1 :
三好晴海入道:
『風神の門』のスレッドはもう3つめに入って熱い討論がなされております。ではあの頃の記憶を求めてもう一つ。『いのち燃ゆ』について数多くの識者のお話を聞きたく、僭越ながらスレッドを立てさせていただきました。
本放送時も『風神の門』の大興奮再び! という期待に胸膨らませて見ていました。しかし検索してもなかなかこの作品について語ってるものがないんですよ。私も中学生でしたから場面場面で鮮明に覚えていますが、色々な方の「思い入れ」を読ませてください。
それではどれだけの同好の士がいるのかも楽しみにしつつ、書き込みよろしくお願いします。
〈追伸〉時代劇@2ch掲示板はあまり荒れることなく、上品なので好きです
シルバー仮面が主演のやつだっけ?
3 :
三好晴海入道:2006/01/29(日) 22:03:34 ID:???
そうです。元ネタは『レ・ミゼラブル』で柴俊夫がジャン=バルジャン役で、私の記憶では「明石譲吉」という名前だったはず。
舞台は幕末、譲吉は大塩の乱の一味と間違われて捕らわれる。脱獄した後高橋幸次と出会い(原作ではミリエル司教に相当)、「銀の燭台」をもらって改心。
その後京都で商人として大成するも、時あたかも維新期(原作なら七月革命のあれです)。再び人生の動乱に巻き込まれていくという、翻案時代劇としては実に秀逸なドラマでした。
コゼット役がレッドビッキーズ斎藤とも子(オランダ人とのハーフで赤毛の設定)、神崎愛さんも譲吉を陰で支える女性として出演していました(子ども心にもため息が出るほど美しかった)。
しかしそれ以降が思い出せない。ファンチーヌ役の女優は顔は良く覚えているけれど誰だか分からないし、石橋正次はジャヴェール役だったか、マリユス役だったかどっちだったろう
(神崎愛とくっつきそうでなかなかくっつかず、最後に一線越えた記憶があるのでジャヴェールの様でもある)。財津一郎も、山田吾一も憎まれ役で出ていた(今思えば名演でした)。
そして幕末京都と言うことで終盤には新撰組の登場(栗塚旭の土方歳三)。まだまだ細かいシチュエーションを覚えているのですが、全体像が掴めないでいます。どうか書き込みを。
5 :
名乗る程の者ではござらん:2006/01/30(月) 18:35:35 ID:d6IBzNcw
おおでてきましたね。
私、幸い、何年か前のNHKの衛星放送の、なつかしの時代劇シリーズで、最初
と、最後のあたり録画に成功して、大筋説明できます。
石橋正次は、憎まれ役で。マリウスは、金田賢一です。ファンチーヌ役は、関西
では、長くワイドショーの司会をしていた。
6 :
三好晴海入道:2006/01/31(火) 00:56:29 ID:???
そうでした金田賢一。段々記憶がつながってきました。ファンチーヌ役は山田吾一に心ならずも囲われるのでした。
譲吉に対する彼女の恋慕を歪んだ執心で遮ろうと工作する山田吾一が本当に憎たらしくて絶妙。かくて不治の病になった彼女は
末期に譲吉の腕の中で息絶えていくのです。鼻水も流しながら涙する彼女。普通そういう生々しい描写はドラマでは避けられがちで、
私も子ども心に「おやおや」と思ったものですが、女優さんが綺麗な方だったのでかえってリアルさを感じていました。
そして最終回で明らかになるフェミニズム的裏主題。本当に女優が生きていたドラマだったと思います。
7 :
名乗る程の者ではござらん:2006/01/31(火) 20:35:56 ID:kFeAlVjr
こんばんは、多少ネタばれしていいでしょうか。
配役の続きです。
ファンチーヌは、吉本真由美さんでした、今ほとんど見ることない女優さんですね。
主人公の名は丈吉です。なぜか赤毛の為父財津一郎に疎んじられます。その秘密も物語が進むにつれて明らかになっていきます。母親役は高森和子さん。妹役に新井春美生き別れになっていて京都で再会。
斎藤とも子は、ファンチーヌの娘ですが、父の名を知らず育っていますが、丈吉は養女として育てます。
私も、DVDになって、真ん中の部分、鳥取藩の有力商人になっていくところをまた見たいものです。
8 :
三好晴海入道:2006/02/02(木) 21:25:27 ID:???
来ましたね。有力情報が出てきました。ありがとうございます。
「丈吉」でしたか。赤毛の設定は忘れてたなあ。でも最終話、染めていた髪の色が落ちたら○○だった、という
感涙のラストシーンは良く覚えています。そうか、赤毛の設定はこのドラマの要だったんですね。
ところで有力商人になっていくところは実はジャンプ・カット。高橋幸治と出会い、改心して新たな人生に旅立とうと決心した
次の回は丈吉もこざっぱりとして快活な商人姿になり、もう既にその時には成功していた、という展開でした。しかしその後は
『レ・ミゼラブル』の如く展開していく訳です。
9 :
三好晴海入道:2006/02/04(土) 17:45:12 ID:???
他スレの情報で坂上二郎さんの出演があったこと判明。うーん、覚えてないなあ。どうも高橋幸治さんとの絡みがあったそうですが、覚えている方教えてください。
10 :
名乗る程の者ではござらん:2006/02/04(土) 17:57:01 ID:k18SCQYe
こんばんは、またまた、お答えします(笑)。
高橋幸治さん、扮する蘭学の医者のところに住み込みで働くのですが、実は
幕府の隠密だった、でも見抜かれていたようです。役目をやめて、去ります。
後、商人になります。ついでにシーボルトの娘おイネとして早乙女愛さんも
出演していました。
私もHNきめましょうか(笑)。三好晴海入道さん。
11 :
三好晴海入道:2006/02/04(土) 18:22:35 ID:???
ありがとうございます。そうですね、早乙女愛が出ていたのを思い出しました。その後ソフトコアポルノに出演して、子ども心にちょっと複雑だったのを覚えています。
「名乗る程の者ではござらん 」はちと寂しい。ぜひHNで。個性が感じられて掲示板本来のおもしろみがあると思うのです。ただ私のHNは『風神の門』スレッドで使っているのを節操なく流用しているだけですけれども。
12 :
名乗る程の者ではござらん:2006/02/05(日) 12:17:11 ID:gQIXrctQ
なんとも嬉しいスレッドで感謝いたします。竜安先生は子供心にもとても魅力的でした。
銀の燭台は中が空洞になっていて、ストーリー上重要な“手紙(?)”が入っていたことは
うっすらと憶えております。何の、誰の手紙だかはすっかり失念しておりますが。
13 :
作太郎:2006/02/06(月) 01:45:58 ID:A2gglklO
入道さん、新しくカキコなさった方、他みなさんよろしく。
長いカキコになりますが、よろしく。
一応、全話のタイトル一覧をのせます。
残念ながら、私は8話〜12話を持っていません。
#1 「南海の涯に」#2 「不運な男」#3 「銀の燭台」
#4 「さらばオランダ坂」#5 「愛と憎しみの街」#6「翔んで翔んで夢の中」
#7 「夢去りし町角」#8 「生生流転」#9 「一輪でも花にて候」
#10「噂の男」#11「たった一夜の涙花」#12「お豊・作次郎流れ旅」
#13「砂に埋れし幸福の日々」#14「白日夢」#15「お雪哀しや鈴が鳴る」
#16「京都の恋」#17「祇園囃子が聞える」#18「相呼ぶ魂」
#19「聖母の子守歌」#20「お志麻恋ぐるま」#21「作次郎乱れ斬り」
#22「それ京洛の花と咲く」
#23「ある晴れた日に」
簡単にストリーのつもりですが、少し長いが、ご勘弁のほどを
主人公柴俊夫=丈吉
警部役にあたるのが作次郎=石橋正次
作次郎の義妹=お豊=神崎愛
芸者おりん=吉本真由美
丈吉の妹=お志摩=新井春美
芸者の娘=お雪=斎藤とも子
竜安=高橋幸治
丹波屋=山田吾一
お雪の恋人=金田賢一
私のHN作太郎とします。
以後よろしく。
14 :
作太郎:2006/02/06(月) 01:51:10 ID:A2gglklO
私なりのストリー紹介書いてます
主人公のパン盗みが大塩の乱で、妹のご飯をとった事に適合。
主人公は、長崎の女と異人の混血で赤毛。義父は主人公が赤毛で憎む。母は出生の秘密を夫にうちわけず家族崩壊。主人公、九州の果ての島送り。島での役人の養子が石橋正次。役人の娘は、主人公へ恋心。
御赦免されたはずの主人公、なぜか書類からぬけおち、自暴自棄になっ
て、主人公脱走。役人殺しのぬれぎねもきせられる。
長崎で、医者との銀の燭台事件。大阪に帰り、妹を売ろうとする父親。
借金の肩代わりをする芸者と一夜の契りを結ぶ。
逃げ回り、鳥取で鉄山師の婿養子となって成功。そこには、落魄の芸者
とその娘もいた。石橋が、主人公の正体を見破るが、誰もとりあわない
。脱走仲間がつかまり、自分として処刑寸前。で、悩み自首。石橋は、
敗北を認め、姿を消す。主人公再収監。しかし、事故で死んだと思われ
、脱走。芸者が死んだので、その娘を長崎に銀の燭台の医者に預ける。
京都で小さな米屋をいとなみ、娘を養女として引き取る。それから娘は
長州の若侍と恋仲になる。石橋は新選組隊士として登場。生き別れの妹
は沖田の恋人。石橋は、主人公の過去をネタに献金要求。石橋は鳥羽・
伏見の戦いで敗れ、捕虜になっているのを主人公が救う。
新選組隊士は、石橋と沖田、土方が登場
15 :
三好晴海入道:2006/02/08(水) 00:46:31 ID:???
ありがとうございます、作太郎さん。おそらくネットで調べることの出来る最も詳細な『いのち燃ゆ』情報が「13」と「14」です。
私もずっと「明石の譲吉」だと記憶していましたが、今考えれば「赤牛の丈吉」だったのではないか、と思えてきました。何たって赤毛ですし、
怪力の持ち主だというのは原作のジャン=バルジャンの特徴ですし(原作通り、荷車の下敷きになった人間を救おうと怪力を発揮してばれてしまうシーンがあったはず)。
島流しの場所も何となく種子島のように記憶していましたが、そうすると脱獄して長崎で竜安先生に出会うのには無理がありますね。実際には天草だったようです。
中1の記憶はあやふや。「商人になったから港町の名前がついたんだっけなあ」「歴史の舞台となった九州の島だったような」なんて薄ぼんやり思いこんでいたからそんな風に記憶違いしていたようです。
やっぱり本編を再見したいですねえ。忘れているから新たな感動を持てるし、しかも記憶がよみがえってくるという感動と輻輳して楽しめます。是非DVD化を。ファンの声が届いて『風神の門』も再び世に出たのですから。
16 :
作太郎:2006/02/08(水) 21:24:02 ID:2UcUCovN
こんばんは、作太郎です。
ストリー紹介等喜んでもらって光栄です。
さて、具体的に入道さんは、どのあたりの場面や、今も心に焼き付いているのでしょうか。
私の場合、本放送の時は、学生時代で数回しか見ることがなかったのですが、原案の「レ・ミゼラブル」は
新潮文庫で読破しておりました。衛星放送での再放送は、全話完結してから、みな見ようと思っていたのですが、録画の失敗で、真ん中あたり余りみていないのですが。最後の幕末篇あたりは、親子の絆を考えさせる
すばらしい脚色になったと思います。実父を探索するお雪と医師竜安の会話はすばらしいものでした。
この機会にまた、持っている部分だけでも、初めから見ようと思います。ネタばれ的ストリー紹介を今後続けていいでしょうか。
17 :
三好晴海入道:2006/02/08(水) 23:12:05 ID:???
何かこのスレッド、私と作太郎さんの往復書簡の様相を呈してきましたね。でもまあ掲示板やチャットって本来そういうものですから、健全でよいと思います(荒れてるスレッドを見ると悲しくなる)。
やっぱり一番鮮明に覚えているのがおりんの身請けのシーン。心と体を通じ合った丈吉との決定的な別れ。自己の悲しき運命と、丈吉への思いに涙するあのシーンです。これが私にとってのこのドラマの基調になりました。
だから死期に本当に真っ青な顔をして丈吉に抱かれて死んでいくシーンも覚えていますし、だからこそ最終回、今まで敵役だった母娘が暴行されそうになったのを助けるシーンで流れるナレーションも忘れられないです。
原作のファンチーヌも歯を売り髪を売りと本当に悲惨な境遇なのですが、それとは別個に、思春期になって初めて正面から体験した日本的浪花節世界に心揺すぶられた、というものだったと思うのです。
そういうこともあってか、このドラマの中で一番印象的だったのが神崎愛さん演じるお豊です。悲しいしがらみに翻弄される女性達が多い中で、彼女だけが自身の意志で人生の選択をし、陽性で、世俗から切り離された清々しさを持っていた様に感じます。
日本的なじめじめ感からポンと抜けているというのでしょうか。爽やかです。もともとクラシック畑の方だけに芸能界に染まっていないところがあって、「何か今までTVの中で見てきた人とは別次元に綺麗な人だな」と子ども心に思ったものです。
「性」という生々しさと切り離された美しさというべきものでしょうか。だから最後の最後、石橋正次とのベッドシーンがあった時に「おお」と思いました。いやらしくなく、でも実に色っぽくて、今思えばこういうものが私の女性観を作ってくれていたようにも思うのです。
何か女優の方達のシーンばかりが心に焼き付いているようですが、このドラマはフェミニズム的な裏テーマを持っていた訳ですからそんなに外れた見方でもなかったように思います。まだまだ心に残ってるシーンがありますが、まずはここまで。
本編を見ていない人、見ていたとしても忘れてしまっている人がほとんどだと思いますから、「ネタばれ」なんて思わずに、どんどん紹介をお願いします。「これだけ熱く語る人がいるのなら、見てみたいなあ」という気運を起こしましょう。
18 :
?i`???Y:2006/02/10(金) 01:39:24 ID:ZENbxEi6
こんばんは
入道さんの指摘されている部分、私が残念ながら、欠けている部分でした。だから、
余り詳しく語れません。
私は勝手に物語を3部構成と解釈しています。
第1部は天草篇。つまり島の生活から、脱獄して、運命的な出会い竜安との出会い、
幼なじみの芸者おりんとの再会、家族との再会。
第2部は鳥取篇。偶然出くわした、鉱山師の母子との出会い、気に入ってもらい
婿養子になり成功。いきさつ不明ですが、おりんとの再会、おりんが死にお雪を
託される。しかし、元の囚人仲間の処刑にでくわし、出頭。しかし、また脱走。
第3部は京都篇。お雪を京都に呼び寄せての、親子の葛藤が中心テーマです。
私は、幕末が好きなせいもあって、第3部が好きなのです。お雪は、丈吉の
自分への献身的愛情の理由がわからず、悩みます。落魄して、悪の道に入っている
丹波屋親子がうらやましいとも、言います。竜安はたしなめますが、お雪は
納得出来ません。丈吉は、銀の燭台に隠されていた、秘密の文書をみつけます、
それは、おりんがお雪の父親の名が記してありました。丈吉でした。
お豊も秘密を知りますが、丈吉は、あえて親子の名乗りをせず、
献身的愛情を続けると、お豊に宣言しました。
入道さんの云われるように、お豊の存在感は大きいですね。最初は
丈吉が好きだったのですが、父親を丈吉に殺されたと思い憎んで、作次郎と共に、
丈吉を追います。しかし、丈吉の変化ともに、尊敬の対象に、かたくな、
作次郎に愛情をそそぐ。すばらしい女性ですね。
そうそう、中条静夫さんのナレーションもいいですね。
どうも、私はストリー紹介が多すぎて、具体的な感動場面の
描写が少ないようですね(笑)。でも、私と入道さんの文章
を読んで、思い出した事を他の方書いてくださいね。
通りすがりの者です。
このスレッドを読んでいて、本編が見たくなりました。
本編放送時に、一話だけ親につきあって見た事があるのですが、
幼すぎて覚えていません。
ご存知の方、スレッド続けてくださいね〜。
「栗塚旭・結束信二総合スレ」の住人です。
この作品で栗塚旭が土方を演じてるので前から観てみたいと思っていた作品です。
土方は何話から何話まで出て来たのでしょうか?演技はどんな感じでしたか?
21 :
三好晴海入道:2006/02/10(金) 22:35:22 ID:???
>>20 これはあくまで私の記憶なのですが、ドラマが京都編になってからはかなり重要な役(土方歳三だから当然)で、出ずっぱりだったように思います。最後の5回くらいは確実に出演していたはず。類推するに、第16〜18話位から最終話の間という感じでしょうか。
そもそも『いのち燃ゆ』が放映される直前、栗塚旭は朝の連続テレビ小説『虹を織る』(ヒロインは紺野美佐子!)に出ていまして、子ども心に「あっ、朝のドラマの軍人さんの役の人だ」と印象深かったです。演技はどんな感じだったかと言うと、やっぱり毅然としていて
貫禄ありました。ちょっと年をとってるのは仕方ない所。先入観なかったので、当時は近藤勇役で出ていた方がピンと来たかも。やっぱり朝の連ドラの軍人役のイメージで見てしまいましたねえ。
栗塚旭が土方歳三役のオーソリティだと知ったのはずっと後でしたし、私は再放送で何度も目にした『暴れん坊将軍』の山田朝右衛門が記憶の中心になっていますから、もう一歩踏み込んで思い出せません。
でもまあ、栗塚旭は何を演じても栗塚旭であり、『いのち燃ゆ』でもそうでした、と評価しています。
22 :
作太郎:2006/02/11(土) 15:39:20 ID:yIiVuClX
こんにちは。
少しずつみなさんの興味ひくように、なってきましたね。
栗塚さんファンの方ようこそ。
私は、そちらの方はロム専門ですが、かくいう、私も栗塚さんファンのひとりですので(笑)。
この物語が、放映当時、栗塚さん登場と新聞記事で読んだ時は、愕然とともに、
嬉しかったです。制作サイドの方が新選組登場なら、当然栗塚さんの土方を
出すのが当然のコメントを出していましたから。
さて、ひとつ笑い話ながら、作次郎の姓は近藤ですので、近藤さんは出せませんよ(笑)。
栗塚さん、登場シーン、ひとことで云えば、ミスター新選組といいたいぐらい、
貫禄と存在感あった気がします。鬼の面より、新選組としての、矜持がすごい感じでした。
丈吉を捕らえても、心意気に感服して、釈放しました。度量大きい感じで栗塚さんファン必見と
思います。
23 :
三好晴海入道:2006/02/12(日) 13:30:21 ID:???
