257 名前:じゃじゃ馬ならし 前編 3/9[sage] 投稿日:2010/09/28(火) 00:06:14 ID:Q70NESdwO
とりあえず元凶を除こうと、兵四郎は右手を伸ばし大刀を取った。
鞘を振り打ち払うと、蛇は土間の隅にぽとりと落ちた。
蛇はしゅるしゅると身体をうねらせて、板壁の隙間から外に出て行った。
兵四郎はふっと息をつき、しがみつく背中に手を添えた。
「おい、仙石……」
もう大丈夫だ、と言おうとして、言葉を止めた。
真之介は目をつぶり、ぶるぶると震えていた。
普段は負けず嫌いで威勢がよく、何者をも恐れず立ち向かう男が、たかが一匹の蛇を恐れて自分に縋り付いている。
兵四郎は急に、年下のこの男がかわいらしく思えてきた。
するとふいに、ちょっとした悪戯心が沸いて来た。
「仙石、動くなよ。蛇はまだ、こっちを睨んでいるぞ」
「う、わ、わかった……!殿様、は、早く、なんとかしてくれ」
「うむ、任せろ。じっとしてろよ」
兵四郎は囁きながら大刀を床に置き、両手を真之介の背中に回した。
さわさわと優しく撫でてみると、真之介はびくんと身体を揺らした。
「殿様?どうしたんだ……へ、蛇は」
「姿が、見えなくなった」
「で、出てったのか?」
「いや、まだ中におるかもしれん。とにかく動くな。いいな、仙石」
「う、うん……」
いつになく素直に従う様子が珍しく、兵四郎はひそかに笑みを浮かべた。
兵四郎は右手を真之介の前にやり、袷から中に忍び込ませた。
ひやりとした平らな腹に触れると、驚いて叫びを上げた。