>>105 ↓ご参考までに。(いずれも、貝原益軒『和俗童子訓』巻之三より)
「凡(そ)書をよむには、はやく先をよむべからず。毎日返りよみを専つとむべし。返りよみを数十遍つとめ、をはりて、其先をよむべし。
〈中略〉一巻にても、よくおぼゆれば、学力となりて功用をなす。必(ず)よくおぼ(覚)ふべし。書をよんでも学すすまざるは、熟読せずして、おぼえざれば也。
才性あれば、八歳より十四歳まで、七年の間に、小学、四書、五経等、皆読をはる。四書、五経熟読すれば、才力いでき、学問の本たつ。其ちからを以(て)、やうやく年長じて、ひろく群書を見るべし」
「四書を、毎日百字づつ百へん熟誦して、そらによみ、そらにかくべし。字のおき所、助字のあり所、ありしにたがはず、おぼへよむべし。
是ほどの事、老らくのとしといへど、つとめてなしやすし。況、少年の人をや。四書をそらんぜば、其ちからにて義理に通じ、もろもろの書をよむ事やすからん。
〈中略〉論語は一万二千七百字、孟子は三万四千六百八十五字、大学は経伝を合せて千八百五十一字、中庸は三千五百六十八字あり。四書すべて五万二千八百四字なり。
一日に百字をよんでそらに記ゆれば、日かず五百廿八日におはる。十七月十八日なれば、一年半にはたらずして其功おはりぬ。はやく思ひ立ちて、かくの如くすべし。これにまされる学問のよき法なし。其れつとめやすくして、其功は甚だ大なり。
わがともがら、わかき時、此良法をしらずして、むなしく過ごし、今八そぢになりて、年のつもりに、やうやう学びやうの道すこし心に思ひしれる故、今更悔甚し。
又、尚書の内、純粋なる数篇、詩経、周易の全文、礼記九万九千字の内、其精要なる文字をゑらんで三万字、左伝の最(も)要用なる文を数万言、是も亦日課を定めて百遍熟読せば、文学におゐて、恐らくは世に類なかるべし。是学問の良法なり」