この『いのち燃ゆ』での土方役は、栗塚旭さんのキャリアの中で、テレビで演じた実質上最後の土方役だそうですね(舞台とかスペシャル番組は除く)。栗塚さんのファンなら特別な感慨のある出演になるようです。
そう考えたら、そもそも『いのち燃ゆ』の配役はNHKにしては随分思い切ったことをしています(これは『風神の門』でもそうですが)。『シルバー仮面』は見てなかったですが、石橋正次は私にとっては『アイアンキング』の「玄の字」でしたね。
お笑い界の人材だった財津一郎や坂上二郎を半ば敵役として出したり、それにレッドビッキーズで女性監督役を熱演していた斎藤とも子が出てきた時は「おおっ」と思ったものでしたよ。
この驚きの感覚は、『独眼流正宗』にいかりや長介が出演した感じを想像してもらえば良いと思います。
この頃NHKはかつてのようには順風に視聴率が上がらなく、硬直化を打破するため、民放でやっている手法を取り入れようとしていた頃だったと思うのです。『人形劇三国志』で紳助竜助を投入したり、糸井重里の司会ぶりが最高だった『YOU』を放映したり…。
映画発の俳優を使うのではなく、テレビ発の俳優を使う時代になっていたということでしょうか。でもまあ、どんな俳優でも、NHKに出演すればNHK風の重みが出るものです。
最後にちょっとお聞かせください。別のドラマと勘違いしているかも知れませんが、丈吉を気に入って娘の婿養子に迎える鉱山師の女性は南田洋子だったような記憶があります。かつての大スターだった彼女の演技を初めて見た経験だったと思うのですが、真偽の程を。
24 :
20:2006/02/12(日) 17:32:21 ID:???
>>21-23 ご丁寧な解説、ありがとうございました。栗塚旭はやはり栗塚旭らしい
重厚な演技だったのですね。
栗塚ファンから聞いたのですが、一連の栗塚土方のドラマを見ていた「いのち燃ゆ」の
プロデューサーのたっての願いで出演が実現したそうですね。お礼といっては何ですが、
昨日、図書館で新聞縮刷版を調べて来まして、以下、第1話放映当日の朝日新聞
テレビ欄の解説を紹介します。
「ビクトル・ユーゴーの『レ・ミゼラブル』の翻案。杉山義法の脚本で、幕末の頃、
天草の流人の島を抜け出して、長崎、大阪、米子、京都と逃亡生活を続ける男の物語。
丈吉(柴俊夫)は流人生活、すでに十年になる。実は三年前に赦免されていたのだが、
役人の手違いで名簿からもれてしまったのだ。大阪で、飢えに泣く妹のため、ひと握り
のご飯を盗んだところを捕えられ、大塩の乱の一味と間違えられて島へ流された。
力持ちだが、無抵抗でまじめな丈吉の将来を哀れに思った庄屋(加藤嘉)は娘のお豊(神崎愛)
の婿にしようと考え、お豊もその気になるが、兄の作次郎(石橋正次)は猛反対、
丈吉も大阪の母や妹への思いが断てない。第二回で丈吉は島抜けを決行する。
この時、仲間が嘉右衛門を殺してしまったことから、丈吉は作次郎とお豊に追われる身となる。
世話になった医者(高橋幸治)の家から銀の燭台を盗んだり、やがて米子で鉄山師の幸吉に
なりすまして町の名士になるあたり原作とそっくりだが、その周辺にオランダおイネや
新選組など、おなじみの人物を登場させる。」
25 :
20:2006/02/12(日) 17:35:00 ID:???
以下、テレビ欄から判明した、柴俊夫以外の各話の出演者です。
(81/4/08)#1 「南海の涯に」石橋、神崎、高橋、加藤嘉
(81/4/15)#2 「不運な男」石橋、神崎、高橋、坂上、財津、高森、
(81/4/22)#3 「銀の燭台」石橋、神崎、高橋、坂上、財津、高森、早乙女、
(81/5/06)#4 「さらばオランダ坂」石橋、神崎、高橋、坂上、早乙女、
(81/5/13)#5 「愛と憎しみの街」高橋、財津、高森、山田、吉本、太田、
(81/5/20)#6 「翔んで翔んで夢の中」石橋、神崎、財津、高森、山田、吉本、
(81/5/27)#7 「夢去りし町角」石橋、神崎、財津、高森、吉本、
(81/6/03)#8 「生生流転」石橋、神崎、高橋、南田、佐藤、
(81/6/10)#9 「一輪でも花にて候」南田、高森、佐藤、曽根、
(81/6/17)#10「噂の男」高橋、南田、山田、曽根、浅利香津代
(81/6/24)#11「たった一夜の涙花」石橋、神崎、高橋、南田、吉本、曽根、宝多、
(81/7/01)#12「お豊・作次郎流れ旅」石橋、神崎、高橋、南田、山田、浅利、伊達正三郎、
(81/7/08)#13「砂に埋れし幸福の日々」石橋、神崎、高橋、南田、山田、曽根、島
(81/7/15)#14「白日夢」石橋、神崎、高橋、南田、山田、島米八
(81/7/22)#15「お雪哀しや鈴が鳴る」神崎、南田、山田、曽根、
(81/7/29)#16「京都の恋」神崎、早乙女、金田、斎藤、新井、高松英郎
(81/8/05)#17「祇園囃子が聞える」石橋、神崎、早乙女、金田、斎藤、新井、栗塚
(81/8/26)#18「相呼ぶ魂」石橋、神崎、金田、斎藤、新井、栗塚
(81/9/02)#19「聖母の子守歌」石橋、神崎、高橋、坂上、財津、高森、
(81/9/09)#20「お志麻恋ぐるま」石橋、神崎、坂上、金田、新井、
(81/9/16)#21「作次郎乱れ斬り」石橋、神崎、金田、斎藤、新井
(81/9/30)#22「それ京洛の花と咲く」石橋、神崎、高橋、金田、斎藤、新井
(81/10/7)#23「ある晴れた日に」石橋、神崎、高橋、金田、斎藤
26 :
20:2006/02/12(日) 17:36:25 ID:P89mvx0c
それとこれも新聞テレビ欄からわかった情報で、
>>13の役名を補足しますと
丈吉の妹・お志摩の少女時代=太田由美子
丈吉の母・お咲=高森和子
多吉=財津一郎
オランダおイネ=早乙女愛
鉄山師の女主人・おこう=南田洋子
おこうの娘で丈吉の妻=曽根千香子
旅芸人・お春=佐藤友美
おりんの妹・お雪=宝多なるみ
仙吉=島米八
お雪の恋人で長州藩士・彦馬=金田賢一
語り手=中条静夫
最近はCSでもNHKモノが解禁されているので1日も早い放送を待ち望んでいます。
27 :
20:2006/02/12(日) 17:57:09 ID:???
すいません。
>>26の訂正です。
× おりんの妹・お雪=宝多なるみ
○ おりんの娘・お雪の少女時代=宝多なるみ
28 :
作太郎:2006/02/13(月) 00:57:33 ID:0xAudW6r
20さん、詳細な補充レポありがとうございます。
入道さんの疑問は、記憶のとおりです。南田洋子さんで間違いありません。
今後は、私手持ちのビデオでストリー紹介を述べたいと思います。
29 :
三好晴海入道:2006/02/14(火) 02:12:00 ID:???
「25」の情報収集は手間暇かかったことでしょう。本当にありがとうございます、20さん。ついでにHNをつけてみませんか?
財津一郎や坂上二郎が最後の方まで出てきているのもびっくりしましたが、高橋幸治が第1話から出演しているのも驚きです。
このドラマは登場人物が織りなしていく壮大な叙事詩でもあったんですね。まさに『レ・ミゼラブル』の世界。
南田洋子は私が物心ついた時には既に『ミュージックフェア』の司会をしていて、昼のスポット枠で夫の長門裕之と会話を交わす短い番組に出ていたことを覚えています。
つまり私にとって南田洋子はアクトレスではなく、品格の良いパーソナリティといったものでした。今で言ったら櫻井よし子さんの感じに近いでしょうか。
だからこのドラマで初めて女優としての仕事を見て意表をつかれたものです。しかも南田さんはほとんどすっぴん(と思われる)で、無骨で男勝りで気っ風がよい、鉱山師の女を見事に演じていました。
あまりにバラエティ番組での清楚で上品な感じに慣れ親しんでいただけに随分インパクトがありました。
後になってから今村昌平監督の『豚と軍艦』なんかを見て、実は南田洋子は鉱山師の女の感じの方が元々のイメージだったのだな、と発見したものでした。日活黄金期。そしてそのイメージを生かした役作り。素晴らしい女優だったのです。
栗塚旭の土方歳三を出してきたり、かねてから「日本人離れしている容貌」と言われてきた信長・高橋幸治に蘭学医を演じさせたり、プロデューサーは随分と粋な計らいをしてくれたものです。
それにしても半月もしないうちにこれだけの情報が集まるなんて、本当に感謝します。このスレッドを立てた甲斐がありました。これからもよろしくお願いします、作太郎さん。
30 :
作太郎:2006/02/16(木) 18:16:06 ID:UUZoKFtj
第1回を見てストリーを書いてみました。
第1回南海のはてに
主人公丈吉は、別名赤牛の丈吉と呼ばれる、力もちでよく働く為、他の流人仲
間から集団リンチを受けるが、無抵抗を貫く。何年かに一度、御赦免の為役人
が来る、その年来た役人は丈吉は3年前に赦免されたはずと云う、でもその書
類がなく、役人は、そうそうに帰る、再度赦免状は出せないという、聞いてい
た島の庄屋の息子作次郎、娘お豊。庄屋はお豊の婿に考えるが、作次郎は反対
する。お豊は赦免状が出ない事、婿の話を丈吉に告げる。
丈吉は、赦免状が出ない事に自暴自棄になる。
島に長崎から、医師竜安と手つだいの市蔵(坂上次郎)がやって来る。
丈吉は、生まれながらの赤毛の為父の多吉(財津一郎)に疎まれ、母お咲
(高森和子)に暴力を振るう父に反抗する。大塩の乱の混乱時、飢えた妹
お志摩の為、空き家と思った家に入って、ご飯を盗む、そこの家人に
大塩の一味と役人に訴えられ捕まる。幼なじみの米問屋の娘
おりん(吉本真由美)がかばうが許されず、島送りとなった。
31 :
作太郎:2006/02/16(木) 18:19:59 ID:UUZoKFtj
ひさしぶりに見ると、いろんな伏線がありますね。
当時のNHKの意欲が感じられますね。
おりんの素性は、忘れていました。
また、今後もストリー紹介続けますね。
興味持つ方増えて欲しいですね。
32 :
三好晴海入道:2006/02/17(金) 22:57:58 ID:???
ついに始まりました、作太郎さんのストーリー紹介各話編。「さてお次はいかになりゆくか」という感じで、楽しみにしています。
『レ・ミゼラブル』はもともと新聞小説だったとか。だから起伏に富んだ波瀾万丈のストーリーが続いていくわけですが、なるほど、それを元にした『いのち燃ゆ』が劇的で面白いのも当然。
ドラマ本編を毎週楽しみにしていたのと同じように、これからも作太郎さんの労作書き込みを心待ちにしています。
私もおりんが元々どういう女性なのか忘れていました。後にたどる文字通り「落魄」の運命を思うといても立ってもいられなくなります。
思い返せばまさしく男社会のエゴ、我執に踏みにじられた女性達と、あたかも彼女たちの苦しみを分かち合うかのように受難を受け続ける「異形」=赤毛の男、丈吉。そして「異形」とは聖痕でもあるのです。
あまり気づいていなかったのですが、ユゴーの原作にはカトリシズムの色合いが強いようですね。ではそれが『いのち燃ゆ』になった時にはどう生きてきているのか…。
あまり突っ込むとこのドラマの持つ根源の所まで降りていきそうです。いつか再見できるであろうドラマ本編を待ちながら、その大テーマは追々語ることにしましょう。原作『レ・ミゼラブル』も読んでみなくちゃなあ。
33 :
作太郎:2006/02/19(日) 14:34:24 ID:JWqYsfcn
第2回不運な男
丈吉は、御赦免のめどがないのに絶望していました。大坂からきた、流人仲間から、
母と妹の消息を聞き、母からのお守りと手紙を読んで元気を取り戻しました。
庄屋は、お豊の婿に成って欲しい事、赦免状の事を話しましたが、丈吉は婿の話を
はねつけ、どうしても、島抜けしてでも、島を出ると云いました。
竜安と庄屋の会話で、庄屋は、黙認をすると云いました。丈吉の島抜けは、
庄屋に見つかりました。庄屋は、通行札等を丈吉に渡しながら、再度お豊の婿
になることを頼みました。その時、島抜けをしようとする別の男が、
庄屋に襲いかかりました。丈吉は、庄屋に危害を加えたのは、
自分が罪をかぶると云いました。島は、島抜けと、庄屋の怪我で
大騒ぎになりました。竜安の介抱もむなしく、庄屋は死を悟る、
そして隠れキリシタンの儀式をする。隠れて見た、
市蔵に固く口止めをする竜安でした。
その頃大坂では、家に戻った父親が母に無心していました。わずかばかりのお金
をかせいだ、妹のお志摩からの金をとり、芸者と家出しました、
途中芸者になっていたおりんに出くわしました。母は、丈吉の帰りを待ちわびています。
作次郎は、お豊に、自分の出生の秘密を明かしました。
自分は流人と島の女の間の子であることを、15才の時別の流人に云われた
と云うのです。そしてお豊に結婚を求めました。お豊は、
父を殺した丈吉への仇討ちを作次郎がなせば、夫婦になると約束しました、
こうして2人の丈吉追跡の旅が始まったのです。
丈吉は、どことも知れぬ陸地にたどりつきました。
34 :
三好晴海入道:2006/02/19(日) 23:34:00 ID:???
ああ、ついに出ましたね、隠れキリシタンの設定。こんなに初期の段階で出ていたなんて驚きました。この「隠れキリシタン」という設定は
『いのち燃ゆ』を語る時に1つのエポックになります。幕府の体制の元、ご禁制となった邪教=キリスト教(ローマ・カトリック)。しかし虐げられたものの中にこそ真実がある訳です。
作次郎の出生の秘密も薄ぼんやりと覚えていましたが、既に第2話で明らかになっていたとは。彼は丈吉とはコインの裏表の関係にあります。ともに出生の秘密を抱えた者同士でありながら、
作次郎には愛すべき母親がいませんでした。彼は丈吉のもう一つの可能性です。だから最終回、丈吉とともに眠るのは彼なのです(この最後のシーンはあたかも『デビルマン』のラストを思わすような、荘厳で清冽なシーンです)。
大きなテーマを小出しにして語っているので、今回私が書こうとしたことが上手く伝わらなかったことでしよう。すみません。でも一気に書ききってしまうと、これから書いていく楽しみがなくなってしまうので。
まだしばらくは作太郎さんのストーリー紹介に乗っかって、ちょこちょこ書き込んでみます。
なお、このドラマではおりんとお豊もコインの裏表の関係にあるのでは、と私は考えています。このことについて考察を深める材料が少ないので、いよいよもって作太郎さんの情報を心待ちにしています。
35 :
作太郎:2006/02/20(月) 19:17:04 ID:nUgMxjTP
第3回銀の燭台
丈吉は、流れついた所で不審者と思われ、漁師の網かごにいれられました。翌日村人
から釈放されました。途中オランダイネに会い、傷の手当をしてもらいました。
イネは、竜安と知り合いでした。竜安と再会しますが、庄屋殺しについては、
丈吉は固く口をとざすのでした。イネに話した内容から、竜安は昔思っていた
芸者とオランダ商人の話を思いだし、丈吉に話すのでした。商人と芸者は相思相愛
になりました。商人は抜け荷の罪で、国外追放の刑を受けましたが、
芸者を一緒に連れて行こうとしますが、商人は死にますが、芸者は生き残りました。
その夜、竜安は、銀の燭台のすばらしさを伝えるのでした。「名も無い職人が作ったものだが、
オランダから日本に運ばれて、明かりをともす。すなわち。名誉も金もなくとも、
まわりの人を明るくする人になりたい。」と云うのですが、丈吉は「自分はこの
赤毛で苦しんできた、呪われている。」と。その日の夜遅く丈吉は、燭台を盗んで、
竜安の家をでました。
作次郎は、お豊の婚約者が行方不明なので、その男(丈吉)を探してくれと
自身番に頼みました。丈吉が竜安の家を出てしばらくして、鉢合わせし、対決します。
36 :
作太郎:2006/02/23(木) 15:16:56 ID:R+XlMcC/
第4回さらばオランダ坂
丈吉は、銀の燭台を持っていたので、番所の役人から、出所先を尋問されますが、なかなか
白状しませんでしたが、結局、竜安宅から盗んだ事を白状しました。
竜安は、おイネと相談して、燭台を譲った事にしました。
竜安は、お豊に丈吉への仇討ちを断念するよう説得します。お豊は、作次郎と丈吉の間で
いろいろ心揺らいでたのです。
作次郎と、お豊は、番所から、丈吉を引き渡されました。お豊は、仮病を装い、
丈吉に逃げるよう説得しました。丈吉は、一旦は、逃げましたが、気になって戻ってみると、
お豊は自殺を企ていました。唖然とする、作次郎、番所の役人を尻目に、丈吉はお豊を
竜安の元に連れて行きました。市蔵から、事の顛末を聞いた、竜安は、おイネとともに、
必死の手術で、お豊の命は大事に至りませんでした。
竜安は、丈吉の髪を黒く染めたり、普通の商人のなりにしました。そして、
お豊に会わずに長崎から、出るように、勧めました。丈吉は故郷大坂へ、
市蔵も江戸に戻ることに、最後に市蔵は幕府の隠密であることを明かしました。
作次郎は、お豊に免じて、今回は逃がすと、再会したら、捕まえると宣言しました。
37 :
作太郎:2006/02/23(木) 22:31:58 ID:R+XlMcC/
第5回 「愛と憎しみの街」
丈吉は、路銀をかせぎながら、故郷大坂への旅を続けていました。
兵庫まで、来て、自分の島抜けの噂を聞き、島抜け仲間と再会しました。町で
は知らぬ仲で通すことを誓いました。実家では、父の多吉が帰ってきました。
母お咲にまじめに働くと誓うのですが。妹お志摩は風車を売って、母は、米屋
で働いています。翌朝母と妹はそれぞれ働きにでかけました。残っていた父の
元に息子丈吉の島抜けの調べに役人がきました。実は丈吉が大塩の一党である
ことを強く主張したのは、多吉だったのです。それからやくざがやって来て娘
を博打の借金20両の肩代わりの確認をしにきました。
おりんは、昔米問屋の娘だったのですが、大塩の乱で家が没落した時、丈吉の
家人に世話になっていたのです。今は芸者として鳥取の商人丹波屋(山田吾一)
のご執心をうけていました。おりんは丈吉の事を丹波屋に話すのですが、金で
身請けしようと思われていました。
丈吉の家にやくざがやって来て、お志摩を連れていこうとしますが、お咲や
おりんは抵抗します。女の身ではどうにも、できません。そこに丈吉が帰って
きました。丈吉は持ち前の怪力でたくざを追い払いました。見ていた多吉は、
丈吉のことを番所に届けようと、思いました。
☆ ☆
残念な事に、これ以降の話は、以下の手持ちの状況です。
次の6話、7話は約半分。
それから飛んで13話も半分。
14話はなんとかあります。
15話はなし
16話以後は全部あります。
以後、ストリー紹介どうしましようか。
38 :
三好晴海入道:2006/02/24(金) 23:05:35 ID:???
