三匹が斬る!

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471名乗る程の者ではござらん
「お小夜ちゃん、ずいぶんと大人びた簪をしているが、そいつには何かいわくがあるのかい」
「これ?おっかさんの、形見なの」
「……そうか、おっかさんは亡くなったのか」
「うん。でも新しいおっかさんがいるわ。妹もおとっつぁんもいるし、ちっとも寂しかないわ」
例え自分はどうなろうと、この娘だけは親元に返してやらねばならない。健気に笑うお小夜を見て、真之介は改めて心に誓った。

「起きてるな、飯だ」
襖が開かれ、竹皮の包みと竹筒を持った浪人が姿を見せた。
娘の前に座り、上体を起こさせて包みを開き、口元に大きな握り飯を差し出した。
お小夜は顔をしかめて逸らし、真之介を見やった。
「お小夜ちゃん、食うんだ。腹が減っては、戦が出来んぞ」
真之介の言葉にお小夜は、握り飯をじっと見つめてからかぶりついた。竹筒から水も与えてやりながら、浪人は真之介に告げた。
「娘が済んだら、お前にも食わせてやる。飯も水も、日に一度しかやらんがな。死なせん為と、小用の手間を省く為だ」
「そりゃありがたいが、まだ俺を生かしておく気なのか。今のうちに殺した方が、後々身の為かもしれんぞ」
「まだだ。もう少し俺が、楽しんでからだ」
凄みと艶を混ぜた視線を浴びせられ、この変態野郎がっ、と真之介は心中で悪態をついた。

42 名前:続続・じゃじゃ馬ならし Part2 7/8[sage] 投稿日:2010/10/18(月)08:56:58 ID:Tc7Ighg8O
浪人はお小夜の足の縄を解くと、隣を覗いて狐に声をかけた。
「娘を小用に連れて行け。逃がしたら許さんぞ」
不安そうな顔で引かれていく娘を、真之介は笑顔で見送った。浪人は真之介にも握り飯を与えた。
「お前は食ったら、その竹筒でしろ。そのまま捨てる」
「ほおお。至れり尽くせりで、けっこうなこった」
「お前は俺の、大事なおもちゃだ。下の世話くらい、どうということはない」
皮肉に涼しい顔をして答えた浪人をいまいましく思いつつ、真之介は握り飯を平らげた。

障子を開けて竹筒を投げ捨てると、浪人は真之介の前に座り直した。