センター試験の国語1・2の古文問題第4問

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さて、14=20氏が引用した、「青鹿毛」が泣くシーンの前の部分について、
面白い記述があるのでちょっとご紹介したい。長くなり、また一部重複することをご甘受願いたい。

日光山二荒山神社の縁起について、成立の経緯が述べられたあとに続く部分。
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抑花落に一人の雲客おはしき、有宇中将と申き才芸世にすぐれ、忠勤人に超え給しかば、
御心の御おぼえ人のおもくする所、ものことにかたをならぶる人なかり侍にしかるにいかなる宿縁にや、
明暮、鷹を好給けり、さる程に霞たつ春の朝には、かた山きぎすのおちかたを尋て日をくらし、
嵐ふく秋の夕には、はつ鳥狩の野遊に興をもようして時をうつし給し程に、
花下に筆硯をならす御遊には、竜顔にまみゑずして日をおくり、
月の前に、絃歌にたづさはる興宴には、鳳闕をへだてて夜をかさね給しあいた、
律は懲粛を宗とし、令は勧誡を本とするならひなれば、御勘気のよし宣下あり、
中将おぼしけるは、夙夜の勤労なければつみをかぶる是君をも世をも恨奉へからず、
野遊をとどめんとすれば、鷹も犬も心あること人倫に過ぎたり、かれらの心さしをもたさんも不便なり、
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しかしいかならん野のすゑ、山のおくにも立ちかくれんにはと、おぼしめし、
青鹿毛という御馬にむかひ仰けるは、「我勅勘をかふれり、いつちにても、心しづかならん所へおくりてんや」と
の給けれは、馬涙をながして、たちよりのせ奉り、人は一人にてもめし供すべからず、
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鷹と犬とは御とも申すべきよし仰せければ、鷹は雲の上にて、大鷹のせをなりけるか御手にとびうつりければ、
犬は阿久多丸とて頭しろく尾くろかりけるが、御さきに立ちつつ、
ともになみだをながして、都をあくがれいでさせ給けり。

愛媛県大洲宇都宮神社日光山縁起 愛媛出版協会 1981.3 三宅千代二/編著