173 :
ミステリ板住人 ◆C2eJJPwS7M :
仕掛人シリーズの元ネタと思われるエドガー・ウォーレス「正義の四人」を読了。
必殺シリーズを先に見た現時点で読むと、むしろ元ネタの方がパロディのように見えて
何気に面白いものがある。
前スレで、本作と池波先生の仕掛人藤枝梅安シリーズを、タイトルが似てるだけかの
ように書いているレスがあったが(第一短編集「殺しの四人」)、
これは極めて表層的かつ読みが浅い見解と断定せざるをえない。
法で裁けぬ社会の害虫を始末して来た「正義の四人」、彼らの次なる標的は、
外国人引渡し法案成立を図るイギリス外相だった。
「正義の四人」は、金で殺しを請け負うわけではないが、
「世のため人のためにならない連中(これは自分たちの主観で判断)を仕掛けて殺す」
という点は、まったく同一。
池波先生は、「正義の四人」が持つ偽善性に対する抵抗感を減らすために、
表面上は、「金で殺しを請け負う」というスタイルを導入したわけだ。
しかし、「正義」というものの判断を主観に頼る姿勢は、本質的には変わりがなく、
原作以上に、テレビシリーズにおいて、その偽善性は鼻につくものになっている。
それゆえ、主水シリーズ第一弾仕置人における「悪党宣言」が、本音で語る痛快さを
感じさせるのである。
余談だが、「正義の四人」は、物理的なトリックの活かし方等を工夫して、
舞台をロンドンから江戸に変え、時代小説に書き直すことが十分に可能な作品であると思う。
この辺も、本作が池波先生の琴線に触れたところかと思う。
機会があれば、創作文芸板等で試行してみたいところである。