７さいちゃん ◆mZrPhcLBEgの夢夢ランド

　　　　　　　.::.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞ,: :　　　　　::ﾞ､::::::::::::ﾞ.ヽ.､::::::::::::::::/:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｌｌヽ､　　　 ::　ｌ､:::::::::::::::::::::::ﾞヽ.､::/,.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|ｌ,　　＼　∴: ｌ:::ﾞヽ､::::::::::::::::::::::::":::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ./∵..　　 ＼:::/::,.'　∴..､::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　 /::,'　　　　 ﾞ.､.､::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　 　∴　 /ヽ.､　　　　　 ﾞ.､＼:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　　　/'"／ ヽ､∵　　 ∴.､::＼:::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,:::／ ∵　　 　／ '"∵　　ﾞ､　　　　:. ｌ_:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./／　　　　　／'"　　　　　. ﾞ､∵ :: ,／ ﾞ､:::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /'"　　　　　／　　　　　　　　 .ｌ ,.,‐'"　　::ﾞ,::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　 ,..'"　　　　　　 ∴,.,.-‐'"　　　　 :::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　 '"　　　　　,.,.:-‐''"~　　　　　　　　::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/∴　 　　　∵　,.-‐'"　　　　　　　　　　　　　:ｌ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　./　　　　　　,..-''‐''"　　　　　　　　　　　　　　　/::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.／＿∴,.-‐'"~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　,..‐" ~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .,'::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　 ,..‐'"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::::::::::::
　　　　　　　　　　　　,...‐''"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::::,.／

身を乗り出し斜め後ろにむかって

「ビーバーさぁーん！！　逃げて！！！」

その瞬間、遠く川上で泳いでいるビーバーの目がキランと光ったように７さいには
見えました。　そしてビーバーは醤油の川深く潜っていきました。
もうこれで安心です。
ビーバーは生物学的にいうと鯨の親戚なので12時間は潜っていられるそうです。
12時間も経てばビーバーハンター社員だって帰るに違いありません。
そのビーバーハンター社員はボートの上に立ちアライグマの帽子を握りしめて
悔しげに忌々しげに７さいを睨んでいました。
あわてて７さいは座席にひっこみさらに飛行機が不時着するときの乗客の姿勢みたいに
両腿のあいだに頭をつっこみ窓から見えないように隠れました。
さすがにビーバーハンターもトロッコにむかってショットガンをぶっ放すようなことは
しません。しようものならここの猿車掌がだまってないからです。

「猿車掌はキチガイザル」

それは社員の間でも有名なトロッコ列車を語るときの合言葉でした。

”キチガイザル”こと猿車掌について少しお話しますと、この猿車掌は
とてつもなく凶暴でトロッコの文句を少しでも言おうものならば
ウンコを投げつけてきます。逃げても無駄で社員の何人かは自宅まで
追いかけられてウンコの洗礼を浴びたそうです。

ある社員は後ろに猿車掌が来たことがわからずに気付いたときには猿車掌が
後ろの髪の毛をライターでチリチリに焼いていました。

トロッコの汽笛が故障したとき、猿車掌は会社の通用門を時速60kmのスピードで
通過し、山里まで降りていってパーティーグッズの店からヘリウムガス（吸いこむ
と声が高くなって面白い、あれです）を強奪し、さらに帰りは時速120kmで会社へ
戻りトロッコの汽笛そっくりの音を用意したのです。そこまでにトロッコが好きな

　　　　　　　.::.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞ,: :　　　　　::ﾞ､::::::::::::ﾞ.ヽ.､::::::::::::::::/:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｌｌヽ､　　　 ::　ｌ､:::::::::::::::::::::::ﾞヽ.､::/,.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|ｌ,　　＼　∴: ｌ:::ﾞヽ､::::::::::::::::::::::::":::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ./∵..　　 ＼:::/::,.'　∴..､::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　 /::,'　　　　 ﾞ.､.､::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　 　∴　 /ヽ.､　　　　　 ﾞ.､＼:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　　　/'"／ ヽ､∵　　 ∴.､::＼:::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,:::／ ∵　　 　／ '"∵　　ﾞ､　　　　:. ｌ_:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./／　　　　　／'"　　　　　. ﾞ､∵ :: ,／ ﾞ､:::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /'"　　　　　／　　　　　　　　 .ｌ ,.,‐'"　　::ﾞ,::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　 ,..'"　　　　　　 ∴,.,.-‐'"　　　　 :::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　 '"　　　　　,.,.:-‐''"~　　　　　　　　::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/∴　 　　　∵　,.-‐'"　　　　　　　　　　　　　:ｌ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　./　　　　　　,..-''‐''"　　　　　　　　　　　　　　　/::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.／＿∴,.-‐'"~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　,..‐" ~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .,'::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　 ,..‐'"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::::::::::::
　　　　　　　　　　　　,...‐''"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::::,.／

　　　　　　　.::.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞ,: :　　　　　::ﾞ､::::::::::::ﾞ.ヽ.､::::::::::::::::/:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｌｌヽ､　　　 ::　ｌ､:::::::::::::::::::::::ﾞヽ.､::/,.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|ｌ,　　＼　∴: ｌ:::ﾞヽ､::::::::::::::::::::::::":::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ./∵..　　 ＼:::/::,.'　∴..､::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　 /::,'　　　　 ﾞ.､.､::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　 　∴　 /ヽ.､　　　　　 ﾞ.､＼:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　　　/'"／ ヽ､∵　　 ∴.､::＼:::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,:::／ ∵　　 　／ '"∵　　ﾞ､　　　　:. ｌ_:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./／　　　　　／'"　　　　　. ﾞ､∵ :: ,／ ﾞ､:::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /'"　　　　　／　　　　　　　　 .ｌ ,.,‐'"　　::ﾞ,::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　 ,..'"　　　　　　 ∴,.,.-‐'"　　　　 :::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　 '"　　　　　,.,.:-‐''"~　　　　　　　　::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/∴　 　　　∵　,.-‐'"　　　　　　　　　　　　　:ｌ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　./　　　　　　,..-''‐''"　　　　　　　　　　　　　　　/::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.／＿∴,.-‐'"~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　,..‐" ~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .,'::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　 ,..‐'"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::::::::::::
　　　　　　　　　　　　,...‐''"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::::,.／

のです。もちろん猿が普通にヘリウムを吸って奇声を発してもそれは
汽笛には聞こえませんよね？　でもいい方法があったのです。

トロッコを愛する猿車掌だからこそ発想、かつ実行できる荒業です。
みなさんもそのアイディアを気付きましたでしょうか？
そうです。猿車掌はヘリウムボンベの噴出し口をおのれの肛門に突き刺し
ヘリウムガスをこれでもかと云わんばかりに注入しました。トロッコ愛の成せる業です。
そして猿車掌のお尻からは「ぷぅーっ　ぷひぃー」ではなく
「ぴぃーっ！！　ぴっぴぃーぃぃ！！」と、まさにトロッコの汽笛としか思えない
音がけたたましく鳴り響いたのです。

猿車掌の話はここまでにしてトロッコ列車の７さいに話を戻すとします。

何分の間か股に頭を突っこんでいた７さいですが、そろそろいいだろうと思い
頭をもちあげ窓から外を見るともう、あの桟橋は100ｍほども後ろに遠ざかっていました。
一安心で右腕を窓から出してぶらぶらさせて気を緩めていたところ列車が赤い線を

