【カーレース映画】グラン・プリpart2【最高傑作】
俺はモータースポーツにおけるクラッシュが嫌いだ。最初のアイドルだったジム・クラークがホッケンハイムで亡くなって以来ずっとそう思ってる。
だが、俺があの日ラウダに求めた事は『グラン・プリ』の終盤で救急車に運び込まれるサルティに群がってルイーズに罵倒される無神経なファンと同じだった。
多少の言い訳が許されるなら、免許取りたてで車に夢中なガキにとってフェラーリでワールドチャンピオンに輝いたF-1ドライバーは神と同義だった。
彼もまた痛みを感じる人の身である事を忘れさせるくらいに。だからある種の宗教的法悦というのが近いのかも知れないが、あの時の俺の状態を何に例えれば
適切なのか、実のところ今でも解らない。それでもずっと後になってあの日の邂逅を思い出せば感じる事はある。
この世には近くにいるだけで、その場にいる者を「今いるこの場所こそが世界の中心だと感じさせる人間」というのが存在する。
大抵は傑出した能力、あるいは時代や文化に由来するその理由を後になって説明、理解する事は可能だが、その瞬間にその場に居合わせた者だけが
畏怖と共に知る圧倒的な何か、違い過ぎて自らの矮小さすら忘れさせる存在の偉大さ、というものが確かにあるのだ。
以上、四回に亘るほぼスレチの長い思い出話にお付き合いいただいた方々、有難うございました。