欠けている場面を想像たくましく語っていくのもまた楽しいと思います。私もうろ覚えに覚えている者ですし、他のファンが補ってくれるかも知れません。
どうぞ紹介してください。
私の記憶から第3話と第4話がすっぽり抜けてましたね。やはり子ども心におりんの哀れな顛末が記銘されて止まなかったところだったのでしょう。
それに『風神の門』で駿河屋仙左衛門として印象深い存在感を見せた山田吾一が憎々しい役柄を演じていたのが忘れられなかったのかも。
前にも書きましたが、私にとって作太郎さんが所有せざる鳥取前後のエピソードが『いのち燃ゆ』の白眉でした。原作で言えば、ジャン・バルジャンが町の名士となり、
人道的な工場を経営して、そしてファンチーヌとその娘を救おうと苦闘するあの部分です。丈吉の父と丹波屋が見事なまでに憎ったらしく、
しかもその因業なやり口が少し分かるような感じだった(男の弱さ・執心というものでしょうか)のも本当に忘れられない設定でした。
丈吉の母、お咲の行く末はどうなるのだったでしょうか? 気になるところです。実はお咲と鉱山師のおこうもまた、コインの裏表の関係にあるのでは、という仮説を持っているのです。
ああ、やっぱり本編が見たいです。
39 :
作太郎:2006/02/27(月) 12:16:44 ID:L1R8hDHM
第6話「翔んで翔んで夢の中」の後半
第7話「夢去りし町角」の前半
父多吉の借金の取り立てに再度やってきた、やくざ達。
そこで、多吉は自殺すると母お咲を脅すがやくざに軽くあしらわれる。
刻限は明日までと。おりんが、なんとか自分の店の者に頼むと云う。
おりんは、匿っている丈吉と会う。丈吉は、銀の燭台を売ってくれと頼む。
おりんは、丹波屋に売ろうとする。作次郎とお豊は、お家断絶になった為
再び丈吉への復讐を誓う。そして番所で、丈吉の家を聞く。丹波屋は、
銀の燭台は禁制品と見抜き、買うのを拒む。おりんは、ついに、わが身を
丹波屋に売ることを承諾する。そのお金で丈吉の妹お志摩を救おうと。
おりんは、昨夜の丈吉との一夜の契りと、銀の燭台で自分の心の財産にと思う。
丈吉はそうとは知らず、金を受け取り一路家に向かう。途中、番所の役人や、
作次郎らを見つけ、慌てた為お金を落とす。役人はそれを拾う。
家に帰った丈吉は家族にお金を落とした事を告げる。多吉は丈吉をなじる。
なじられているうち、丈吉は多吉への殺意が芽生え殺そうとする。
お咲は、丈吉の前にたちふさがり、丈吉の出生の秘密を明かす。お咲が多吉に救われた時は
すでに異人の子を宿していた、それが丈吉である事。
おりん宅に、番所の役人、作次郎達が来た。夢うつつ状態で
丈吉への思いを告白するおりんに、お豊は嫉妬と丈吉への思いが交錯する。
丈吉は、母の仕事場に一緒に行って、ふたり涙ながす。
☆ ☆
お志摩は救われたのか、丈吉の落とした金はどうなったのか。
肝心なところが欠落したストリー紹介です。
誰か知ってるか、覚えている人、大募集ですね。
入道さんの感想、巧いですね。
私、とても書けません。
入道さんが、一番という、鳥取編がほとんどないんです。
成功した、いきさつ
おりんとお豊のその後はとか。
日を置いて、また
私の手元の部分を紹介します。
40 :
三好晴海入道:2006/02/28(火) 00:39:18 ID:???
本当にありがとうございました。いわゆる第1幕のほとんどがストーリー紹介されたわけです。作太郎さんの尽力に感謝します。
お志摩は救われたのか? 私の記憶の中に、お咲とお志摩が確か朝焼けの中で「今までのことは忘れて、新しい人生を生きていこう」と決意していく残像があります。
全ての登場人物が苦悩し続けた第1幕。しかしその最後は、しがらみを断ち切った母娘の、吹っ切れた明るい表情で締め括られていたように記憶するのです(大間違いかも知れませんが)。
大坂という「夢去りし町角」から丈吉親子が出立していき(借金は踏み倒し、父の多吉はいずことも知れず)、財布はどうも竜安先生に渡るとか、そんな展開だったような…。
この財布ですが、丈吉が鳥取で名士になる時の元手になったように記憶します。しかしそのお金は本当はおりんの身請けによって捻出されたお金だと言うことを知り、丈吉は必死に彼女を捜す。しかしその時には既におりんは不治の病にかかっていた…。
と言うような展開だったかなあ。全くの根も葉もない思いこみかも知れないので、あまり信用しないでください。でも前に語ったとおり、想像力をたくましくしてもう一つの『いのち燃ゆ』を作り上げるのも楽しい作業です。
そして次の回から南田洋子のおこうが登場するのです。海千山千の鉱山師稼業を生き抜いてきた、タフでいかした女性を演じて格好良かったですよ。彼女はお豊のドラマ後を暗示する存在なのかも知れませんね。
連┃続┃時┃代┃劇┃--------------------------------------------------
━┛━┛━┛━┛━┛
■いのち燃ゆ(1981年/全23話)━━━━━━オススメ☆CS初放送☆
《4月21日(金)9:00スタート》
□原作 ビクトル・ユーゴー □脚本 杉山義法
□出演 柴俊夫、神崎愛、石橋正次、高橋幸治 、ほか
「レ・ミゼラブル」を幕末日本に置換え、オリジナル部分を大胆に絡ませ
た娯楽時代劇。小さな盗みを犯した丈吉は天草に流罪となる。10年後島
抜けに成功した丈吉だったが、偶然起こった殺しの犯人と間違われ追われ
42 :
三好晴海入道:2006/02/28(火) 22:57:54 ID:???
>>41 何と! 「望めば適う」ということですね。分かりました、4月は年度替わりでもありますし、決断してCSを設置して観ることにします。
『風神の門』スレッドではCS放送にこぎ着けるまで2年以上の書き込み・情報共有の努力があったようです。『いのち燃ゆ』ではスレッド立ててまだ一ヶ月。
その間に作太郎さんという素晴らしい識者の参加があり、かなりの情報を得ることが出来て、そして本編も2ヶ月後に再見出来る訳です。恵まれてます。感謝。
43 :
作太郎:2006/03/01(水) 01:00:59 ID:RWJ3MNOq
こんばんは
ビックニュースですね。
わずか2月で夢叶うって事なのですね。
続きを先に見て第3部の京都編ストリー紹介した方がいいのか、
ネタばれしても、いいものはいいと思うんですが。
どうでしょうか。
入道さんの考え、他みなさんのご意見聞かせてください。
44 :
三好晴海入道:2006/03/02(木) 13:29:10 ID:???
もう、どうぞ京都編の紹介お願いします。2ヶ月で再見かないますが、その2ヶ月は貴重な時間だと思います。
新たなファンを掘り起こすことの出来る時間ですし、幕末の歴史に興味のある人がこのスレに卓越した意見を書き込んでくれるかも知れない時間です。
そして何より、ファンの我々が「いよいよ始まるぞ。観るぞ。」という気持ちを鼓舞していく時間でもあります。
作太郎さんが所有している貴重な録画が、その真価を発揮できるのもこの期間。役割を全うさせてあげたいではないですか(既に甚大な役割を担ってくれていますが)。
「いいものはいい」というのはその通りです。本編を観たらまたそれはそれで発見がザクザク出てくるものです。
より豊かに、貪欲に、深みを持って『いのち燃ゆ』を楽しんでいこうではないですか。
45 :
名乗る程の者ではござらん:2006/03/05(日) 17:31:54 ID:YT9YArW+
なんという嬉しいニュースでしょうか!
そしてストーリー紹介、ぜひお願いします。
『いのち燃ゆ』の魅力は、ネタばれごときに削がれることは無いであろうと信じております。
再放送までの約二ヶ月、作太郎さんのストーリー紹介に酔いつつ、願いが叶った喜びを噛みしめ
CS放送視聴可能な環境を整えて行きましょう。
46 :
三好晴海入道:2006/03/05(日) 21:37:41 ID:???
私、今『レ・ミゼラブル』の原作を少しずつ読み出しているところです。しかし普段多忙な業務を抱えている職業人ですので、そうそう簡単には読破できません(新書なら2日くらいで読破できるのですが、小説はちょっと苦手)。
でもおぼろげながら分かってきましたが、『いのち燃ゆ』はかなりの部分オリジナルが入っていて実はそれが魅力的だということです。
ミリエル神父は確かに重要な役ですが、竜安先生ほどの役を背負っていません。ファンチーヌも『いのち燃ゆ』のおりん程にはストーリーに絡んできません(しかしそれはまた別個に凝縮した登場で忘れられぬ印象を放っているのですが)。
お豊は『いのち燃ゆ』のオリジナル・キャラクターだとばっかり思っていたのですが、もしかしたらエポニーヌが対応しているのかも。
そういえば原作では重要な初期ストーリーである、少年からジャン・バルジャンが銀貨を盗むという話が抜けているような。いや待て、これがおりんから受け取ったお金のエピソードに対応するのか?
またまた記憶と想像が交錯しています。これもまた『いのち燃ゆ』の楽しみ方です。色々な方のご高見を待ってます。そして作太郎さんのストーリー紹介続編を心待ちにしています。
47 :
作太郎:2006/03/05(日) 22:44:31 ID:rAf7Mqmp
声援ありがとうございます。
6回分すっぽり抜けて申しわけあえいません。
8回〜13回前半
タイトル列挙のあと続けます。
第8回「生生流転」
第9回「一輪でも花にて候」
第10回「噂の男」
第11回「たった一夜の涙花」
第12回「お豊・作次郎流れ旅」
第13回「砂に埋れし幸福の日々」
後半25分
竜安が、お豊に衝撃的な一言を云った。
丈吉は小松屋幸吉として、鳥取藩の用人と会合を持った。先日の怪力での人助けが話題になり、
境で、赤毛の丈吉が捕らえられた話がでた。丈吉は自分の身代わりの驚いたが、これでと安心した。
お豊は病床のおりんを見舞う、そして大坂での事をなつかしく語り合う。作次郎は、
丹波屋の飲み屋で、丹波屋から、境で丈吉が捕らえられた事を知る。作次郎は、境で確認すると、
その男は、丈吉を一緒に島抜けをした千吉とわかった。千吉は作次郎を認め、自分が千吉であると
証言してみらおうとするが、作次郎は役人にその男が、丈吉であると云う。翌日作次郎は、
お豊を伴い、小松屋を尋ね、境で丈吉が捕まったと詫びた。幸吉の妻と義母は安心した。
しかし、丈吉には捕まったのが千吉であると告げた。苦悩する丈吉、銀の燭台と訣別の為、
海に捨てた。お豊は、竜安に、丈吉の自首をやめるよう説得してもらおうとするが、断られた。
48 :
三好晴海入道:2006/03/08(水) 18:53:57 ID:???
たった後半25分だけでも密度の濃い展開ですねえ。その間5話分抜け落ちている訳ですが、想像するだけで楽しくてしょうがありません。
確か10話じゃなかったでしょうか、それまで薄汚れた身なりだった丈吉が、極めてこざっぱりとした装いで荷車を引き、それまでのドラマ中では見せることのなかった笑顔を振りまき、
商人として成功しているシーンで始まるのは。家庭も出来、居場所も出来て、人生が順風に進んでいるということを見事に表した笑顔でした。当時私は祖父祖母の部屋のテレビで一緒に『いのち燃ゆ』を観ていまして
(居間のテレビは弟たちが独占していて、水曜スペシャル川口浩志探検隊とかを観ていた)、じいさんと一緒に「丈吉良かったなあ」と喜んでいた良い思い出があります。
鳥取編って、『未来少年コナン』でいけば「ハイハーバー編」に該当するような、波瀾万丈のドラマの中のほっと一息つける部分なのです。しかしその平穏に見える幸せがいかに難しいバランスの中でつかみ取られたものなのか、
それを守っていくためにはやはり闘っていくしかないのだ、という深い真実を見せてくれたのです。それは反抗期に入りつつも、同時に両親のことを客観的に見ることが出来るようになりつつあった中学生の私には
なかなかにリアルな設定でした。
私が鳥取編が好きなのはこんな所にも要因があります。いわば青春の怒濤期を過ぎた人物が、家庭人となった時に背負う業を描いたのが鳥取編なのでしょう。と言うことは、京都幕末編はある年齢になった人物が次世代の人間に
物事を託し、そして子どもを自立させていく物語なのだと言えます。『いのち燃ゆ』は見事な一代記なのです。ユゴーの原作もさることながら、こういう着眼点は脚本の杉山さんの慧眼だと思います。
49 :
三好晴海入道:2006/03/11(土) 15:41:34 ID:???
本日CSアンテナ工事完了しました。これで4月の『いのち燃ゆ』放送に向け下準備が整いました。さあ、見るぞ。
ちなみに時専chって他にも面白そうな番組やってますね。『子連れ狼』も見てみます。本編放送時はそれこそ大五郎と同い年位なので、実際の作品見たことなかったです。
50 :
作太郎:2006/03/12(日) 00:54:52 ID:294lnJX0
こんばんは
入道さんの作品への強い傾倒すばらしいですね。
第3部の紹介が遅れていますが、もう少しお待ちください。
雑記風に感想を少し。
竜安の存在すごいですね。
丈吉が婿養子になれたいきさつはタイトルの一輪の花にあったような。
おりんとお豊の関係描写ももう少し知りたいですね。
丈吉と過去を知る人との再会シーンも劇的な事がたくさんあったような。
まだ、まだいろいろありますね。
他の方の書き込み期待します。
51 :
作太郎:2006/03/16(木) 14:05:59 ID:SQX/QxYw
第14回「白日夢」
お豊は、の家を尋ね、幸吉(丈吉)の妻おみつに、幸吉を今日一日家から出さない
よう忠告する。幸吉は鉱山にでかけようとするのを、おみつは必死に止め、家にいる
ことになった。竜安は、おりん、お雪母子に会い幸吉の来訪願うお雪に感心した。
赤毛の丈吉こと千吉は、町を引き回し後処刑されると云う。そして引き回しが、
小松屋の前を通った。おこうの命令で家を閉ざしていたのだが、幸吉はそのまま、
うなされたようにその後についていく。処刑場で必死に抵抗する千吉。
幸吉はついに自首を決断する。おみつと、そこで会うが丈吉の固い決断の前では
なすすべもなかった。丈吉の突然の出頭に驚く役人たち。そこで皆の前で語る丈吉、
前科者への温かいまなざしの願いと自分と千吉との運命が紙一重であることを。
丈吉は縄をうたれ、役人ともに、出る。途中作次郎に会い「作次郎はん、ありがとう、
あんたのおかげで、人の通をふみはずさなくてすんだ。」と感謝の言葉を云う。
呆然と立ち尽くす作次郎。おみつはショックで倒れ流産する。刑場に一人残り、
呆然自失の作次郎の元にお豊がきて、二人は抱き合う。その夜二人ははじめて
男女の仲になった。しかし、作次郎は翌日朝早く姿を消す。
竜安は丈吉が隠岐島に送られる途中会う。そこでの丈吉の潔い態度に、
竜安は「丈吉は、わしを越えた。」と云う。
第15回「お雪哀しや鈴が鳴る」
予告編のみ
ナレショーンと画像から。
1年後、小松屋の元に丈吉が死んだと云う知らせがきた。
おりんが死んだ、お雪は丹波屋が連れ去る。
丈吉は、お雪を連れだし、いずこかへ。
52 :
三好晴海入道:2006/03/18(土) 19:03:41 ID:???