　　　　　　　.::.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞ,: :　　　　　::ﾞ､::::::::::::ﾞ.ヽ.､::::::::::::::::/:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｌｌヽ､　　　 ::　ｌ､:::::::::::::::::::::::ﾞヽ.､::/,.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|ｌ,　　＼　∴: ｌ:::ﾞヽ､::::::::::::::::::::::::":::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ./∵..　　 ＼:::/::,.'　∴..､::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　 /::,'　　　　 ﾞ.､.､::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　 　∴　 /ヽ.､　　　　　 ﾞ.､＼:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　　　/'"／ ヽ､∵　　 ∴.､::＼:::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,:::／ ∵　　 　／ '"∵　　ﾞ､　　　　:. ｌ_:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./／　　　　　／'"　　　　　. ﾞ､∵ :: ,／ ﾞ､:::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /'"　　　　　／　　　　　　　　 .ｌ ,.,‐'"　　::ﾞ,::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　 ,..'"　　　　　　 ∴,.,.-‐'"　　　　 :::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　 '"　　　　　,.,.:-‐''"~　　　　　　　　::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/∴　 　　　∵　,.-‐'"　　　　　　　　　　　　　:ｌ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　./　　　　　　,..-''‐''"　　　　　　　　　　　　　　　/::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.／＿∴,.-‐'"~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　,..‐" ~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .,'::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　 ,..‐'"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::::::::::::
　　　　　　　　　　　　,...‐''"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::::,.／

　　　　　　　.::.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞ,: :　　　　　::ﾞ､::::::::::::ﾞ.ヽ.､::::::::::::::::/:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｌｌヽ､　　　 ::　ｌ､:::::::::::::::::::::::ﾞヽ.､::/,.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|ｌ,　　＼　∴: ｌ:::ﾞヽ､::::::::::::::::::::::::":::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ./∵..　　 ＼:::/::,.'　∴..､::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　 /::,'　　　　 ﾞ.､.､::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　 　∴　 /ヽ.､　　　　　 ﾞ.､＼:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　　　/'"／ ヽ､∵　　 ∴.､::＼:::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,:::／ ∵　　 　／ '"∵　　ﾞ､　　　　:. ｌ_:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./／　　　　　／'"　　　　　. ﾞ､∵ :: ,／ ﾞ､:::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /'"　　　　　／　　　　　　　　 .ｌ ,.,‐'"　　::ﾞ,::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　 ,..'"　　　　　　 ∴,.,.-‐'"　　　　 :::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　 '"　　　　　,.,.:-‐''"~　　　　　　　　::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/∴　 　　　∵　,.-‐'"　　　　　　　　　　　　　:ｌ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　./　　　　　　,..-''‐''"　　　　　　　　　　　　　　　/::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.／＿∴,.-‐'"~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　,..‐" ~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .,'::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　 ,..‐'"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::::::::::::
　　　　　　　　　　　　,...‐''"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::::,.／

横切りました。７さいは前にもこれを横切ったことがあるので知っていますが
これは日付変更線というものです。横切ると日付が変わるそうで、いまの場合
前の日に戻ります。この線は岸のこちら側にしかありません。

反対方向へ行くトロッコのレールは向こう岸にあるので日付は戻らずに済むのです。
この赤い線はこの会社の中にしかないという訳ではありません。
ゴキブリホイホイの中、下水道、ティッシュの箱の内側、テレビの裏、
ＣＤケース、無くなりかけのレジのレシート、引っぱりすぎた掃除機のコード、
至るところに存在するのです。
みなさんも赤い日付変更線を今までに見たことがあるかもしれませんね。
そして、よく「金曜日だと思ってたら木曜日だった」とかいうことがあるのは
この線を知らずに踏み越えているのかも知れません。

おっと、７さいがいつまでたっても７さいである秘訣をここで
バラしてしまいましたがもう話してしまったので仕方がありません。
みなさん、くれぐれもこのことは他言無用でお願いします。

　　　　　　　.::.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞ,: :　　　　　::ﾞ､::::::::::::ﾞ.ヽ.､::::::::::::::::/:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｌｌヽ､　　　 ::　ｌ､:::::::::::::::::::::::ﾞヽ.､::/,.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|ｌ,　　＼　∴: ｌ:::ﾞヽ､::::::::::::::::::::::::":::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ./∵..　　 ＼:::/::,.'　∴..､::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　 /::,'　　　　 ﾞ.､.､::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　 　∴　 /ヽ.､　　　　　 ﾞ.､＼:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　　　/'"／ ヽ､∵　　 ∴.､::＼:::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,:::／ ∵　　 　／ '"∵　　ﾞ､　　　　:. ｌ_:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./／　　　　　／'"　　　　　. ﾞ､∵ :: ,／ ﾞ､:::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /'"　　　　　／　　　　　　　　 .ｌ ,.,‐'"　　::ﾞ,::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　 ,..'"　　　　　　 ∴,.,.-‐'"　　　　 :::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　 '"　　　　　,.,.:-‐''"~　　　　　　　　::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/∴　 　　　∵　,.-‐'"　　　　　　　　　　　　　:ｌ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　./　　　　　　,..-''‐''"　　　　　　　　　　　　　　　/::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.／＿∴,.-‐'"~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　,..‐" ~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .,'::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　 ,..‐'"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::::::::::::
　　　　　　　　　　　　,...‐''"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::::,.／

　　　　　　　.::.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞ,: :　　　　　::ﾞ､::::::::::::ﾞ.ヽ.､::::::::::::::::/:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｌｌヽ､　　　 ::　ｌ､:::::::::::::::::::::::ﾞヽ.､::/,.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|ｌ,　　＼　∴: ｌ:::ﾞヽ､::::::::::::::::::::::::":::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ./∵..　　 ＼:::/::,.'　∴..､::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　 /::,'　　　　 ﾞ.､.､::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　 　∴　 /ヽ.､　　　　　 ﾞ.､＼:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　　　/'"／ ヽ､∵　　 ∴.､::＼:::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,:::／ ∵　　 　／ '"∵　　ﾞ､　　　　:. ｌ_:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./／　　　　　／'"　　　　　. ﾞ､∵ :: ,／ ﾞ､:::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /'"　　　　　／　　　　　　　　 .ｌ ,.,‐'"　　::ﾞ,::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　 ,..'"　　　　　　 ∴,.,.-‐'"　　　　 :::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　 '"　　　　　,.,.:-‐''"~　　　　　　　　::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/∴　 　　　∵　,.-‐'"　　　　　　　　　　　　　:ｌ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　./　　　　　　,..-''‐''"　　　　　　　　　　　　　　　/::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.／＿∴,.-‐'"~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　,..‐" ~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .,'::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　 ,..‐'"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::::::::::::
　　　　　　　　　　　　,...‐''"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::::,.／

でもここまで喋ってしまったからにはあなた達にも妙な疑問が沸くのでは
ないでしょうか、

「このあと、前の日になったまま７さいが家に帰ったら前の日の７さい
と鉢合わせしないのか？　もし、したら、どうなっちゃうんですか？
宇宙が爆発しちゃうとか聞いたこともあるし心配です」

そんな問い合わせの電話やお便りが届く前に、いまここで説明してしまいます。
７さいは夜の７時から８時頃には家に帰ります。
当然、前の日の７さいは部屋に居ます。必ずベッドで眠っているのです。
部屋へと７さいは入っていきます。
もちろん爆発とかしません。
宇宙も個人の問題でいちいち爆発してたら堪ったもんじゃありませんからね。
ベッドに寝ている旧７さいに７さいは話しかけます。

