが
ある。
953名無氏物語:2009/03/08(日) 14:17:48 ID:JlYtFtgl
古い時代に作られ現在まで伝わっている実際の写本は、出来上がった写
本が完成当時の姿をそのまま伝えられていることは少なく、一部が欠けて
しまったり、その欠けた部分を補うために別の写本と組み合わせたり、別系
統の本文を持った写本と校合されていることも少なくない。またこのような状
態の写本を元にしてそのまま写した写本を作成したために最初に完成した時
点ですでに巻ごとに異なった系統の本文になったと見られる写本も存在する。

例えば「青表紙本」系統の写本の中で最も良質な本文であるとされ、現在
多くの校訂本の底本に採用されている飛鳥井雅康筆の「大島本」の場合で
も、「浮舟」を欠いた53帖しか現存しておらず、「初音」帖は他の部分と同じ
飛鳥井雅康の筆でありながら本文自体は「青表紙本」系統の本文ではなく
「別本」系統の本文であり、「桐壺」と「夢浮橋」は後世の別人の筆である。
またほぼ全巻にわたって数多くの補筆や訂正の跡が見られるが、その内
容は「河内本」系統の写本に基づくと見られるものが多い。
954名無氏物語:2009/03/08(日) 14:19:05 ID:JlYtFtgl
校訂本
まず、本文校訂のみに特化して校異を掲げた文献をあげる。この他に主
要な写本については個別に翻刻したものが出版されている。

『校異源氏物語』(全4巻)池田亀鑑(中央公論社、1942年)
『源氏物語大成』(校異編)池田亀鑑(中央公論社、1953年-1956年)
『河内本源氏物語校異集成』加藤洋介編(風間書房、2001年)ISBN 4-7599-1260-6
『源氏物語別本集成』(全15巻)伊井春樹他源氏物語別本集成刊行会(おうふう、1989年3月〜2002年10月)
『源氏物語別本集成 続』(全15巻の予定)伊井春樹他源氏物語別本集成刊行会(おうふう、2005年〜)

注釈が付いたものとしては、次のようなものが出版されている。多くは校訂
本も兼ねており、現代語訳と対照になっているものもある。また注釈などの
内容を簡略化した軽装版や文庫版が同じ出版社から出ているものもある。
これらはすべて青表紙本系の写本を底本にしており、中でも三条西家本を
底本にしている(旧)日本古典文学大系本(およびその軽装版である岩波文
庫版)を除き基本的に大島本を底本にしている。
955名無氏物語:2009/03/08(日) 14:19:36 ID:JlYtFtgl
『源氏物語』日本古典全書(全7巻)池田亀鑑著(朝日新聞社、1946年〜1955年)
『源氏物語』日本古典文学大系(全5巻)山岸徳平(岩波書店、1958年〜1963年)
『源氏物語評釈』(全12巻別巻2巻)玉上琢弥(角川書店、1964年〜1969年)
『源氏物語』日本古典文学全集(全6巻)阿部秋生他(小学館、1970年〜1976年)
『源氏物語』新潮日本古典集成(全8巻)石田穣二他(新潮社、1976年〜1980年)
『源氏物語』完訳日本の古典(全10巻)阿部秋生他(小学館、1983年〜1988年)
『源氏物語』新日本古典文学大系(全5巻)室伏信助他(岩波書店、1993年〜1997年)
『源氏物語』新編日本古典文学全集(全6巻)阿部秋生他(小学館、1994年〜1998年)
956名無氏物語:2009/03/08(日) 14:21:15 ID:JlYtFtgl
源氏物語の登場人物