ありがとうございます。今まで忘れていたのですが、このストーリー紹介で記憶の扉が開かれ、まざまざと各シーンが頭の中に去来しています。
処刑される間際暴れ出す千吉、そして本当に素晴らしい丈吉の演説(見ていた当時、心の底から揺さぶられたのを覚えています)、子どもを流産してしまうおみつ、隠岐に流されていく丈吉を見つめる竜安先生…。
私が鳥取編が好きだった理由の一つを思い出しました。
思春期の頃は青臭い正義感に燃えているものですが、まさに「正しく生きる」というメッセージを、この話からストレートに受け取ったからこそ感動していたと思うのです。
それはフランク・キャプラの心温まる映画群を見たときのような感触です。悲しみと苦しみと怒りに満ちていた前半生を送っていた丈吉に訪れた幸せな日々。それは丈吉にとって当然の権利であるように思えました。
しかしそれを振り切って、「正しく」生きることは出来るのか?そして「人間は正しく生きることが出来るんだ」ということを真っ正面から描き、胸のすくような思いだったのです。
思えば私が子どもの頃、ヒーローが「正義」自体の意味に悩んだり、巨悪の前に敗北したり、そして死んでいく物語の何と多かったことか。「正義と悪」の境界を問いただすようなハードなドラマが子ども番組の世界でも主流でした。
そして時代は80年代、正しいことを「正しい」というのが恥ずかしいこととされた「軽薄短小」「自虐韜晦」の時代でした。そんな風潮に違和感を感じ、小さい頃見た「本当のドラマ」を見たいと
切望していた時にこの『いのち燃ゆ』にぶつかったわけです。「熱い」時代の名残を残していたんですね。そう言えば子ども時代にテレビドラマを入れ込んで真剣に見たのもこの頃が最後だったかも。段々関心はラジオや読書に移り、
そしてテレビを見るより机に向かって勉強するようになったり映画館に足を運んだりするようになったものでした。少年時代との決別の頃だったのでしょう。この『いのち燃ゆ』は、テレビが熱かった頃と私が子どもだった頃の終焉時代に出会った良品だったのです。
だから今でも忘れられず、スレッドも立てたわけです。第14話「白日夢」はそんな『いのち燃ゆ』の一つの頂点をなすストーリーでした。
すっかりあの頃大興奮してみていたことを思い出しました。改めてありがとうございます、作太郎さん。
53 :
作太郎:2006/03/19(日) 01:01:21 ID:ZhkcOa0j
こんばんは
いつもながら、入道さんの思いすばらしいですね。
私の拙いストリー紹介で、いきいき感動が戻ってこられるのは、とても嬉しい事です。
成人して見た私が、第3部の京都編に心ゆらぐのは、家族の愛、すなわち丈吉のお雪への愛情、
父子関係を見事に描いているからです。私は好きなものに友情物のドラマが多いのですが、
親子関係の物は少ないです。入道さんのおかげで、私も家に眠っていたビデオを見る
事ができた事にも感謝します。
ドラマ1話みて、文章化するのは、1時間以上かかります。全部細かく説明したいぐらい伏線
と名文句の羅列が多いので、省くのに、苦労しています、でも、これは、楽しい苦労です。
他の方もどんどん、書き込みに参加してくださいね。
54 :
三好晴海入道:2006/03/19(日) 16:20:43 ID:???
いよいよ作太郎さんのストーリー紹介も幕末維新編にはいるのですね。楽しみだなあ。
当時見ていた私の感想としては、第16話でおりんもおこうも亡くなり、ひとまず一つのストーリーが終わったように感じていました。
その後のストーリーは、あたかも『源氏物語』の「宇治十帖」のごとく、秀逸な後日談というか、別個の高みを持った物語であったように思ったものです。
中学生にはちょっとレベルが高かったかも。新撰組や薩長討幕運動とかも、もう一歩よく理解してなかった頃ですしね。
でも少し前の子ども達というものは、こういうドラマを通じて歴史の素養というものを育てていったように思うわけです。今ではちょっとそう言う環境が弱くなっているようにも思われます。
かつてヤマタノオロチの話やかぐや姫、一休さんの話を絵本なんかで見聞きしたのは、今では『となりのトトロ』や『アンパンマン』に取って代わられたわけです。それはそれで良いことではあるのですが、歴史に関する素養というものは乏しくなっているようです。
日本の歴史を素材にした、また新しい物語が紡ぎ出されていって欲しいものです。4半世紀の眠りから覚めて、『いのち燃ゆ』が新しい価値とファンを獲得するよう願って止みません。
55 :
三好晴海入道:2006/03/21(火) 00:25:53 ID:???
第14話「白日夢」でもう一つ。私はお豊と作次郎が男女の一線を越えたのは最終話付近だとばかり思ってたのですが、それはどうもこの第14話のエピソードだったようです。
確かに男女の契りを果たしたあと、不意に作次郎がいなくなった、という記憶があったのでここの話のシーであると思います。どうも丈吉を許す作次郎、という所で最終話と記憶がループしていたのでしょう。
神崎さんのセミ・ヌードはとっても色っぽくて、まだ中学生だった私も「わあ」と思ったものです。それまでの清楚な印象との意外性もあり、また着やせするタイプなのかグラマラスだったのです。
これほどまでに記憶に残っている今一つの理由があります。丈吉を愛した女性、おりんは彼の子どもを生み、おみつは夫婦になります。しかしお豊だけは丈吉と結ばれることがなかったのです。だからこのシーンを見たときに、
「作次郎で良かったのか、丈吉のことはもういいのか?」と思ってしまったのです。しかもその直後、作次郎も彼女の元から去っていくわけです。おりんやおみつとは異質の哀しいさだめを背負ったわけです。
しかしその代わり彼女は『いのち燃ゆ』というドラマの全体像を竜安先生とともに見届けるという大役を引き受けることになりました。彼女は『いのち燃ゆ』と、そして幕末維新という激動の時代と添い遂げたのです。
そんな彼女によく似た女性がいます。それは鉱山師のおこうだと思うのです。彼女たちはともに哀しみを背負いながら、しかしそれを乗り越えて力強く生きていく気概を持っています。自立した女性。明治という新たな激動の時代、
お豊は次世代の理想に燃えた人達のために労苦を厭わず手を貸していくのではないでしょうか。あたかもおこうが丈吉を見込んで支援したように。
56 :
作太郎:2006/03/23(木) 01:32:16 ID:QPXvOBA0
第16回京の恋
丈吉が、お雪ともに行って8年の年月が流れていた。
京の町で、若い武士が女スリの被害にあった。
女すりの名は、風車のお志摩と云う。お志摩は、馴染みの米八と、酒をのんで
いた。そこで、米八が奉公先で盗んだ物を売ろうとしていた。酒屋「夜なき亭」
の女将お豊は、二人を店から追い出した。
その後、伏見で米屋備前屋を始めた丈吉とのみかわした。丈吉は、今日は、
竜安とおイネに預けていたお雪と8年ぶりの再会の準備中であった。
ついに、お雪がおイネに連れられてやってきた。お雪は何故かそっけなかった
。お雪は、丈吉に父の名と、丈吉の自分への世話のわけを尋ねた。「本当の親
でないのに、なぜ自分の世話をするのか。」「他人が親切して何故悪い」と、ふたりの会話は噛み合わなかった。
若い武士、岡田彦馬は、10数年ぶりに、脱藩した父と再会を果たした。父は
古道具屋で手に入れた銀の燭台を彦馬に与える。そこに新選組の御用改めがあ
った。彦馬も戦いに巻き込まれ負傷する。備前屋も御用改めがあった。新選組
が、お雪の部屋に入ったので、怒る丈吉。新選組が去った後彦馬が負傷して
あらわれた。介抱するおイネとお雪。
57 :
三好晴海入道:2006/03/23(木) 01:48:56 ID:???
本日『月刊SKY PERFEC TV!』購入。早速オン・エア日程をチェックしました。
ch718「時代劇専門チャンネル」での放映だとばっかり思いこんでいましたが、実はch362「ホームドラマチャンネル」だったんですね。
確かにこの『いのち燃ゆ』の展開は時代劇という範疇を越えた普遍性があるわけです。曰く「家族愛」「真実と誠」「偏見・差別と高潔・正義」…。
初回放送は4月21日(金)午前9:00〜。再放送は翌週月曜15:00〜、もしくは水曜20:00〜。このサイクルが毎週続きます。乞うご期待。
1週間ごとですので、本放送の時と同じく、1週間わくわくして次回を待つことになります。この待っている間の胸の高鳴りも楽しみの一つです。これで半年は熱中できる期間が継続するわけです。今から楽しみだなあ。
58 :
三好晴海入道:2006/03/23(木) 02:17:39 ID:???
作太郎さんの幕末維新編ストーリー紹介待ってましたよ。忘れていた設定がいっぱい。お志摩はスリになっていたんですね。彦馬が銀の燭台を手に入れていたという設定もすっかり忘れてました。
原作『レ・ミゼラブル』のマリウスは父親との確執があって、それがドラマのキーポイントだったりするのですが、『いのち燃ゆ』でも彦馬の父が出ていたんですね。これも忘れていた設定。さて、ドラマにどう反映されていくことやら。
よく覚えていた設定は、お豊が一杯飲み屋を経営していて、そこに旧知の人物が集ってくるというところです。懐かしいなあ。やっぱり番組の初回から感情移入して見続けてきた人物には思い入れが深いのです。
丈吉とお雪の応接、これは切ないですね。年頃の娘を持った父親なら必ず一度以上は直面するディスコミュニケーション。お互い我をはって不器用にしかつきあえない。リアルな設定です。脚本の杉山さんは人間というものをよく分かっています。
作太郎さんが幕末編を一番気に入っているというのも分かる気がします。本放送放映時に中学生だった私ももはや30代後半、運命のさじ加減で、へたをしたら丈吉と同じ立場に立たされる可能性だってあったのです。そんな年代です。
かつて見えなかったものが見える年になりました。CS放送開始前に十二分に楽しむことにします。
デリケートに好きして
ほしゅ
スレ主さーん
;"ヾ,
;゙ "\
; "ヾ'"'~"゙ヾ'y─''"' ''';; だれもいない?
ミ ´ ∀ 丶 /
゙ミ; ソ;゙ l^丶
ミ ,, , , ,, 彡 | '゙''"'''゙ y-―, いないね
゙; U U シ ミ ´ ∀ ` ,:'
ミ ジ ミ ミ
ミ ;ミ ;ミ u u ;': ハ,_,ハ きよらかー
゙ミ ミ;, ;゙ ミ ;゙´∀` ";, ハ_,ハ
'ミ、 ,_, ,,;; ;;シ ;; `:; ,:':; u u ;ミ ;,'´∀`゙;; さわやかー
"゙ミJ^"'"゙''"゙~"''ミJ"'゙ " 'U"゙''~""'U" ゙u''゙"'u" ゙'u'゙'u'
62 :
作太郎:2006/03/24(金) 13:43:24 ID:VVey7Gqc
前回、お志摩とよなき亭で会っていた男の名は春吉と訂正します。
第17回「祇園囃子が聞える」
丈吉は、侍の争いは他人事で、関わりたくないと思い、負傷した彦馬を、すぐにも
長州屋敷に返そうとしましたが、おイネとお雪の説得で思いとどまりました。
うなされた彦馬は、銀の燭台の事もうわごとでいいます。おイネも丈吉もまさかと
思いますが、彦馬の父と会ったところを訪れます。そこで新選組の沖田が拾っていたのを
見つけました。沖田は翌朝お志摩の所を訪れました。そこで、お志摩に銀の燭台は
与えられました。そこに来た、春吉が訪れ、以前銀の燭台を拾い、道具屋に売った事
を話しました。春吉は、丹波屋の息子だったのです。彦馬の元に祖父が訪れ、
祖父は、父の事をなじりますが、彦馬は反抗しながらも、屋敷に帰っていきました。
おイネは長崎に帰りました。よなき亭で、お豊、お雪、丈吉は、楽しい食事を、
していました。祇園祭りに、出かける途中春吉がお志摩を尋ねて、店に来ました。
池田屋で、新選組と長州その他の武士たちとの戦いを告げました。
彦馬の事が心配なお雪の為に、丈吉は池田屋に向かいました。池田屋での新選組の凱旋
の行進の中に、丈吉は作次郎の姿を見つけました。その間に、彦馬の父が、重傷姿で、
よなき亭に、お雪は、彦馬を知っていると云うと、言葉を託されました。
丈吉が帰ってきました。お雪とお豊は、長州屋敷に、彦馬に会いに行きました。
彦馬の祖父は、死体の引き取りを拒否し、彦馬を屋敷から出るのを断念させました。
丈吉は、名を名乗らないお志摩に、彦馬を匿っていた事、彦馬の父の事を役人に
知らせられました。お豊とお雪が帰ってきました。丈吉は、お豊から、
風車のお志摩と云う名を聞かされました。お豊は、作次郎に会いに出かけました。
作次郎は、お豊と、丈吉を確認しました。
63 :
作太郎:2006/03/25(土) 21:34:57 ID:6UzhrGBX
第18回相呼ぶ魂
お豊は、毎日のように、新選組屯所を訪れ、作次郎と会おうとするが、会えない。
お雪は、丈吉の反対にもかかわらず、彦馬への思いを断ち切れない。
鳥取から、春吉の家族丹波屋一家が来た。それを見て、お志摩は、沖田に、
自分の身の上を話す。父は、ぐうたら、母とは生き別れ、兄は島送りと、
今家族とは会えないと云う事。
そんなある日、新選組が備前屋に来た。副長土方に同伴してきたのは、作次郎だった。
土方の要求は、政治献金の要求で、鳥取の小松屋も丈吉の店であることもつかんでいた。
丈吉は、侍の争いに加わる意志のないことを云う、土方は、佐幕、反幕の二者択一の時代
と云う。丈吉は、自分の家は自分で守る意志を、土方は不敵な者と云い、献金を断念した。
お雪は、彦馬に呼び出され、彦馬から、求婚された。その時、沖田とお志摩に遭遇した。
沖田は、自分が、彦馬の父の仇であることを告げた。そのあと、沖田は、近く戦争に
なることを、丈吉に告げた。
お雪は、彦馬の事を丈吉に話した。彦馬の両親の不幸を例に丈吉は、
お雪にあきらめるように説得する。
64 :
三好晴海入道:2006/03/26(日) 19:35:36 ID:???
気がついたらCS放送まであと1ヶ月を切りましたね。貴重な1ヶ月です。「見るぞ」という機運を盛り上げていきましょう。
作太郎さんのストーリー紹介を読んでいたら、お志摩の扱いが大きいことに気づきました。全く忘れていた設定です。お咲とは生き別れだったのか。いよいよ第一部の終幕のあり方がどうだったか気になるところです。
それからやっぱり丈吉の親心を見るにつけ、「実際の家庭でもそうだよなあ」と、妙に感心してしまいます。親は子どもに危ない橋を渡って欲しくないもの。しかし子どもにとってそれはありがた迷惑に感じるものです。
お雪の恋心は止められないのです。丈吉の胸には、自分自身と関わったことによって不幸になっていった幾多の女性のことが去来していたのでしょう。娘にだけはそんな思いをして欲しくない。
しかし世の中は業が深いものでして、娘は父親に似たタイプの男性を愛してしまうものなのです。だからお雪が世の中を変えるべく命をかけている彦馬に恋してしまうのは仕方のないことなのです。
親としてのこのジレンマ。幾多の男親が経験してきたであろう苦渋。本当に人間の営みというものが脚本の杉山さんには分かっていたようです。身につまされますねえ。
〈追伸〉
目下年度末の極めて忙しい時期ですが、このスレの進行を見ることを楽しみに頑張っています。でもちょっと明日から時専chの『子連れ狼』に浮気を。
スレ主さん、久しぶり降臨記念
..◇・。..☆*。
゜゜・*:..。.。★◎@ ○☆。..:*・゜
゜゜・*:..。.。◇@☆*・゜★。。.:*・☆*・。..:*・゜
。..:○★◎☆。∂∇。★◎*・゜゜。◎★
◎☆◇☆。*・.。..☆◎。.:☆◇*.....。
゜゜・*:..。.*・☆◎。__☆◎*・。..:*・゜ ゜
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. ∧_∧\ /
( ・∀・) ∞
/ つ つ△
〜( ノ
しし'
お帰りなさーい
66 :
三好晴海入道:2006/03/29(水) 06:17:33 ID:???