　　　　　　　.::.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞ,: :　　　　　::ﾞ､::::::::::::ﾞ.ヽ.､::::::::::::::::/:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｌｌヽ､　　　 ::　ｌ､:::::::::::::::::::::::ﾞヽ.､::/,.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|ｌ,　　＼　∴: ｌ:::ﾞヽ､::::::::::::::::::::::::":::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ./∵..　　 ＼:::/::,.'　∴..､::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　 /::,'　　　　 ﾞ.､.､::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　 　∴　 /ヽ.､　　　　　 ﾞ.､＼:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　　　/'"／ ヽ､∵　　 ∴.､::＼:::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,:::／ ∵　　 　／ '"∵　　ﾞ､　　　　:. ｌ_:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./／　　　　　／'"　　　　　. ﾞ､∵ :: ,／ ﾞ､:::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /'"　　　　　／　　　　　　　　 .ｌ ,.,‐'"　　::ﾞ,::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　 ,..'"　　　　　　 ∴,.,.-‐'"　　　　 :::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　 '"　　　　　,.,.:-‐''"~　　　　　　　　::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/∴　 　　　∵　,.-‐'"　　　　　　　　　　　　　:ｌ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　./　　　　　　,..-''‐''"　　　　　　　　　　　　　　　/::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.／＿∴,.-‐'"~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　,..‐" ~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .,'::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　 ,..‐'"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::::::::::::
　　　　　　　　　　　　,...‐''"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::::,.／

　７さい「起きて。起きてください。」

旧７さい「うぅん？　なぁに？」（寝ぼけマナコです）

　７さい「これで旅に出なさい。」（旧７さいに20円を渡す）

旧７さい「はぁーい。」（寝ぼけながらどこかへ旅立つ）

これでうまい事７さいの家には７さいが一人でいられます。
聞いてみたら「なぁーんだ。そんな簡単な事か。」とみなさんも思ったでしょう。
そうです。こういったパラドックスを解決するのは意外と簡単なのです。


まぁ、そんなこんなで無事、日付変更線を越えたトロッコですが
７さいの座席の後ろのほうから何やら声が聞こえます。鳴き声です。
「にぁーん　にぁーん」と聞こえます。だんだんその声が近づいてきた

　　　　　　　.::.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞ,: :　　　　　::ﾞ､::::::::::::ﾞ.ヽ.､::::::::::::::::/:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｌｌヽ､　　　 ::　ｌ､:::::::::::::::::::::::ﾞヽ.､::/,.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|ｌ,　　＼　∴: ｌ:::ﾞヽ､::::::::::::::::::::::::":::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ./∵..　　 ＼:::/::,.'　∴..､::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　 /::,'　　　　 ﾞ.､.､::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　 　∴　 /ヽ.､　　　　　 ﾞ.､＼:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　　　/'"／ ヽ､∵　　 ∴.､::＼:::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,:::／ ∵　　 　／ '"∵　　ﾞ､　　　　:. ｌ_:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./／　　　　　／'"　　　　　. ﾞ､∵ :: ,／ ﾞ､:::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /'"　　　　　／　　　　　　　　 .ｌ ,.,‐'"　　::ﾞ,::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　 ,..'"　　　　　　 ∴,.,.-‐'"　　　　 :::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　 '"　　　　　,.,.:-‐''"~　　　　　　　　::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/∴　 　　　∵　,.-‐'"　　　　　　　　　　　　　:ｌ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　./　　　　　　,..-''‐''"　　　　　　　　　　　　　　　/::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.／＿∴,.-‐'"~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　,..‐" ~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .,'::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　 ,..‐'"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::::::::::::
　　　　　　　　　　　　,...‐''"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::::,.／

かと思うと７さいは突然ふくらはぎをぽこぽこと叩かれました。
ビクっとして下をみると７さいの足を猫がジャブ攻勢でご自慢の肉球の
威力をためしています。
きょとんとしている表情の７さいをみて猫は効果がないと諦めたのか
今度は天井の幌をじっとみつめてアホ面をさらけ出しました。
まだレキシントンミュージックは鳴りつづけ、トロッコは進み、
アホ面の猫は上を向き、７さいは猫が気になっています。

とりあえず７さいは猫を抱き上げて自分の膝の上にのせてみました。
子猫ではないので７さいの両膝では少し狭くてグラグラしていますが
猫はバランスがいいので平気です。
猫には首輪が付いていました。輪っかに沿って小さい文字で長ったらしい文が
書いてあります。７さいはそれを読んでみることにしました。

「やぁ！今、ボクはひとりぼっちかい？　ボクの周りに飼い主が見あたらないなら
　それは飼い主かボクが迷子になってるってことだよね？

　　　　　　　.::.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞ,: :　　　　　::ﾞ､::::::::::::ﾞ.ヽ.､::::::::::::::::/:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｌｌヽ､　　　 ::　ｌ､:::::::::::::::::::::::ﾞヽ.､::/,.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|ｌ,　　＼　∴: ｌ:::ﾞヽ､::::::::::::::::::::::::":::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ./∵..　　 ＼:::/::,.'　∴..､::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　 /::,'　　　　 ﾞ.､.､::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　 　∴　 /ヽ.､　　　　　 ﾞ.､＼:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　　　/'"／ ヽ､∵　　 ∴.､::＼:::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,:::／ ∵　　 　／ '"∵　　ﾞ､　　　　:. ｌ_:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./／　　　　　／'"　　　　　. ﾞ､∵ :: ,／ ﾞ､:::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /'"　　　　　／　　　　　　　　 .ｌ ,.,‐'"　　::ﾞ,::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　 ,..'"　　　　　　 ∴,.,.-‐'"　　　　 :::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　 '"　　　　　,.,.:-‐''"~　　　　　　　　::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/∴　 　　　∵　,.-‐'"　　　　　　　　　　　　　:ｌ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　./　　　　　　,..-''‐''"　　　　　　　　　　　　　　　/::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.／＿∴,.-‐'"~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　,..‐" ~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .,'::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　 ,..‐'"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::::::::::::
　　　　　　　　　　　　,...‐''"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::::,.／

　すまないが、ボクを次の住所まで連れて行ってくれないかい。
　ボクは”シュレーディンガーの猫”　飼い主は勿論シュレーディンガーさ！！
　じゃあよろしく。　○○醤油工場内　温泉町○○番地」

温泉町はひとつめの駅の近くです。駅前からして温泉街といった風情の
この駅に７さいは降りたことがありません。いままで終点（折り返しの駅）
以外では今までいちども降りたことがないのです。
あの商品をくれたおじいさんも途中の駅のことは話してくれませんでした。
それは商品を売るのには関係がないから話さなかっただけです。
「途中の駅に降りたとき、切符をお猿に持っていかれたらどうしよう
　また切符もらえるのかな？」とか
いろいろな心配事が７さいの頭をよぎります。

