厨房、工房のための現代語訳解説

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419名無氏物語
沙石集の『歌ゆゑに命を失ふ事』の現代語訳を教えてください。

さて、すでに御前にて講じて、判是られるけるに、
兼盛がうたに「つつめども 色に出でにけり 我が恋は ものや思うふと 人の問ふまで」
判者ども、名歌なりければ、判じわづらひて、天気をうかがひけるに、
帝、忠見が歌をば、両三度御詠ありけり。
兼盛が歌をば多反御詠ありけるとき、天気左にありとて、兼盛勝ちにけり。
忠見心憂くおぼえて、胸ふさがりて、不食の病つきてけり。
頼みなきよし聞きて、兼盛とぶらひければ「別の病にあらず。
御歌合のとき、名歌よみ出だして、おぼえ侍りしに、殿の『ものや思ふまで』に、
あはと思ひて、あさましくおぼえしより、
胸ふさがりてかく重り侍りぬ」と、つひにみまかりにけり。
執心こそよしなけれども、道を執するならひ、あはれにこそ。
ともに名歌にて、拾遺に入りて侍るにや。