【ヤオイ】三谷新選組!腐女子専科#19【ミ〜ハ〜】
「どうだか」
悪態をつきながら、新八が掛布を開いてやれば
縋るように、布団の間にもぐりこむ。
平隊士部屋とは隔たった場所にある新八の部屋は
物音一つしない静けさに覆われていた。
「…なあ、平助」
「何?」
暗闇にひかる平助の瞳を見ていると、瞬きの音すら
聞こえそうな気がする。
「抱いてやろうか?」
「うん」
「女みたいに抱いてやろうか、って言ってんだけど」
「は?」
平助は思わず言葉を失って、次の瞬間、小声で器用に噴き出した。
「新八っつぁんが俺を!? ツッこみたいの!?」
「それもあるんだけどね」
躊躇いがちに、新八が口を開く。
「そしたらお前も、ちったァ楽になるんじゃないかって」
ずっと、考えていたことだ。
新八の、何時になく真面目な声色が、それを冗談にさせなかった。
「どういう意味だよ」
「わかってるだろ」
「…どういう意味だよ」
平助の肩が、大きく震えた。
「考えたこと、あるだろ」
女のように、理性ではなく感性で生きられたら。
頭ではなく、心でものを考えられたら。
組織のことも、政治のことも、何もかも忘れて
一途に死んだ男のことだけを想い続けられたら。
そう思わずにいられない、女々しい己を許せたら、と。
「引きずるな、って言ってるんじゃない」
―――あの男のことを。
「少しぐらい、受け止めさせろ、って言ってんの」
この腕の中にいる間だけは、お前を女にしてやるから。
絶句している平助に構わずに、新八は淡々と続ける。
「・・・まあ、気が乗らないなら、それでいいし、
今すぐ足開けって意味じゃないから」
しばらくの間、暗い闇の中で、
押し殺した二つの息遣いだけが
かすかに響いていた。