７さいは猫をよいしょと抱きかかえ通路側のほうの景色を見ようと立ち上がりました。
通路側の窓からは少し遠くに温泉街の街はずれが見えました。
「どうしよう。。」

　　　　　　　.::.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞ,: :　　　　　::ﾞ､::::::::::::ﾞ.ヽ.､::::::::::::::::/:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｌｌヽ､　　　 ::　ｌ､:::::::::::::::::::::::ﾞヽ.､::/,.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|ｌ,　　＼　∴: ｌ:::ﾞヽ､::::::::::::::::::::::::":::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ./∵..　　 ＼:::/::,.'　∴..､::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　 /::,'　　　　 ﾞ.､.､::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　 　∴　 /ヽ.､　　　　　 ﾞ.､＼:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　　　/'"／ ヽ､∵　　 ∴.､::＼:::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,:::／ ∵　　 　／ '"∵　　ﾞ､　　　　:. ｌ_:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./／　　　　　／'"　　　　　. ﾞ､∵ :: ,／ ﾞ､:::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /'"　　　　　／　　　　　　　　 .ｌ ,.,‐'"　　::ﾞ,::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　 ,..'"　　　　　　 ∴,.,.-‐'"　　　　 :::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　 '"　　　　　,.,.:-‐''"~　　　　　　　　::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/∴　 　　　∵　,.-‐'"　　　　　　　　　　　　　:ｌ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　./　　　　　　,..-''‐''"　　　　　　　　　　　　　　　/::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.／＿∴,.-‐'"~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　,..‐" ~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .,'::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　 ,..‐'"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::::::::::::
　　　　　　　　　　　　,...‐''"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::::,.／

　　　　　　　.::.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞ,: :　　　　　::ﾞ､::::::::::::ﾞ.ヽ.､::::::::::::::::/:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｌｌヽ､　　　 ::　ｌ､:::::::::::::::::::::::ﾞヽ.､::/,.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|ｌ,　　＼　∴: ｌ:::ﾞヽ､::::::::::::::::::::::::":::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ./∵..　　 ＼:::/::,.'　∴..､::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　 /::,'　　　　 ﾞ.､.､::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　 　∴　 /ヽ.､　　　　　 ﾞ.､＼:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　　　/'"／ ヽ､∵　　 ∴.､::＼:::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,:::／ ∵　　 　／ '"∵　　ﾞ､　　　　:. ｌ_:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./／　　　　　／'"　　　　　. ﾞ､∵ :: ,／ ﾞ､:::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /'"　　　　　／　　　　　　　　 .ｌ ,.,‐'"　　::ﾞ,::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　 ,..'"　　　　　　 ∴,.,.-‐'"　　　　 :::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　 '"　　　　　,.,.:-‐''"~　　　　　　　　::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/∴　 　　　∵　,.-‐'"　　　　　　　　　　　　　:ｌ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　./　　　　　　,..-''‐''"　　　　　　　　　　　　　　　/::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.／＿∴,.-‐'"~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　,..‐" ~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .,'::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　 ,..‐'"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::::::::::::
　　　　　　　　　　　　,...‐''"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::::,.／

悩みつつ７さいは猫の瞳を覗きこみました。
さっきまではアホ面をさらけだしていた猫の瞳には７さいに対する尊敬の念が
浮かんでいるように、そう７さいには思えました。勘違いかもしれませんが
７さいは少しだけ猫の為に頑張ってみようと決心して次の駅で降りることにしました。

30分ほどトロッコが進むと左側にいろいろな建物が見えてきました。
木造なのにやけに高い温泉旅館やこれまた近代的な鉄筋コンクリート建てのホテル、
大小あわせて四十はあるようです。硫黄の匂いが７さいの鼻をつっつきます。
”毎日恒例！盆踊り大会”の垂れ幕が旅館同士を結ぶようにあちらこちらに
はためいています。

盆踊り大会には７さいは苦い思い出があります。
あれは７さいが５さいの頃です。
両親は５さい（７さい）と弟の岸井を隣町の盆踊り大会に連れていきました。
岸井はまだ踊れませんが５さい（７さい）はその踊りを一度みただけで
幼いながらも綺麗に踊れることが出来ました。持って生まれた才能とかいうヤツです。

　　　　　　　.::.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞ,: :　　　　　::ﾞ､::::::::::::ﾞ.ヽ.､::::::::::::::::/:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｌｌヽ､　　　 ::　ｌ､:::::::::::::::::::::::ﾞヽ.､::/,.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|ｌ,　　＼　∴: ｌ:::ﾞヽ､::::::::::::::::::::::::":::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ./∵..　　 ＼:::/::,.'　∴..､::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　 /::,'　　　　 ﾞ.､.､::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　 　∴　 /ヽ.､　　　　　 ﾞ.､＼:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　　　/'"／ ヽ､∵　　 ∴.､::＼:::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,:::／ ∵　　 　／ '"∵　　ﾞ､　　　　:. ｌ_:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./／　　　　　／'"　　　　　. ﾞ､∵ :: ,／ ﾞ､:::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /'"　　　　　／　　　　　　　　 .ｌ ,.,‐'"　　::ﾞ,::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　 ,..'"　　　　　　 ∴,.,.-‐'"　　　　 :::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　 '"　　　　　,.,.:-‐''"~　　　　　　　　::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/∴　 　　　∵　,.-‐'"　　　　　　　　　　　　　:ｌ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　./　　　　　　,..-''‐''"　　　　　　　　　　　　　　　/::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.／＿∴,.-‐'"~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　,..‐" ~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .,'::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　 ,..‐'"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::::::::::::
　　　　　　　　　　　　,...‐''"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::::,.／

踊りの輪に入り調子に乗って「よいせー　よいせー」と踊っていると
その盆踊りの音頭が一度途切れ、みんながしゃがみました。
なんだか分からず５さい（７さい）もしゃがみました。
前で踊っていた少し大きなお姉さんの背中を眺めつつ「少しお休みの時間かな？」
とか思っていると。

「はいっ。どぉーぞ」

突然、目の前に色鉛筆のセットがおじさんの少し汚い手と一緒に現れました。
少し驚きながらも反射的にそれを受け取りました。
おじさんは前にしゃがんでいるお姉さんにも同じセリフで色鉛筆を渡してまた
さらに前の人のところへといってしまいました。
と、前のお姉さんは「頂く物は頂いた！」とばかりに走って外側の見物客の人ごみに
消えていきました。

　　　　　　　.::.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞ,: :　　　　　::ﾞ､::::::::::::ﾞ.ヽ.､::::::::::::::::/:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｌｌヽ､　　　 ::　ｌ､:::::::::::::::::::::::ﾞヽ.､::/,.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|ｌ,　　＼　∴: ｌ:::ﾞヽ､::::::::::::::::::::::::":::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ./∵..　　 ＼:::/::,.'　∴..､::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　 /::,'　　　　 ﾞ.､.､::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　 　∴　 /ヽ.､　　　　　 ﾞ.､＼:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　　　/'"／ ヽ､∵　　 ∴.､::＼:::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,:::／ ∵　　 　／ '"∵　　ﾞ､　　　　:. ｌ_:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./／　　　　　／'"　　　　　. ﾞ､∵ :: ,／ ﾞ､:::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /'"　　　　　／　　　　　　　　 .ｌ ,.,‐'"　　::ﾞ,::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　 ,..'"　　　　　　 ∴,.,.-‐'"　　　　 :::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　 '"　　　　　,.,.:-‐''"~　　　　　　　　::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/∴　 　　　∵　,.-‐'"　　　　　　　　　　　　　:ｌ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　./　　　　　　,..-''‐''"　　　　　　　　　　　　　　　/::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.／＿∴,.-‐'"~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　,..‐" ~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .,'::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　 ,..‐'"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::::::::::::
　　　　　　　　　　　　,...‐''"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::::,.／

「まだ踊りたいけど色鉛筆貰ったし、パパとママに見せに行こう」

色鉛筆を自慢するために５さい（７さい）は両親が待つ踊り櫓の向こう側へと
外側の見物客の前を沿ってぐるりと周ってそこへ行きました、が、
そこに両親は居ません。
半泣きになって大人たちを見上げ、周囲の露店の前を急ぎ足で通り抜け、
かなり探したつもりなのですがまったく両親の姿は見当たりません。