『源氏物語』の登場人物は膨大な数に上るため、ここでは主要な人物のみ
を挙げる。

なお、『源氏物語』の登場人物の中で本名が明らかなのは光源氏の家来
である藤原惟光と源良清くらいであり、光源氏をはじめとして大部分の登
場人物は「呼び名」しか明らかではない。また、『源氏物語』の登場人物
の表記には、もともと作中に出てくるものと、直接作中には出てこず、『源
氏物語』が受容されていく中で生まれてきた呼び名のふた通りが存在する。
また作中での人物表記は当時の実際の社会の習慣に沿ったものであると見
られ、人物をその官職や居住地などのゆかりのある場所の名前で呼んだり、
「一の宮」や「三の女宮」あるいは「大君」や「小」君といった一般的な尊称や敬
称で呼んだりしていることが多いため、状況から誰のことを指しているのか判
断しなければならない場合も多いだけでなく、同じひとりの人物が巻によって、
場合によっては一つの巻の中でも様々な異なる呼び方をされることがあり、逆
に同じ表現で表される人物が出てくる場所によって別の人物を指していること
も数多くあることには注意を必要とする。
957名無氏物語:2009/03/08(日) 14:22:43 ID:JlYtFtgl
光源氏
第1部・第2部の主人公。桐壺帝と桐壺更衣の子で桐壺帝第二皇子。
臣籍降下して源姓を賜る。いったん須磨に蟄居するが、のち復帰し、
さらに准太上天皇に上げられ、六条院と称せられる。原文では「君」
「院」と呼ばれる。妻は葵の上、女三宮、事実上の正妻に紫の上。
子は、夕霧(母は葵の上)、冷泉帝(母は藤壺中宮、表向きは桐壺
帝の子)、明石中宮(今上帝の中宮。母は明石の御方)。ほか養女に
秋好中宮(梅壺の女御)(六条御息所の子)と玉鬘(内大臣と夕顔の子)、
表向き子とされる薫(柏木と女三宮の子)がいる。
桐壺帝
光源氏の父。子に源氏のほか、朱雀帝(のち朱雀院)、蛍兵部卿宮、
八の宮などが作中に出る。末子とされる冷泉帝は、桐壺帝の実子で
なく、源氏の子。
桐壺更衣
桐壺帝の更衣。源氏が3歳のとき夭逝する。
藤壺中宮
桐壺帝の先帝の内親王。桐壺更衣に瓜二つであり、そのため更衣の死
後後宮に上げられる。源氏と密通して冷泉帝を産む。
葵の上
左大臣の娘で、源氏の最初の正妻。源氏より年上。母大宮は桐壺帝の
姉妹であり、源氏とは従兄妹同士となる。夫婦仲は長らくうまくいかな
かったが、懐妊し、夕霧を生む。六条御息所との車争いにより怨まれ、
生霊によって取り殺される。
958名無氏物語:2009/03/08(日) 14:24:03 ID:JlYtFtgl
頭中将/内大臣
左大臣の子で、葵の上の同腹の兄。源氏の友人でありライバル。恋愛・
昇進等で常に源氏に先んじられる。子に柏木、雲居雁(夕霧夫人)、弘徽
殿女御(冷泉帝の女御)、玉鬘(夕顔の子、髭黒大将夫人)、近江の君など。
主要登場人物で唯一一貫した呼び名のない人物。
六条御息所
桐壺帝の前東宮(桐壺帝の兄)の御息所。源氏の愛人。源氏への愛着
が深く、その冷淡を怨んで、葵の上を取り殺すに至る。前東宮との間の
娘は伊勢斎宮、のちに源氏の養女となって冷泉帝の後宮に入り、秋好
中宮となる。源氏は御息所の死後、その屋敷を改築し壮大な邸宅を築
いた(六条院の名はここから)。
紫の上
藤壺中宮の姪、兵部卿宮の娘。幼少の頃、源氏に見出されて養育され、
葵の上亡き後、事実上の正妻となる。源氏との間に子がなく、明石中宮を
養女とする。晩年は女三宮の降嫁により、源氏とやや疎遠になり、無常を
感じる。
明石の御方
明石の入道の娘。源氏が不遇時にその愛人となり、明石中宮を生む。
不本意ながら娘を紫の上の養女とするが、入内後再び対面し、以後そ
の後見となる。
末摘花
常陸宮の娘。大輔の命婦の手引きで源氏の愛人となるが、酷く痩せて
いて鼻が象の様に長く、鼻先が赤い醜女。作品中最も醜く描かれてい
る。
959名無氏物語:2009/03/08(日) 14:39:29 ID:JlYtFtgl
女三の宮
朱雀院の第三皇女で、源氏の姪にあたる。藤壺中宮の姪であり、朱雀院
の希望もあり源氏の晩年、二番目の正妻となる。柔弱な性格。柏木と通じ、
薫を生む。
柏木
内大臣の長男。女三宮を望んだが果たせず、降嫁後六条院で女三宮と
通じる。のち露見して、源氏の怒りをかい、それを気に病んで病死する。
夕霧
源氏の長男。母は葵の上。母の死後しばらくその実家で養育されたのち、
源氏の六条院に引き取られて花散里に養育される。2歳年上の従姉であ
る内大臣の娘雲居雁と幼少の頃恋をし、のち夫人とする。柏木の死後、
その遺妻朱雀院の女二宮(落葉の宮)に恋をし、強いて妻とする。
960名無氏物語:2009/03/08(日) 14:40:25 ID:JlYtFtgl

第3部の主人公。源氏(真実には柏木)と女三宮の子。生まれつき身体か
らよい薫がするため、そうあだ名される。宇治の八の宮の長女大君、その
死後は妹中君や浮舟を相手に恋愛遍歴を重ねる。
匂宮
今上帝と明石中宮の子。第三皇子という立場から、放埓な生活を送る。
薫に対抗心を燃やし、焚き物に凝ったため匂宮と呼ばれる。宇治の八の
宮の中君を、周囲の反対をおしきり妻にするがその異母妹浮舟にも関心
を示し、薫の執心を知りながら奪う。
浮舟
八の宮が女房に生ませた娘。母が結婚し、養父とともに下った常陸で
育つ。薫と匂宮の板ばさみになり、苦悩して入水するが横川の僧都に
助けられる。
961名無氏物語:2009/03/08(日) 15:02:42 ID:JlYtFtgl
現代日本語
もともと『源氏物語』は作者と同じ時代、同じ環境を共有する読者のため
に書かれたと考えられており、作者と同じ時代、同じ環境を共有するだけ
でなく作者と直接の面識がある人間を読者として想定していたとする見解
もある。書かれた当時の『源氏物語』は周囲からは「面白い読み物」として
受け取られており、少し下がった時代でも、例えば当時12歳であった菅原
孝標女が特に誰の指導を受けると言うこともなく1人で読みふけっていたと
されている。しかし時代が経過するとともにこの物語が使用している日本語
が変化し物語が前提としている知識・常識が変化するとともに『源氏物語』
を気軽に読むことは困難になっていった。

