必殺シリーズ総合28 許せぬ悪にとどめ刺す

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771ミステリ板住人
必殺シリーズと特撮ドラマに関する基本的考察(以下「基本的考察」と略す)

以前から時代劇板必殺シリーズスレを見ていて気になったのだが、
必殺シリーズに関連して特撮に関する話題が出ると、
過剰なまでに拒否反応を起こす住人の姿が目に付くことである。
結論から先に申し上げると、私はこれは近親憎悪に近い感情であると考えている。
必殺シリーズ→アダルト向きの時代劇(特に初期)、特撮ドラマ→子供が見る番組
という一般的な社会通念が存在するため(あくまで通念に過ぎず実態は若干異なるものがある)
同一又は極めて類似したものの評価に差が生じている場合には、
評価が高い方のみの支持者は、低く評価されているものに対し必要以上の蔑視・憎悪の鉾先
を向けるのは、非常に良く知られたところである。
特に相対的に見て評価が高い方(この場合は必殺シリーズ)も、社会的・文化的に見ても
さほど高い評価をされていない場合は、尚更この傾向が顕著に現れるのである。

基本的な物語パターンを以って比較すれば、両者は極めて似た物語構造を持ったものであり、
ドラマツルギーはほとんど同様であると断定しても差し支えないほど類似したものである。
両者の基本的な物語パターンを一言で言い表せば、「異端者たるヒーローによる絶対悪の排除」
これに尽きる。
特撮ドラマにおける異端者たるヒーローとは、例えば改造人間(昭和仮面ライダー)であり、
超人(ウルトラマン等)である。
必殺シリーズにおけるそれは、例えば「必殺仕置人」を例にとれば、破戒僧である念仏の鉄
であり、地方人である棺桶の錠である。
彼らは破戒僧ゆえに、また地方人ゆえに、社会からの異端者にならざるをえないのである。
たとえ、骨継ぎや棺桶製造という正業の特殊スキルを持っていたにしても。
段取りや情報収集を担当する半次やおぎんも決して堅気とは言えない社会の異端者である。
772ミステリ板住人:03/05/07 20:45 ID:u1W1AMKq
さて、中村主水はどうか?
彼を警察官僚組織における異端者と見る向きもあり、これはこれで正しい見方かとも思う。
しかしながら、彼は権力機構内部における異端者への協力者という側面も併せ持つ。
言わば、ダブルミーニングされたキャラクターなのである。
特撮ドラマの世界において、後者の意味合いにおける主水的なキャラの登場は
平成仮面ライダーシリーズ第1作「仮面ライダークウガ」における一条刑事まで
待たなければならない。

さて、中村主水的なキャラクター創造には多大な時間を要した特撮ドラマだが、
相当早い段階から、悪の相対化の問題を番組内で呈示していた点は評価に値する。
ウルトラマンにおける宇宙飛行士が変異した怪獣ジャミラ(「故郷は地球」)が
この典型例であると言える。
必殺シリーズは、必殺からくり人でこの問題を示唆するも、遂に本格的に取り上げる
には至らずに終了してしまったのである。
つまり、倒すべきは本当に悪なのか、という必殺シリーズや特撮ヒ―ロードラマに
共通する問題である。