子供の頃、あなたは夜の盆踊りにひとり取り残されたことがありますか？
周りの見知らぬ大人たちが異形の鬼や妖怪のように夜空を遮り、その残された
夜空には太鼓の音に音頭を唄うキンキン声の姉さんのこぶしがまわり、
露店のかき氷機がぐわんぐわんと唸りをあげる奇譚の異世界となるのです。

そんな恐怖の世界を体験した７さいにとってはもう盆踊りなど見たくも
聞きたくもありません。
でも、このシュレーディンガーの猫だけは飼い主のもとへ届けてあげようという

　　　　　　　.::.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞ,: :　　　　　::ﾞ､::::::::::::ﾞ.ヽ.､::::::::::::::::/:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｌｌヽ､　　　 ::　ｌ､:::::::::::::::::::::::ﾞヽ.､::/,.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|ｌ,　　＼　∴: ｌ:::ﾞヽ､::::::::::::::::::::::::":::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ./∵..　　 ＼:::/::,.'　∴..､::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　 /::,'　　　　 ﾞ.､.､::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　 　∴　 /ヽ.､　　　　　 ﾞ.､＼:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　　　/'"／ ヽ､∵　　 ∴.､::＼:::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,:::／ ∵　　 　／ '"∵　　ﾞ､　　　　:. ｌ_:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./／　　　　　／'"　　　　　. ﾞ､∵ :: ,／ ﾞ､:::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /'"　　　　　／　　　　　　　　 .ｌ ,.,‐'"　　::ﾞ,::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　 ,..'"　　　　　　 ∴,.,.-‐'"　　　　 :::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　 '"　　　　　,.,.:-‐''"~　　　　　　　　::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/∴　 　　　∵　,.-‐'"　　　　　　　　　　　　　:ｌ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　./　　　　　　,..-''‐''"　　　　　　　　　　　　　　　/::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.／＿∴,.-‐'"~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　,..‐" ~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .,'::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　 ,..‐'"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::::::::::::
　　　　　　　　　　　　,...‐''"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::::,.／

正義感は７さいの心のなかではっきりしたものになっていました。
まだ空は明るく、盆踊りなどやっている時間ではないほど太陽が真上から
照らしています。
うまくいけば一時間ほどで駅に戻ってまたトロッコに乗れるかもしれません。
次の便は一時間半ほど後で来ることを７さいは知っていました。

あらら、いつのまにか天井は見えなくなり、太陽が昇っていますね。
これは自然の驚異というものです。いえ、人類の勝利かもしれません。
ちなみにこの太陽はこの工場が出来て何年かしたら自然に出来上がった訳では
なく、誰かがロケットか何かで打ち上げた太陽だそうです。
それ以来、夕時になるとどこかへ落ちてゆき、次の日の朝時にはまた充電されて
ピカピカに白く、黄色く、光り輝き、上がってくるのです。
夕暮れ時の太陽が赤いのは電池が切れかけなんですね。

雨の日は無いのかって？　あります。　雨はたまに降らないと困りますよね？
だから、雨と決まった日はどこかの横穴からヘリコプターが飛んできます。

　　　　　　　.::.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞ,: :　　　　　::ﾞ､::::::::::::ﾞ.ヽ.､::::::::::::::::/:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｌｌヽ､　　　 ::　ｌ､:::::::::::::::::::::::ﾞヽ.､::/,.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|ｌ,　　＼　∴: ｌ:::ﾞヽ､::::::::::::::::::::::::":::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ./∵..　　 ＼:::/::,.'　∴..､::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　 /::,'　　　　 ﾞ.､.､::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　 　∴　 /ヽ.､　　　　　 ﾞ.､＼:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　　　/'"／ ヽ､∵　　 ∴.､::＼:::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,:::／ ∵　　 　／ '"∵　　ﾞ､　　　　:. ｌ_:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./／　　　　　／'"　　　　　. ﾞ､∵ :: ,／ ﾞ､:::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /'"　　　　　／　　　　　　　　 .ｌ ,.,‐'"　　::ﾞ,::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　 ,..'"　　　　　　 ∴,.,.-‐'"　　　　 :::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　 '"　　　　　,.,.:-‐''"~　　　　　　　　::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/∴　 　　　∵　,.-‐'"　　　　　　　　　　　　　:ｌ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　./　　　　　　,..-''‐''"　　　　　　　　　　　　　　　/::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.／＿∴,.-‐'"~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　,..‐" ~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .,'::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　 ,..‐'"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::::::::::::
　　　　　　　　　　　　,...‐''"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::::,.／

ヘリコプターには最初の樽のところで余ってしまった老人が４〜５人、紐で
ぶら下がり、じょうろで雨を降らせます。おもに盆栽好きでじょうろの扱いに
長けたおじいさん達が選ばれます。
うすら笑いを浮かべたおじいさん達がうまく均等に地面を湿らせてゆく、
これはまさに職人芸かもしれません。

なぜうすら笑いなのかというと、樽ではおしっこの心配があり、漏らそうものなら
社員にやられますが、あんな上空からならじょうろから降らしてていようが
股間から降っていようがあまり関係がありません。雨ってそんなもんです。
そんなヘリコプターが雨の日には二十機ほども空を飛ぶそうですから
醤油会社というものはとても儲かってお金持ちなんだろうと思います。

話を元に戻しましょう。７さいは重い猫を抱きかかえつつ、もうすぐ駅に
着くだろうと思い、そのまま通路をトロッコの進行方向にむかって歩きはじめました。
乗降用の扉がそちらにあるからです。

　　　　　　　.::.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞ,: :　　　　　::ﾞ､::::::::::::ﾞ.ヽ.､::::::::::::::::/:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｌｌヽ､　　　 ::　ｌ､:::::::::::::::::::::::ﾞヽ.､::/,.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|ｌ,　　＼　∴: ｌ:::ﾞヽ､::::::::::::::::::::::::":::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ./∵..　　 ＼:::/::,.'　∴..､::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　 /::,'　　　　 ﾞ.､.､::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　 　∴　 /ヽ.､　　　　　 ﾞ.､＼:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　　　/'"／ ヽ､∵　　 ∴.､::＼:::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,:::／ ∵　　 　／ '"∵　　ﾞ､　　　　:. ｌ_:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./／　　　　　／'"　　　　　. ﾞ､∵ :: ,／ ﾞ､:::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /'"　　　　　／　　　　　　　　 .ｌ ,.,‐'"　　::ﾞ,::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　 ,..'"　　　　　　 ∴,.,.-‐'"　　　　 :::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　 '"　　　　　,.,.:-‐''"~　　　　　　　　::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/∴　 　　　∵　,.-‐'"　　　　　　　　　　　　　:ｌ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　./　　　　　　,..-''‐''"　　　　　　　　　　　　　　　/::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.／＿∴,.-‐'"~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　,..‐" ~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .,'::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　 ,..‐'"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::::::::::::
　　　　　　　　　　　　,...‐''"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::::,.／

しかし、ニ、三歩すすんだところで７さいはピタッと立ち止まりました。
なんだか殺気がしたからです。後ろを振り向くひまもなく７さいはキチガイザルの
延髄斬りの餌食となって通路にぶっ倒れました。猫のほうはうまい事被害を受けずに
突っ伏した７さいの背中に着地しました。猫はまるでサーファー気取りです。
なぜ７さいがそんな目に会ったかというと、もちろん猫を列車内でケージに入れずに
いたからです。可愛そうですが仕方ありませんね。