現代の日本人にとっては『源氏物語』の原文は専門的な教育なしにはか
なり難しいもので、むしろ現代語訳で親しんでいる人のほうが多いといえ
る。数ある日本の古典文学の中でも恐らくその豊かな内容ゆえに最も現
代語訳が試みられており、また訳者に作家が多いのも特徴である。しば
しばこれらは翻訳者の名前をとって「与謝野源氏」、「谷崎源氏」といった
風に「○○源氏」と呼ばれている。学者・研究者による翻訳は比較的直訳・
逐語訳的な翻訳が多いのに比べて作家・小説家による翻訳は多くの場合
原文に対して叙述の順番を入れ替えたり和歌によるやりとりを普通の会話
文に直したり、原文とは視点を変えて叙述したりといった操作が行われてい
ることがあるため、そのような作品は単なる現代語訳ではなく翻案作品とし
て扱われることもある。
962名無氏物語:2009/03/08(日) 15:05:10 ID:JlYtFtgl
与謝野晶子訳
与謝野晶子は生涯に3度現代語訳を試みた。与謝野晶子は、12歳当時
に源氏物語を原文で素読していたことを後に自身の歌に中に詠み込ん
でおり、さまざまな創作活動の中に源氏物語の大きな影響を読み取る
ことが出来る。

一度目の翻訳は与謝野夫妻の支援者であった実業家(小説家でもある)
の小林政治の依頼により100か月で完成させることを目標に始められた
もので、1912年(明治45年)2月から1913年(大正2年)11月にかけて「新
訳源氏物語」上、中、下一、下二巻として、金尾文淵堂から出版され、1
914年12月に4冊ものの縮刷版が刊行されている。これは全文の翻訳で
はなくダイジェストであるが通常これが源氏物語の最初の現代語訳であ
るとされている。この最初の翻訳には与謝野晶子の夫与謝野鉄幹の手
も入っているとする見解もある。

これは『源氏物語』の専門家でない森鴎外が校訂に当たっているなど
といった問題もあり、その後再度『新新訳源氏物語』として翻訳を試み
ていた(二回目)が「宇治十帖の前まで終わっていた」とされる。この時
の原稿は1923年9月の関東大震災により文化学院に預けてあった原
稿が全て焼失したため世に出ることはなかったとされている。

963名無氏物語:2009/03/08(日) 15:05:55 ID:JlYtFtgl
現在通常流布しているのは晩年の1938年(昭和13年)10月から1939年
(昭和14年)9月にかけて「新新訳源氏物語」(第一巻から第六巻まで)
として金尾文淵堂から出版された三回目のものである。1939年10月完
成祝賀会が上野精養軒にて開催されており、同人はこれを「決定版」と
している。この翻訳は当時まだ学術的な校訂本がなかったことから「流
布本」であった『源氏物語湖月抄』の本文を元にしていたとされる。原文
にない主語を補ったり作中人物の会話を簡潔な口語体にするなど大胆
な意訳と、敬語を中心とした大幅な省略で知られている。それに対して
歌の部分については歌人らしく、「和歌は源氏物語にとって欠かせない
重要な要素である」としていずれの翻訳も全く手を加えることなくそのま
ま収録しており、他の翻訳が行っているような和歌の部分を会話文に改
めるといったことをしていない。また新新訳では各帖の冒頭に自身の和
歌を加えている。
964名無氏物語:2009/03/08(日) 15:07:08 ID:JlYtFtgl
また池田亀鑑の解説を加えたものが1954年(昭和29年)10月から1955年
(昭和30年)8月にかけて「全訳源氏物語」として全9冊で角川文庫から出
版されており、1971年(昭和46年)8月から1972年(昭和47年)2月にかけ
て全3冊に合本・改版され、さらに2008年に源氏物語千年紀を記念して
「全訳源氏物語 新装版」として再度全5冊に改版されている。この他に
1948年には日本社から日本文庫で、1951年には三笠書房から三笠文
庫で、1976年(1987年には新装版)には河出書房新社から日本古典文
庫で、2002年には勉誠出版発行の鉄幹晶子全集の第7巻及び第8巻と
して、2005年から2006年には舵社からデカ文字文庫でと数多くの出版
社から刊行されている。これとは別に最初の翻訳も後の翻訳より読み
やすいといった評価があったことから2001年(平成13年)に角川書店
から単行本として出版されており、さらに2008年(平成20年)に『与謝野
晶子の源氏物語』として全3冊で角川文庫ソフィアに収められた。どちら
の翻訳も1942年(昭和17年)5月29日に与謝野晶子が死去したため1993年
に著作権の保護期間が満了しており、パブリック・ドメインで利用できるため
青空文庫などに収録されている
965名無氏物語:2009/03/08(日) 15:08:45 ID:JlYtFtgl
谷崎潤一郎訳
谷崎潤一郎も生涯に3度現代語訳を試みた。

最初は1935年(昭和10年)9月に『源氏物語湖月抄』の本文を元にして着
手された。山田孝雄の校閲を受けながら進められ、1939年(昭和14年)
から1941年(昭和16年)にかけて中央公論社から『潤一郎訳源氏物語』
全26巻として刊行された。これは「旧訳」、「26巻本」などと呼ばれている。
当時の社会情勢から中宮の密通に関わる部分など皇室にわたる部分に
ついては何箇所か削除されている。

2度めは上記の削除部分を復活するとともに全編にわたって言葉使いを
読みやすいように改め、1951年(昭和26年)から1954年(昭和29年)12月
にかけて『潤一郎新訳 源氏物語』全12巻として刊行された。これは「新訳」、
「12巻本」などと呼ばれており、豪華版全5巻別巻1や新書版全8巻も刊行さ
れている。

3度めは中央公論社版「日本の文学」に収録するために改稿に着手され、
1964年(昭和39年)から1965年(昭和40年)にかけて『潤一郎新々訳 源氏
物語』全11巻として刊行された。これは「新々訳」、「11巻本」などと呼ばれ
ている。口述筆記のせいもあって、新仮名遣いになっている。与謝野晶子
訳とは対照的に、原文の文体を生かしつつやや古風な訳文となっている。

