9 :
名無しさん:
ここは、厨房板第一階層。
左右には瓦礫が高々と積み上げられ、右へ左へとうねり、
所々でいくつもの道へと分岐している。
彼女、音速少女は厨房板内部のマップは持っていない。
方位デバイスが指し示す矢印、それをできるだけ同じ方向に正しながら進む事が、
彼女にできる唯一の攻略法だった。
どこまで行っても、同じ光景。だが、時々妙なものに出くわすこともある。
そこにあるのは、湯気を立てるおでん屋・・・のようなものだった。
見るからに怪しい。音速少女はage2chを起動し、屋台に対し銃口を向けながら、
ゆっくりとその屋台の主を確認しなければならない。
そう、本来なら。
この時の音速少女は、少々やつれすぎていた。
燃料切れのクロージャを背負いながら、彼女は昼も夜も徒歩でさまよい続けていたのだ。
何もない瓦礫の道を。
頬が内側にめり込んだ音速少女は、ヨタヨタと屋台の客席に座った。
10 :
POCO:05/02/20 18:13:01 ID:??? BE:8529825-
POCO10get
「いらっしゃいませぇ、お飲み物はお茶でよろしいですかー?」
「あー・・・、やっぱり煎茶が一番・・・・だね・・・・寿司の味を殺さない・・・・・」
音速少女は、すでに現実と妄想の区別がつかなくなり始めている!
極めて危険な状態だったが、なんとか最後の力を振り絞り、
出されたインスタント緑茶を一気飲みした。
久しぶりの水分を与えられたことで、即身仏になりかけていた彼女の体は
徐々に生気を取り戻していく。
「ふぅ・・・・」
「えーと、ご注文は何になさいますか?」
笑顔で語りかけてくる少女は、屋台の店主という大役の割には、ずいぶんと幼く見えた。
「んーと、ネギトロ」
正常な意識を取り戻し始めた彼女だったが、それ以前の記憶がまだ彼女を束縛していた。
「はいっ、かりこまりました!」
元気よく答えた彼女は、腕まくりをしながら店の奥へ。
しばらくたって、注文の品が彼女の前へ。
「お待ちどおさまです~」
置かれたはずだった・・・だが
「・・・・カツ丼?」
「はい、今ならこちらもさーびすでお付けしますが」
そう言うと、彼女はカツ丼の横に古めかしい金属物を・・・
「スタンドライト?」
「はい、お客さまは他所からいらした客ですよね?最近、この界隈に
外からいろんな悪漢がやってきては、色々と悪い事をたくらんでるらしいんです。
エッチなこととか」
「・・・はぁ」
一瞬正体がバレたことで臨戦体勢を取ろうとした彼女だが、
どうものほほんとした話にその気が失せてしまっていた。
「だから、ここで洗いざらい吐いてしまったほうが、この際楽になると思うんです」
手をあわせながら、彼女はにこやかに自供を薦めていた。
「おねーちゃん、それ、かなりシュールなねただと思う」
後ろから、もう一人の少女がひょっこりと顔を出す。
頭につけた大きなリボンが印象的だ。
「えー、そうかな。あっ、お客さん安心してくださいね。
私たちもほんとはいけない不法労働者ですし、ここに来たのもちょっと前なんです。
だから、そのカツ丼はサービスなんです。あとスタンドライトも」
「どうでもいいけど、どうやってここに入れたの?」
いただいたカツ丼をありがたく頬張りながら、当然の質問を彼女は問う。
ここはつい数日前まではオーセンティケータに守られた、
難攻不落の砦だったはずだ。
「えっとぉ、正面玄関はここの正規の住人さんしか入れないんですけど、
裏口がそこかしこに、もうこれでもかというぐらいにあるんですよぉ。
お客さんもそういうところから入ったんですよね?」
音速少女は、答えられなかった。そして今度会った時は、あの男を
古今東西に伝わるあらゆる拷問にかけた後で、一思いに葬ろうと思った。