そして、トロッコが止まりました。駅に着いたのです。
キチガイザルは「ふぎぃ　ふぎぃアァ」と憤慨しながら傲慢な子供に飽きられた
オモチャのようにうつ伏せで寝転んだ７さいの髪の毛をつかみ、引きずっていきます。
猫は７さいに乗っかり、まだサーファー気取りです。

キチガイザルは改札を抜け駅舎を出て、ひなびた雰囲気のする駅前広場の温泉噴水の
前に７さいを捨てていきました。駅前には人っ子ひとりいません。
７さいを見ているのは猫と、温泉を口から吐き出している大黒様の石像だけです。
引きずられまくってボロ雑巾のような７さいは、また記憶がどこかへ飛んでいっています。

　　　　　　　.::.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞ,: :　　　　　::ﾞ､::::::::::::ﾞ.ヽ.､::::::::::::::::/:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｌｌヽ､　　　 ::　ｌ､:::::::::::::::::::::::ﾞヽ.､::/,.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|ｌ,　　＼　∴: ｌ:::ﾞヽ､::::::::::::::::::::::::":::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ./∵..　　 ＼:::/::,.'　∴..､::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　 /::,'　　　　 ﾞ.､.､::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　 　∴　 /ヽ.､　　　　　 ﾞ.､＼:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　　　/'"／ ヽ､∵　　 ∴.､::＼:::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,:::／ ∵　　 　／ '"∵　　ﾞ､　　　　:. ｌ_:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./／　　　　　／'"　　　　　. ﾞ､∵ :: ,／ ﾞ､:::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /'"　　　　　／　　　　　　　　 .ｌ ,.,‐'"　　::ﾞ,::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　 ,..'"　　　　　　 ∴,.,.-‐'"　　　　 :::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　 '"　　　　　,.,.:-‐''"~　　　　　　　　::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/∴　 　　　∵　,.-‐'"　　　　　　　　　　　　　:ｌ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　./　　　　　　,..-''‐''"　　　　　　　　　　　　　　　/::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.／＿∴,.-‐'"~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　,..‐" ~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .,'::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　 ,..‐'"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::::::::::::
　　　　　　　　　　　　,...‐''"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::::,.／

ねーこねこねこねこ　ねーこねこねこねこ
にゃんにゃんの　にゃんにゃんの　アレ。

「セクハラ男爵じゃないですか！！」７さいの罵詈雑言に呆れはてる民衆を
よそ目にプリンを食べる。かなり食べる。

新婚の猫は連れ立っている。そんな新理論を完成させつつも
７さいはお尻を拭いてみた。プリンで拭いてみた。

プリンで拭くのはやめたほうがいい。
そんな新理論を完成させたら民衆は拍手喝采で、７さいを褒め称えて我も我もと
ハリウッドに一旗あげに行く夢は７さいのことが好き。高確率で。

シューレーディンガーの猫拾った！！　拾った！！！　たくさん拾いましたから
あなたにもあげるの。　え？　いらない？

　　　　　　　.::.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞ,: :　　　　　::ﾞ､::::::::::::ﾞ.ヽ.､::::::::::::::::/:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｌｌヽ､　　　 ::　ｌ､:::::::::::::::::::::::ﾞヽ.､::/,.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|ｌ,　　＼　∴: ｌ:::ﾞヽ､::::::::::::::::::::::::":::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ./∵..　　 ＼:::/::,.'　∴..､::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　 /::,'　　　　 ﾞ.､.､::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　 　∴　 /ヽ.､　　　　　 ﾞ.､＼:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　　　/'"／ ヽ､∵　　 ∴.､::＼:::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,:::／ ∵　　 　／ '"∵　　ﾞ､　　　　:. ｌ_:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./／　　　　　／'"　　　　　. ﾞ､∵ :: ,／ ﾞ､:::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /'"　　　　　／　　　　　　　　 .ｌ ,.,‐'"　　::ﾞ,::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　 ,..'"　　　　　　 ∴,.,.-‐'"　　　　 :::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　 '"　　　　　,.,.:-‐''"~　　　　　　　　::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/∴　 　　　∵　,.-‐'"　　　　　　　　　　　　　:ｌ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　./　　　　　　,..-''‐''"　　　　　　　　　　　　　　　/::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.／＿∴,.-‐'"~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　,..‐" ~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .,'::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　 ,..‐'"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::::::::::::
　　　　　　　　　　　　,...‐''"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::::,.／

シューレーディンガーの猫なのにいらないんですか！？！？
え？　え？

シュレーディンガーじゃなくてディルレヴァンガー？　親戚ですか！？
赤の他人だって？　おのれぇ！！　ディルレヴァンガー！！！

ディルレヴァンガーを呼び出し小一年間ほど説教をたれる。説教をたれる。
説教をたれる。説教をたれ流し続けて大河になるのだよ。諸君。
シャツをジーンズに入れるなとかいろいろアドバイスをする。

また当選確実だな　と７さいは思ったけれど落選してみたい時の気分がなんとなく
７さいの本音。本音を言うことをカミング・スーンと英語では言うんだよと
理科の実験の最中に、お風呂場で垢こすりのテクニシャンとして名を馳せた
英才教育を受ける７さいの脳が発達することもしばしばある。

「ウソだって死ぬまで信じていればホントのことさ」

誰かがそういって７さいの横を走り去っていったときの衝撃波は今も
心に残る名曲のラプソディ。

ディルレヴァンガーがごめんなさいと泣きながら何度も謝るので７さいは
優しく抱きしめつつも、ディルレヴァンガーの髪の毛を持ち校庭を十周の
引き摺りまわしまくりトレーニングに余念がないらしいとの報告が入って
急遽特番に変更しますとのテロップが画面に大写しになるのが玄人好みだよと
言ってた。　誰かが言ってた。　誰かが言ってたんだから情報元は確かだ。

「まるでボロ雑巾じゃないか！」

擦り切れて、ペラペラになったディルレヴァンガーに言葉責めの鞭を振るう７さい。
鞭の唸りが月まで届いて宛先人不明で戻ってくる頃は文明開化の押し寄せる
街並みにも納得のデパ地下での試食品のタダ食いはやめて下さい。お願いします。

ヘラヘラ笑いながら７さいはディルレヴァンガーを見下す。

なんだかやけに頬っぺたがザラザラする。？　？
　？　　　　？　　　なにこれ　？
？　　？　うぁっ！　気持ち悪いぃ！　？
ひゃっ！　や、　ヤメてよぉ！

ゆっくりと瞼がひらき、７さいは現実の世界に戻ってきました。
猫のざらざらした舌が７さいの頬をじゃらりじゃらりと擦り上げています。

７さいは肩をすくめて猫の舐め舐めの舐めまくりをよけると、両膝をついて
上半身を起こしました。
まだ頭がクラクラしますが、７さいは猫が不思議そうな顔で自分を見ているのが
分かります。

「まるでボロ雑巾じゃないか！」

７さいはさっきの夢と同じセリフが後ろのほうで聞こえたので少し驚きました。
でも、それは７さいの声ではなく男の人の声です。
立ち上がって後ろを向こうとしましたが体中が痛むので膝をついた姿勢から
くるりとひねって、だらしない体育すわりのような格好で後ろを向きます。
見上げると少しばかり歳のいった青年が７さいを驚いたようにみています。