谷崎潤一郎はこれを「決定版である」としており1968年から1970年にかけ
て刊行され、のち1974年から1975年にかけて普及版が、1983年に愛読愛
蔵版が刊行された『谷崎潤一郎全集』の第25巻〜第30巻にも収録されて
いる。1973年(昭和48年)の中公文庫創刊と供に全5巻で『潤一郎訳 源氏
物語』が出され、1991年(平成3年)に改版された。また豪華版は1966年
(昭和41年)に全5巻別巻1で、1992年(平成4年)には全1巻本も出された。
966名無氏物語:2009/03/08(日) 15:09:30 ID:JlYtFtgl
窪田空穂訳
歌人であり、国文学者でもある窪田空穂の翻訳は『現代語訳源氏物語』
として1939年(昭和14年)から1943年(昭和18年)にかけて改造社から全
8冊で出版された。戦後1947年(昭和22年)から1949年(昭和24年)にか
けて再度改造社から出版された後、1967年に角川書店が発行した『窪田
空穂全集』の27巻及び28巻におさめられた。窪田空穂にはこれとは別に
抄訳があり、春秋社から出版されている。
967名無氏物語:2009/03/08(日) 15:10:44 ID:JlYtFtgl
円地文子訳
円地文子の現代語訳は1967年7月に着手され、玉上琢弥、犬養廉、清水
好子、竹西寛子、阿部光子などの協力を得ながら1972年から1973年にか
けて全10巻で新潮社から刊行され、1980年、新潮文庫に全5巻で収録、
2008年に全6巻に改版された。様々な箇所に原文にはない全く創造的な
加筆を行っておりそれが特徴の一つとなっている。円地は1975年(昭和50年)
5月に公演された歌舞伎『源氏物語葵の巻』の台本も手がけているほか、
現代語訳の過程で生まれたエッセイ『源氏物語私見』(新潮社、1974年
(昭和49年)、のち1985年に文庫化(新潮文庫)、2004年に「なまみこ物
語」と合わせて講談社文芸文庫に収録)、『源氏物語の世界・京都』(平
凡社、1974年(昭和49年))、『源氏物語のヒロインたち』(講談社、1987年
(昭和62年))など、源氏物語関係の著作も多い[59]。また2007年には竹
下景子による朗読CD(現在桐壺から夕顔まで2巻)が新潮社から商品化
されたいる。
968名無氏物語:2009/03/08(日) 15:12:00 ID:JlYtFtgl
田辺聖子訳
田辺聖子の現代語訳は『新源氏物語』として1974年(昭和49年)11月か
ら1978年(昭和53年)1月にかけて『週刊朝日』で連載された後、1978年
(昭和53年)から1979年(昭和54年)にかけて全5巻で新潮社から刊行さ
れ、のち1984年(昭和59年)5月に新潮文庫に収録された。当初書かれ
たのは「幻」巻部分までで、それ以降の部分は1985年(昭和60年)10月
から1987年(昭和62年)7月まで『DAME』で連載されたが同誌の休刊に
より「宿木」巻の途中までで中断し、残りの部分は書き下ろしで執筆され
て1991年(平成2年)5月に新潮社から「新源氏物語 霧ふかき宇治の恋」
として出版され、のち1993年(平成5年)11月に新潮文庫に収録された。
2004年に出版された『田辺聖子全集』では全24巻中第7巻および第8巻
の2巻がこれに当てられており、「霧ふかき宇治の恋」を含めた全体を
「新源氏物語」としている。原文の巻序に従っておらず全体の構成を入
れ替えており、「空蝉の巻」から始まっていることや原文の中で登場人
物達が和歌で伝えようとしていることを通常の会話文に直しているなど
原文を大幅に直している部分があるため「単なる現代語訳」ではなく
「翻案作品」であるとされることも多い。田辺聖子には光源氏の従者で
ある藤原惟光の視点から描いた「私本・源氏物語」(1980年、全1巻)と
いう著作もある。
969名無氏物語:2009/03/08(日) 15:19:58 ID:JlYtFtgl
橋本治訳
橋本治の現代語訳は『窯変 源氏物語』のタイトルで1991年5月から1993年
にかけて中央公論社から全14巻で刊行され、後に1995年11月から1996年
10月にかけて中公文庫に収録された。橋本治本人はこの作品を、「紫式部
の書いた『源氏物語』に想を得て、新たに書き上げた、原作に極力忠実であ
ろうとする一つの創作、一つの個人的解釈である」としており、基本的に光源
氏と薫からの視点で書かれており、大幅な意訳になっている部分もある事な
どから、 単なる「現代語訳」ではなく「翻案作品」であるとされることも多い。橋
本治には『源氏供養』というタイトルの源氏物語のエッセイがあり、上記の現代
語訳に関する話題も収録されている。
970名無氏物語:2009/03/08(日) 15:20:51 ID:JlYtFtgl
瀬戸内寂聴訳
瀬戸内寂聴の現代語訳は1996年12月から1998年にかけて講談社から