思えば作太郎さんの労作、各話ストーリー紹介も佳境を迎えています。気が付けば栗塚=土方も登場する段になっています。
今までの話の中の登場人物が再び現れ、邂逅していくのが、リアルタイムで見ていた頃の幕末維新編の楽しみでした。お志摩の設定は忘れていましたが、オランダおイネさんや丹波屋一家が登場してきたときには感激でした。
そう言えば
>>25で示唆してもらった通り、第19話で丈吉の父、母が再登場します。文字通り「役者が揃います」。ドラマも大団円へ近づき、今までの伏線が一つに収斂していこうとしています。
スレッド立てて早2ヶ月、書き込みも50をとうに越え、考えていた以上に詳細で良質の情報が集まりました。もうじき年度も変わります。また新たな気持ちでこの「NHK『いのち燃ゆ』について 」スレッドに参加していこうと思っています。
67 :
作太郎:2006/03/29(水) 18:06:59 ID:Ln5WApsB
今日は、一気に3話見ました。
一度に皆書くのは、やめておきます(笑)。
再放映も1週間に1回のペースで進むのでしょうか。
半年間、わくわくして鑑賞してもらいたいですね。
ストリー紹介で充分書けない、登場人物の名台詞がいっぱいあります。
そして、DVDで発売して欲しいですね。
この時期のNHKの時代劇は秀作が多いと思います。
「風神の門」「風の隼人」「日本がんくつ王」等
いずれも、私途中しか見ていないのです。
「風神の門」は、すでにDVDが発売されているそうですね。是非購入したい
と思っています。では、ストリー紹介を。
68 :
作太郎:2006/03/29(水) 18:08:09 ID:Ln5WApsB
第19回聖母の子守歌
丈吉の元に、竜安から、生き別れの母親らしいのをみかけたの連絡が入った。
作次郎は、新選組での夢をお豊に語った。新選組が長州を破り、隊士たちが
旗本になる事。
お志摩は、春吉ともに、なにか悪企みを。
丈吉は、物乞いをする母親、子供のように、ぼけている父親を見つけた。
丈吉は、母に京都で一緒に暮らそうと説得するが、母は応じなかった。
母は、今が一番しわあせだとも、いい、丈吉と父の関係をこじらせたのは、
自分であると詫びた。
お雪は彦馬の呼び出しを受けて、お豊ともに、出かけるが、お志摩、
丹波屋の手によってかどわかされてしまった。
69 :
作太郎:2006/03/31(金) 01:01:18 ID:TGHvutMB
第20回お志摩恋ぐるま
丈吉は、お雪を必死に探す、途中彦馬と出会い、彦馬に迫るが、彦馬も怒り
一緒に探しはじめた。お豊から、一味にお志摩が加わっているのを知ると、
新選組の屯所にでかけ、沖田に会った。沖田ともに、お志摩の事を話すうち、
お志摩が妹らしいことがわかる。
お雪は、丹波屋に、母のこと、丈吉が罪ほろぼしの為、尽くしているとの
言葉を受け、悩む。
お志摩が備前屋にやってきて、身代金を要求しにやって来た。
そこにいた沖田は、兄妹の再会を示唆した。丈吉は、長崎での父母の事を話し、
お志摩は涙で納得した。
お雪救出は、なかなか困難であった。丈吉の機転で彦馬が無事救い出した。
お雪は、丈吉にまた、とげある言葉を「罪ほろぼしで、自分を。
万事お金と思っているのか。」丈吉はまた悩む。
沖田から、返してもらった銀の燭台から、秘密の手紙が見つかった。
おりんが記したものだった。
父丈吉、母おりんと書いてあった。
70 :
作次郎:2006/03/32(土) 19:15:01 ID:b600ymQA
第21回作次郎乱れ斬り
手紙を見つけた、丈吉は、お豊に自分の決意を告げた。
父親と名乗らずとも、今までとおり、お雪の為に生きるという事。
幕府、反幕の争いが、激しくなり、沖田は、お志摩と別れた。彦馬もお雪と別れた。
それから、3年
形勢は逆転し、幕府は力を失い、長州が優勢になってきた。
しかし、幕府側の反撃で、一瞬即発の感じになってきた。
彦馬の祖父は、戦い前に彦馬とお雪を結ぶよう画策する。
鳥取から、おみつがやってきて、京を出て、一緒に暮らそうと提案する
お雪は、外で偶然彦馬に出会うが、作次郎の手により、新選組の捕虜になり、
拷問を受ける。お雪の必死の懇願で、丈吉は、単身彦馬救出する。
丈吉は捕まるが、土方の手により釈放された。
丈吉は、屯所を出たところを竜安と全斎に出会った。
作次郎は、自分をなじった、全斎を斬った。
71 :
三好晴海入道:2006/04/06(木) 05:50:23 ID:???
済みません。しばらく忙しくて書き込みしてませんでした。
幕末維新編のストーリーはほとんど忘れていたのですが、このストーリー紹介で断片的に記憶が蘇ってきました。
確かに丈吉の父はぼけていたなあ。骨肉の思いで今までの経緯を精算するのかなあ、なんて思っていたので、当時「あれ?」と思ったものです。
そしてここに来てまでも丹波屋が嫌がらせをして、子ども心に本当に憎たらしかったのを覚えています。
作太郎さんが一番気に入っているのがこの第20、21話辺りのエピソードですね。一筋縄ではいかない展開で、まさに『レ・ミゼラブル』の世界です。歴史の大きな渦の中における個人の情、営みというものでしょうか。
思えば大塩平八郎の乱から始まったこのドラマ、とうとう大塩の「世直し」という理想がまた違った形で実現していく状況になります。この大塩平八郎は、原作ではナポレオンに充当する存在だという試論を私はかねてから持っていました。
そこでこの『いのち燃ゆ』というドラマが持つ大テーマがまた一つ浮かび上がってくるのですが、まあそれはいずれ述べていこうと思います。
72 :
?i`???Y:2006/04/08(土) 18:14:10 ID:ikVEPTtE
入道さんの書き込みないと、元気がでません(笑)。
残すところ、あと2話になりました。
今月からの放送で今以上の盛り上がり期待します。
テーマってあんまり深く考えずにみていましたが、入道さんの精密な解釈を、原作者
や、関係の方に見せたら、ひどく喜ばれますね、きっと。
柴俊夫もこれが代表作の気がしますね。石橋正次も、青春物から、脱皮した作品のように思えます。
神崎愛さん、これ以降かなり活躍なさった気がしますが、今余り見かけません、どうしているのでしょうか。
高橋幸治さんも、今みないな。高橋さんスレッドの方も書き込みして欲しいですね。
73 :
三好晴海入道:2006/04/08(土) 20:00:21 ID:???
神崎愛さんですが、『配達されない三通の手紙』(野村芳太郎監督作)のDVD特典「シネマ紀行」にナビゲーター役で出ています。
流石に年をとった感じですが、それでもなお爽やかな印象で、いい歳の取り方をしています(例えるなら八千草薫の様な感じでしょうか)。
今CSの時代劇専門チャンネルで『子連れ狼』を見ているのですが、柳生烈堂の役を高橋幸治さんがやっています。何かショッカーの首領みたいな感じで違和感あります。今は隠居状態で、ほとんどマスコミの前に出てこないそうですね。
考えてみると、この『いのち燃ゆ』はメジャー級の名優を使う訳でなく(南田さんも栗塚さんもピークはとうに過ぎています)、それでも素晴らしい役柄を見事に演じた人達ばかりでした。スカパー!で再放送が始まったら、各役者のことについても語ってみたいですね。
妹(姉)やミリエル司祭がずっと話にからんできたり、マリユスが最終的
には勝者側だったりと、原作をそのままなぞっているだけではないところ
が面白いですね。
これって、いわば土方さんがアンジョルラスにあたると考えていいんで
しょうか? アンジョルラスファンとして面映いです。
テナルディエ夫妻がいないようなのはちょっと寂しいですが。
75 :
三好晴海入道:2006/04/10(月) 06:46:44 ID:???
>>74 テナルディエは丹波屋が該当人物です(と思うのですが)。妻も娘も出てきますし、みんな強欲です。息子=春吉が密かにスリの一味だというのもよく似ています。
そして丹波屋がおりんに執心して身請けするのは、テナルディエがファンチーヌからコゼットの養育費を巻き上げていたストーリーとリンクしています(あげくファンチーヌは売春婦になる所も同じ)。
ちょっと違うのがエポニーヌです。私はお豊がエポニーヌの役割を担っているのかなあ、なんて思っていましたが、作太郎さんのストーリー紹介を読んでいたら、お志摩にその位置が与えられているように思えました。
原作ではテナルディエ一家は裏主人公で、縦横無尽の活躍(暗躍?)をしますが、『いのち燃ゆ』でははっきり敵役で、悪の魅力が少し薄れている部分がありますね。
山田吾一の丹波屋は名演ですが、流石に原作のテナルディエほどにはドラマ全体への支配力を持たなかったようです。ドラマ自体の構造故でしょうか。善悪の二元論で割り切らない所が『いのち燃ゆ』の良いところなのかも知れませんね。
76 :
作太郎:2006/04/10(月) 22:27:43 ID:Pekc+F7O
第22話それ京洛の花と咲く
丈吉と竜安は備前屋に帰ってきた。
彦馬は、避難を勧告する。
彦馬の祖父がきて、彦馬とやりとりがあった。
彦馬が帰ったあと、お雪は丈吉への、複雑な思いを竜安にぶつける。
血と他人の事である、竜安の諭しも、お雪には通じない。
廊下で聞いていた、丈吉は、彦馬との仲を許そうと思う。
新選組の元で、作次郎を攻める、お豊だが通じない。
お豊は、竜安を仲人に、作次郎と祝言をあげる。
竜安の諭しに、2人は目出たく結ばれる。
丈吉はおみつに、お雪の結婚を認め、鳥取へ帰らない事を告げる。
丈吉は、彦馬の祖父に承諾を告げる。
仲人は竜安が務める。
竜安は、丈吉に、作次郎とお豊の事を告げて、喜ぶ。
竜安とおみつは、備前屋を出た。
鳥羽伏見合戦の前年の暮れの事であった。
77 :
作太郎:2006/04/10(月) 22:36:48 ID:Pekc+F7O
この回も、名台詞がいっぱいあります。
それを文章化できないのは、残念です。
みなさん、TV放映で味わって欲しいと思います。
そして、DVD化も期待しましよう。
私は、「レ・ミゼラブル」は、昔読んだのですが、手元にないので
ほとんど、覚えていないに等しいです。
アンジョルラスって、どんな人だったのでしょう。
テナルディエんの娘の悲恋が印象に残っていますが。
近く、購入して、楽しみたいと思います。
翻案とは、いいながら、原作を越えた物がいくつかあると思います。
丈吉とお雪の葛藤
78 :
三好晴海入道:2006/04/16(日) 07:37:26 ID:???
いよいよ今週ですね。私が持っているDVDレコーダーは古い型のもので、HDも内蔵されていませんし処理能力も遅いです(それでも2000年に買ったのですが)。
トリノ・オリンピック効果もあって高性能の製品でも随分手頃になったみたいですから、これまた意を決して新機種買いに行きます。
DVDはハイビジョンに対応していなく、もうすぐ生産・販売が頭打ちになる、なんて業界の人に聞きました。次なる映像メディアはブルー・レイか、はたまたハード・ディスクか。ネット配信に移行する、何てことも聞きます。
でもまあその行く末が定まるまでまだDVDレコーダーに活躍してもらいましょう。
作太郎さんのストーリー紹介もいよいよ次で最終話ですね。感涙のラスト・シーン、あえて今まで明かさないように書き込みしていましたが、ぜひ作太郎さんの簡にして要を得た文筆で観賞していただきたいと思います。
アンジョルラスって、革命の志士にしてマリユスの同志、美貌の青年指導者で、舞台などではジャン・バルジャンを凌ぐ人気を持っています。
『いのち燃ゆ』で彼に比定する人物は難しいですね。高杉晋作とか久坂玄瑞なら立場的にも辿った人生的にもぴったりなのですが。
「74」さんの指摘通り、彼の役柄は土方歳三、そして沖田総司に分散されて反映されているようにも思います。
79 :
三好晴海入道:2006/04/19(水) 23:59:13 ID:???
ついに明後日に迫りました。DVDも新調しました。四半世紀を越えて眼前に再登場いたします。オープニング・テーマが聞こえてくるようです。乞うご期待。
80 :
名乗る程の者ではござらん:2006/04/22(土) 08:10:07 ID:nnkgxdvf
81 :
三好晴海入道:2006/04/22(土) 09:39:59 ID:???
見ましたよ。四半世紀ぶりに。感動です。特に祭りでおどる島の人々、坂上二郎の芸達者、本当に可憐な神崎愛(笛を吹く冒頭シーン!)、等々。
第1話では神崎愛=お豊もさることながら、父親役の加藤嘉に目が釘付けでした。罪人だろうがキリシタンだろうが「この島では皆同じだ」。滋味あふれる好演です。
作太郎さんの言うとおり、色々伏線がありますね。追々語っていきましょう。一つ言いたいのは、全く『いのち燃ゆ』という作品を知らない人達にこそこのドラマを見て欲しいと言うことです。特に若い世代の人達にみて欲しいです。
82 :
作太郎:2006/04/30(日) 17:56:19 ID:q0B7HRVU
こんにちは、おひさしぶりです。
実は、最終回をみたあと、パソコンが故障していました。
基盤取り替えという大工事でした。無事終了して今復活です。
ヤフー検索すると、あちこちのブログで再放送歓迎のコメントがあるようです。
こちらに参加してもらって、DVD化の夢果たして欲しいですね。
最終回の紹介は、もう少し後に語りたいと思うのですが。
第2回の感想聞かせてください。
83 :
三好晴海入道:2006/05/03(水) 00:31:24 ID:???
CS再放送が始まってから十二分に楽しんでおります。金曜日にDVDに録画して週末にかけて見て、水曜にはリアルタイムで見る、というサイクルで進めています。
第1・2話を見て感じたのが、やっぱりお豊の位置づけですね。彼女はやっぱりこの物語中に出てくる他の女性とは違った生き方を持っています(そして唯一似た人物はやっぱりおこうなのです)。それはすでにこの第1・2話を見ても明らかで、
丈吉の母、お咲の在り方と比べて、はっきり自分で欲しいものを手に入れようという果断な性格が見て取れるのです。それは「丈吉は私のもんよ」や、「強か男が好きたい」「父っしゃんの仇ばとってね」という台詞に如実に表れています。
かたやお咲は夫に翻弄され、自分の置かれた状況に忍従するかのように耐え、かつ恨み言を洩らします。彼女は精神面で男性に依存しているところがあるのです。
(この書き込みの続きはまた後で)
まだまだ語りたいポイントがありますが、まあ5月になって少し仕事に余裕が出来たので小刻みに書き込みますね。ではまた。
84 :
三好晴海入道:2006/05/14(日) 13:27:55 ID:???
CS再放送が再会して早くも第4話、銀の燭台の顛末が一段落して物語的にも一区切りつきました。
改めて見直してみて、お豊のキャラクター造形が優れていますね。竜安先生も「あれが愛憎というものだ」と言っているように、
丈吉に対するアンビバレンツな感情と行動、果ては自分の胸を刺して丈吉を逃そうとする果断な性格。『いのち燃ゆ』というタイトルは彼女のためにあるのではないかと思えるほどの存在感を示しています。
そして度々この書き込みで話しているとおり、市蔵を演ずる坂上二郎さんの芸達者ぶりに敬服です。こういう美味しい役柄を劇映画用語では「トリックスター」と言うのですが、まさにそのものです。
「蘭法も漢方も関係ありゃしないじゃないですか」「畜生、怪物め」等々、良いところを持って行っていますね。様々な人物が人間的成長を遂げていく、「教養小説」ならぬ「教養ドラマ」とも言うべきこの名作、
最初に劇的な成長を遂げたのは市蔵だったのかも知れません。
さあ、それでは次回から大坂にて話が展開しますが、もう一人のヒロインであるおりんが動き出します。金曜日が待ち遠しいですね。
85 :
作太郎:2006/05/19(金) 21:36:29 ID:NRXMSHAG
第4回終わっても、他の方の意見聞けないのは、残念ですね。
さて、お豊の存在感すごいですね。
作次郎と丈吉の間をさまよう若き時代から、二人の間の取り持ち的役割りを果たす中年期まで、神崎愛さん
見事な演技をしてくれましたね。
作次郎の夢は、お豊を娶るって事なのでしょう。若い男の目標に、良き連れ合いを求めるって事かな。
中年男的感想になってきた(笑)。丈吉とおりんの再会の回、私はCS持っていませんので、欠落したところ
入道さんのストリー紹介期待しますね。
86 :
三好晴海入道:2006/05/20(土) 23:09:06 ID:???
おお、そうでしたか。今まで世話になった分、欠落部分のストーリー紹介を畏れ多くもさせていただきます。
さて、昨日第5話で大坂帰郷編に突入しましたが、山田吾一演じる丹波屋の因業大家ぶりと、財津一郎の駄目っぷり満載の多吉が強烈でした。
山田吾一は声色まで変えて悪徳さを体現していて、もう堪えられないほどの名演です。借金取りに志賀勝まで出ていて迫力満点。
絵に描いたような浪花節的展開で、こういうコテコテした展開は80年代的軽薄短小の時代では「アナクロい」とされてギャグの対象になったもののように思います。
しかしそれが一回りして、改めて眼前に現れた時、新たな新鮮さを持って復活してくるのです。
例えばリアルタイムで見た時には、仙吉は典型的なチンピラで、虚勢をはってその実意気地無しで、考え無しに行動して丈吉の足を引っ張ってばかりいる疫病神
としか思えませんでした。しかしそんな卑小な人物でも存在にリアリティがあって、今では何か憎めないものがあります。人物が「生きて」いる訳です。血が通っているのです。
それはドラマというものの持つ訴求力が信じられていた時代の残像です。作り手、役者人の心意気が伝わって来るじゃありませんか。
それでは第6話の前半は作太郎さんの欠落部分ですので、使命感を持って文章化いたします。次の週末をご期待ください。
87 :
三好晴海入道:2006/05/29(月) 23:39:28 ID:???
それでは作太郎さんの様式に従って、ストーリー紹介させていただきます。
第6話「翔んで翔んで夢の中」
久々の再会を喜ぶ丈吉一家、おりんであった。そして丈吉は母、お咲に「長崎に行かないか」と持ちかけた(かつての母のことを知る竜安先生に助けられたことも告げる)。
しかしお咲は厳として受け付けない。そしてかえって丈吉におりんと一緒になるようほのめかすのだった。しかし罪人として追われる立場の丈吉には大阪に住むことは出来ない。
そしてとうとう丈吉は、手違いで天草から永久に出られなくなり、島抜けをして、今罪人として追われている経緯を包み隠さず母とおりんに打ち明けた。
お咲は激怒した。「何を頼りに生きてきたと思ってるねん!」なぜきれいな体で戻ってこなかったのかと丈吉をなじるお咲。納得してもらおうと懇願する丈吉とおりん。
「罪人のせがれと暮らすくらいなら、極道者の亭主と暮らした方がましや」世話にはならないとお咲は突き放した。
この時難波の仙吉は追っ手に見つかり河に飛び込んで逃亡していた。岡っ引きは丈吉も大坂に帰ってきているだろうと予測し、お咲の長屋を捜索した。
題目を唱えながら役人を追っ払ったお咲はお志摩に「兄やんを信じてやらんにゃあかんねんで」と諭すのであった。
その頃丈吉はおりんに連れられて追っ手の包囲網をかいくぐっていた。そしておりんが隠れ屋として営んでいた端正な小屋にかくまわれた。
それは彼女が暇が出されたときに訪れる場所で、かつては大坂でも名をはせた米問屋、俵屋の一人娘であった頃を忍ぶ、おりんにとっての「夢の城」であった。
そこには10年前の事件でなくなった父母の遺骨がまつられていて、おりんは少しずつその骨をかじっていた。「段々残り少なくなってきました…」
「こんなことしたらあかん」「おりんさんにはわしがおる」自分の気持ちを打ち明ける丈吉、それを受け入れるおりん。「夢を見まひょ」二人は結ばれた。
翔んで翔んで夢の中…
この後は以前に作太郎さんが書き込んでくださったストーリー紹介の通りに進みます。ちょっと詳しく書きすぎたかな。私なりの文体を確立するまで、数回かかると思いますので、まあ長い目で見てやってください。
88 :
作太郎:2006/06/15(木) 23:55:23 ID:UEnknNU3
続きがしりたいよと思うのは、私だけ(笑)。
こんばんは、ごぶさたしております。
丈吉は、鳥取へ、無事ながれついたのか
丹波屋とおりんのその後の展開は
興味つきないのですが。
入道さん、ご出馬を切に願う次第です。
89 :
三好晴海入道:2006/06/16(金) 21:56:55 ID:???