「この猫がやったのかい？」

青年が聞くので、実はこれこれこうで、かくかくしかじか、うんぬんかんぬんの
かんかんがくがくと、これまでのいきさつを７さいは少し恥ずかしそうに話しました。

「そっか。それならいいんだけれど。　この猫がやったのなら僕は君にたくさん
　謝らなくちゃならないからねぇ。　僕は、この猫の飼い主だから。。」

なんという幸運でしょう！　猫の飼い主のシューレーディンガーが偶然にも駅前に
散歩にきていたのです。
鴨がネギ背負って現れるとはこの事でしょうか？　ちょっと違いますね。

「服がとても汚れてるけど大丈夫？　擦り傷もいっぱいあるし。」

青年が心配そうに聞きますが７さいは、大丈夫だから、心配いらないと、
これからまだ用事があるから、と答えます。

「でも、そんな目にあってまで僕の猫を連れてきてくれてありがとう。
　これ、少ないけれど貰っておいて。」

青年は財布から福沢諭吉の肖像の描かれたお札を出し、７さいに差し出します。

７さいは首を横にぶんぶん振っていらないというジェスチャーをしました。
でも青年がいっこうに手を引かずに微笑んでいるので７さいはゆっくりと

右手でお札を受け取りました。

「ぁ、ぁりがとぉおございまｽ。」

喋るのが苦手な７さいは変な発音だったかなと思い、ちょっと目をキョロキョロ
させてあがっているのをごまかしてみました。

「急いでるならそのお金で早くその服を買い換えたほうがいいね。
　服屋はあそこ。　服屋で着替えるのが恥ずかしいなら、あのハイテク喫茶でね。
　ちょっとした個室やシャワーなんかもあるし便利だよ。」

青年はあちら、そちらと指差し親切に教えてくれました。

「それじゃぁ。　ありがとうね。」

青年は猫を抱きかかえて駅からまっすぐにのびた、薄汚れた商店街を歩いて

行ってしまいました。後ろ向きになった猫は

「にゃーぉ」

と７さいとの別れを惜しむように鳴きつづけていましたが、
それもやがて聞こえなくなり青年と猫の姿はとても遠くになってしまいました。

それから７さいは数分のあいだ地ベタに座りっぱなしでしたが、腕の擦り傷の血も
乾き、ちょっと駅前に人が居るのをみると一万円握ってだらしなく座っている
自分が他人からみて異様に映るのではないかと考えて、とりあえず温泉噴水の
ところまで歩いて（といっても３ｍほどです）噴水の縁に腰を下ろしました。

７さいは猫と青年、そして服屋とハイテク喫茶、次の列車の時間、いろんなことを
ぐるぐると考えてみました。

猫を助け（？）て青年から一万円をもらった。次の列車に乗らなきゃ。

　 　, -‐−-､　　ヽ∧∧∧ //　　|
. 　/////_ﾊ ヽ＜ 勝った！＞　ハ
　 ﾚ//ｊ け ,fjlﾘ　/ ∨∨V ヽ　　h. ﾟl;
　ﾊｲｲﾄ､"ヮノﾊ　　　　　//　　　|::: ｊ　　｡
　 /⌒ヽヾ'ﾘ、　　　　　// 　 　　ヾ､≦ '
.　{ 　　j｀ｰ' ﾊ 　 　 　//　ヽ∧∧∧∧∧∧∨/
　 ｋ〜'ｌ 　　ﾚﾍ. 　 ,r'ス　＜ 手動なのに　　＞
　 |　ヽ ＼　ト､ ヽ-kヾｿ　＜ 勝っちゃった！＞
.　 l　　＼ ｀ｰ‐ゝ-〈/´　　　/ ∨∨∨∨∨∨ヽ
　　l 　 　 `ー-､___ﾉ
　　ﾊ 　 ´￣｀　〈/‐-､

　　　　　///　 //l llll　,−ｌ　ｌｌ⌒ｌ ﾄl　ｌｌ ｌｌｌ}::ll
　　　　 ,'l　ｌｌ〜ｌ　ｌ ｌﾊｌ　､　ｌ　ll',.--､l l ｌｌl ll　:ｌ
　　　　 {ｌ　ｌｌ　 ｌ　ｌl lll lll　　ｌ_ｌ ｲ.r;;ﾟヾl､l　ｌll　ｌ
　 ヽ　　.ｌｌｌlｌｌ　 ｌ　ｌ ｌｌ　' ~￣　　',ゝ;'ﾉ l ｌｌ ｌll　ｌ
　 '⌒l　 ヽllｌl､,..ｌｰｌx'"´~`　 .　　｀,,´ ﾉ ｌ.ｌ/ｌ　ｌ
　　ヽﾆ　　lｌｌXｌ ｌｌ lヽ　､､　 ｰｰ'　　 ｲｌｌ .l　ｌ　ｌ　
　 　　ゃ . ｌｌl ／⌒ゞゝ､ ,_　　　,.イ　ﾉl　ｌ　ｌ　.ｌ 　やっぱり８さいより７さいかわぃ〜ん？
　　　　|〜ll（　　　　）',.>ヘｌ｀ " l' `7r‐''''''‐､ヽl
　　　　　 ｌｌｌﾄ､＿,.ィ 〈　　　 ヽ<　　（　　　　ｌ　'､､

　　　　　　　.::.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞ,: :　　　　　::ﾞ､::::::::::::ﾞ.ヽ.､::::::::::::::::/:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｌｌヽ､　　　 ::　ｌ､:::::::::::::::::::::::ﾞヽ.､::/,.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|ｌ,　　＼　∴: ｌ:::ﾞヽ､::::::::::::::::::::::::":::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ./∵..　　 ＼:::/::,.'　∴..､::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　 /::,'　　　　 ﾞ.､.､::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　 　∴　 /ヽ.､　　　　　 ﾞ.､＼:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　　　/'"／ ヽ､∵　　 ∴.､::＼:::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,:::／ ∵　　 　／ '"∵　　ﾞ､　　　　:. ｌ_:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./／　　　　　／'"　　　　　. ﾞ､∵ :: ,／ ﾞ､:::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /'"　　　　　／　　　　　　　　 .ｌ ,.,‐'"　　::ﾞ,::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　 ,..'"　　　　　　 ∴,.,.-‐'"　　　　 :::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　 '"　　　　　,.,.:-‐''"~　　　　　　　　::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/∴　 　　　∵　,.-‐'"　　　　　　　　　　　　　:ｌ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　./　　　　　　,..-''‐''"　　　　　　　　　　　　　　　/::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.／＿∴,.-‐'"~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　,..‐" ~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .,'::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　 ,..‐'"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::::::::::::
　　　　　　　　　　　　,...‐''"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::::,.／

　　　　　　　.::.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞ,: :　　　　　::ﾞ､::::::::::::ﾞ.ヽ.､::::::::::::::::/:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｌｌヽ､　　　 ::　ｌ､:::::::::::::::::::::::ﾞヽ.､::/,.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|ｌ,　　＼　∴: ｌ:::ﾞヽ､::::::::::::::::::::::::":::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ./∵..　　 ＼:::/::,.'　∴..､::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　 /::,'　　　　 ﾞ.､.､::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　 　∴　 /ヽ.､　　　　　 ﾞ.､＼:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　　　/'"／ ヽ､∵　　 ∴.､::＼:::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,:::／ ∵　　 　／ '"∵　　ﾞ､　　　　:. ｌ_:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./／　　　　　／'"　　　　　. ﾞ､∵ :: ,／ ﾞ､:::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /'"　　　　　／　　　　　　　　 .ｌ ,.,‐'"　　::ﾞ,::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　 ,..'"　　　　　　 ∴,.,.-‐'"　　　　 :::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　 '"　　　　　,.,.:-‐''"~　　　　　　　　::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/∴　 　　　∵　,.-‐'"　　　　　　　　　　　　　:ｌ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　./　　　　　　,..-''‐''"　　　　　　　　　　　　　　　/::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.／＿∴,.-‐'"~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　,..‐" ~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .,'::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　 ,..‐'"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::::::::::::
　　　　　　　　　　　　,...‐''"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::::,.／

