必殺シリーズ29 この世は辛いことばかり

このエントリーをはてなブックマークに追加
559ミステリ板住人
仕事人後期以降くらいから乱入した人には、必殺シリーズ=中村主水という観念なのは
致し方ないものがあるかと思う。
初期作品を見ればわかるとおり、主水初登場となる必殺仕置人では、
彼はメーンキャラのひとりというポジションに過ぎない。
なぜこんなことになってしまったのだろうか?
これは初期必殺の非主水ものが、相次ぐ不遇に見舞われたことに起因するのである。
まず「助け人走る」。板妻の遺児で殺陣には定評がある(池波正太郎先生も絶賛)田村高広、
水戸黄門のレギュラーキャラ風車の弥七で人気の中谷一郎、仕掛人に続く元締役も板に付いたベテラン俳優山村聡。
息があった3人の渋い俳優の好演もあって中期までの「助け人走る」は、仕掛人・仕置人の
ような殺し屋を主人公にした異端の時代劇という感じではない明るさと重量感を兼ね備えた
正統派時代劇の魅力に溢れていた。
この点、前番組仕置人を巡る諸般の事情があったとはいえ、「殺し」を全面に出さない番組
作りは成功していると言える。
言わば、明るめな「仕掛人」という番組作りであったのだ。
しかし、2クール終了後(第24話悲痛大解散まで)は、急速に番組自体がパワーダウン。
新加入の若き殺し屋龍の登場も挽回策とはならず、ぱっとしないままに終了したのであった。
歴史にIFは無いとはいえ、仮に2クールで終了していれば、必殺シリーズ中にとどまらないTV時代劇の傑作として語り継がれたであろうに、この点残念である。
560ミステリ板住人:03/05/21 19:30 ID:l+84MXmu
次の非主水シリーズは、「必殺必中仕事屋稼業」。殺しに博打の面白さをミックスした異色作。
助け人のような作品のクオリティを落とすような無理な延長が無く、
ほぼ2クールに面白さと緊張感が凝縮された非主水シリーズ最高傑作である。
全編通して出来栄えは申し分無いのだが、衆知のとおり、ネット局変更による視聴率の急落
という作品内容には無関係な事象により商業的な失敗作の烙印を押されてしまう。
非主水シリーズ第三弾は、「必殺からくり人」である。
早坂暁氏のホンの出来栄えは申し分無いのだが、この作品から非主水シリーズは
1クール程度に抑えられることになり、ジョディ扮するとんぼと森田議員扮する天平の
兄妹話(東映映画ならどろどろの展開になるような設定)も十分に展開出来ず、
曇り一味との抗争も十分に描き切れず、不完全燃焼のまま終った感が否めない。
2クールの番組であれば、人間ドラマ部分がより掘り下げられた作品になったであろうに
非常に残念である。
格別特筆すべき点がない主水シリーズのつなぎ程度の扱いである1クール程度のからくり人
シリーズ3本を挟み、久々の2クールの非主水シリーズが「翔べ!必殺うらごろし」であった。
オカルト風時代劇というアイデアは決して悪くは無いのだが、必殺シリーズという番組枠の中
では違和感が強過ぎたし、時代が早過ぎた感も強い。
出来栄えには関係無く、内容的・時代的に失敗すべくして失敗した作品と言えよう。