申し訳ない。6月に入って激務に追われ、すっかり筆無精となっておりました。
家に帰ったら寝るだけ、という高度経済成長期のサラリーマンのような生活が続いておりますが、しかしそこは根性出して『いのち燃ゆ』だけはチェックしております。
今CSでは鳥取編第2話になだれ込んでおり、天草や大坂とは全く異なった風情と人情の世界で、なかなかに異彩を放っております。
丈吉の父や丹波屋、仙吉、そして天草の流人達とは違った種類の荒くれ者達が登場し、あたかもマカロニ・ウェスタンの世界に丈吉が訪れたかのようなテイストで堪えられません。
いやいや、しかしまずは大坂編の顛末報告ですね。原稿化するまでしばしお待ちください。
90 :
三好晴海入道:2006/06/18(日) 15:23:11 ID:???
お待たせいたしました。2月27日、作太郎さんの「39」以後不明となっていた大坂編の最終話、その結末の部分のストーリー紹介です。
第7話「夢去りし町角」
お咲は作業場に行き、長崎の地元の唄を歌いながら脱穀を行う。丈吉も一緒に歌い、作業する。そうするうちに追っ手の役人が大勢屋敷を取り囲んでいた。作次郎、お豊の姿もそこにあった。
丈吉に逃げるよう促すお咲。生きていたら一家はまた逢えると諭す。
丈吉:「お母はんは強い女やなあ」 お咲:「お母はんが強いんはな、あんたがいてるからや。短気起こして死んだらあかんのやで。」
丈吉は力を振り絞り追っ手を振り切る。橋の上で作太郎・お豊とまみえる丈吉。
「わしは何もしとらん。…わしを裁けるのはお天とう様だけや。」丈吉は川に飛び込んで行方をくらました。
お豊:「…やましいことがなければ何で逃げるとね…」
夜が明けようとしていた。お咲:「夜逃げだす。いいえ、もう朝逃げだす。」多吉「わしも一緒について行ってええか?(お志摩へ)こんなお父ちゃんでもええか?」
朝を告げる鶏の鳴き声があちこちで響き渡っていた。愛と憎しみを抱えたこの一家は天満の町から姿を消した。
丈吉の行方は分からず、焦らず気長に追うように、と役人は作次郎にアドバイスした。
お豊は一生をかけて丈吉を追いかけることを決意する。「惚れた男のために一生を台無しにするなら本望たい。他のおなごには渡さん。」情熱が嫉妬となって再び燃え上がった。
その頃、おりんの離れから家財道具を持ち出す親子がいた。ただ同然で買い取ったものらしい。百姓姿に擬した丈吉はおりんがいなくなった顛末を聞かされる。がらんどうになってしまった「夢の城」。
丈吉は20両がどうやって捻出されたのか悟った。「おりんさん、あんた何ちゅうことをしてくれたんや…自分の命を売った金やったのかいな…」
輿に引かれるおりんと満足げな丹波屋が街道を進んでいく。風車を買おうとするおりんに「釣った魚に餌はやらん……冗談やがな」と丹波屋。
そして丈吉はお咲のいなくなった作業場を見つめていた。「お母はん、どんな目に遭っても負けへんで。見事な男になったる。」大坂の町を後にする丈吉。風車売りの少女に「頑張りや」と声かけして。
くるくる回る 目が回る この世は因果の風車
〔第7話 完〕
91 :
三好晴海入道:2006/06/18(日) 15:53:33 ID:???
銀の燭台のエピソードに続く山場ですね。おりんとお豊の丈吉を巡る確執、多吉が放蕩に走る前は大坂一の畳職人だった事実、等々、素晴らしいエモーションに取り込まれます。
私の記憶通り、借金は夜逃げして清算した模様です。しかしおりんが我が身をはって作り出した20両は結局役人の手に渡ってそのままだったようです。哀れおりん。
リアルタイムで見ていた時にも、「恐らく彼女がファンチーヌなんだろう」と予想できましたし、鳥取編になってからもここだけが心の引っかかりとなっていました。
それを除けば、何とも未来の希望に満ちた、一種スコーンと抜けたような爽快な終幕です。だから朝焼けの中夜逃げを決意する一家の様子が記憶に残っていたのでしょうね。
次回予告では「山陰編」と題されたストーリー展開がダイジェスト的に流されます。旅芸人のお春との遭遇、たたら場と小松屋おこう、おみつの登場、そして丈吉にとっての第2の人生が展開されることが示唆されます。
先日第9話「一輪でも花にて候」が放映され、懐かしさとストーリーの秀逸さと、「働く」人達の心意気に思わず涙しました。感動必至の鳥取編。私のストーリー紹介は台詞まで採録して長いので、1話を前・後編に分けて書き込みます。
近日中に第8話前半のストーリーを紹介しますのでお待ちください。
92 :
作太郎:2006/06/19(月) 09:08:16 ID:G/KX2YkE
おはとうございます。
入道さんの詳しい解説、私もすごく感動しました。
以前、私の中途ビデオを友人たちに見せた事があります。
おりんの哀れさの場面少なく、丈吉の哀れさの方が際立っていたので、丈吉は、
何の為に生きたのだろうかと疑問投げた人がいます。でも、鳥取篇を見ると、
おりんの哀れさ胸うちますね。
名台詞多い、そう脚本家の上手さ感じますね。選ぶ難しさ感じます。
お咲のたくましさ、いやいや登場人物みな、たくましい。このあたりが
名作であるゆえんでしょうか。
ロム専門の方の参加切に希望します
93 :
三好晴海入道:2006/06/25(日) 11:51:02 ID:???
1週間の出張から帰ってきました。さあ、書き込むぞ。
録画した第10話「噂の男」も早速見てみましたが、なんと零落した丹波屋が、磯の荒れ果てた宿場の主になっているのが強烈。
奥さん役の浅利さんの因業ぶりも圧倒されました。これって原作のゴルボー屋敷? いやいや、それは盗人にまで陥った京都編での丹波屋に比定されますから、コゼットを酷使した「勇士屋」の宿に相当します。
そしてコゼット役=お雪いよいよ登場。次回予告では丈吉とおりんの再会が示唆されます。もはや次の金曜日が待ち遠しい。
でもまあ、まだCS再放送を見ていない方もいると思うので語りはこの辺にして、久々の休みですから、第8話のストーリー紹介を原稿化するべく頑張ります。少しお待ちください。
94 :
三好晴海入道:2006/06/25(日) 11:57:55 ID:???
追伸ながら
作太郎さんのストーリー紹介では謎の人物だった「全斎」は第10話に登場する米子の町医者でした。竜安先生とも、そして丈吉とも親交があります。
もう1件。話題のドキュメンタリー映画、『ヨコハマメリー』に『いのち燃ゆ』脚本家の杉山義法氏が出演しているとのこと。杉山氏は既に2005.8月に物故されていますが、
この映画は生前の彼の姿をフィルムに収めた最後のものになるかも知れません。映画自体も極めて評判が高いですし、スレ違いですが是非皆さん見てみて下さい。
95 :
三好晴海入道:2006/06/25(日) 19:14:50 ID:???
第8話:「生生流転」前半部
西宮の旅籠街道を行く竜安先生と弟子の中塚謙吾。ふとしたことから飯盛り女をしていたお豊と遭遇する。そしてその旅籠には使用人として働く作次郎もいた。竜安先生はその旅籠に泊まってこれまでの経緯を聞くことにした。
堺・紀州を廻ったところで路銀を使い果たした二人は落魄の身となり、この木賃宿で働いていたのであった。丈吉への遺恨を晴らそうとする作次郎。丈吉への複雑な思いと、おりんへの敵愾心を隠そうとしないお豊。
竜安はそんなことでは丈吉に置いていかれるぞ、と二人を諭す。「わしを裁けるのはお天とう様だけや」という言葉は、いつでも俺の生き方をみて欲しい、という丈吉からの挑戦状であると。そして丈吉を許してやれ、島へ帰って夫婦になり、自分たちの人生を歩め、と頼む。
しかし作次郎は聞く耳を持たない。「あの男を裁けるのはわしだけじゃ。」旅籠を後にし、酒を痛飲する作次郎。「そげな兄しゃんを見るのは辛か」と懇願するお豊。
「これはわしと丈吉の命を懸けた闘いじゃ。人生の勝負たい! どこまでもどこまでも奴を追いかけて、奴を苦しめてやる。」
酒樽を太鼓に見立てて打ち鳴らす作次郎。天草の祭りの夜がオーパラップする。しかしそこには過ぎし日の青春の輝きに似た、あの血潮のたぎりはもはや感じられなかった。
竜安:「人むいずこより来たりていずこへ去る、か…。それは誰にも分からん。生々流転と言うべきか…。所詮流転の人生よ。」
96 :
三好晴海入道:2006/06/25(日) 19:15:57 ID:???
第8話:「生生流転」中盤部
その頃丈吉はいずことも知れない野山をさまよっていた。そしてある神社の境内にたどり着いた。そこには旅芸人の一座が。老人の三味線に合わせ舞い踊る女性(お春)、謝金を集める少年(信吉)。丈吉もそれをながめる。
信吉は一朱銀を落として必至に探すが見つからない。丈吉も「知らん」と突っぱねるが、実は猫ばばをしたのは丈吉だった。
自省する丈吉。「なんちゅうことをしたんや、わしは。」わずかな銭でも、子どもにとって、芸人一家にとってなけなしの金だったのではないか。「あかん、こんなことしとったらわしはとことんあかん男になってしまう。」
丈吉は一家を必死に追いかけた。一行はこれが縁で同行することになった。
夜は暮れ、お春と丈吉は身の上話を始めた。当て所ない旅暮らしのむなしさ、先行きの見えない頼りなさ、時々全てを捨てて逃げ出したくなる、とお春は語る。
丈吉は家族がいるから頑張れると違うか、一人でおるとどこまで落ちていくか不安になる、と語る。そして「いっそ堕ちるとこまで堕ちてしまったら楽どす」と語るお春に「あんたは立派や」と話す。
「皮肉どすか…」丈吉はお春がどういう女性なのか分かっていなかったのであった。「そろそろ稼ぎに行こか。これからがわての本業だす…。この世にあほな男はんがいてる限り、あてはどこでも食べていけますわん。」
やっと丈吉はお春が夜の女であることを悟った。「あかん、そんなことしたらあかん。子どもが可哀想や。自分を大切にせな。」「とめんといてください!」もみ合う二人。しかしお春は丈吉の真摯な眼差しに向き合う。
「子どもの夢を壊したらあかん。」「そないなキレイ事言うとったら生きていかれへん。」丈吉は自分も長崎丸山の遊女の子であることを打ち明ける。「子どものため、いつまでもきれいなおかんでいてやってくれ。」
お春は泣きじゃくった。
97 :
三好晴海入道:2006/06/25(日) 20:09:37 ID:???
これらのエピソードは『いのち燃ゆ』全体から見れば一挿話に過ぎない副エピソードです。
旅芸人お春は第8・9話以降は物語に絡んできません(というように現時点では見えます)。
しかしこういうところを丁寧に描いているのが『いのち燃ゆ』の素晴らしさなのだとも思うのです。
こういったものが伏線となり、副主人公達の人物造形に重層性を与え、ドラマに厚みをもたらしているのです。
映画などでは、そして最近のドラマではなかなか描けない部分でもあります。
そしてこれらのエピソードは、原作『レ・ミゼラブル』との接点を如実に示しています。
作次郎がジャベール的な執念の人物になっていく変化の軌跡。そして原作では大きなエポックとなるプティジェルべの銀貨の話がここに反映されています。
ドラマ中でも「なんちゅう惨めな男や」という丈吉の独白があります。これこそ北風の中で19年ぶりに人間らしい心を取り戻したジャン・バルジャンの独白に相当するものです。
そして一見蛇足的にさえ見えるお春の位置づけですが、彼女はおりんだけでは描ききれなかったファンチーヌ像のもう一面を示すものです。おりんには「娼婦」としての生臭い哀れさが少し希薄です。
そして丈吉とのつながりは「愛情」ですので、ファンチーヌとジャン・バルジャンが「博愛」でつながっているのとはまた異なっています。その部分を補完した女性像がお春であるように思われます。
これについてはまだまだ論考があるのですが、それは第9話のストーリー紹介を終えてから、と言うことですね。
ともかくお春は丈吉が救い得た最初の人物(女性)ということになります。鳥取編は丈吉が真心を尽くして幾多の人々を救っていく(それは物心両面です)という物語になりますが、その第一歩がこのエピソードです。
では第8話の後半ではいよいよたたら場が舞台となります。先日第9話につながるこの一連のエピソードを目の当たりにして思わず涙してしまいましたが、早くも鳥取編前半の山場ですのでストーリー紹介待っていて下さい、作太郎さん。
98 :
作太郎:2006/07/01(土) 16:53:28 ID:WNvvNhNB
こんにちは、いつもながらの熱い書き込みなさる、入道さんに感謝。
ストリー紹介、どれも外すのに苦労なさっているお姿目に浮かびます。
画面なくて、読む人もそれぞれの感動あるかと思いますね。
少年と丈吉の交流、お春の正体を知るまでの苦悩。心うつ場面ばかりですね。
この経験が鳥取での成功のあとに生かされてるのでしょうか。
今、どん底と思っても明日はって思う人生感の私です。この人生感は、この物語で得た
ものではありませんが、是非、DVD化され、より一層のファンの増える事希望します。
脚本家の杉山さん、他の作品は残念ながら、知りません。調べて、他の物も見たい
気がしますね。
入道さん、続きよろしくお願いしますね。
昨日録画した第11話「たった一夜の涙花」を今日見ましたが、丈吉とお雪の初対面、大道芸人に身を落としたお豊・作太郎等々、米子の町を舞台に人間模様が交錯します。
特に印象的だったのが丹波屋一家の因業ぶりです。原作のテナルディエ一家の役割を引き受けているのですが、これがもう金に汚い小悪党を見事に演じて、かえって痛快です。
そしてその丹波屋を相手に毅然と対するおこうの頼もしさ。作太郎さんの持てるエピソードの欠落部分で、魅力あるキャラクターがまた別個の輝きを持って活躍しています。見せてあげたいですが、まあそれはDVD化を待ちましょう。
杉山さんの代表作は「99」でも指摘あったとおり、『武蔵坊弁慶』だと思われます。私は未見ですが、コアなファンがいるようです。是非調べてみて下さい。
おかげさまでこのスレも100を数えました。ほとんど私と作太郎さんで作り上げたような感じですが、まだまだ多くの方に参加してもらって、多岐多様な『いのち燃ゆ』観を醸成していきたいものです。
まだ再放送も始まって半ば。人口に膾炙するのはこれからです。これだけの名作ですから、是非多くの方へ、そして若い世代へ魅力を伝えていきたいと思う所存です。では。
101 :
三好晴海入道:2006/07/04(火) 23:04:29 ID:IqthiA4y
第8話:「生生流転」後半部
旅芸人の一家と同行することになった丈吉はともに山野の道を歩いていた。そしてある町のはずれに立て札があった。凍り付く一行。
「無宿人 遊藝者 物乞者 入るべからず」憤った丈吉はお春の制止も振り切り立て札を壊す。「わしらは何も悪いことしてへん。通り過ぎるだけや。」
そのまま飯屋にはいるが、やはりそこでも「お前達に食わせるもんはねえ」とぞんざいな態度をとられる。挙げ句の果てに客が信吉にものをぶつける。
怒る丈吉。その時立て札を壊した者を追って役人や追っ手が店の外に迫っていた。お春たちまで巻き込まれそうになって丈吉は大暴れし、追っ手をなぎ倒す。
丈吉:「早う逃げえや。(信吉に)お母ちゃん大事にせなあかんぞ。」散り散りになり逃げおおせた芸人一家。老人:「ええ人やったなあ…。」
お春の脳裏には昨晩の丈吉の言葉がこだましていた。丈吉が彼女のすさんだ心に小さな明かりを灯したことは確かであった。
山狩り。丈吉は血まみれになりながら逃げ続けた。追っ手が落としたたいまつの明かりに、丈吉は竜安先生の言葉を思い出す。「…一隅を照らす男になれ!」
丈吉:「…銀の燭台に負けん男になったる!」
そんな時に、この人里を遠く離れた山中で丈吉は奇妙な歌声を耳にした。そして人家の群が目に入ってきた。。引き寄せられるようにして立ち入った屋敷の中では、この世のものとは思えない、一種異様な光景があった。
一瞬地獄の業火と見まごう紅蓮の炎の中で男達がふいごを動かしていた。見つかる丈吉。男達は凄い剣幕で「殺せ! 塩をまけ!」と激昂する。血を流した丈吉は神聖なたたら場をけがしたのだった。
「祟りがあるぞ! たたら場に雷神さんが怒りよるぞ。」
何があったのか分からないままに丈吉はオリに入れられた。地回り:「無宿者が下の町で暴れたそうや…。明日旦那が来るまでぶちこんどけ。」
彼らが何者で、旦那とは誰なのか、様々な謎を残しつつ、街道を馬に乗って揺られ行く小松屋おこう・おみつの姿を映し、物語は閉じていく…。
〔第8話 完〕
この前「101」を書き込もうとしたら突然「PROXY規制」なるものがかかって書き込めなくなりました。びっくりしたなあ。今日は書き込めましたが。
この回の無宿者に対するいわれなき差別は、第14話「白昼夢」の丈吉の演説に収斂していくものと思えます。それは追々語るとして、この回はあたかも西部劇のテイストでちょっと良かったです。
『シェーン』の感じも少しあります。旅芸人の一座との交流はやはり傍流のエピソードと位置づけざるを得ないですが、これ一個を独立させたらなかなかの物語になったのではないでしょうか。