全10巻で刊行され、2001年9月から2002年6月にかけて「新装版」が、
2007年1月から10月にかけて講談社文庫で出された。瀬戸内寂聴には
女性の視点から描いた『女人源氏物語』という1988年から1989年にかけ
て小学館から全5巻で出版されのち集英社文庫に収録された翻案作品
のほか、『わたしの源氏物語』(小学館、1989年7月のち1993年6月に集
英社文庫に収録)、『歩く源氏物語』(講談社、1994年9月)、『源氏物語
の脇役たち』(岩波書店、2000年3月)、『痛快!寂聴源氏塾』(集英社イン
ターナショナル、2004年3月のち2007年3月に『寂聴源氏塾』として軽装版
を刊行)など、源氏物語関係の著作が多くある。また「源氏」関連の講演
や行事等にも積極的に関わっている。
971名無氏物語:2009/03/08(日) 16:18:16 ID:JlYtFtgl
大塚ひかり訳
大塚ひかりによる現代語訳は『大塚ひかり全訳源氏物語』としてちくま文
庫から2008年より刊行開始された。全6巻の予定。「読んで分かる原文重
視の逐語訳」を目標に、「敬語・謙譲語を抑さえる」、「『ひかりナビ』と称す
る説明文を付け加える」、「あえて原文を随所に配する」という3つの工夫を
行っている。同人には、『もっと知りたい源氏物語』(日本実業出版社、
2004年4月)や、『源氏の男はみんなサイテー 親子小説としての源氏物
語』(マガジンハウス、1997年11月)、『カラダで感じる源氏物語』筑摩書房
(筑摩文庫)、2002年10月)、『源氏物語の身体測定』三交社、1994年10月)
といった著作もある。
972名無氏物語:2009/03/08(日) 16:19:08 ID:JlYtFtgl
今泉忠義訳
本文は「青表紙系版本中最善本である」という理由で江戸時代の版本で
ある『首書源氏物語』によっている。「桜楓社版源氏物語」の現代語訳編
として企画され、1974年1月25日から1975年10月25日にかけて全10巻が
刊行された。「桜楓社版源氏物語」は現代語訳編の他に森昇一・岡崎正
継による本文編、語法編などからなる。その後1978年に『源氏物語 全
現代語訳』として講談社学術文庫に全20冊で収録され、全7冊で新装版
が2000年から2001年に刊行されている。
973名無氏物語:2009/03/08(日) 16:19:57 ID:JlYtFtgl
玉上琢弥訳
底本は定家直筆本のあるものはそれを用い、存在しないものは明融臨
模本それも存在しなければ飛鳥井雅康本(大島本)である。もともとは
1964年から1969年にかけて角川書店から出版された『源氏物語評釈』
の中の現代語訳に原文脚注索引を付けたもので1964年から1975年に
かけて角川文庫より刊行(後に角川ソフィア文庫)。原文に近い訳であ
るが現代語訳を独立して読めるようになっている。なお、十巻巻末には
国宝源氏物語絵巻の解説索引がある。
974名無氏物語:2009/03/08(日) 16:20:28 ID:JlYtFtgl
尾崎左永子訳
1997年から1998年にかけて「新訳源氏物語」として小学館より全4巻で刊
行された。
975名無氏物語:2009/03/08(日) 16:21:02 ID:JlYtFtgl
中井和子訳
15年がかりで翻訳を仕上げたとされる『現代京ことば訳 源氏物語』が
1991年に大修館書店から全3巻で刊行され、2005年に全5巻の新装版
として刊行された。KBS京都から北山たか子による朗読CDも発売され
ている。
976名無氏物語:2009/03/08(日) 16:22:17 ID:JlYtFtgl
他に、鈴木正彦による訳(1926年、第百書房)や上野榮子による訳
(2008年、日本経済新聞出版社)などの他、2008年には9人の現代
作家がそれぞれ源氏物語の翻訳に取り組むという企画が行われ、
江國香織(夕顔)、角田光代(若紫)、町田康(末摘花)、金原ひとみ
(葵)、島田雅彦(須磨)、桐野夏生(柏木)、小池昌代(浮舟)、日和
聡子(蛍)、松浦理英子(帚木)[62]らがそれぞれ源氏物語の新訳・
超訳に挑戦するなど、新たな翻訳が生み出されつつある。
977名無氏物語:2009/03/08(日) 16:23:00 ID:JlYtFtgl
『源氏物語』は、日本文学の代表的なものとして、多くの言語に翻訳され
ている。さらに、重訳や抄訳も含めると、現在、20言語以上の翻訳が確認
できるとのことである。
978名無氏物語:2009/03/08(日) 16:24:56 ID:JlYtFtgl
最初の外国語への翻訳は、恐らく末松謙澄による英訳である。
これは彼がイギリスのケンブリッジにいた時になされたもので、1882年に
出版された。しかし、抄訳であることに加えて、翻訳の質が悪いことから、
当時においても殆ど注目されなかった(後述のウェイリーは、参照してい
たようである)。今日でも一部の研究者以外に省みられることはない。

