三匹が斬る!

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441名乗る程の者ではござらん
391 名前:続・じゃじゃ馬ならし 後編 7/8[sage] 投稿日:2010/10/05(火) 12:14:14 ID://U3ZXmhO
左腕を枕にして胸に刀を抱き、すやすやと寝息を立てる穏やかな寝顔を、胡座をかいた真之介はじいっと見つめた。
その頬に触れようと、ふと手を伸ばしかけてやめた。
手を握りしめて戻し、その甲を唇に当てた。
しばらくまた眺め、やがて真之介は笠と刀を掴み立ち上がった。

ぱたりと扉が閉められてから、兵四郎は目を開けた。
身体を起こすと、真之介に触れていた右腕を摩った。
そこにはまだ、彼の温もりが残っていた。
「逃げちまったか……まあいい。また、捕まえてやるさ」
扉を見やって兵四郎は笑い、立ち上がってうぅんと大きく伸びをした。


林を抜けた眼下に小川を見つけ、真之介は岸に降り立った。
しゃがみ込んで水を掬い、口を濯ぎ喉を潤してからぱしゃぱしゃと顔を洗った。
濡れた顔を拭こうとして腰に手をやり、手ぬぐいを置いてきたことに気付いた。
仕方なく袖を掴み、ごしごしと乱暴にぬぐった。
「くそ、手ぬぐいを新調しなくちゃな……ふん、いいさ。金はそのうち、あいつから取り立ててやる」
ひとりごちてから、ふと水面に映る自分の顔に目をやった。

どこからどう見てもむさ苦しい男なのに、兵四郎は何がよくて自分を抱くのか。
ただ一度きりの悪ふざけだと思ったから、あの夜真之介は兵四郎の頬を張ったことで、全て終わらせたつもりになっていた。
だが兵四郎はお前がかわいいだの、欲しいだのと告げ、言われた側の戸惑いや抗いなどものともせず、再び熱く激しく丹念に愛撫を与え真之介を抱いた。
この身を貫いた時、極楽にいるようだとまで言っていたが、あれは本心から出た言葉のようだった。