【ヤオイ】三谷新選組!腐女子専科#19【ミ〜ハ〜】
気づかなければ、楽なのだろうか。
腹の上で律動を繰り返す男の顔を
見つめることができなくて。
「新八…」
その声に応えるように
薄い胸を力いっぱい抱きよせて
汗ばむ肩越しに天井を仰ぐ。
虫すら啼かぬ、夜四更。
快楽ではなく苦痛に酔い痴れているのは、お互いか。
荒い吐息に混じるのは、嬌声に似せた悲鳴でしかない。
毎晩毎晩、何やってんだか」
新八が、吐き出すように呟いた。
果てた途端に、冷める。
いくら体を鍛えたところで、情事の後の気怠さは
ついぞ消えることもなく。
「あれ? 気持ちよくなかった?」
「そういう事じゃなくて」
「…まあ、大きさじゃサノには負けるけどさ」
「嫌じゃないんだけどね」
どこかかみ合わない会話。
もどかしい齟齬に、気づかぬふりをするのも
いつものことだ。
俺、寝るわ」
乱れた襟をお座なりに直して、新八が夜具に潜り込む。
小さな身体が、首まで布団におさまりきるのを待って、
「一緒に寝ていい?」
取り残された平助が、ぽつんと呟いた。
「どうせ、眠れないくせに」
「寝てるって」
新八自身、眠りが深いほうではないが
平助のそれは、病に近い。
西本願寺屯所で個室が与えられてから
幾度となく同じ夜を過ごしながら新八は、
平助のまともな寝息を、一度も聞いたことがない。