続いて、ブルームズベリー・グループのアーサー・ウェイリーにより、『源
氏物語』は西洋世界に本格的に紹介されることになる。1925年に「桐壺」
から「葵」までを収めた第1巻が出版され、1933年に「宿木」から「夢浮橋」
までを収めた第6巻が出て完結した。ウェイリーは語学の天才であるのみ
ならず、文学的才能をも持ち合わせていた。彼が翻訳者であったという幸
運もあって、源氏物語は多くの読者を持つことなり、当時の文学界の話題
ともなった。その読者の中には、同じくブルームズベリーのヴァージニア・
ウルフもいた。『源氏物語』が高い評価をもって受け入れられたのは、時代
性もあると言われる。当時、西欧では新しいタイプの心理小説が流行してい
た。ほぼ同じ時期にマルセル・プルースト『失われた時を求めて』の英訳も刊
行され始めた事も重なる。『源氏物語』は、このいわゆる「意識の流れ」に近い
文体を持っており、これが正当な評価を獲得した一つの理由である。ウェイリ
ー訳は、世界で広く重訳されており、2008-09年にはウェイリー訳を元版
に邦訳された「源氏物語」が平凡社ライブラリー全4巻で刊行される。

ウェイリーの訳は、かなり自由な意訳を行っており、当時の文学界にあわ
せた華麗な文体を用いている。また、省略箇所が多く、誤訳が指摘もされ
ていた。日本文学研究者のエドワード・サイデンステッカーの訳(1976年)
は、ウェイリー訳の欠点を改善し、戦後の文学的傾向に合わせて、文章
の装飾を落とし、原文に近づける努力がなされている。ロイヤル・タイラー
の訳(2001年)は一層この傾向を強めたもので、豊富な注を持ち、学問的
な精確さを持っている。他に、英訳で重要なものとしては、抄訳ではあるが、
ヘレン・マカラウのものがある(1994年)。
979名無氏物語:2009/03/08(日) 16:49:05 ID:JlYtFtgl
フランス語訳
フランスでは、日本学の権威ルネ・シフェールが翻訳に当たった
(1988年に公刊)。現在まで、仏語圏における唯一の完訳であり、
また訳の質も非常に高く、評価を得ている。
980名無氏物語:2009/03/08(日) 16:49:41 ID:JlYtFtgl
ドイツ語訳
オスカー・ベンルが原文から訳し、これも優れた訳と評価がある。
981名無氏物語:2009/03/08(日) 17:04:41 ID:JlYtFtgl
ロシア語訳
タチヤーナ・ソコロワ=デリューシナの翻訳がある。
982名無氏物語:2009/03/08(日) 17:05:15 ID:JlYtFtgl
チェコ語訳
福井県立大学教授カレル・フィアラのチェコ語訳は現在進行中。
983名無氏物語:2009/03/08(日) 17:05:55 ID:JlYtFtgl
フィンランド語訳
参議院議員の弦念丸呈(ツルネン・マルテイ)が1980年にフィンランド語
の翻訳(但し抄訳)を出版している。
984名無氏物語:2009/03/08(日) 17:06:40 ID:JlYtFtgl
スウェーデン語訳
アーサー・ウェイリーの英語訳からの重訳(抄訳)が1927年に出版され
ている。
985名無氏物語:2009/03/08(日) 17:07:29 ID:JlYtFtgl
オランダ語訳
アーサー・ウェイリーの英語訳からの重訳(抄訳)が1930年に出版され
ている。
986名無氏物語:2009/03/08(日) 17:08:12 ID:JlYtFtgl
イタリア語訳
アーサー・ウェイリーの英語訳からの重訳(抄訳)が1944年に出版されて
いる。
987名無氏物語:2009/03/08(日) 17:08:50 ID:JlYtFtgl
中国語訳
原文からの完訳としては、豊子トの翻訳『源氏物語上・中・下』(人民文
学月報社、1980年から1982年)がある。また台湾では林文月の翻訳『源
氏物語上・下』(中外文学月報社、1982年)がある。
988名無氏物語:2009/03/08(日) 17:09:29 ID:JlYtFtgl
朝鮮語訳
田溶新の翻訳や柳呈の翻訳『源氏物語イヤギ(物語)』全3冊(ナナム出
版、2000年)がある。
989名無氏物語:2009/03/08(日) 17:20:15 ID:JlYtFtgl
発行部数
瀬戸内寂聴訳(全10巻 講談社) - 220万部
与謝野晶子訳(全3巻 角川文庫) - 172万部
谷崎潤一郎訳(全5巻 中公文庫) - 83万部
円地文子訳(全5巻 新潮文庫) - 103万部
田辺聖子訳(全5巻 新潮文庫) - 250万部
橋本治訳(全5巻 中公文庫) - 42万部
週刊朝日百科 世界の文学24 源氏物語(朝日新聞社) - 初版20万部が完売
大和和紀『あさきゆめみし』(全13巻 講談社) - 1800万部
990名無氏物語:2009/03/08(日) 17:21:56 ID:JlYtFtgl
中古期における『源氏物語』の影響は大まかに2期に区切ることができる。
第1期は院政期初頭まで、第2期は院政期歌壇の成立から新古今集撰進
までである。

第1期においては、『源氏物語』は上流下流を問わず貴族社会でおもしろ
い小説としてひろく読まれた。当時の一般的な上流貴族の姫君の夢は、
後宮に入り帝の寵愛を受け皇后の位に上ることであったが、『源氏物語』
は、帝直系の源氏の者を主人公にし彼の住まいを擬似後宮にしたて女君
たちを分け隔てなく寵愛するという内容で彼女たちを満足させ、あるいは人
間の心理や恋愛、美意識に対する深い観察や情趣を書きこんだ作品とし
て貴族たちにもてはやされたのである。この間の事情は菅原孝標女の『更
級日記』に詳しい。

すぐれた作品が存在し、それを好む多くの読者が存在する以上、『源氏
物語』の享受はそのままこれにつづく小説作品の成立という側面を持っ
た。中古中期における『源氏』受容史の最大の特徴は、それが『源氏』の
文体、世界、物語構造を受継ぐ諸種の作品の出現をうながしたところに
あるといえるだろう。11世紀より12世紀にかけて成立した数々の物語は、
その丁寧な叙述と心理描写のたくみさ、話の波乱万丈ぶりよりも決めこ
まやかな描写と叙情性や風雅を追求しようとする性向において、あきら
かに『宇津保物語』以前の系譜を断ちきり、『源氏物語』に拠っている。
それがあまりに過度でありすぎるために源氏亜流物語という名称さえ
あるほどだが、例えば『浜松中納言物語』『狭衣物語』『夜半の寝覚』
などは『源氏』を受継いで独特の世界をつくりあげており、王朝物語の
達しえた成熟として高く評価するに足るであろう。(なお、後期王朝物
語=源氏亜流物語には光源氏よりも薫の人物造型がつよく影響を与
えていることが知られる。源氏物語各帖のあらすじの「第三部」参照。)
991名無氏物語:2009/03/08(日) 18:29:11 ID:JlYtFtgl
平安末期には既に古典化しており、『六百番歌合』で藤原俊成をして「源
氏見ざる歌詠みは遺恨の事なり」と言わしめた源語は歌人や貴族のたし
なみとなっていた。このころには言語や文化の変化や流れに従い原典を
そのまま読むことも困難になってきたため、原典に引歌や故事の考証や
難語の解説を書き添える注釈書が生まれた。