鉱山町の荒くれ男どもの描写なんて、思いっきり西部劇テイストでした。その中に丈吉に対抗できるくらいの腕っ節を持ったライバルがいたりしたら物語的に映えるのですけれどね。
何やらあらぬ方向に想像が飛んだようです。続く第9話は何とプロレタリア劇を思わすような労働者の決起があったりして、これまた魅力的です。近日中に原稿起こししますのでしばしお待ちを。
103 :
作太郎:2006/07/05(水) 00:51:06 ID:JvkzjQeV
こんばんは
杉山さんの脚色予想がつかぬ展開になっていますね。
このあたり2話で終えるのがもったいないような設定ですね。
私が想像していた以上の鳥取篇の展開になっていましたね。
親子の情愛だけがテーマと思っていたら、プロレタリア的展開。作次郎の新選組入隊の心の
奥底に別の面が見えてきました。単なる出世欲と権力欲だけでなく、作次郎にも、権力への
あこがれの中身のひとつに世の変革欲があったと云ったら、深読みすぎかしら。
丈吉の鳥取藩での成功の影に、この経験が生きているような感じすらおぼえてきますね。
少し支離滅裂な論考ですみません。
おこう、おみつの力の中身を伝える次回の話、9話の紹介を期待して待っていますよ。
入道さん、よろしくね。
今日は。第12話「お豊・作次郎流れ旅」を見ましたが、ここの所激しい展開はないものの、心理劇とでも言うべき濃密な展開になっていて見応えあります。
皆お互いに自らの中の「我執」と対峙し、静かながら緊迫した展開が続いていきます。そして鳥取編最大の山場、第14話「白日夢」へとなだれ込んでいきます。
その前に、感動必至の第9話「一輪でも花にて候」ストーリーをこの週末に紹介します。では謹んで原稿化いたします。
第9話「一輪でも花にて候」
小松屋おこうは10年前に先立たれた夫の後を引き継いでこの金山を切り盛りする女丈夫であった。
今日は亡き夫の祥月命日で年賀の帰途であった。娘のお美津が村人に話しかける。
「村のもんと気安く口聞いたらいけん。」おこうは冷たく言い放った。「甘い顔するとすぐつけあがるけん。」
おこうは丈吉と対面した。丈吉は金山の「旦那」が女であることに驚くが、立て札を壊した経緯、たたら場に紛れ込んだ訳を話した。おこうは丈吉に名を名乗るよう催促した。丈吉はとっさに偽名を使った。「幸吉いうねえ…」
その時おこうの手下達が怒り出した。おこうも「私の気を引かかぁ思って! 女だと思って甘く見たらないよ!」
丈吉は事態が飲み込めなかったが、実は偶然にも「幸吉」とはおこうの亡くなった夫の名だったのだ。おこうはさっさと下の町の者に引き渡してしまえ、と指示する。
丈吉:「人を見たら泥棒と思え、やなあ…。悲しい人や。」おこうの気持ちに少し動揺が走ったかのように見えた。そしてその時、お美津が花を抱えておこうに見せにきた。丈吉:「きれいやな。仏さんが喜ぶやろ。」
いよいよ引き渡される間際、お美津が現れ丈吉を引きとどめる。お美津:「おっ母さんがな、ここで働いてもええて。」しかし丈吉はあんな人の下では働きたくないと拒否する。
「あんたのおっ母さんは、道ばたで咲いとる花なんて眼中にない人や。」お美津:「おっ母さんはそんな人ではありません!自分の目で確かめたらええがな。」
しかしそれはお美津にとっても同じ思いであった。昔は一緒に野の花を摘んでくれた優しい母は、今では夫の残した金山を守ることに汲々として、野の花を愛でる気持ちも、弱者の心を思いやることもなくなっていた。
丈吉は名前も新たに「幸吉」と名乗り、小松たたらで働くことになった。大山の山を登り、気を切り運ぶという重労働に就く丈吉。
ある時丈吉は野の花を摘んだ。そして見回りに来たおこうにそっとそれを手渡した。おこうはそれをしばらく見つめていたが、丈吉が去ると何もなかったかのようにその花を投げ捨てた。
一冬が過ぎた。丈吉は体力を見込まれて番子頭(ばんこがしら)に抜擢され、ふいごを踏むようになっていた。それは金山の仕事の中で最も過酷な業務であったが、しかしそれは、かつて大坂で脱穀仕事をしていた懐かしい母を思い出させた。
>三好晴海入道さん
ストーリー紹介、ご苦労様です。私もCSを見られる環境にはないので
楽しみにしています。ちなみにいつも中条静夫の声で読んでいますw
107 :
作太郎:2006/07/13(木) 16:30:38 ID:wtRO8d4r
こんにちは
「レ.ミゼラブル」の原作を読んでいます。全5巻の新潮文庫版です。今2巻目です。
ユゴーの原作は、脱線が多いと云われています。主人公が世話になった、ミリエル司教の事、詳しく
物語の進行はて思わせたりします。1巻目で早くも市長になりますが、そして自首と。
さて、私たちの今話題にしている「いのち燃ゆ」との対比をしてみましょう。
原作の設定は大きな物を使用としていると、いっても杉山さんの筆力は、日本的ドラマにうまく投影させていると思います。今物語は、入道さんの愛する鳥取篇の部分は、完全に杉山さんの創作さえていると思います。
今後の展開を入道さんの詳しい解説文で楽しみましょう。
第9話「一輪でも花にて候」中盤部
ある雨の日の夜のことであった。小松たたらで争議が起きた。3ヶ月も手当が出ていないので坑夫達の不満が高まったのである。
「仕事は一切すんな!」「かまに火を付けたらいけんぞ!」一致団結した坑夫達は操業拒否をしたのである。丈吉はその顛末を傍観していた。
この始末を巡って、おこうと番頭頭達との間で激しいやり取りがあった。
山を閉じよと言えば「金山が鉄吹かんかったら自分で自分の首絞めるようなもんでないか!仕事ほったらかして何がお手当てだ!」
山の黄金は掘り尽くして、あと半年持つか、と言えば、「ええ加減なこと言うでないよ!だったら「まさ」(良質の鉱脈のこと)を掘り当てるんがあんたの仕事やないけえ!」
こんな押し問答の末、おこうは番頭がしらに大坂の商人とつるんで金山を安く買いたたこうとしているのではないかと言い放ち、売り言葉に買い言葉で金山の重役達に
「あたしの代でお山を解いてたまんもんか! 意気地無しは皆やめてごせえ!」と啖呵を切った。
しかしその実番頭がしらは大坂商人と結託していたのだった。坑夫達をアジる番頭がしら。この金山はもう黄金が尽きそうなため買い手も付かない、
旦那は頭数減らして細々とやるらしい、頂くものは頂いて、この山からみんなおさらばした方がいい、と。
心配する他の重役を尻目に番頭がしらは「わしを亭主の後釜にすりゃよかったのに。何もかも自分でやろうとしたのがあの女の間違いだがな」と言い放つ。
みんな母屋へ駆けだしていった後に丈吉だけが残った。下手に出つつ番頭がしらに近づいた丈吉は、瞬時に彼の首を剛力で締め上げ、本当のことを白状させた。
背後に大坂商人がいること。小松たたらはまだ小金が出ること。「このあほんだら!」丈吉は番頭がしらを殴りつけ、母屋に向かった。
しかしその時には既に坑夫達がありったけのものを奪おうと、屋敷中を荒らし回って略奪を繰り広げていた。おこうはそのまっただ中で為す術もなく、ただ黙って座るばかりであった。
坑夫達は去った。荒れ果てた帳場。放心状態のおこう。丈吉が現れ、雨の中で摘んだ花をおこうに差し出した。しかしおこうはその花を握りつぶした。
「幸吉、お前笑っとうだろう。おかしかったら大声で笑ったらええがな!…このたたらをつぶしてたまるもんか…」こらえていた涙がおこうのまぶたからこぼれ落ちた。
皆さんの期待にこたえるべく、臨場感が伝わるように努力しました。非常に濃密な展開です。
これだけの動的な展開は今までのストーリーの中では少なかったようにも思います(丈吉の島抜けの展開が近いでしょうか)。
そして実は丈吉苦難の引き金となった「大塩の乱」の雰囲気を偲ばせるものです。このままでは小松屋はおりんの実家、俵屋のように没落してしまいます。
このエピソードはそのパラレルワールドになっています。もう一つの可能性です。実は「鳥取編」には幾多のパラレルワールドが展開し、深い人生観を見せてくれます。
ともかく第9話のくだりはリアルタイムで見ていたときにも圧倒的で、ゆうに1時間テレビドラマの容量を越えていたと思います。
私もこのエピソードを原稿化するに当たって4度もダビングDVDを見返しました。書き留めてもペンが追いつかない(それだけ詰まった内容です)。そしてドラマに見入ってしまってメモが止まってしまうのです。
実はこの先も1山2山あるのですが、それは寸暇を縫って至急書き込むことにします。ではまた。
110 :
作太郎:2006/07/14(金) 21:43:28 ID:uK/LJGBu
こんばんは
入道さんの文章化の苦労。4度もみても、文章化できないのは、感動のたばが
きっと多いのでしょう。入道さんの感動は、少年時代に感じたもの以上のものがあるのでしょう。
DCD化されて、無名の熱きファンが増えるのを切望する次第です。
リアル時代は、ビデオがまだまだ普及されていないから、より濃く感動されるので
すが入道さんの感動は、いままた燃えていますね。
後半部期待して待っています。
すみません。ちょっと滞っていますね。今週は少し時間がある(仕事の端境期)のでちょっとは原稿化が進みそうです。
CS放送は現在第14回「白日夢」 に進んでいます。いやあ、素晴らしい回です。丹波屋もいい味出してましたね。そして「丈吉を超える男になったる」と誓う作次郎。
そしてお美津が一世一代の輝きを見せます。刑場にて丈吉(幸吉)の袖をつかんで離さないお美津。お豊やその他の女性ならその手を離しはしなかったでしょう。
しかし彼女は手を離します。何とも切ないシーンです。中学生だった当時には気づかなかった素晴らしいシーンでした。
『いのち燃ゆ』は実は丈吉を取り巻く女性達が真の主人公である、という裏のテーマを持っています(あたかも『源氏物語』のように)。
そしてリアルタイムで見ていた時にはあまり気づいていなかったのですが、お美津もまた悲しいさだめを背負った女性の一人だったのです。
私も38歳になったばかりですが、この歳になって初めて今回のお美津の姿にズキンときました。作品に対する観点は成長するのですね。
第15話の予告編はこれまた心をかき乱す引きになっています。おりんが死に、丈吉も死んだことになり、そして私の記憶ではおこうもなくなります。
1つの物語が一旦閉じていきます。作太郎さんはこの回を持たないということですので、いずれ責任を持って文章化しますね。
でもまあその前に鳥取編の大部分を文章化する義務が私にはあります。8月上旬から2週間の長期出張がありますので、その前に鋭意努力します。待ってて下さい。
第9話「一輪でも花にて候」後半部@
帳場を出た丈吉はばったりお春と信吉母子に会った。再会を喜ぶ3人。老人は九州で興行しているときになくなっていた。「自分の家で死にたかった」という言葉を残して。
博多で後妻の話もあり、思いあまったお春は信吉を丈吉に託そうとして捜し回っていたのであった。「流れ流れて堕ちていくより、人の子でもしっかり育てて、信吉に素晴らしい母親としての姿を見せたい」
そんなお春の気持ちに答えて、丈吉は信吉をきっと強い男に育てる、と約束する。雨の中、お春と信吉はお互い涙をこらえて別れる。
「高い山から谷底見ればな ぎっちょんちょん ぎっちょんちょん」舞い踊る信吉。
屋敷の外でおこうは雨に濡れながらその一部始終をかいま見ていた。彼女の心の中で何かが変わろうとしていた。そして彼女は握りつぶした花を拾い上げ、花瓶に生けた。
「なるほど、こげして見いと、名もない花でも花は花、たとい一輪でも花にて候と、誇らしげに咲いとう。色んな咲き方があるもんなんだねえ。」
そしておこうは数年ぶりで優しい気持ちを取り戻し、丈吉に身の上を語り出した。
亭主に先立たれ、金山を経営するために精一杯やってきたこと。上手いことをいって言い寄ってくる男達。断ると嫌がらせをされたこと。
それも皆、おこうが女鉱山師だったからであった。「女の身がどげに恨めしかったか知れん。よおし、そけならいっそ、男になってやらい。」
おかみさんでなく、旦那と呼ばせたこと。それがいつの間にか、人の心を平気で踏みにじる、悲しい女になっていたこと。でももう小松たたらはお終いであると言うこと。
第9話「一輪でも花にて候」後半部A
「諦めたらあかん。」丈吉は小金がまだ出ると言っておこうを勇気づけようとした。そして生まれて初めて人に認められ、番子頭にまでしてもらったことに感謝の気持ちを伝えた。
「ここにきて初めてわしは働くことが楽しくなったんや。これからもよろしう頼んます。」
しかし腕のいい職人のいなくなったたたらはもう立ちゆかない。丈吉はみんなを説得してまわると言うが、一旦主従のつながりが切れたものは、もはや元には戻らないとおこうは言う。
そういえばお美津は! 2人は雨の中を駆けだした。そこには亡き父の位牌を抱えたお美津の姿があった。「…みんな家中を荒らしていきよった。こんな姿をお父っつあんに見せたくなかったけえ…。」
おこう:「何もかもなくなっちまっただがな。」お美津:「いいや、一番大事なものが残っとうけえ。うちにはお母っさんが、お母っさんにはうちがおるけえ。」
すさんだおこうの心に今愛の火がともった、それを灯したのは娘のお美津の力だった、と丈吉は感じていた。
その時、奇妙な歌声が聞こえてきた。丈吉:「たたらの中に人がおる!」信吉:「おっちゃん、火が燃えとる!」お美津:「煙が出とる!」4名はたたら場へ駆けつけた。
するとそこでは、村下(むらげ)を中心とした職人達がたたらの釜を吹かして操業をしていたのであった。
丈吉:「村下どん、ここにおったんかいな!」村下:「わしらたたらの職人ですけえ…えい、しっかり踏まんと金山さんのバチがあたるで!」
おこうは涙を流していた。「ありがと、ありがと…。」
丈吉:「よっしゃ、わしがふいごを踏んだる。一夜でも二夜でも、採れるまで踏んだる!」
おこう、お美津、信吉が見守る中、丈吉は力強く踏み出した。職人達も勢いよく作業を続けた。この燃えさかる紅蓮の炎の中に無宿人丈吉の第二の人生があった。
〔第9話 完〕
書いた原稿を読んだだけでも熱いものがこみ上げてくる名シーンです。私はどうも、こういう職人の心意気の話に弱いんですよね。
第9話の実質的な主人公はおこうです。彼女は劇的な変化を遂げます(いや、元の自分を取り戻すと言うべきか)。
南田洋子という人選が絶妙だったと言えましょう。当時ミュージックフェアなどの司会で、優雅でノーブルな印象をたたえていた南田洋子を配することにより、本当は優しい人なのに何かが違ってしまっている、という説得力が抜群に加わりました。
坑夫達が略奪する中を黙って座っているおこうの様は、言葉で語るのもおこがましいほどの様々なものを発信していました。硝子のようなアイデンティティを凛として支えるおこう。眉一つ動かしませんがその内面は…
日活の屋台骨を支えていた名女優南田洋子。さすが、と言わざるを得ません。
そして彼女を助けようとする丈吉の頼もしいことといったら! 鳥取編は丈吉がありとあらゆる人達の心に火をともしていく物語です。お春に。おこうに。米子の町の人々に。
そして先日放送された第14話「白日夢」では、殺伐とした作次郎と仙吉の心に。あたかもそれはイエスがその身を捧げて万人を救おうとしたかの様です。
原作『レ・ミゼラブル』はフランスロマン主義・人道主義小説の一極北とも言われていますが、そのベースにあるものはカトリシズムです。脚本家の杉山さんがどこまで原作に肉薄していたかは私には分かりませんが、
その影が明らかに『いのち燃ゆ』におりています。そしてカトリシズムの特性の一つに「聖母信仰」があります。女性(殊に「母」なるもの)への優しい眼差しと賛歌は、実は原作以上にカトリシズムに近づいているものと思えます。
何かやっばり第9話の熱気に浮かされて饒舌になりすぎてしまったようです。でも本当にこの回は素晴らしいんですよ。私が『いのち燃ゆ』の白眉の回をあげるとしたら、きっとこの第9話「一輪でも花にて候」を推すことでしょう。
ではこの次は第10話です。丈吉成功後の、これまた今までとは違ったドラマが展開しますのでご期待ください。
115 :
作太郎:2006/07/28(金) 00:53:36 ID:a1NEhwG6
こんばんは
入道さん、やってくれましたね。ありがとう。
私、文庫版5冊のうち、今4冊を読み終えました。
杉山さんの造形の人物は、女性陣です。小説の中では、女性で描かれているのは、主人公の養女コゼット。
悪役テナルディエの娘エポニーヌぐらいで、ほとんど、脚本家杉山さんが作ったと云っていいみたいです。
ですから、この名作「いのち燃ゆ」もっとたくさんの方」に知らしめたいです。
私はカトリックについてほとんど知りませんが、このドラマの女性の造形は、日本的賢女の方の感じがしています。時代小説の日本賢女は、山本周五郎が思い浮かびます。しかし、杉山さん独自の女性像の方かも知れません。
女性像に関する論考は尽きないですね。やっばり最終回の終盤、中条さんのナレーションで語られるあの台詞が『いのち燃ゆ』の骨格を示しているものと思います。
ファンチーヌはおりんとお春に、エポニーヌはお豊とお志摩に投影されているように思えますが、しかし本作の女性達はそれを越えて余りある奥行きを持っています。