　　　　　　　.::.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞ,: :　　　　　::ﾞ､::::::::::::ﾞ.ヽ.､::::::::::::::::/:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｌｌヽ､　　　 ::　ｌ､:::::::::::::::::::::::ﾞヽ.､::/,.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|ｌ,　　＼　∴: ｌ:::ﾞヽ､::::::::::::::::::::::::":::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ./∵..　　 ＼:::/::,.'　∴..､::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　 /::,'　　　　 ﾞ.､.､::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　 　∴　 /ヽ.､　　　　　 ﾞ.､＼:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　　　/'"／ ヽ､∵　　 ∴.､::＼:::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,:::／ ∵　　 　／ '"∵　　ﾞ､　　　　:. ｌ_:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./／　　　　　／'"　　　　　. ﾞ､∵ :: ,／ ﾞ､:::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /'"　　　　　／　　　　　　　　 .ｌ ,.,‐'"　　::ﾞ,::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　 ,..'"　　　　　　 ∴,.,.-‐'"　　　　 :::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　 '"　　　　　,.,.:-‐''"~　　　　　　　　::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/∴　 　　　∵　,.-‐'"　　　　　　　　　　　　　:ｌ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　./　　　　　　,..-''‐''"　　　　　　　　　　　　　　　/::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.／＿∴,.-‐'"~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　,..‐" ~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .,'::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　 ,..‐'"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::::::::::::
　　　　　　　　　　　　,...‐''"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::::,.／

　　　　　　　.::.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞ,: :　　　　　::ﾞ､::::::::::::ﾞ.ヽ.､::::::::::::::::/:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｌｌヽ､　　　 ::　ｌ､:::::::::::::::::::::::ﾞヽ.､::/,.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|ｌ,　　＼　∴: ｌ:::ﾞヽ､::::::::::::::::::::::::":::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ./∵..　　 ＼:::/::,.'　∴..､::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　 /::,'　　　　 ﾞ.､.､::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　 　∴　 /ヽ.､　　　　　 ﾞ.､＼:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　　　/'"／ ヽ､∵　　 ∴.､::＼:::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,:::／ ∵　　 　／ '"∵　　ﾞ､　　　　:. ｌ_:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./／　　　　　／'"　　　　　. ﾞ､∵ :: ,／ ﾞ､:::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /'"　　　　　／　　　　　　　　 .ｌ ,.,‐'"　　::ﾞ,::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　 ,..'"　　　　　　 ∴,.,.-‐'"　　　　 :::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　 '"　　　　　,.,.:-‐''"~　　　　　　　　::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/∴　 　　　∵　,.-‐'"　　　　　　　　　　　　　:ｌ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　./　　　　　　,..-''‐''"　　　　　　　　　　　　　　　/::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.／＿∴,.-‐'"~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　,..‐" ~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .,'::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　 ,..‐'"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::::::::::::
　　　　　　　　　　　　,...‐''"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::::,.／

　　　　　　　.::.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞ,: :　　　　　::ﾞ､::::::::::::ﾞ.ヽ.､::::::::::::::::/:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｌｌヽ､　　　 ::　ｌ､:::::::::::::::::::::::ﾞヽ.､::/,.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|ｌ,　　＼　∴: ｌ:::ﾞヽ､::::::::::::::::::::::::":::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ./∵..　　 ＼:::/::,.'　∴..､::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　 /::,'　　　　 ﾞ.､.､::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　 　∴　 /ヽ.､　　　　　 ﾞ.､＼:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　　　/'"／ ヽ､∵　　 ∴.､::＼:::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,:::／ ∵　　 　／ '"∵　　ﾞ､　　　　:. ｌ_:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./／　　　　　／'"　　　　　. ﾞ､∵ :: ,／ ﾞ､:::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /'"　　　　　／　　　　　　　　 .ｌ ,.,‐'"　　::ﾞ,::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　 ,..'"　　　　　　 ∴,.,.-‐'"　　　　 :::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　 '"　　　　　,.,.:-‐''"~　　　　　　　　::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/∴　 　　　∵　,.-‐'"　　　　　　　　　　　　　:ｌ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　./　　　　　　,..-''‐''"　　　　　　　　　　　　　　　/::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.／＿∴,.-‐'"~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　,..‐" ~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .,'::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　 ,..‐'"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::::::::::::
　　　　　　　　　　　　,...‐''"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::::,.／

　 　, -‐−-､　　ヽ∧∧∧ //　　|
. 　/////_ﾊ ヽ＜ 勝った！＞　ハ
　 ﾚ//ｊ け ,fjlﾘ　/ ∨∨V ヽ　　h. ﾟl;
　ﾊｲｲﾄ､"ヮノﾊ　　　　　//　　　|::: ｊ　　｡
　 /⌒ヽヾ'ﾘ、　　　　　// 　 　　ヾ､≦ '
.　{ 　　j｀ｰ' ﾊ 　 　 　//　ヽ∧∧∧∧∧∧∨/
　 ｋ〜'ｌ 　　ﾚﾍ. 　 ,r'ス　＜ 手動なのに　　＞
　 |　ヽ ＼　ト､ ヽ-kヾｿ　＜ また勝っちゃった！＞
.　 l　　＼ ｀ｰ‐ゝ-〈/´　　　/ ∨∨∨∨∨∨ヽ
　　l 　 　 `ー-､___ﾉ
　　ﾊ 　 ´￣｀　〈/‐-､

　　　　　　　.::.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞ,: :　　　　　::ﾞ､::::::::::::ﾞ.ヽ.､::::::::::::::::/:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｌｌヽ､　　　 ::　ｌ､:::::::::::::::::::::::ﾞヽ.､::/,.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|ｌ,　　＼　∴: ｌ:::ﾞヽ､::::::::::::::::::::::::":::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ./∵..　　 ＼:::/::,.'　∴..､::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　 /::,'　　　　 ﾞ.､.､::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　 　∴　 /ヽ.､　　　　　 ﾞ.､＼:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　　　/'"／ ヽ､∵　　 ∴.､::＼:::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,:::／ ∵　　 　／ '"∵　　ﾞ､　　　　:. ｌ_:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./／　　　　　／'"　　　　　. ﾞ､∵ :: ,／ ﾞ､:::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /'"　　　　　／　　　　　　　　 .ｌ ,.,‐'"　　::ﾞ,::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　 ,..'"　　　　　　 ∴,.,.-‐'"　　　　 :::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　 '"　　　　　,.,.:-‐''"~　　　　　　　　::|:::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/∴　 　　　∵　,.-‐'"　　　　　　　　　　　　　:ｌ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　./　　　　　　,..-''‐''"　　　　　　　　　　　　　　　/::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.／＿∴,.-‐'"~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　,..‐" ~　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .,'::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　 ,..‐'"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::::::::::::
　　　　　　　　　　　　,...‐''"　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::::,.／