その一方、仏教が浸透していく中で、「色恋沙汰の絵空事を著し多くの人
を惑わした紫式部は地獄に堕ちたに違いない」という考えが生まれ、「源
氏供養」と称した紫式部の霊を救済する儀式がたびたび行われた。これ
は後に小野篁伝説と結びつけられた。

江戸時代にはいると版本による源氏物語の刊行が始まり,裕福な庶民
にまで源氏物語が広く普及することになった。江戸時代後期には、当時
の中国文学の流行に逆らう形で、設定を室町時代に置き換えた通俗小
説ともいうべき『偐紫田舎源氏』(柳亭種彦著)が書き起こされ、「源氏絵」
(浮世絵の一ジャンル)が数多く作られたり歌舞伎化されるなど世に一大
ブームを起こしたが、天保の改革であえなく断絶した。
992名無氏物語:2009/03/08(日) 18:30:20 ID:JlYtFtgl
明治以後多くの現代語訳の試みがなされ、与謝野晶子や谷崎潤一郎の
訳本が何度か出版されたが、昭和初期から「皇室を著しく侮辱する内容
がある」との理由で、光源氏と藤壺女御の逢瀬などを二次創作物に書き
留めたり上演することなどを政府から厳しく禁じられたこともあり、訳本の
執筆にも少なからず制限がかけられていた。戦後はその制限もなくなり、
円地文子、田辺聖子、瀬戸内寂聴などの訳本が出版されている。また、原
典に忠実な翻訳以外に、橋本治の『窯変源氏物語』に見られる大胆な解釈
を施した意訳小説や、大和和紀の漫画『あさきゆめみし』や小泉吉宏の漫画
『まろ、ん』を代表とした漫画作品化などの試みもなされている。

現代では冗談半分で、『源氏物語』と純愛もののアダルトゲームやハー
レムアニメとのストーリーの類似性が指摘されることがあるが、「『源氏物
語』は猥書であり、子供に読ませてはならない」という論旨の文章は、既に
室町時代や江戸時代に存在している。

『源氏物語』は、海外にも少なからず影響を与えている。マルグリット・ユ
ルスナールは、『源氏物語』の人間性の描写を高く評価し、短編の続編
を書いた。

2008年には、京都市等が中心となって、『源氏物語千年紀』という形で各
種のイベントが11月を中心に開催され、今上天皇・皇后も臨席し、瀬戸内
寂聴、佐野みどり、ドナルド・キーン、平川祐弘等が参加、多数の講演・シ
ンポジウムを催した。
993名無氏物語:2009/03/08(日) 18:33:43 ID:JlYtFtgl
『源氏物語』については平安末期以降数多くの注釈書が作られた。『源氏
物語』の注釈書の中でも特に明治時代以前までのものを古注釈と呼ぶ。
一般には『源氏釈』から『河海抄』までのものを「古注」、『花鳥余情』から
『湖月抄』までのものを「旧注」、それ以後江戸時代末までのものを「新注」
と呼び分けている。『源氏釈』や『奥入』といった初期の注釈書はもともと
は独立した注釈書ではなく写本の本文の末尾に書き付けられていた注
釈が、後になって独立した1冊の書物としてまとめられたものである。

『源氏釈(げんじしゃく)』(平安時代末期、全1巻、藤原伊行) - 最も古い
源氏物語の注釈書。もともとは藤原伊行が写本に書き付けたもの。

『奥入(おくいり)』(1233年頃、全1巻、藤原定家) - もともとは藤原定家が
自ら作成した証本の本文の末尾に書き付けたもの。池田亀鑑は写本にこ
の「奥入」があるかどうかを写本が青表紙本であるかどうかを判断する条
件に挙げている。大島本や明融臨模本に書かれている「第一次奥入」と
定家自筆本に書かれている「第二次奥入」とがある。

『水原抄(すいげんしょう)』(13世紀中頃、源親行) - 現在は散逸

『紫明抄(しめいしょう)』(13世紀後半、全10巻、素寂)

『異本紫明抄(いほんしめいしょう)』(著者未詳) - 諸注を集成したもの。
『河海抄』の説を全く引用していないので、それ以前の成立であると思わ
れる。

『弘安源氏論議(こうあんげんじろんぎ)』(1280年(弘安3年)、源具顕)
- 最古の討論形態の注釈書。飛鳥井雅有等8名が参加。

『原中最秘抄(げんちゅうさいひしょう)』(1364年 源親行) - 最古の秘伝
書形態の注釈書。「水原抄」中の最も秘たる部分を抄録して諸家の説を
加えたとされる。
994名無氏物語:2009/03/08(日) 18:34:46 ID:JlYtFtgl
『河海抄(かかいしょう)』(1360年代、全20巻、四辻善成) - 『源氏物語』
の著作の由来、物語の時代の準拠、物語の名称、作者の伝や旧跡、物
語と歌道の関係等について幅広く述べている。全体を通して、これ以前
の考証に詳しく触れるとともに「今案」として自説も多く述べている。