ところでお春の位置づけです。彼女は本当に8・9話で姿を消してしまう不思議な存在です。例えるなら市蔵や全斎先生の様な感じでしょうか。
しかし彼女はおりんとお咲をつなぐ、重要なトリック・スターです。丈吉の母、お咲も長崎丸山の芸者で、亡きオランダ人の恋人との間に丈吉を残すのです。お春は信吉を、おりんはお雪を。
そして実は、『いのち燃ゆ』の女性達は、男性不在の中、業を背負いつつも生き続けていくという一致点があります。夫を亡くして小松屋を切り回すおこう。
幸吉(丈吉)が去り、子どもが流産し、しかし一つの決意の中で生きていくお美津。恋人の沖田総司を結核で失うお志摩。最終回では丹波屋徳市を失うお六。そして丈吉も作次郎も去ってしまうお豊。
今一人の女性登場人物としてオランダおいねさんが登場しているのも象徴的です。
皆悲しい業を背負います。体を売って生き、男になり、スリになり、大道芸人や飲み屋の女将になり…。
そんな、女性が辛い目に遭う時代は変わろうとしていたのではないでしょうか。大塩の目指した世直しは彦馬たちの革命運動の中で実現されたかのように見えます。
しかし「真の」世直しは丈吉とその周辺にいる人達によって成されるわけです。それは出自や髪の色、そして「女性である」というだけで不当な業を背負うことのない世の中が来る、ということです。
最終回、お雪と彦馬は結ばれます。これは何と、『いのち燃ゆ』全体の中でたった一つだけ成就した夫婦なのです。
お豊と竜安先生が見つめるのは丈吉達の人生と若い夫婦の姿だけではありません。「好きあった二人が一緒になれる」という、新しい時代の幕開けでもあるのです。
鳥取編も本日の再放送で一区切り。楽しみにしてこれから見てみます。そして『いのち燃ゆ』の全体像も再認識出来てきました。
大きなテーマを今回語ってしまいましたがまだまだこれから。週末をかけて鳥取編の濃密なストーリーを紹介していきます。では次は第10話「噂の男」を。
第10話:「噂の男」@
8年後のことだった。伯州米子の町に寄宿する越後出身の佐々木全斎という人物にいざなわれて、長崎から司馬竜安先生と弟子の中塚謙吾が鳥取にやってきた。
そこで彼らは1ヶ月ほど滞在し、弓ヶ濱養生院にて蘭法医術を医者達に教授することになっていた。この養生院は米子の町の篤志家で鉱山師の小松屋幸吉が設立したもので、
医師の俸給から患者の治療代まで全て彼が捻出していた。彼は数多くのまさ砂鉄を発見し、潰れる寸前であった小松屋を立て直し、そして当家の婿に迎えられた立志伝中の人物であった。
竜安先生は彼に興味を抱いた。おこうとも対面した竜安先生は彼の出自を訪ねたが、彼の過去については聞かんでもええことだし、もし触れたらこの幸せが一瞬の夢のように崩れるような気がする、
とおこうは答えた。そしておこうは幸吉を亡き夫の生まれ変わりのようであるとも語った。夫の祥月命日の日に出会い、名前も同じ幸吉であると言うこと。そして彼が自分に人間らしい気持ちを気づかせてくれたこと。
おこうは回想する。幸吉が黙って野に咲く名もない花を差し出したときのことを。「お前にこの花の心が分かあか。弱い人間の心が分かあか。人間として大事なものを忘れておらんか。…あの世から主人が私に問いかけとう気がしました…。」
竜安先生は不思議なことにふと丈吉のことを思った。丈吉もそんな生き方をしていて欲しい、もしや幸吉とは丈吉のこと? いやまさか、でもそうあって欲しい、と。
第10話:「噂の男」A
その時幸吉は馬を駆けて野山を巡っていた。それは紛れもないあの丈吉。傍らには16歳の多感な若者に成長した信吉がいた。
村人達がその姿を見つめている。掘れば必ず鉄が出る、あれが噂の鉱山師。そして今日もまた一つ、信吉の手柄でまさ鉱脈を発見するのであった。
帰宅した幸吉達を、今では妻になったお美津が出迎えた。蘭法医の客が来ていると聴き、幸吉は一抹の不安を覚える。その時竜安は手品(西洋化学実験)を見せ、音楽に合わせて舞い踊っていた。
その鼓の音に予感が的中した幸吉は辞退しようとするが、全斎に引きとどめられてついに竜安先生と対面した。意を決し、誠意を尽くして挨拶する幸吉。
いぶかしげに見つめる中塚。竜安は平静を保っていたが、「この方は世の一隅を照らすことをしてみたい、という一念で養生院を立てられなすった方です。」という全斎の紹介に確信が高まった。
幸吉の心の中でも、あの銀の燭台の一夜のことがフラッシュバックしていた。
竜安:「わしは確かそこもとと長崎で会うた気がするが?」幸吉:「私はまだ九州の地には足を踏み入れたことはございません。」
竜安:「…わしの勘違いだった。いやあ、許されよ。」しかし二人は全てを悟ったかのように眼差しを交わし、一献傾けるのであった。
竜安:「幸吉殿、噂に違わぬ見事な男ぶり、竜安感服つかまつった。今後とも、何事も恐れず一隅を照らすことに励まれよ。」
夜が更けた。夜の浜辺で尺八を奏でる全斎、そしておこう。全斎「…人の出会いというのは美しい。幸吉さんと竜安先生は良い友達になれる…。」
離れでは中塚と竜安先生が会話をしていた。中塚:「…丈吉そっくりでしたね。他人とは思えない。」
竜安:「…明日の朝、ここを出よう。安い木賃宿を探そう。」なぜ?といぶかる中塚を竜安は「ここに居ちゃあいかんのだ。」と一喝する。
そして時を同じくして、幸吉とお美津も寝所で会話を交わしていた。お美津:「…旦那さんは金やごの神さんのお使いだ。」
幸吉:「…そんなことあらへん。わしは他の人間と同じ、つまらん男だ。」お美津:「…いや、旦那さんはうちの大事な人だけえ。…そうか、神さんはこげな顔をしとう…。」
幸吉は再びぽつりと呟いた。竜安先生に正々堂々と名乗らず、嘘をついた自分を悔いていた。「…つまらん男だ…。」
第10話:「噂の男」B
翌朝、全斎が竜安を出迎えに行った時には既に一行は小松屋の屋敷を引き払ってしまった後だった。驚き、唖然とする全斎。竜安先生と中塚は磯辺のうらぶれた旅籠に来ていた。竜安:「こういう所がいい。人間の臭いがする。」中塚:「…臭いすぎですよ。」
そんな時、旅籠の主人と女将が派手な夫婦喧嘩を繰り広げていた。女:「うちの財産を食いつぶしたくせに!おなごのケツばっかり追い回しておるけえ、こうなっただ。」
男:「お前の親父がどうかもらって下せえって頼むからもらってやっただ。人間運不運はつきもんだ。そのうち金山でもあてて、小松屋長者くらいになったるわ。」
などと口汚く罵りあうこの二人、数年前は大坂宗右衛門町で聞こえた木綿仲買商、何とあの丹波屋のなれの果て、徳市とお六であった。
竜安が客と分かった途端に愛想良くなった二人。中塚は必死に水をくむ少女お雪に出会う。肌が抜けるように白く、目鼻立ちがぱっちりとしたこのお雪。心なしか髪の毛がちょっぴり赤かった。
幸吉は今日も信吉と野山を駆けめぐっていた。日がな一日山に出て、10〜20日も戻らないことがあった。忌まわしい過去を持つ幸吉にとって、人間相手よりも大地相手の方が楽しかったのである。
信吉:「みんな旦那さんのことを変人じゃ言うとります。左団扇で暮らせるのに…。」幸吉:「…天の恵みは独り占めしたらいけん。みんなに返さなあかん。…人間堕ちるとこまで堕ちたらなあ、その日その日飯が食えたら十分じゃ。」
そして昔信吉から一朱銀を盗もうとした自分が大した人物ではない、「つまらん男だ。」と語った。
信吉:「そりゃ違います。旦那さんは心のきれいなお方じゃ。わしも旦那さんのようになりたいです。」幸吉:「…わしにもしもの事があったら頼むで…。」
米子の町に戻ってきた二人はそこで全斎に遭遇し、竜安先生が屋敷から居なくなったこと聞かされた。幸吉には竜安先生の心遣いが痛いほどに分かった。一行を捜そうとする幸吉。
そんな幸吉がある骨董屋の前を通りがかった時、何とそこに銀の燭台が置かれているのが目に飛び込んできた。それは忘れようもなく、紛れもない正にあの燭台であった。「あれが何でここに!?」
〔第10話 完〕
以前にも、「鳥取編は『未来少年コナン』でいけばハイハーバー編に該当する」と書きましたが、正にその通り。安心して見ることが出来ます。そして心の底から成功した丈吉を祝福できます。
そして働くと言うことの素晴らしさ、心意気、「恒産あれば恒心あり」という成語を思い浮かべます。しかしその幸せが全面開通の幸せで終わらないところまでよく似ています。一筋の引っかかりを残しています。
『いのち燃ゆ』で行けばそれはとりもなおさずおりんの行く末です。原作『レ・ミゼラブル』のストーリーを知っている我々はおりんの末路が悲しいものであることを予兆します。そしてお雪がコゼットに他ならないことも。
「おりんはどうしたのか」「あんなに大事にしていた銀の燭台はなぜ手放されたのか」実は丹波屋夫婦の会話の中に「あげな病気持ちの女」「こぶつきのあばずれ女」というフレーズがあって、丹波屋以上に落魄の身になっていることが予想できます。
そして予告編の姿(生気のない顔つきで、そして丈吉との再会が示唆される)。先日放映された第15話では彼女が本来そう生きねばならなかっただろうという無惨な「酌婦」としての可能性がかいま見えます。
原作のファンチーヌの境遇を知っているとはいえ、当時中学一年生だった私には忘れようにも忘れられないシチュエーションであり、キャラクターでした。
忘れ得ぬ鳥取編。守るべきものが出来た人間に迫る葛藤、成功することの素晴らしさと転落した者の哀れさの強烈な陰影。この第10話から、息苦しくなるような心理劇が展開します。見応え充分。やはりDVD化が望まれます。
最後に、第10話でおこうが幸吉との出会いを語っていますが、これは実は重要な伏線で、それはそっくりそのまま刑場で自分が「赤牛の丈吉である」と告白する幸吉の状況と呼応しています。
「弱い人間の心が分かあか。人間として大事なものを忘れておらんか。…」
ここにも一つのパラレルワールド。丈吉が告白しない選択肢を選んでいたなら、何でも金の力で解決しようとする「悲しい男」になっていったのかも知れません。あたかもおこうが人の心を平気で踏みにじる「悲しい女」になっていたように。
この論考は「神」論とも関わって深いのですが今回はここまで。近日中に第11話の原稿化を試みます。その後長期出張ですのでしばしお休みかな。では。
今日は。今日から長期出張。今度帰るのはお盆過ぎです。第11話はその後です。
CSはいよいよ幕末編。感涙の最終回へのカウントダウンが始まります。
ではまた。ロム専の方もどうぞ書き込みよろしく。
やっと長期出張から帰ってきました。さっき『いのち燃ゆ』第17回「祇園囃子が聞える」を見ましたよ。お志摩役の新井春美が徒っぽくて良いですね。やっばり彼女がエポニーヌの役目を果たしています。
彦馬の父も恋愛に生きた人物だったのですね。また一つ、『いのち燃ゆ』の大きなテーマが見えてきたなあ。それはまたいつか。
ではまだまだ忙しいですが、ともかく自宅には戻ってきたので、近いうちに第11話のストーリー紹介します。ではまた。
123 :
作太郎:2006/08/19(土) 17:21:39 ID:cbyvWGP3
お帰りなさい、入道さん
私は、ある方の好意で、欠落部分を見ることができました。
原作の小説5巻読み終えました。
この作品の脚色のうまさに、改めて、感心感動した次第です。
また、DVDで映画「レ.ミゼラブル」借りてきました。
ストリー紹介は、入道さんにお願いしますね。
「噂の男」の回は物語りでは、中盤なのに、名場面続出ですね。
ロム専門の方の方、出てきてくださいね。
申し訳ない、うかうかしていたら9月になってしまいました。CS再放送も幕末編がどんどん進んでいます。感涙の最終回へ。
登場人物の中では、純情可憐なお雪よりもはすっぱなお志摩の存在が映えています。やっぱり彼女がエポニーヌであり、美男の剣豪沖田総司はアンジョルラスが投影されているようです。
それはそうと、私の使命、鳥取編のストーリー紹介が進んでいませんね。週末に第11話「たった一夜の涙花」を原稿化しますよ。では。
清次郎って人間の屑だな
あれは報いが必ず来るぞ
126 :
名乗る程の者ではござらん:2006/09/16(土) 21:17:46 ID:ffYqgpt1
来週が最終回ですね
127 :
名乗る程の者ではござらん:2006/09/16(土) 22:21:31 ID:iP0TyGSI
このドラマを面白くみてきたけど、最終回を前にしてふとテーマはなんだったんだろうと考えさせられる。
壬生の恋歌なら→幕末を駆け抜けた若い隊士達の青春と末路の悲哀
いのち燃ゆ・・・・・・ある男の波乱の一生・・・か?漠然としすぎてるな。
まあ最終回を見てみないとまだわからんな。。
128 :
作太郎:2006/09/17(日) 09:59:38 ID:9Iq2BhYN
こんにちは
多分、新しい書き込みの方が出現なさったようですね。
最終回の紹介は、ここまできたら、できなくなりました。
テーマは、どんどんふくらんできたのではないかなと思います。
波瀾万丈ですね。私はまん中の鳥取篇が事実上初めてみたに等しいですから。
2度目の島抜けで、丈吉は、お美津母子に、「たくさんの人を救うって思い上がり
だった、たったひとりでも・・・」と云う言葉がありました。家族あっての自分
って事なのかなと思ったり。う〜ん、入道さん語ってくださいね。
また長期出張が入っていました。雇われの身は風任せ。でもしばらくは自宅に落ち着くことが出来ます。
気が付けばもうすでに最終回を迎えていたんですね。録画も3週分たまっているので、一日1作ずつ見ることにします。
ところで『いのち燃ゆ』のテーマ論が始まりましたが、これがなかなかに複雑な様相を呈します。原作『レ・ミゼラブル』が持っているヒューマニズム的な主題。
そして杉山さんが健筆をふるったフェミニズム的なモチーフ。そして一個の人物伝として捉えた時の「教養ドラマ」的な骨格。
さらには織りなす主人公達を中心に見たときに浮かび上がる、愛憎と善悪と罪と救済のオーケストラとも言うべき構成。
でもまあ、私に期待されているのはそんな「あれもこれも」的な回答ではないと思いますので、あえて言い切ってみます。
きっとこのドラマは「一人の男が周りの人達に明かりを灯していく物語」なのだと思うのです。そしてこの物語を最も端的に象徴しているものは「銀の燭台」です。
作太郎さんが、「たくさんの人を救うって思い上がりだった、たったひとりでも・・・」という言葉に注目していますが慧眼だと思います。
大状況から多くに光を与える事は可能だけれども、そうすると一番明かりを灯したい人達に光を届けることが出来ない。
裸一貫の人一人が出来うること、それは「一隅を照らすこと」なのだということをこのドラマは伝えてくれます。新撰組の前で「家族は自分で守る」と見得を切ったあの態度にそれが収斂されている様に思うのです。
鳥取編以後、丈吉は本当に多くの人達を照らしていきます(丹波屋父子だけは出来なかったようですが)。全23話あるタイトルのうち、最も全体を象徴しているタイトルは第9話「一輪でも花にて候」ではないでしょうか。
(次の書き込みに続く)
(続き)
こう書いた時に、私が最も好きなこの第9話は全体を象徴する諸要素が結実しているようにも思えてきました。反則と知りながら、今最終回の最後のシーンを見てみたら、何とやはり
第9話のラストシーンと同一の映像が使われていました。前から思っていたことですが、オープニングのタイトルバックの映像は火花ちるたたら製鉄の様子ではないか、それに「いのちの限りを燃やして生きていく」ことを含ませているのではないか。
久々にこのスレッドに戻ってきて、ちょっと筆致が滑りすぎた感じがあります。自己を戒めなくては。
ともあれCS放送も大団円を迎えて私もほっと一息、新しい視聴者も全体像を一望、これからまた違った角度からの書き込みが出て来ることを期待します。
やっとみんな同じ土俵に上がった訳ですし。
うかうかしていたら11月になってしまいました。異動があって引っ越ししました。忙しかったなあ。
12月になったらオフシーズンになるのでもう一度『いのち燃ゆ』第1話から見直して、ドラマ全体の枠組みを再考察してみますね。
CSもまだまだ面白い番組がありますね。今では出勤前に『ウゴウゴルーガ』を見ています。社会人1年生の時を思い出します。
ではまた。スレ立ち上げてからもうすぐ1年になろうとしています。年を越す準備をしなくちゃね。
132 :
作太郎:2007/01/21(日) 22:02:43 ID:kT/z/x+T
あけましておめでとうございます。ご無沙汰しております。
11月以来、はや3月ストリ−紹介まだ、未完成なので、したいと思います。
会社の友人に説明したのですが、時代劇は...。
新しい方の書き込み乞う期待です。
133 :
作太郎:2007/03/12(月) 04:09:06 ID:Z5eNzgQs
こんばんは
スレッド復活めざします。
入道さん、元気ですか。
中途で、終わるのは、ダメと自戒します。
私も書くよ
みなさん、よろしくね。
134 :
名乗る程の者ではござらん:
皆さんの書き込みを見ておぼろげながらも記憶がよみがえってきました。