必殺シリーズ自治6 策謀と態度で損したデラ弁の一生

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769名乗る程の者ではござらん
215 :書斎魔神 ◆CMyVE4SVIw :03/12/29 21:33
削除人の判断ミスによる言論弾圧がおこなわれたので、
「七十五羽の烏」の講評を再度アップしておく。
この程度の内容が書けないようでは、ミステリ板における作品講評は不可能と
言えよう。

「七十五羽の烏」を読んだ。
この作品の構成の巧いところは、第2、第3の事件(この表現が正確)が第1の殺人の
見事なミスディレクションの役割を果していることである。
ミステリを読み慣れた読者なら、第1の事件発生時に、通常ではない行動をとったと
主張する人物に着目し、消去法を用いれば比較的簡単に犯人を指摘し得るかと思う。
しかし、第2、第3の事件の発生により、第1の事件の犯人を確知し得たと思った読者もその確信が揺らぎ迷妄の世界へ入ってしまうのである。
探偵役物部太郎の浮世離れしたキャラクターは、凄惨な事件をあくまで絵空事の推理
ゲームの世界であると読者に認識させる点で、十分な効果を上げている。
しかしながら、最後に探偵が事件の関係者一同を集めて、
全ての謎を快刀乱麻に解決し、犯人を指摘する展開こそ、本格ミステリの醍醐味だと思うのだが、この点で、物語中盤で第2の事件の謎解きだけ先行してなされてしまい、
探偵とその助手が謎解き後にコソーリと退場してしまうことは、カタルシス欠き、
不満が残るものとなっている。
地方の旧家(と言っても茨城県だが)を舞台にした怪談仕立てでありながら、
横溝正史作品のようなサスペンスを盛り上げる効果が出ていないこと。
作者の歴史に関する薀蓄がくど過ぎてかったるい感を受けること。
この辺も、本作の主たる欠点になるかと思う。

次回は、物部シリーズ第2弾「最長不倒距離」の講評をお送りしましょう。
(1月1日アップ予定)