『仙源抄(せんげんしょう)』(1381年、長慶天皇) - 最古の辞書形態の注
釈書。源氏物語の語句約一千をいろは順に並べた辞書。
995名無氏物語:2009/03/08(日) 18:35:55 ID:JlYtFtgl
『珊瑚秘抄(さんごひしょう)』(1397年、四辻善成) - 源氏物語の注釈書
『河海抄』の秘説書。『河海抄』で注を省略した秘説を三十三条集めたも
の。

『源氏物語年立(げんじものがたりとしだて)』(1453年、一条兼良) - 源氏
物語の作品世界内における出来事を時間的に順を追って記したもの

『花鳥余情(かちょうよせい、かちょうよじょう)』(1472年、全30巻、一条兼
良) - 冒頭部分の自序において「『河海抄』の足りない部分、誤っている
部分を正しくするため著した」とを述べている。また注釈の特徴としては、
単に語句のみを採り上げるのではなく長く文を引用して説明していること
と、著者自身が左大臣関白を勤ていたため有職故実に関して詳しく正確
であることが挙げられる。

『弄花抄(ろうかしょう)』(1504年、三条西実隆)

『細流抄(さいりゅうしょう)』(1510年、三条西実隆)

『孟津抄(もうしんしょう)』(1575年、九条稙通)

『岷江入楚(みんごうにっそ)』(1598年、中院通勝)

『首書源氏物語(しゅしょげんじものがたり)』(1673年、一竿斎)

『湖月抄(こげつしょう)』(1673年、全60巻、北村季吟)

『源語拾遺(げんごしゅうい)』(1698年、契沖)

『源氏物語玉の小櫛(げんじものがたりたまのおぐし)』(1796年、全9巻、
本居宣長) - 「もののあはれ」を提唱。
996名無氏物語:2009/03/08(日) 18:38:12 ID:JlYtFtgl
後人が『源氏物語』の欠を補った作。作者自身が別人であることを明かし
ているか、別作者であることが明らかである形で伝えられているため、
狭義の偽作には含まれないが関連して論じられることは多い。まとまっ
た補作が存在する場所は下記のように限られている。

「桐壺」と「帚木」の間を補うもの
『手枕』(1763年、全1巻、本居宣長) -「桐壺」と「帚木」の間を埋める。
六条御息所と光源氏のなれそめを書く
『藤壺』(2004年、全1巻、瀬戸内寂聴) -「輝く日の宮」を補完する短編。
光源氏と藤壺が初めて結ばれるまでを書く。現代文の他、古文体も併記。

「雲隠」の欠落を補うもの
「雲隠」(雲隠六帖)(室町時代、作者不詳)-源氏の出家失踪を描く
『源氏の君の最後の恋』Le Dernier Amour de Prince Genghi(1984年、
短編集『東方綺譚』に収録、マルグリット・ユルスナール) -「雲隠」を補完
する短編。源氏の最期を花散里が看取る

「夢浮橋」の後を補う後日譚
『山路の露(やまじのつゆ)』(鎌倉時代、作者不詳、一説には建礼門院右
京大夫とも) -宇治十帖「夢浮橋」の後日譚。薫と浮舟の再会を書く

『雲隠六帖』(「雲隠」を除く。室町時代、作者不詳) -源氏物語の後日譚。
1雲隠(源氏の出家失踪)、2巣守(匂宮の即位と薫、浮舟の結婚)、3桜人、
4法の師(薫、浮舟の出家)、5雲雀子(薫の霊が息子に出家のすすめ)、
6八橋(匂帝に帝位のまま悟るようにとの教え)、あとがき(康平元年戊戌
年(1058年)正月大僧都、信誉のものと元応元年(1319年)9月藤原親兼
の2系統)

『稲妻』(2000年、ライザ・ダルビー)-同人による「紫式部物語」の下巻・
巻末に収録。「夢浮橋」の後を補う巻。薫と浮舟のその後を書く
997名無氏物語:2009/03/08(日) 18:39:11 ID:JlYtFtgl
源氏物語の成立事情をテーマにした作品

『輝く日の宮』丸谷才一(2003年6月、全1巻、講談社)、(2006年6月15日、
講談社文庫) -最後の章を失われた「輝く日の宮」の復元にあてる
『紫式部物語―その恋と生涯』The Tale of Murasaki(2000年、日本語版
は上下2巻、ライザ・ダルビーLiza Dalby)-紫式部の娘から孫に伝えられ
た、紫式部が自らの生涯を記した日記という形で、「源氏物語」執筆の背
景などを描く
「GEN 『源氏物語』秘録」井沢元彦(角川書店、1995年10月27日) 、(実業
之日本社、1997年11月25日)、(角川書店(文庫)、1998年10月25日)
998名無氏物語:2009/03/08(日) 18:39:41 ID:JlYtFtgl
意訳小説
「新源氏物語」(1978-79年、全5巻、田辺聖子)
「私本・源氏物語」(1980年、全1巻、田辺聖子) -光源氏の従者の視点から書く
「女人源氏物語」(1988-89年、全5巻、瀬戸内寂聴) -光源氏の女君たちの視点から書く
「窯変 源氏物語」(1991-93年、全14巻、橋本治) -光源氏の視点から書く
999名無氏物語:2009/03/08(日) 19:13:48 ID:w+r/d2Ng
これだけ盛大にやると出典を示さないとまずくない?
1000名無氏物語:2009/03/08(日) 19:16:44 ID:JlYtFtgl
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